日刊工業新聞(11月7日)に、「ESG経営への知財活用 企業価値向上に向け」という 特許庁・仁科雅弘氏の寄稿が掲載されています。 「知財への投資とESG(環境・社会・企業統治)経営の実践とは、企業価値の向上につながる取り組みである点で共通し、相互に密接な関係を有する。しかし、わが国では知財への対応は知財部門に任せておけばよいとの意識が依然として根強く、経営層によるESG経営の実践において、知財が十分に生かされていない可能性がある。」という問題意識から、「我が国の長年の課題である経営と知財との一体化について」書かれています。 https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00653158 ・コーポレートガバナンス・コードの実践 知財とESG経営との接点 ・迫られる気候変動対応 環境と知財 社会と知財 ・経営層と知財部門の対話で企業統治を昇華 企業統治と知財 最後に METI Journal ONLINE 政策特集「知財で挑むESG経営」 https://www.jpo.go.jp/news/koho/info/journal_meti_policy0930.html ESG経営のE(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)をそれぞれ知財の視点から見ていきます。 日本では、知財の対応は知財部門に任せておけば良いという意識の企業も多く、経営層と知財部門との情報共有が十分になされていないという課題があります。 特集では、ESG経営に、知財部門の取り組みが貢献した事例を紹介。知財部門と経営層のコミュニケーションの活性化の一助となることを期待しています。 環境技術こそ「企業戦略のゲームチェンジャー」だ! https://journal.meti.go.jp/p/23420/ 「知財フル活用」で社会課題を解決、笑顔と創造の輪を広げよう(I-OPENプロジェクト) https://journal.meti.go.jp/p/23524/ 投資家も注目する知財戦略。カギを握る「企業の情報開示」 https://journal.meti.go.jp/p/23593/ 「知財を活躍させる企業統治」とは。プロが明かす重要ポイント【前編】 https://journal.meti.go.jp/p/23628/ 「知財を活躍させる企業統治」とは。プロが明かす重要ポイント【後編】 https://journal.meti.go.jp/p/23682/
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特許・情報フェア&コンファレンスの三日目(11月11日)午後、「特許情報解析の未来~解析技術、サービスはどう進化するのか~」というパネルディスカッションがおこなわれました。テーマは下記でした。
https://pifc.jp/2022/visit/#exhibit_semispe Q1 AIの進歩と特許情報サービスについてあらためて伺います。 Al の進歩は、皆さんのビジネスをどうかえようとしているでしょうか。現状について伺います (DABUSの例から 見れば特許や技術提案も可能になりつつある?) Q2 今日も特許情報サービスに従事する海外のスタートアップも展示していますが、技術の進歩とともに国内外で今後ゲームチェンジャーとなる事業モデルはあるでしょうか? (そういう事業者との関係、エコシステムの在り方、例えば、棲み分けという言葉について) Q3 そもそも特許の在り方についてもAlが変えていく可能性があります。そのときに特許情報というものの在り方伺います。少し先、例えば10年後を考えて、コメントをいただければと思います 特許情報解析の未来は、「今、馬鹿にされ、笑われている出来事にヒントがある!」が印象的でした。 モデレータ 渡部 俊也 氏 東京大学 未来ビジョン研究センター 教授 https://pifc.jp/2022/wp-content/uploads/2022/11/pifc2022forum_watanabe.pdf パネラー 藤澤 正人 氏 アイビーリサーチ株式会社 代表取締役、 一般社団法人 特許情報サービス業連合会(FPIS) 理事長 https://pifc.jp/2022/wp-content/uploads/2022/11/pifc2022forum_fujisawa.pdf パネラー 中村 達生 氏 VALUENEX株式会社 代表取締役 社長 CEO https://pifc.jp/2022/wp-content/uploads/2022/11/pifc2022forum_nakamura.pdf パネラー 三好 陽介 氏 ランドンIP合同会社 社長 https://pifc.jp/2022/wp-content/uploads/2022/11/pifc2022forum_miyoshi.pdf パネラー 高野 誠司 氏 高野誠司特許事務所 所長 https://pifc.jp/2022/wp-content/uploads/2022/11/pifc2022forum_takano.pdf 特許・情報フェア&コンファレンスの二日目(11月10日)午前中、「IPランドスケープ推進協議会 活動第2フェーズにかける期待 ~9つの仮想IPLから見えてくるもの~」というテーマで、「IPランドスケープ進化への取組み~IPLで産業界が繋がる可能性~」という基調講演、パネルディスカッションがおこなわれました。400席が満席で盛況でした。
基調講演では、ブリヂストンのIPL活動、IPランドスケープ推進協議会の活動が紹介されました。 ディスカッションでは、2期目の活動の中から「9つの仮想IPL」について紹介され、下記のテーマでディスカッションが行われました。 1. IPLで何がつながるのか つながるとどんなことが起きるのか 2. 実際につなげたいときに現場では何が起きるのか 分科会活動で何が起きたのか 3. つながるための知恵は 共有するためには 講演資料 https://pifc.jp/2022/wp-content/uploads/2022/11/pifc2022lec02.pdf 特別フォーラム1 11月10日(木)10:00~12:00 IPランドスケープ推進協議会 活動第2フェーズにかける期待 ~9つの仮想IPLから見えてくるもの~ https://pifc.jp/2022/visit/#exhibit_semispe IPランドスケープ推進協議会は2020年12月、「企業の事業競争力の強化および知の探索による新たな価値創造の促進による企業価値の向上に加え、我が国の持続的な社会発展を促し、広く公益に寄与する」として有志企業らによって設立されました。 今回は、国内有力企業52社が進める2期目の活動の中から「9つの仮想IPL」について紹介する。これは「日本の未来を左右する社会課題・分野9テーマ」に関して、5社程度から成る9チームを組成し、IPランドスケープを行う活動。異なる概念、言語、手法を有する異なる企業が協同する中で、何が得られ、何が見えてきたのかを紹介します。 モデレータ/基調講演 荒木 充 氏 株式会社ブリヂストン 知的財産部門 部門長 ブリヂストン入社駆け出しから20年間はタイヤ設計に従事。欧米中で計8年の海外駐在を経験。タイヤ設計部長、開発企画管理部長、品質保証本部長を経て現職。IPランドスケープ開発や事業貢献型の知財ミックス設計コンセプトを柱に、「モノ→コト→DX」で進化するソリューション事業に貢献できる知財機能変革に取り組む。 パネラー 吉田 伸 氏 東レ・ダウコーニング株式会社 (ダウ・ケミカル・グループ)研究開発部門 知財戦略担当部長 修士号取得後に日系の化学会社で5年勤務し、2010年にダウ・ケミカル・グループに入社。シリコーン化学の合成、組成物、用途に関して、IP管理、戦略、ランドスケーピングをリードする。グローバルIP戦略策定と管理、IPランドスケーピングの専門家。社外技術調査・導入に関するTech Scouting を兼任。ダウ社外の活動として、レイテックとIP評価システムを開発。 佐川 穣 氏 旭化成株式会社 知財インテリジェンス室 IPLチームリーダー 知的財産教育協会認定 シニア知的財産アナリスト 旭化成株式会社入社後、知的財産部にて知財リエゾン業務に従事。新事業企画・開発部門へ異動し、ビジネス企画を行った後、2014年より知的財産部にて技術情報の調査・分析に従事。2022年4月より現職。全社で推進してきたIPランドスケープを活用し、無形資産の活用をさらに加速させ、企業価値を向上させることを目指している。 坂元 徹 氏 住友化学株式会社 知的財産部 グループリーダー (弁理士) 2006年に知的財産部に配属後、約6年の出願業務を皮切りに、係争、ライセンス、特許ポートフォリオ価値評価、知財戦略立案等に従事する過程で知財俯瞰調査・解析の面白さに関心を抱く。「如何にして事業戦略に資するアウトプットになすか」「より組織的な活動に発展させるには?」など試行錯誤と挑戦の日々を過ごす。 石井 友也 氏 株式会社ニデック 知的財産部 知的財産課 課長補佐 知財経営戦略チームリーダー 株式会社ニデックに入社後、権利化業務(明細書内製200件以上)、クリアランス業務、無効審判、審決取消訴訟、異議申立、渉外業務等に従事。2017年より、知財戦略立案、IPLによる提案、IPL活用の仕組み構築等の知財企画業務の立ち上げを経験。現在、従前の知財業務と知財企画業務を兼務し、CGC改訂対応に取り組み中。 「第31回2022特許・情報フェア&コンファレンス」が11月9日(水)から3日間、東京・北の丸公園の科学技術館で開催されていますが、特別講演1 「AIの未来(著作者は誰か)」(永沼よう子弁理士)を聴講しました。
AIが創造した絵画などの取り扱いについて各国で対応が異なっていること、特許とは違う扱いになっているようです。 非常にわかりやすい解説でした。 講演資料 https://pifc.jp/2022/wp-content/uploads/2022/11/pifc2022lec01.pdf 特別講演1 T111月9日(水)11:00~12:00 AIの未来(著作者は誰か) https://pifc.jp/2022/visit/ AIが生み出す作品を巡り法律面並びに倫理面での問題意識が高まっています。人間が芸術を”創造する”とはどういうことか。アルゴリズムを解析し生み出されて起こる”デジタル窃盗”との線引きはー。諸外国の現時点における整理と比較し、創造のもたらすオリジナルブランドの価値について考えます。 永沼 よう子 氏 弁理士・AIPE認定知的財産アナリスト iRify国際特許事務所 代表弁理士 国内、外資など様々な企業や法律事務所で現場に即した著作権や肖像権・種々の知的財産権の知見を幅広く蓄積し、2016年現iRify国際特許事務所に参画。 現在は、同事務所の代表弁理士として、豊富なビジネス経験と商標・著作権関係の専門知識を活かし、企業の知的財産戦略をサポートしている。 TV番組、講演活動などで「知的財産権についてわかりやすく伝える」ことに定評がある。 AIが絵を描く? 進化する画像生成AIの最前線 2022年10月8日 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221008/k10013851401000.html 情報解析と著作権──「機械学習パラダイス」としての日本 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsai/36/6/36_745/_pdf 画像生成AIと著作権を弁護士が解説 Stable Diffusion流行やmimic炎上 https://premium.kai-you.net/article/574 加賀谷教授の「知財・無形資産投資と価値創造」には、日本企業と米国企業、欧州企業の知財・無形資産投資の水準の国際比較(S&P Global社が提供するCapital IQを活用し、企業の投下資本(有利子負債+純資産)に対する研究開発投資、販管費(研究開発費、広告宣伝費を除く)の割合と貸借対照表上に計上される無形固定資産の総資産に占める割合についてそれぞれ検討した結果が説明され、日本企業の知財・無形資産投資は消極的であることが明確にわかります。
そのうえで、なぜ日本企業の知財・無形資産投資は消極的か、を3つの要因としています。(日本企業と米国・欧州企業との大きな違いは、成果の不確実性を超えて、企業成長のための価値創造ストーリーについて説得力をもって市場に伝達する姿勢であり、それを積極的に評価する資金提供者の存在だ。また将来に向けた価値創造をめぐる対話・エンゲージメントの内容に違いが生じている可能性がある。) 2022年1月に内閣府より公表された「知財・無形資産の投資・活用戦略の開示及びガバナンスに関するガイドライン」(知財・無形資産ガバナンス ・ガイドライン)は、この3つの要因に対する対策となっています。 [視点] 2022年7月号 333号 (2022/06/09) 知財・無形資産投資と価値創造 加賀谷 哲之(一橋大学大学院経営管理研究科 教授) https://www.marr.jp/menu/ma_practices/ma_propractice/entry/36988 知財管理2022年10月号に「新たな模倣品対策」(舛谷威志弁理士)は、主に中国や東南アジアにおいて、アシックスと6年以上にわたり模倣品対策を実施してきた筆者が、アシックスの了承を得て掲載しているということで、従来型の模倣品対策とその限界、新たな対策などがわかりやすく書かれています。
新たな模倣品対策 知財管理 Vol. 72 No. 10 P.1263 2022 http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/search/detail.php?chizai_id=4ec173a6ab7f4af7f8a050c6c3a8c6ac ブランド維持や取引先とのトラブル防止だけでなく,消費者保護や模倣品ビジネスによる犯罪組織の資金源獲得防止という観点からも,企業の社会的責任として求められるものである。また,この対策は,SDGs実現の取り組みにもつながるものがある。しかし,製造国から第三国へのグローバルな模倣品流出やインターネット上での模倣品取引の激増により,近年,模倣品対策は,益々困難な状況に置かれている。 そこで,本稿では,中国や東南アジアにおいて,先駆的で成果のあった模倣品対策を例に挙げながら,模倣品の発生を根本的に止めるための方法論(特に,第三国流出の抑制やインターネットによる模倣品取引の抑制,行政当局へのロビイングのコツ等)を示し,権利者企業にとって有益となる情報を提供することとしたい。 目 次 1. はじめに 1.1 被害の現状 1.2 模倣品対策の目的とSDGs(Sustainable Development Goals)との関係 2. 従来型の模倣品対策とその限界 2.1 従来型の模倣品対策の問題点 2.2 巧妙・複雑化している昨今の模倣形態 2.3 冒認登録の増加 2.4 広がる模倣品ビジネスのグローバル化 3. 新たな対策 3.1 ブランドオーナーに要求される新たなアプローチ 3.2 各国の行政機関との意見交換と情報収集 4. オフラインでの模倣に対する取締り成功例 4.1 オンライン情報を活用したオフラインでの模倣の取締り 4.2 現地の行政機関や警察とのコミュニケーション 4.3 摘発実施のスケジュール管理 5. オンラインでの模倣に対する取締り成功例 5.1 多種多様に広がるECプラットフォーム 5.2 模倣品情報の検索・管理 5.3 オンライン情報を活用した,オフライン店舗のあぶり出し 6. おわりに アシックスの中国における商標武装した模倣品との闘い https://yorozuipsc.com/blog/2245669 11月4日におこなわれた知財実務オンライン【第117回】「アメリカ/EUにおけるプロダクトデザイン知財重複保護戦略」(米国ワシントン大学ロースクール教授/慶應義塾大学法科大学院教授 Seed IP Law Group Of Counsel 竹中 俊子氏)のミュンヘンからの配信のアーカイブ動画(約1時間半)は、下記のような内容でした。
日本とは異なる部分も多いこと、しっかり勉強できました。 1.米国意匠特許制度による保護 2.米国商標制度による保護 3.米国著作権制度による保護 4.EU意匠特許制度による保護 5.EU商標制度による保護 6.EU加盟国著作権制度による保護 7.知財戦略 知財戦略 ●アメリカや欧州では未登録でも意匠や商標で保護される可能性 侵害回避の調査困難なため他人の権利を侵害するリスク 対策:比較的安価な登録意匠を防御的に取得 ✓EUIPOでは審査されないが登録による公告によって先行意匠権者が無効を求めてくれば侵害を回避 ●意匠、商標、著作権の重複保護が可能 積極的に権利を取得してビジネスに活用 ✓最初に意匠権を取得し、保護期間の独占的デザインの実施により自他商品識別力を取得 し商標としての保護を獲得 ✓商標としての保護を獲得するためには、機能について宣伝などで言及しない 知財実務オンライン【第117回】「アメリカ/EUにおけるプロダクトデザイン知財重複保護戦略」(米国ワシントン大学ロースクール教授/慶應義塾大学法科大学院教授 Seed IP Law Group Of Counsel 竹中 俊子氏) https://www.youtube.com/watch?v=YyX-8aklQl4&t=2408s 『日本の新型コロナウイルス の研究が低調だ。日本からの関連の研究論文は数でも質でも、G7(主要7カ国)で3年連続で最下位の見通しだ。研究力の低下は、医薬品の開発や科学的知見にもとづいた政策判断を難しくする。』という記事。
『ある先生が「これまで草野球しかやったことがないのに、突然メジャーリーグでホームランを打てと言われた」とおっしゃっていました。』という記事。 知財分野でも同様のことがないよう、草野球じゃなく、メジャーリーグで通用するよう切磋琢磨が必要です。 「G7で最も少ない」日本からのコロナ論文 研究力は政策に影響も https://news.yahoo.co.jp/articles/e4aa696a738e2762b085534539829e30a71a972a 「必要性、理解されなかった」 感染症研究軽視の代償、コロナで露呈 https://digital.asahi.com/articles/ASQC552LKQBZUTFL001.html?iref=pc_extlink 「俺たち全然ダメ」コロナ研究で感じた経験不足 1歩目が遅い日本 https://digital.asahi.com/articles/ASQBS3R1FQ9NUTFL020.html 国内製薬、コロナ論文1本のみ 開発力の低さ浮き彫り https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC26DBY0W2A420C2000000/ そーとく日記2022年11月04日に、「課題・作用効果をクレームに書けばサポート要件は満たされるのか? - 早稲田大学知的財産法制研究所(RCLIP)他主催『第11回グローバル特許権行使戦略セミナー』」がアップされていました。
『課題・作用効果をクレームに書けばサポート要件は満たされるのか?(そんなわけない)』が結論ですが、『「課題・作用効果をクレームに書けば、それだけでサポート要件は満たされる」という説がまことしやかに囁かれている』経緯が書かれていて参考になります。 なお、10月27~28日に行われた「国際知財司法シンポジウム2022」はアーカイブが公開されているのに、大学のセミナーはアーカイブが公開されていないことが多いのは、やはり残念です。 課題・作用効果をクレームに書けばサポート要件は満たされるのか? - 早稲田大学知的財産法制研究所(RCLIP)他主催『第11回グローバル特許権行使戦略セミナー』 https://thinkpat.seesaa.net/ <おまけ1> クレームに課題を書いておけばサポート要件は満たされる? https://thinkpat.seesaa.net/article/477869651.html#s5 知財管理Vol. 72No. 10(2022)に掲載されている日本知的財産協会参与の浅見正弘氏[元富士フイルム株式会社 取締役 執行役員 知的財産本部長]の論文「日本企業のイノベーション戦略を考える──何故,知財部門がイノベーションを駆動できるのか──」は、
「日本企業のイノベーション創出を活性化し,加速していくうえで,知財部門や知財人材が中心的に貢献できる可能性は極めて高い。なぜならば,知財部門が従来から取扱っている知財情報の収集や高度な分析が,インテリジェンス-すなわちイノベーション成功のカギとなる製品/サービスコンセプトの明確化のための重要な情報になると考えられるからである。しかし,知財部門がこれまで得意としてきた活動にのみ注力し,情報処理型の知財活動に留まってしまうのでは,企業が目指すイノベーションの初期活動から入り込み,その駆動に参画することは難しいであろう。イノベーションを推進するマインドセットに倣い,知財部門自らも変化することが求められていると考える。」 と「なぜ、知財部門がイノベーションを駆動できるのか」を解き明かし、「知財部門自らも変化することが求められて」おり、「知識・情報創造型の知財活動」に変わるべきことを説いています。 「知識・情報創造型の知財活動とは,自らを事業創成のパートナーであると自覚して他部門の活動に貢献する活動であると考える。具体的には,研究開発や事業展開の方向性に対する知財部門としての戦略提案,開発テーマの提案(休止提案も含む),研究開発活動を促進させる施策提案,競争優位性の設計提案,事業化プロセスにおける具体的な戦略提案,といった企業経営の重要な意思決定に関わる戦略や施策を自分事として考え抜き,積極的に提案していくことが求められる」としています。 その通りだと思います。 「知財管理」誌72巻(2022年) / 10号 / 1168頁 日本企業のイノベーション戦略を考える ─何故,知財部門がイノベーションを駆動できるのか─ https://www.jipa.or.jp/kaiin/kikansi/chizaikanri/search/detail.php?chizai_id=6c14f69e61f70bf0faaf7bbfa9e1bbbf 社会課題解決に向けイノベーションの重要性を痛感し、誰もが渇望しながら現実には満足に進んでいないと憂慮される日本。阻害要因を解消しイノベーションを推進するため、事業価値創造の目的/コンセプトの明確化、事業化実現プランの具体化と検証、事業課題の設定と協業/競合の明確化、投資の実行、といったプロセスを標準化してマネージすることが有効だと議論されるに至っている。だが、その実現には組織の心理的安全性に支えられた変革志向のマインドセットの醸成が不可欠である。そして、これらイノベーション駆動のための諸施策に対し知財部門は極めて重要な役割を果たすことが期待されている。 羽田イノベーションシティを例に、スマートシティにおける新技術の実装,新ビジネス,連携,データの取扱いについて考察しており、参考になります。
知財管理 2022年10月号 P.1225 スマートシティにおける新技術の実装, 新ビジネス,連携,データの取扱いについて (鹿島建設株式会社 知的財産部長 櫻井克己氏) http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/search/detail.php?chizai_id=dd0861cba052e3e23b135509074671df スマートシティは,先進技術の活用により,地域の機能やサービスを効率化・高度化し,新たな価値を創造するものであり,スマートシティには様々な産業界の新たなテーマとその解決手段が集約されている。日本政府が掲げる新たな社会像であるSociety5.0においても中核的な取り組みとされている。そこで,本稿ではスマートシティの具体的な事例を検証すべく羽田イノベーションシティを対象に選定して,スマートシティに秘められている可能性や課題について検討を行った。同スマートシティでは「新技術の実装」「新ビジネス」の面で可能性を有している一方,「参画組織間の連携」,「データの取扱い」等の面で課題も有していることが分かった。ただ全体としては,スマートシティは先端技術・文化の創造発信の拠点として機能し,新たな社会を構築する実装の場として,様々な可能性を秘めていることを確認できた。 1. はじめに 2. スマートシティについて 3. 羽田イノベーションシティについて 3.1 全体の概要 3.2 「新技術」の実装例 3.3 「新ビジネス」の視点について 3.4 参画組織間の「連携」について 3.5 「データの取扱い」について 4. その他 4.1 ロボット・AIに関する法的な問題 4.2 標準化 5. おわりに 本年3月8日に行われた「日本弁理士会中央知的財産研究所 第19回公開フォーラム 知的財産権のエンフォースメントの新しい地平」の講演録が、別冊パテント第27号の先行公開として、弁理士会のホームページにアップされていました。
各公園については、すでに論文として別冊パテント第27号に先行公開されていますが、講演録と論文では若干異なる点があり、また、質疑応答が掲載されていますので、より深い理解ができます。 https://system.jpaa.or.jp/patent/prior/27
日本弁理士会中央知的財産研究所 第 19 回公開フォーラム 知的財産権のエンフォースメントの新しい地平 ■日 時:令和 4 年 3 月 8 日(火)13:00 ~ 17:00 ■方 法:Zoom によるウェビナー配信 ■講 師:松下 正 氏(弁理士) 前田 健 氏(神戸大学大学院法学研究科 教授) 重冨 貴光 氏(弁護士・弁理士・ニューヨーク州弁護士) 森本 純 氏(弁護士・弁理士) 青木 大也 氏(大阪大学大学院法学研究科 准教授) ■司 会:鈴木 將文 氏(名古屋大学大学院法学研究科 教授)(主任研究員) https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/4047 東京大学特任准教授 伊藤伸氏の日経産業新聞「柔軟な知財マネジメント」(日経産業新聞2022年10月21日付)では、「技術経営分野の専門職大学院で社会人学生と討論すると、知的財産への関心の多面性に驚くことが多い。競合を市場から排除するという伝統的な特許の活用法は今なお健在だが、多種多様な知的財産を柔軟に組み合わせて全体最適化を図る戦略が求められているのだろう。こうした戦略は他社に行動が読み取られにくくなるうえ、企業間連携にも有効である。特許や商標の出願動向は技術変化や国際化の進行で一段と複雑化する事業課題に対応できる、俯瞰(ふかん)的で柔軟な知的財産マネジメントの高まりを映し出しているようだ。」と書かれています。
いわゆる「知財ミックス」の概念と同じ概念で、とても大事です。 柔軟な知財マネジメント SmartTimes 東京大学特任准教授 伊藤伸氏 2022年10月24日 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC116LS0R11C22A0000000/ 知財 より強く技術を守る知財戦略・知財ミックス戦略の考え方 (第108回)知財実務オンライン:「デジタル分野における意匠商標の知財ミックス ―意匠と商標の出願方法・効果の違いの考察―」(ゲスト:レクシア特許法律事務所 代表パートナー 弁理士 松井 宏記) 2022年9月1日 https://www.youtube.com/watch?v=0c0bcKva4ew 知財力(武器)強化戦略と知財ミックス 2022年07月11日 https://sun-group.co.jp/information/3043.html ソフトウェア業の知財ミックスと知財戦略-ゲーム業界における訴訟からの分析および提案- 2022 年 3 月 https://ritsumei.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=16902&item_no=1&page_id=13&block_id=21 経営における 知的財産戦略事例集 - 特許庁 https://www.jpo.go.jp/support/example/document/keiei_senryaku_2019/keiei_chizaisenryaku.pdf P67 自社製品のデファクト化を目指し、主力製品を「知財ミックス戦略」により強力に保護 より強く技術を守る知財戦略・知財ミックス戦略の考え方 研究開発リーダー / 技術情報協会 編 16 (3), 46-49, 2019-06 https://www.gijutu.co.jp/doc/magazine/R_2019_06.htm 知財ミックスによるビジネスモデル保護の戦略 15/6/2022 https://yorozuipsc.com/blog/7491904 ESGと企業価値をつなぐ方法論「柳モデル」を製薬大手のエーザイでCFOとして確立した柳良平氏によれば、「日本企業に対する投資家の企業価値評価が低い。主因は説明不足にある。」とのこと。なるほどと思います。
ESG活動のマテリアリティとパーパス経営 https://diamond.jp/articles/-/309699 日本企業に対する投資家の企業価値評価が低い。主因は説明不足にある。外国企業との差を端的に示すのがPBR(株価純資産倍率)。会計上の簿価に対してどれだけ付加価値を創出しているか、市場が判断する指標だ。人材など非財務資本の活用と同時に、それをきちんと伝えて市場に評価されることが求められる。今、注目のESGはその象徴といえる。ESGと企業価値をつなぐ方法論「柳モデル」を製薬大手のエーザイでCFOとして確立した柳良平氏が、その理論と実践法を全10回の連載で提示していく。連載の最終回は、「ESG活動のマテリアリティとパーパス経営」の関係について解説する。 知的資本のPBRへの遅延浸透効果:「アスタミューゼスコア」と「柳モデル」の応用 https://www.camri.or.jp/files/libs/1748/202203021223397835.pdf 日本企業の知的資本と企業価値には以下のような傾向が示唆された。 ・TOPIX100企業およびTOPIX500企業では「研究開発費」投入が、6−10年程度遅延して、事後的・長期的に企業価値(PBR)を高める傾向がある ・TOPIX500企業では、情報の非対称性から、短期的には「研究開発費」は会計上、利益のマイナス要因なので、株価に負の影響を及ぼす可能性がある ・TOPIX100企業ではIRの資源投入が豊富なため、情報の非対称性が緩和され、足元の利益の圧迫要因である「研究開発費」が株価にマイナスとならない蓋然性がある ・TOPIX100企業では「技術資産」の価値向上が6−10年程度遅延して、事後的・長期的に企業価値(PBR)を高める傾向がある ・TOPIX100企業では、情報の非対称性から、短期的には「技術資産」は研究開発投資を併発して会計上、利益のマイナス要因なので、株価に負の影響を及ぼす可能性がある ・いずれのケースもPBR1倍割れ企業の知的資本は企業価値評価につながっていない蓋然性がある エーザイで確立した「柳モデル」 https://yorozuipsc.com/blog/4342631 「弁護士・高石秀樹の特許チャンネル」の「【特許】++均等論(統合版)+★2020年収録後の均等論認容判決を追記済み」のYouTube動画(約1時間)は、最近の判決まで追記されています。
弁護士・高石秀樹の特許チャンネル 【特許】++均等論(統合版)+★2020年収録後の均等論認容判決を追記済み https://www.youtube.com/watch?v=Yl07OJMIUhg 均等論の5要件 ボールスプライン事件の最高裁判決(最高裁平成10年2月24日第三小法廷判決) 1.特許発明の構成中、対象製品等との相違部分が特許発明の本質的部分ではないこと。(非本質的部分) 2.相違部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達成することができ、同一の作用効果を奏すること。(置換可能性、作用効果の同一性) 3.相違部分を対象製品等におけるものと置き換えることが、対象製品等の製造等の時点において容易に想到できたこと。(置換容易性) 4.対象製品等が、特許発明の出願時における公知技術と同一、または公知技術から容易に推考できたものではないこと。 5.対象製品等が特許発明の出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情がないこと。 本判決~知財高判(大合議)平成28年3月25日(平成27年(ネ)第10014号) 第1~3要件 ⇒ イ号が特許発明と均等であると主張する者が主張立証責任を負う 第4~5要件 ⇒ イ号について均等の法理の適用を否定する者が主張立証責任を負う (⇒従前からの、下級審裁判例・多数説・最高裁判例解説と同じ。) 第1要件(非本質的部分) 「特許法が保護しようとする発明の実質的価値は,従来技術では達成し得なかった技術的課題の解決を実現するための,従来技術に見られない特有の技術的思想に基づく解決手段を,具体的な構成をもって社会に開示した点にある。したがって,特許発明における本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分である…。 そして,上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて,特許発明の課題及び解決手段 …とその効果…を把握した上で,特許発明の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定することによって認定されるべきである。すなわち,特許発明の実質的価値は,その技術分野における従来技術と比較した貢献の程度に応じて定められることからすれば,特許発明の本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載,特に明細書記載の従来技術との比較から認定されるべきであり,そして,①従来技術と比較して特許発明の貢献の程度が大きいと評価される場合には,特許請求の範囲の記載の一部について,これを上位概念化したものとして認定され(…訂正発明はそのような例である。),②従来技術と比較して特許発明の貢献の程度がそれ程大きくないと評価される場合には,特許請求の範囲の記載とほぼ同義のものとして認定されると解される。」 第2要件(作用効果の同一性) 「(2)特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品等と異なる部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏すること …対象製品等において、『特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏する』かどうかは、特許発明の出願前の公知技術と特許発明とを対比して、従来技術では解決できなかった課題であって、当該特許発明により解決されたものを、対象製品等が解決するものであるかどうかにより決せられる。 すなわち、ここでいう特許発明の『目的』や『作用効果』は、あくまでも特許発明の出願時における従来技術と特許発明との対比により確定されるものであって、基本的には、明細書の『発明の詳細な説明』欄における『発明が解決しようとする課題』や『発明の効果』の項の記載に基づいて確定されるべきものである。 この際、明細書に記載された特許発明の作用効果のうち、当該課題の解決に加えて更に付加して認められる作用効果や実施例に特有の作用効果までも、本要件にいう特許発明の『目的』や『作用効果』として要件(2)の存否を判断するのは、相当ではない。そのように特許発明における課題の解決を超えた付加的作用効果や実施例に特有の効果までも対象製品等が同様に実現することを求めたのでは、均等の成立する余地がほとんどなくなってしまう。…」 第3要件(置換容易性) 均等論第3要件を認めた殆どの判決が、「進歩性の容易想到性と同じ枠組み」で判断している。均等論第3要件を認めなかった判決は、「当業者であれば誰もが、特許請求の範囲に明記されているのと同じように認識できる程度の容易さ」、という厳しい判断基準が形式的に適用される場合が多い。 『第3要件にいう「当業者」が「対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができた」とは,特許法29条2項所定の,公知の発明に基づいて「容易に発明をすることができた」という場合や第4要件の「当業者」が「容易に推考できた」という場合とは異なり,当業者であれば誰もが,特許請求の範囲に明記されているのと同じように,すなわち,実質的に同一なものと認識できる程度に容易であることを要するものと解すべきである(東京地裁平成3年(ワ)第10687号…参照)。』 第5要件(意識的除外)
弁護士・高石秀樹の特許チャンネル ++均等論(統合版)+2020年収録後の均等論認容判決を追記済み https://www.takaishihideki.com/_files/ugd/324a18_549d5d6c73cb44d5869d67fd45ea5536.pdf 近時の裁判例から見る均等論 https://yorozuipsc.com/blog/2632196 国際知財司法シンポジウム2020 裁判所パート 均等論の実情 https://yorozuipsc.com/blog/20204077078 特許クレーム解釈と均等論 https://yorozuipsc.com/blog/6403654 10月29日付けで、「弁護士・高石秀樹の特許チャンネル」で、『【特許】近時の(特許)重要裁判例20選(2022年9月収録)「すごい知財EXPO2022」で放映した動画の完全版』がYouTubeにアップされています。(約1時間)
<目次>
4.先使用権(+公然実施発明との対比) 5.特許法104条(新規物質の生産方法の推定) 6.均等論(第3要件、第5要件。第2要件) 7.譲渡の申し出(日本国内譲渡を国外で申し出) 8.諸外国移行を念頭においた出願戦略(優先基礎出願明細書の工夫) 9.特許権侵害と、取締役の個人責任(会社法429条1項) 10.共同侵害 11.特許権行使と独占禁止法 12.外国サーバと日本国内における実施 13.消尽論の日米比較 14.クレーム文言の工夫<12選>まとめ 【特許】近時の(特許)重要裁判例20選(2022年9月収録)「すごい知財EXPO2022」で放映した動画の完全版 https://www.youtube.com/watch?v=jTjDl9d8dFI サムスン幹部が「海外での特許紛争問題とこれに対する企業対応戦略」パネル討論において、「(企業が)良い特許を持っていても活用に失敗した事例がある」として日本シャープを挙げ、「シャープは良質特許を多数保有するも活用できず、うちに負けた」と言っているという記事が出ていました。
それ自体は、日本の知財関係者の間ではよく知られていることですが、韓国側の当事者の言葉として語られたので記事になったということでしょうか。 対極に、アップルがあります。「日本企業の轍は踏まず──サムスンを訴え続けるApple」という記事参照。 サムスン幹部「シャープは良質特許を多数保有するも活用できず、うちに負けた」 2022年10月24日 https://korea-economics.jp/posts/22102414/ 韓国のサムスン電子の子会社であるサムスンディスプレイが、かつて日本のシャープが良質な特許を多数保有していたにも関わらずこれをうまく活用できず、当時サムスンとの間で繰り広げられたLCD事業の競争において、その格差を埋めることができなかったことを明らかにした。 ウ・ギョンイク=サムスンディスプレイグループ長は去る21日、ソウル龍山で開かれた韓国知識財産協会(KINPA)カンファレンスの「海外での特許紛争問題とこれに対する企業対応戦略」パネル討論において、「(企業が)良い特許を持っていても活用に失敗した事例がある」として日本シャープを挙げた。 液晶表示装置(LCD)市場でシャープより後発走者だったサムスン電子は2000年代初頭からLCD特許出願と売上でシャープを上回り始め、10余年後の2012年には格差を大きく広げた。 ウ・ギョンイク氏は「シャープは2000年まででも技術や特許、ビジネス(事業)の面でサムスンよりはるかに優位にあった」とし、「サムスンがシェアを拡大するのを防ぐために遅れて訴訟を起こした」と説明した。 続いて「サムスンも(シャープを相手に)カウンター訴訟を仕掛けて熱く戦った結果、(シャープは)サムスンから少ないロイヤルティを受けて(交渉)妥結をした」とし「結局、サムスンに事業の自由度を与えることになって既に行われた(LCD)事業の格差を取り戻すのは難しかった」と述べた。 日本企業の轍は踏まず──サムスンを訴え続けるAppleの覚悟 なぜAppleはサムスンと特許訴訟で和解しないのか。日本の電機メーカーの失敗を教訓にしているかのような動きだ。 2014年7月19日 https://www.gqjapan.jp/life/business/20140719/apple-samsung-war シスメックスの知的財産活動は、「当たり前のことを当たり前にやっているだけ」ということです。しかし、なかなかそれがうまくできないのが常なのにできているのは、「経営に資する知財活動を行うこと、知財活動が企業価値(株価時価総額)を上げることを究極の目的としていることを社内に周知」、そういうカルチャーを長年かけて培ってきた賜物なんだろうと思います。
昨年のコーポレートガバナンスコード改訂以来の「知財・無形資産への投資の開示」の動きにしたがってシスメックスの知財・無形資産投資の開示をみると、それほど開示されていません。「知財・無形資産への投資」は従来からやっておりしっかり儲かる仕組みができているので、「取らぬ狸の皮算用はやりません」と言っているようにも見えます。 シスメックスのESG・サステナビリティの取り組みは?配当情報も【2022年10月】2022.10.23 https://hedge.guide/feature/sysmex-esg-dividend-2210.html 知財投資に対する情報開示で 企業の儲ける力を強化する https://mkt.ub-speeda.com/rs/550-EMV-558/images/20210916_WP_SPEEDAH2H.pdf シスメックスは、「知的財産活動は研究開発と事業展開の自由度を確保し経営に資することを目的とする」を知的財産活動の基本理念を定めており、『知財活動によって企業価値(株価時価総額)を上げることを究極の目的としていることを社内に宣言し周知しています。』 『知財活動は最小の投資で最大の事業効果を得ることが大原則』 『知財投資の効果として、知財権の活用によりどれだけの経営数字を得たか、将来どれだけのキャッシュが得られるかが重要』 『当社は知財レビューにより、事業リスクの最小化や、競争力の強化、成長に繋がる知財活動ができているかどうか常に監視。このような知財活動を行うことで、安定したキャッシュの獲得と、さらなるキャッシュの増加を目指しています。』 『知財部門は各事業部門の活動を知財プロフェッショナルとして支え』『製品が世に出るまでの各フェーズにおいて、知財レビューをシステマティックに実施』『すべてのフェーズで知財マターを明らかにして勝つシナリオを作り、次のフェーズに進むことを厳格に実施』 コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2022年7月14日更新) https://www.sysmex.co.jp/corporate/governance_j.pdf シスメックスレポート 2022 https://www.sysmex.co.jp/ir/library/annual-reports/Sysmex_Report_2022.pdf シスメックス サステナビリティデータブック 2022 https://www.sysmex.co.jp/csr/report/sustainability2022_all.pdf シスメックスの知的財産活動 https://www.sysmex.co.jp/rd/ip/index.html シスメックスのオープンイノベーション https://yorozuipsc.com/blog/4519841 経営・事業戦略に貢献する知財価値評価と効果的な活用法 発刊:2021年3月31日 体裁: A4判 685頁 定価:88,000円(税込) ISBN:978-4-86104-833-3 https://www.gijutu.co.jp/doc/b_2092.htm 第3章 知財力強化のための知財戦略の策定、体制整備とその運営 第7節 シスメックスにおける知的財産戦略と戦略実現のための環境整備、人材の育成 1.知的財産戦略の考え方 1.1 企業理念との関係 1.2 知的財産活動の基本理念 1.3 経営に資する知財活動 1.3.1 経営層の求めていることの理解 1.3.2 実践している知財活動の適切な「報告」 1.3.3 知財活動に満足していただく 2.検体検査分野の競争環境 3.知財戦略の立案 3.1 知財はビジネスのルールであり競争のツールである 3.2 第三者特許に対する戦略 3.3 自社特許に対する戦略 3.4 オープンイノベーション・アライアンスに対する考え方 3.5 商標に関する戦略 4.知財戦略実践のための環境整備と人材育成 4.1 環境整備 4.1.1 社内環境整備 4.1.2 社外環境整備 4.2 人材育成 4.2.1 知財部員に対する教育 4.2.2 全社員(知財部員以外)への教育 三菱電機が10月20日公表した、品質不正問題についての外部調査委員会の最終報告では、煩雑な検査が人手で行われ、不正の温床となってきたことが指摘されています。
また、2022年4月に三菱電機に入社された、三菱電機 常務執行役 CPO(ものづくり担当)、CQO(品質改革推進本部長)の中井良和氏が『「2022年4月に入社してから各製作所を回ったが、やらなくてもいいことにリソースを使っていることが問題の要因になっているのではないかと感じた。従業員は不正をやりたくてやっているのではなく、やらざるを得ない環境下にあっただけだろう。現場の環境整備こそが解決策に他ならない」と強調』されているのが印象的でした。 知財の分野で先進的な取り組みをおこなっている三菱電機です。品質風土・組織風土・ガバナンスの3つの改革の徹底による再発防止を期待しています。 三菱電機、DXの欠如が品質不正の温床に 調査委が最終報告 2022.10.24 https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00304/102400099/ 『三菱電機は10月20日、品質不正問題について、弁護士らでつくる外部調査委員会の最終報告を公表した。1年4カ月にわたる調査で浮き彫りになったのは、煩雑な検査が人手で行われ、不正の温床となってきたことだ。企業に促してきたDX(デジタルトランスフォーメーション)が、社内では欠如していたといえる。』 『デジタル化できるにもかかわらず、多くの現場で人力による作業が残っていた。漆間啓社長は、出荷量の少ない製品を扱う受注生産の製作所や、量産する一部の製作所でも「検査ツールが導入されていないケースがあった。自動化が進まないなかで不正が行われてきた」と語った。鉄道車両部品を生産する伊丹製作所(兵庫県尼崎市)、長崎製作所(長崎県時津町)で見つかった不正は全196件のうち44件に上った。DXが進んでいない現場で不正が多い傾向があった。 三菱電機は検査部門などで21年10月から、従来人力で実施してきた計測と結果入力を自動化させるシステムを順次導入し始めた。23年度上期までに計300億円を投じる。 顧客と契約した内容に沿って検査の方法などを定めるときに、これまで人が介在してエクセルなどでデータを集計していたが、一元的にシステムで管理できる体制に変更する。品質担当役員は「人手での作業はすべて排除したい」と話した。』 『DXが不十分なために、不正の温床が維持される――。日本の経営者らは改めてDXの重要性について考えるべきだ。』 当社における品質不適切行為に関する原因究明及び再発防止等について(総括) https://www.mitsubishielectric.co.jp/news/2022/pdf/1020-a1.pdf 三菱電機が品質不正の調査を終了、総数197件に上り柵山前会長も課長時代に関与 https://news.yahoo.co.jp/articles/17f15017fb654b7dd523c590ee56c42ed4ca0b56?page=3 三菱電機 常務執行役 CPO(ものづくり担当)、CQO(品質改革推進本部長)の中井良和氏は「2022年4月に入社してから各製作所を回ったが、やらなくてもいいことにリソースを使っていることが問題の要因になっているのではないかと感じた。従業員は不正をやりたくてやっているのではなく、やらざるを得ない環境下にあっただけだろう。現場の環境整備こそが解決策に他ならない」と強調する。 三菱電機「オープンテクノロジーバンク」の取り組み https://yorozuipsc.com/blog/3629233 「言ったもん負け」の縦割り文化を「知財」を武器に打破する三菱電機 https://yorozuipsc.com/blog/5193860 三菱電機「OPEN TECHNOLOGY BANK」活動開始 https://yorozuipsc.com/blog/open-technology-bank 「製造業における共存共栄の関係構築を目指して」(柵山正樹三菱電機株式会社取締役会長) https://yorozuipsc.com/blog/6159091 三菱電機、海外発の特許出願増やす https://yorozuipsc.com/blog/8238941 『弁護士・高石秀樹の「特許」チャンネル』で、『特許の現在地(10分短縮版)』がYouTubeで公開されています。
前半が、経営層向けの特許出願戦略、後半が、知財部向け特許制度の現状と活用指針となっています。個々の動画が別にアップされていますので、詳細はそちらで、となっています。 資料は、pdfとして公開されています。 【付加価値】特許の現在地(10分短縮版)~<前半>経営層向けの特許出願戦略、<後半>知財部向け:特許出願の傾向にみる、特許制度の現状。実業における、特許制度の活用指針(2022版) https://www.youtube.com/watch?v=X_BrJa_84ME&t=0s <目次> 1.はじめに 2.特許制度概論(+IPランドスケープ)(「オープン・クローズ戦略」は省略) ⇒コーポレートガバナンス(CG)コードを踏まえた、意思決定者が把握すべき知財 3.強い(特許を取れる)発明(パイオニア発明)=将来のイ号製品を捉える分割出願を可能とする当初明細書 4.技術分野別の特許出願戦略(IT、医薬・バイオ) 5.特許戦略レベルの重要判決(等)+特許以外の知財に関する重要ポイント 6.発明の「解像度」(★) ⇒特許要件を踏まえた「明細書に記載された発明の解像度」 7.特許出願後、出願日の優先権を確保したまま、競合他社の実施品を見た後に、別の発明を権利化する余地(『オプション権』)を確保する出願戦略(★) ⇒分割出願戦略(裁判例に見る「新規事項追加」) ⇒諸外国移行を念頭においた出願戦略(優先基礎出願明細書の工夫/諸外国の実務) 8.特許出願価値を最大化するための、その他の工夫(多種多様な小技) 弁護士・高石秀樹の「特許」チャンネル 特許の現在地 ※特許出願の傾向にみる、特許制度の現状。 実業における、特許制度の活用指針(2022版) https://www.takaishihideki.com/_files/ugd/324a18_491543f63dab4471ae743b34e4910d85.pdf |
著者萬秀憲 アーカイブ
July 2025
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