11月29日に、大阪弁護士会の2021年知的財産シンポジウム「発明の進歩性に関する裁判例の動向と今後の課題~近時の最高裁判例と知財高裁大合議判決を踏まえて~」がありました。
「知財訴訟における進歩性判断の手法について~近時の裁判例を踏まえて~」と題する清水節弁護士(元・知的財産高等裁判所長)の基調講演は、進歩性判断の基本手順、拒絶査定審決や特許無効審決の取消訴訟における審決取消事由としての主張(侵害訴訟における無効の抗弁への反論も同様) を具体例についても説明され、化合物の医薬用途に係る特許発明の進歩性の有無に関し当該特許発明の効果が予測できない顕著なものであることを否定した原審の判断に違法があるとされた事例として「局所的眼科用処方物事件」最高裁判決(最三判R1.8.27)について説明されました。裁判所が進歩性をどう判断しているか、わかりやすい説明でした。 はじめに 第1 進歩性(非容易推考性)判断の基本手順 第2 具体的主張 第3 「局所的眼科用処方物事件」最高裁判決(最三判R1.8.27)について 第4 権利行使の場面との調整 パネルディスカッションでは、下記のテーマでディスカッションが行われました。 序論-進歩性の判断の傾向と裁判所の判決の影響 進歩性の判断枠組と引用発明の認定(ピリミジン誘導体事件の知財高裁大合議判決を中心に) 進歩性判断における課題の位置づけ 顕著な効果の法的な位置づけと判断基準(局所的眼科用処方物事件の最高裁判決を中心に) 公然実施発明に基づく進歩性判断 印象に残ったのは、正確性には欠けますが、かきのようなやり取りのところでした。 小松陽一郎弁護士の質問「主引用例に何を持ってくるのかというとき、一致点の多い方を選ぶ、課題の共通性のある方を選ぶ、裁く法はどちらが良いという感覚を持っておられるのか」 清水弁護士「特許庁は技術課題に共通性があるのを優先している、相違点はひとつひとつつぶしていく、それで良いのかなと思っている」、杉浦部総括判事「相違点がいっぱい並んでいると進歩性有りという方向にいきやすい、課題の共通性同一性があると本件発明と主引用発明が近づいていくということで、そのあたりをこうりょしてほしい。」、青木弁理士「引用文献を少なくしたいので構成の違いの少ない方をとる」、小松弁護士「構成の違いの数が少ない方が良いと思っている」 岩坪弁護士の質問「令和元年の最高裁判決が審査基準に影響しているか」 清水弁護士「判決に基づいて審査基準を見直すかどうかの検討委員会があり、変えた方が良いのではと言ったが、審査基準を変えたくなかったよう。」前田教授「審査基準は多義的に読めるので変えた方が良いと言ったが変わらなかった。」青木弁理士「今の審査基準で最高裁判決は取り入れているというのが特許庁の見解」 2021年大阪弁護士会 知的財産シンポジウム 発明の進歩性に関する裁判例の動向と今後の課題~近時の最高裁判例と知財高裁大合議判決を踏まえて~2021.11.29 場所:大阪弁護士会館2階ホール (オンライン同時配信) https://www.osakaben.or.jp/event/2021/2021_1129_03.php 発明の進歩性は、特許要件の中でも最も重要な要件の1つであり、特許権侵害訴訟や審決取消訴訟においても、争点となることが多い事項です。また、日々の特許出願に際して も、進歩性の有無の判断に迷うケースは多いのではないかと思います。 進歩性に関しては、ピリミジン事件の知財高裁大合議判決(知財高判平成30年4月13日、平成28年(行ケ)10182号、10184号)において、進歩性の判断枠組や引用発明の認定に関する一定の指針が示されました。また、「ヒトにおけるアレルギー性眼疾患を処置するための点眼剤」事件の最高裁判決(最判令和元年8月27日、平成30年(行ヒ)第69号)では、発明の顕著な効果に関する最高裁の判断が示されており、注目を集めています。 本シンポジウムでは、上記の知財高裁大合議判決の裁判長をされた清水節弁護士(元・知的財産高等裁判所長)に基調講演をしていただいた後、後半のパネルディスカッションでは、弁護士、裁判官、学者の先生、企業の知財担当者も交えて、発明の進歩性に関する裁判例の動向と今後の課題に関し、議論をさせていただきます。 第1部 基調講演 清水 節(弁護士、元・知的財産高等裁判所長) 第2部 パネルディスカッション パネリスト: 清水 節(弁護士、元・知的財産高等裁判所長) 杉浦 正樹(大阪地方裁判所第26民事部(知的財産専門部)部総括判事) 前田 健(神戸大学大学院法学研究科 教授) 青木 潤(弁理士、積水ハウス株式会社) 重冨 貴光(大阪弁護士会会員 弁護士) 速見 禎祥(大阪弁護士会会員 弁護士) コーディネーター: 山田 威一郎(大阪弁護士会会員 弁護士) キックオフスピーカー: 冨田信雄、白波瀬悠美子、甲斐一真、佐野みず紀 (大阪弁護士会会員 弁護士)
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12月2日と3日に、WIPOオンラインシンポジウム「グローバルな時代におけるイノベーション」が開催されます。
本シンポジウムでは、中小企業のグローバルな競争力強化、オープン・イノベーション、SDGsなどの視点から、イノベーション・サイクル活性化に資する知財管理を行うためのWIPO提供ツールの紹介、「日本がイノベーションを生み出すために」とのテーマの下でのパネルディスカッションなどがおこなわれるとのことです。 ◆シンポジウム:グローバルな時代におけるイノベーション (Symposium on IP for Innovation in the Global Age) ◆ 【日時】 1日目:2021年12月2日(木) 16:00開始(日本時間) 2日目:2021年12月3日(金) 16:00開始(日本時間) 【開催形式】 オンライン(Zoom) 【参加方法】 事前登録制(無料) https://wipo-int.zoom.us/webinar/register/WN_Igm7684_Q1Cwq0DRxn6P9w 【言語】日本語・英語(同時通訳) 【プログラム概要】 https://www.wipo.int/sme/ja/news/2021/news_0005.html <12月2日(木)> 1.開会挨拶 澤井 智毅 (WIPO日本事務所長) 2.基調講演 荒井 寿光 氏 (日本商工会議所 知的財産専門委員会委員長、元内閣官房・知的財産戦略推進事務局長) 3.SMEを取り巻く市場動向解説 ・導入 Guy Pessach (WIPO知的ビジネス部門及び知財イノベーション・エコシステム部門ディレクター) ・ソニーのデジタルストーリープロジェクト Donna M. A. Hill (WIPO for Creatorsマネージャー) ・知財診断ツールとスタートアップ向けガイドブック Tamara Nanayakkara (WIPO知的ビジネス部門及び知財イノベーション・エコシステム部門カウンセラー) 4.日本のSMEの知財活動の活性化に向けて ・知財分野における日本商工会議所の取り組み 山内 清行 氏 (日本商工会議所 産業政策第一部 部長) ・AI・IoTベンチャーOPTiMの知財を活用した第4次産業革命への挑戦 菅谷 俊二 氏 (オプティム株式会社 代表取締役社長) 5.イノベーションのエコシステムに向けて、スタートアップ成功国カナダより学ぶ Neil Henderson 氏 (Amork IP Inc. 代表 兼 創業者) 6.竹中 平蔵 氏 (慶応大学名誉教授、世界経済フォーラム理事、GII諮問委員)インタビュー <12月3日(金)> 7.環境と知財 ・グリーン技術を持つSMEの知財管理 Trod Lehong 氏 (AfriqInnov8 ディレクター) Anja von der Ropp (WIPO気候変動・食糧安全保障担当 シニア・プログラム・コーディネーター) ・石油を使用しない100%天然バイオマス系生分解性プラスチックや脱炭素社会構築に向けた最先端材料、技術 森 良平 氏 (GSアライアンス株式会社 代表取締役) ・研究開発と海外展開,そのIP戦略と課題 藤田 香 氏 (日之出産業株式会社 取締役) 8.グローバルな知財活用に向けて ・特許出願に関する技術者兼CEOの考察 Alessandro Ferretti 氏 (TRE ALTAMIRA Srl CEO 兼 法務代表) ・DuPontのイノベーションと知的財産活用 千田 拓也 氏 (DuPont de Nemoursグループ会社 Senior Intellectual Property Counsel) 9.パネルディスカッション「日本がイノベーションを生み出すために」 [モデレーター] 澤井 智毅 (WIPO日本事務所長) [パネリスト] 久貝 卓 氏 (日本商工会議所 常務理事) 渋谷 高弘 氏 (日本経済新聞社 編集局 編集委員室 編集委員) 西垣 淳子 氏 (独立行政法人経済産業研究所 上席研究員) 10.閉会挨拶 Guy Pessach (WIPO知的ビジネス部門及び知財イノベーション・エコシステム部門ディレクター) 【主催】 世界知的所有権機関(WIPO)日本事務所 世界知的所有権機関(WIPO)知財ビジネス部門 パテント別冊第26号の「特許適格対象の画定における物の本来の機能論の意義」と題する東京大学大学院法学政治学研究科 田村善之 先生の論説を読み、平成29年(行ケ)第10232号(ステーキ提供システム)を読み直しました。
本判決では、本件特許発明1の構成要件Aであるステーキの提供方法に関しては「実質的な技術手段を提供するものということはできない」と発明該当性を認めていません。そして、「札」、「計量器」及び「シール(印し)」の技術的意義により、「札」、「計量器」及び「シール(印し)」という物を含む「ステーキの提供システム」に関して発明該当性を認めています。 「発明該当性」に係る「自然法則の利用性」についての実務上の判断は、特許庁編・特許実用新案審査基準,第Ⅲ部第2章2.1.4に書かれているように、 「発明特定事項に自然法則を利用している部分があっても、請求項に係る発明が全体として自然法則を利用していないと判断される場合は、その請求項に係る発明は、自然法則を利用していないものとなる。 逆に、発明特定事項に自然法則を利用していない部分があっても、請求項に係る発明が全体として自然法則を利用していると判断される場合は、その請求項に係る発明は、自然法則を利用したものとなる。 どのような場合に、全体として自然法則を利用したものとなるかは、技術の特性を考慮して判断される。」 との審査基準に基づいて、発明が全体として自然法則を利用しているか否かとの観点から判断されていて、特許庁審決と知財高裁判決とも、この判断手法によって判断していますが、「札」,「計量器」及び「シール(印し)」の技術的意義をどのようにとらえるかという点では、審決と判決が真逆の結論を出しているという理解をしていました。 すなわち、 審決が、本件特許発明1における「札」、「計量器」及び「シール(印し)」をそれぞれ独立して存在している物として持っている本来の機能の一つの利用態様が示されていると判断したのに対して、判決は、いずれもが他のお客様の肉との混同を防止するという効果との関係で技術的意義を有し、他のお客様の肉との混同を防止するという効果が、本件特許発明1の「お客様に好みの量のステーキを安価に提供する」という課題の解決に直接寄与していると判断し、結果、発明該当性の結論において真逆の結論が生じたと理解していました。 ただ、明細書に記載された、発明の技術的課題、その課題を解決するための技術的手段の構成及びその構成から導かれる効果等の技術的意義に照らして、発明が全体として「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するということができるか否かは、発明や明細書の記載などの個別事情によるところが大きいため判断が難しく、予測可能性に課題があるという捉え方です。 実務上は、「全体として」自然法則を利用していないと判断された判例,及び,「全体として」自然法則を利用していると判断された判例を解析して、どう有利に導く明細書の記載にするかというテクニックを磨くことになります。 「現在の運用の最大の問題点は,むしろ,冒頭で指摘したようにクレイム・ドラフティングで容易に克服可能であるために,発明の定義規定や自然法則の利用の要件においていかなる立場をとろうとも,それが特許の保護対象を限定する機能を果たし得ないところにある。」という視点からの議論は、裁判所と特許庁の枠組みの実務の中でどう対応するかという頭になっていると、ハッとする議論で、プロパテントではなくプロイノベーションの立場で考えることの重要性に思い至りました。 パテント別冊第26号P1「特許適格対象の画定における物の本来の機能論の意義」(東京大学大学院法学政治学研究科 田村 善之 教授) https://www.jstage.jst.go.jp/article/patentsp/74/26/74_1/_pdf/-char/ja 目 次 1 問題の所在 2 事実上の特許適格性の否定とその終焉 3 いきなりステーキ事件特許庁異議申立審決定 4 従前の裁判例 5 いきなりステーキ事件知財高裁判決 6 自然法則の利用の要件の意義 1)序 2)自然法則の利用の要件の淵源 3)アプローチの仕方 4)自然法則と関わり合いのないものを特許適格対象から外す機能 5)自然法則とその利用を分ける意義に対する疑問 6)人の行動の自由を確保する機能 7)自然法則に反するものを特許適格対象から外す機能 8)機械または変化基準 7 二つの対応策 1)特許庁の実務の問題点 2)対応策その 1:発明の定義規定の枠内による処理 3)対応策その 2:進歩性要件による処理 8 むすび 知財実務オンライン (番外編)いきなり!ステーキの知財高裁判決の検討から、ビジネスモデル特許の今後の明細書の書き方を考える https://www.youtube.com/watch?v=whZh4VewnD4 データ駆動型社会への移行により、データの重要度や注目度はますます上昇していますが、別冊パテント74 巻 26 号の『「データ(構造)」の特許法における保護』(下萩原 勉氏)では、データ(構造)の特許法における保護に関して、審査基準や審査ハンドブックを整理され、発明該当性による拒絶査定が取り消された審決事例(不服 2018-2483)を取り上げて検討されており、最近のデータ関連発明の審査における「データの有する構造がコンピュータによる情報処理を規定しているとはいえない」、「データ要素の内容を定義したものに過ぎず人為的な取り決めに止まる」、「どのような「構造」を有する「データ」なのか不明である」などの拒絶理由に対する対応の仕方やクレームドラフティングの際の注意事項にも触れられていますので、参考になります。
下萩原 勉 「データ(構造)」の特許法における保護 別冊パテント74 巻 26 号 p. 121-135 (2021) https://www.jstage.jst.go.jp/article/patentsp/74/26/74_121/_pdf/-char/ja 1.はじめに 2.審査基準や判例等 2.1. 審査基準と審査ハンドブック 2.2. 関連する判例 (1)カラオケビデオ事件(平 9(行ケ)206 号) (2)「知識データベース」事件(平 26(行ケ)10014 号) 3.データ関連出願の動向 3.1.データ関連出願の動向 3.2.データ関連出願の審決・判例 4.審判事例(不服 2018-2483) 4.1.事例の概要 4.2.考察 (1)事例における対応 (2)データ関連発明の発明該当性の判断について 5.おわりに JPO、CNIPA、KIPO間の審判分野における協力を促進し、情報交換や制度・運用の相違に関する分析を進め、相互理解を深める等の目的で、ユーザーが各国の審判制度についての理解を深められるよう、三庁は、各国の審判制度・運用に関する比較研究を行っているとのことで、この度、「口頭審理に関する比較研究」が公表されました。
各国における口頭審理の実情がわかりやすく整理され比較されており、参考になります。 日中韓における口頭審理に関する比較研究(第7回日中韓審判専門家会合 2020 年 11 月 20 日、Web 会議)2021 年 11 月公開 https://www.jpo.go.jp/news/kokusai/nityukan/document/nicyukan_shinpan_hikakuken/study-on-oral-proceedings-ja.pdf 目次 はじめに 第1章 各国における口頭審理の特徴点と対比 1.口頭審理の一般的な制度について 2.オンライン口頭審理について 第2章 各庁の制度や運用についての対比表 第3章 各国の口頭審理の概要.
東京工業大学主催、東北大、名古屋大学共催で「国立大学経営改革促進事業シンポジウム~世界最高水準の教育研究の展開へ向けて~」が11月30日オンラインで開催されるとのことです。(申込締切:11月29日、参加費 無料)
大学経営のあり方が社会から問われている中、どう改革しようとしているか、その方向が示され、各大学の取組みが紹介されます。産学連携の相手先でもある大学の今後を知る良い機会にもなるでしょう。 2021年11月30日(火)13:15 - 17:35 プログラム 12:30 - 13:15 受付 13:15 - 13:20 開会挨拶 益 一哉(東京工業大学学長) 13:20 - 13:45 来賓挨拶 甘利 明(衆議院議員) 渡海 紀三朗(衆議院議員) 後藤 茂之(衆議院議員) 増子 宏(文部科学省高等教育局長) 13:45 - 14:00 国立大学経営改革促進事業の成り立ちと今後の展開 上山 隆大(総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)常勤議員) 14:00 - 15:35 パネルディスカッション「国立大学法人における経営改革の主眼」 パネリスト 大野 英男(東北大学総長) 松尾 清一(名古屋大学総長) 永田 恭介(筑波大学学長) 上山 隆大(総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)常勤議員) 益 一哉(東京工業大学学長) ファシリテーター 佐藤 勲(東京工業大学総括理事・副学長) 15:35 - 15:45 休憩 15:45 - 17:30 国立大学経営改革促進事業採択校による取組紹介 東北大学、筑波大学、東京大学、名古屋大学、京都大学、九州大学、北海道大学、東京工業大学、大阪大学 17:30 - 17:35 閉会挨拶 堀野 晶三(文部科学省国立大学法人支援課長) https://www.titech.ac.jp/event/2021/062334?fbclid=IwAR3UGyp5S-Q2Con6SqoMv4B3aG3HODz7ZWOp3c80Kp49gmlC0MdWZhmr3UQ 他社の特許を侵害したことで倒産した会社のことなど聞いたことがないという人が多いのに驚きますが、他社の特許を侵害したことで倒産した会社の取締役が損害賠償を求められた訴訟で、令和3年9月28日、大阪地方裁判所は被告らに監視・監督義務があるとして1億円を超える損害賠償を認めました。
本件は、知財高裁特別部で判断された「二酸化炭素含有粘性組成物事件」の原告が、侵害事件で勝訴しましたが、被告会社が破産したため、実質経営者である取締役に対して訴訟を起こしたものです。 本件被告らは、特許事務所から非侵害の鑑定書を取得していたこと等を主張し、自らが取締役として求められる調査義務を尽くしており妥当な根拠に基づいた合理的な判断をした旨、あるいは、特許権侵害には当たらない、非侵害鑑定書も取得している等の説明を受けていたものであり、非侵害の確信をすることは無理からぬことだった、あるいは、自らは名目上の取締役にすぎなかったので責任を負わない、等と主張しましたが、その主張は認められませんでした。 他社の知的財産権を侵害する知財リスクについては、まだまだ啓蒙が必要な状況にあるのかもしれません。 令和1(ワ)5444 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 令和3年9月28日 大阪地方裁判所 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/602/090602_hanrei.pdf 特許権侵害と会社法429条1項 https://nsipat.com/blog_inner/%E7%89%B9%E8%A8%B1%E6%A8%A9%E4%BE%B5%E5%AE%B3%E3%81%A8%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E6%B3%95429%E6%9D%A11%E9%A0%85/ 2021.09.28 「メディオン v. P1・P2・P3・P4」 大阪地裁令和元年(ワ)5444 https://www.tokkyoteki.com/2021/11/2021-09-28-r1-wa-5444.html 他社の特許を侵害したことで倒産した会社のことなど聞いたことがないという人が多いのに驚きます。
最近、特許権侵害訴訟で負けたことが主な原因で倒産した会社についての報道がありました。 2020年2月、知的財産高等裁判所(特別部)の大合議により製品の譲渡等の差し止めと製品の廃棄、さらに約4億4000万円もの賠償金の支払いを命じる判決が下り、高裁判決後には売掛金の差し押さえが仮執行されたことにより資金繰り悪化に拍車がかかり、2021年4月には最高裁への上告受理が退けられ巨額の賠償債務を負うことが確定、事業継続が困難になる恐れがあることから、民事再生法の適用による再生の道を選択したとのことです。 2017年3月期の売上高が約15億円という会社にとって、特許による特長が製品の一部にしかない場合でも販売で得られたはずの利益全額を権利者の逸失利益として推定できると判断して高額な損害賠償金を認定したこの判決には納得できない部分もあるようです。 また、その他にも、今年は任天堂がコロプラを訴えた特許権侵害訴訟が和解金33億円で決着した事件もありました。 こうした損害賠償金額の高額化を危惧する見解も一部にはあるようですが、他社の知的財産権を侵害する知財リスクについては、まだまだ啓蒙が必要な状況にあるのかもしれません。 ただの“揉め事”ではない、知財リスクが引き起こした倒産劇の顛末 https://news.yahoo.co.jp/articles/fbf873f0005e0c465e55a6964b6c6280e17e87b5 美顔ローラーのファイブスター、再生手続決定 特許権侵害の賠償金影響か https://www.esthe.media/news/5054 美容ローラー特許侵害確定 4億4千万円賠償命令 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE15B360V10C21A4000000/ 美容器特許、4.4億円賠償命令 https://digital.asahi.com/articles/DA3S14384159.html 任天堂とコロプラの特許権侵害訴訟が和解で決着:和解金33億円は安いのか https://news.yahoo.co.jp/byline/kuriharakiyoshi/20210812-00252868 Japio YEAR BOOK 2021に「企業知財部員による情報活用の研究についての紹介」(一般社団法人日本知的財産協会 情報活用委員会委員長 石井 良明 氏)が掲載されており、日本知的財産協会情報活用委員会の2020年度、2021年度の研究内容が紹介されています。
詳細は「知財管理」誌に掲載されているので、そちらを読むとしても全体像がコンパクトに書かれています。 企業知財部員による情報活用の研究についての紹介 一般社団法人日本知的財産協会 情報活用委員会委員長 石井 良明 氏 https://japio.or.jp/00yearbook/yearbook2021.html 1 はじめに 2 2020年度の活動内容について 2.1 知財情報分析におけるAI等の活用に関する研究 2.2 IPランドスケープに関する研究 (1)IPランドスケープに用いる分析手法とデータの整理 (2)新規技術創出に向けたIPランドスケープに関する調査研究 2.3 知財情報活用のためのデータサイエンス手法の研究 2.4 調査DB・分析ツール等の現状分析と環境整備 2.5 スタートアップ企業の特許情報に着目したオープンイノベーションに関する研究 2.6 外部ニーズに基づく価値提供手法に関する研究 2.7 SDGsのゴールに向けた知財情報の提供に関する研究 2.8 データベース搭載の特許スコアを活用した企業価値評価の研究 3 2021年度活動内容について 3.1 IPランドスケープについて 3.2 特許情報の有用性に関するフォアキャストとバックキャストの比較検証 3.3 知的財産の価値評価の研究 4 まとめ 2020年度業務報告2020年度専門委員会年間報告 16.情報活用委員会 http://www.jipa.or.jp/katsudou/gyoumuhoukoku/pdf/20iinkainenkan.pdf データベース搭載の特許スコアを活用した企業価値評価の研究 情報活用委員会第1小委員会 1339 知財管理 2021年10月号 http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/search/detail.php?chizai_id=43d2c6523bcdb65218efc81722d2e1ca SDGsのゴール達成に向けた 知財情報の提供に関する研究 情報活用委員会第1小委員会1193 知財管理 2021年9月号 http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/search/detail.php?chizai_id=6f623eeae5c07c00d9d77a1b8faea694 スタートアップ企業の特許情報に着目したオープンイノベーションに関する研究 情報活用委員会第1小委員会 1109 知財管理 2021年8月号 http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/search/detail.php?chizai_id=8b67b7281b33b628faf3dab24f9aa0c1 IPランドスケープに関する研究(その2)(完) 情報検索委員会 第3小委員会 389 知財管理 2021年3月号 http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/search/detail.php?chizai_id=264287226e936f4e0c65b421284b3650 IPランドスケープに関する研究(その1) 情報検索委員会 第3 小委員会 251 知財管理 2021年2月号 http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/search/detail.php?chizai_id=8821faf552b29c6ffa27e90d5b11864f AIを用いた特許調査における 業務効率化に関する研究─教師データの作り方の検討を中心に─ 情報検索委員会 第2 小委員会 88 知財管理 2021年1月号 http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/search/detail.php?chizai_id=240007287da27017b81d4f4eea940ead 特許調査におけるAI等の活用に関する研究 情報検索委員会第2小委員会 1767 知財管理 2020年12月号 http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/search/detail.php?chizai_id=cb886320b89431b372329b25eb763d7a 知財情報人材に求められる役割およびスキルに関する研究 情報検索委員会第4小委員会1598 知財管理 2020年11月号 http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/search/detail.php?chizai_id=26212e1f07c49c19b6b81f5a03c1400f 令和2年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書 経営戦略に資する知財情報分析・活用に関する調査研究報告書 https://www.jpo.go.jp/support/general/document/chizai-jobobunseki-report/chizai-jobobunseki-report.pdf 第1回IP ランドスケープセミナー https://ipeplat.inpit.go.jp/Elearning/View/Course/P_coseview.aspx#no-back Japio YEAR BOOK 2021に、特許審査ハイウェイ(PPH: Patent Prosecution Highway)に関する2つの論説が掲載されていました。「特許審査ハイウェイのこれまでとこれから」(特許庁 審査第一部調整課審査企画班長 稲垣 良一 氏)と「日印特許審査ハイウェイの現状」(アジア特許情報研究会/アイ・ピー・ファイン株式会社 中西 昌弘 氏)です。
特許審査ハイウェイは、各特許庁間の取り決めに基づき、第1庁(先行庁)で特許可能と判断された発明を有する出願について、出願人の申請により、第2庁(後続庁)において簡易な手続で早期審査が受けられるようにする枠組みで、いくつかの特許審査ハイウェイ(試行)プログラムでは、特許可能性が示されたものであれば、特定の国際調査機関が作成した見解書(WO/ISA)や特定の国際予備審査機関が作成した見解書(WO/IPEA)又は国際予備審査報告(IPER)に基づいて、知財庁に早期審査を申請することも可能(PCT-PPH)となっています。 PPHは、出願人の海外での早期権利化を容易とすると共に、各特許庁にとっては第1庁(先行庁)の先行技術調査と審査結果の利用性を向上し、審査の負担を軽減し質の向上を図ることを目的としていますが、出願人にとってのメリットは、早期審査の手続きが簡素化、オフィスアクション回数の減少による審査期間の短縮と応答コストの軽減、特許査定率の向上になります。 早期審査及び審査期間の短縮、オフィスアクション回数の減少、特許査定率の向上の効果については、特許庁のPPHポータルサイト(統計情報ページ)に掲載されており、「海外庁における特許審査ハイウェイの実効性に関する調査研究報告書」(平成31 年3 月 一般社団法人 日本国際知的財産保護協会 AIPPI・JAPAN)にも報告されており、一定の効果が確認されていますが、ほとんど効果なしという声も聞きます。 Japio YEAR BOOK 2021に掲載されていた2つの論説は、PPHが会誌されてから15年、様々な課題を抱えながらも着実に発展していることを示しています。出願人の立場としては、そのメリットを最大限生かすとともに、デメリットをしっかり認識したうえで、選択する制度だろうと思っています。 特許審査ハイウェイのこれまでとこれから 特許庁 審査第一部調整課審査企画班長 稲垣 良一 氏 日印特許審査ハイウェイの現状 アジア特許情報研究会/アイ・ピー・ファイン株式会社 中西 昌弘 氏 https://japio.or.jp/00yearbook/yearbook2021.html 特許審査ハイウェイ(PPH)について https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/soki/pph/index.html PPHポータル https://www.jpo.go.jp/toppage/pph-portal-j/ 海外庁における特許審査ハイウェイの実効性に関する調査研究報告書 https://www.globalipdb.inpit.go.jp/jpowp/wp-content/uploads/2020/02/015f4d7d3b1c33a5ebc0d55d56fe5663.pdf 将棋の世界では、19歳の史上最年少四冠が誕生し、来年1月開幕の王将戦七番勝負で五冠を目指すこととなり、大いに沸き立っています。個人の天才的な才能に加え、数年前よりトッププロ棋士を超えているという「将棋AI」を駆使して研究していることが強さの秘訣のようです。
Japio YEAR BOOK 2021への花王㈱株式会社 安藤俊幸氏の寄稿「機械学習を用いた効率的な特許調査方法 ―「人工知能」主導によるAIの特許調査への応用―」は、「将棋AI」と「特許調査AI」との比較から特許調査AIの現状に関する問題提起をしています。 安藤さんも引用している藤井聡太竜王(四冠)のAIに対する基本姿勢は参考になります。 「AIの評価値を見るうえでまず気を付けることは、それがどういうAIを使って、どれぐらい読んでいるのかというところです。いくら評価値がこうだといっても、そういう基本情報がないと、本当にそれを信じていいのかは、全然わからないものなので、まずはそこを見るようにしています。そのうえで、強いAIを使って、例えば十億手読んでいるものであれば、当然それなりにかなり信頼できるなどと考えます。複数のAIを使って、セカンドオピニオンのような形で見る場合もあります。 そうした意味でも、AIの評価値が必ず正解なわけではありません。なので、参考にしつつも、自分でも局面を考えてみるという作業は、やはり常に必要になるのかなと思っています。」 この論文でも触れられていますが、SDI調査の効率化では、PatentfieldやDeskbeeなどの商用AI利用特許調査・分析ツールAIは使えるレベルになっているという感触をもっています。さらに広がると良いと思っています。 Japio YEAR BOOK 2021 寄稿集 3. 特許情報の高度な情報処理技術 機械学習を用いた効率的な特許調査方法 花王株式会社 研究開発部門 研究戦略・企画部/アジア特許情報研究会 安藤 俊幸 氏 https://japio.or.jp/00yearbook/yearbook2021.html
「大塚製薬工場 vs. エイワイファーマ・陽進堂」知財高裁令和 3年 (ネ) 10007号 特許権侵害差止請求控訴事件
知財高裁が、東京地裁の判決を覆し、特許侵害を認めた判決です。 東京地裁と知財高裁で、用語の解釈により判断が分かれた例です。しっかり判決を読み比べたいと思います。 大塚製薬工場が逆転勝訴 知財高裁、特許侵害認定 2021.11.16 19:24 https://www.sankei.com/article/20211116-47SRRDBQX5KZ5L6QXKBSMRZMYU/ 大塚製薬工場、逆転勝訴 知財高裁が特許侵害認定 2021年11月16日 21:31 (2021年11月16日 22:20更新) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE16CHJ0W1A111C2000000/ 大塚製薬工場が逆転勝訴し、知財高裁が特許侵害と判断 https://note.com/kubota_law/n/n0dc69c5e8253 令和3年(ネ)第10007号 特許権侵害差止請求控訴事件 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/700/090700_hanrei.pdf 平成30年(ワ)第29802号 特許権侵害差止請求事件 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/183/090183_hanrei.pdf 知財ガバナンスを実現するためにIPランドスケープが重要な役割を担っていますが、「知財戦略の第一人者 杉光一成氏と語る IPランドスケープと知財ガバナンスをいかに企業は体現していくか」という金沢工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科教授杉光一成氏と、PwCコンサルティング 林力一氏のディスカッションが掲載されていました。
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column/technology-driven/interview13.html IPランドスケープは「知財と経営の距離」を測る指針に 知財への投資は経営戦略そのものである ESG投資と知財活動の関係 という3つが大きなテーマでした。 「これからはCSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)の視点での投資が増えてくることでしょう。社会課題の解決に寄与する知財であれば、自社の経済的価値と社会的価値を同時に向上させる可能性があるのです。持続可能な未来をつくるための知財であるかどうかも、企業の今後を左右する重要な指標となると考えています。」という杉光教授の言葉は、そうであってほしいと思っています。 経済産業省「非財務情報の開示指針研究会」の中間報告が11月12日付け【2021年11月17日発表資料差し替え】で公表されています。
「本中間報告では、持続的な価値創造を伝達するサステナビリティ関連情報開示を実現するために、情報の作成者及び利用者が意識する必要があるポイントを、4つの提言としてまとめています。 1.サステナビリティ関連情報開示における価値関連性の重視 2.サステナビリティ開示基準の適用におけるオーナーシップ(主体性)の発揮 3.企業価値とサステナビリティ情報の関連性に関する認識の深化 4.ステークホルダーとの「対話」に繋がるサステナビリティ関連情報開示の実施 あわせて、非財務情報の開示を巡る当事者(主要な基準設定主体、IFRS財団、欧州等)の直近動向を紹介したうえで、国際的に重要性が高まっている気候関連情報、人的資本情報について、研究会での議論と各情報を開示する際のポイントを取りまとめました。」とのことです。「サステナビリティ」を「「知財・無形資産」と読み替えるとそのまま通用するような感じにもなりそうです。 サステナビリティ関連情報開示と企業価値創造の好循環に向けて ~「非財務情報の開示指針研究会」中間報告・概要資料~(9頁) https://www.meti.go.jp/press/2021/11/20211112003/20211112003-1.pdf サステナビリティ関連情報開示と企業価値創造の好循環に向けて ~「非財務情報の開示指針研究会」中間報告~(107頁) https://www.meti.go.jp/press/2021/11/20211112003/20211112003-2.pdf 「非財務情報の開示指針研究会」中間報告を取りまとめました ~サステナビリティ関連情報開示と企業価値創造の好循環に向けて~ https://www.meti.go.jp/press/2021/11/20211112003/20211112003.html CEATEC 2021 ONLINでE事業に資する知財情報の活用に向けてという動画が11月30日まで無料公開されています。
株式会社シクロ・ハイジア 代表取締役CEO小林 誠 氏、トヨタ自動車株式会社 知的財産部 部長飯田 陽介 氏、特許庁 総務部 企画調査課 課長仁科 雅弘 氏の対談で、経営・事業に資する「知財情報」の活用の現状や、先進的に「知財情報」を経営・事業に活用している企業の取組について紹介されています。 経営・事業に資する知財情報の活用に向けて https://www.ceatec.com/ja/conference/single.html?popup=1&contentId=3260 経営・事業に資する知財情報の活用に向けて 特許庁 総務部 企画調査課 課長仁科 雅弘 氏 企業価値の源泉としての無形資産の重要性の高まり 経営デザインシートとIPランドスケープ 知財がビジネスにおいて果たす代表的役割 新規参入市場や提携候補企業の抽出((株)旭化成様ご提供) IPランドスケープの理解・必要性・実施状況 知財情報を経営に活用するには・・・ 特許出願技術動向調査(技術テーマ別)とは 技術テーマ毎の調査手法 調査技術テーマ 機械翻訳分野での調査結果例(全体傾向) 機械翻訳分野での調査結果例 新しい時代に向けたトヨタの知財活動 ~IP Taemmate~ トヨタ自動車株式会社 知的財産部 部長飯田 陽介 氏 SDGsへの取り組み 社会課題解決を通じてSDGs達成、幸せの量産に貢献 企業は利益を得て社会課題を本質的に解決 カーボンニュートラル達成に貢献⇒SDGs実現 SDGs知財活動(IP Teammate) 未知の道を進むには、強い意志と地図となる情報が必要 IP Teammateの基本的考え方 「経営陣と共に」IP戦略の方向性を決定 経営の意思が反映されたIP戦略の具体化 具体化されたIP戦略の実行 経営の意思が入ったIP戦略事例 電動化特許無償オープン 新ビジネス開発テーマ創出 アライアンス戦略 Other 地球規模での電動車の普及のために 車両電動化技術の特許実施権を無償で提供 特許オープン戦略する場合の検討事項 (取り巻く環境) 普及による社会的意義 市場トレンド オープンにする目的 (技術動向) 技術の優位性 競合他社の技術レベル サプライヤーの成熟度 (特許) 特許の優位性 量・質 特許の注目度 11月15日に、11月5日に行われた産業構造審議会知的財産分科会第3回財政点検小委員会議事録が掲載されました。特許特別会計の財政運営について、事務局より、資料に沿って、説明が行われ、説明を踏まえて、自由討議が行われた、ということですが、議事録の中では、特許特別会計の財政運営についての説明部分が9頁、自由討議部分が22頁で、活発な議論がされていることがわかります。
審査請求の動向について、会議の中で質問があったのに対し、会議中に迅速に担当の方がまとめて報告されていました。コロナの影響を受けて先送りの傾向があったが、回復してきているとのことです。 「2019年度の審査請求と、2020 年度の審査請求を比較すると、1年目の請求が2019 年度から 2020年度にかけて 22.4%から 21.7%と、若干ですが下がっています。2年目も 15.8%から14.7%に下がっていて、これに対して3年目が 61.8%から 63.6%という形で、若干先送りの傾向が出ている。2021 年度の今年度については、まだ半分しかたっておりませんが、こちらについては1年目が大分回復して、むしろ2019年度より高く23.9%まで増えていて、3年目は今まで遅れた分を回収するということもありますが、65.6%と相当増えている。一方、2年目は少ないということで、昨年は、コロナの影響を受けて3年目に先送りする傾向があり、今年は、3年目もまた増えていますけれど、1年目に出すという傾向はしっかり戻ってきたというところが読み取れる状況でございます。」 産業構造審議会知的財産分科会第3回財政点検小委員会 令和3年11月5日(金)議事録 https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/zaiseitenken_shoi/document/index/03_gijiroku.pdf 11月9日に開かれた「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会(第7回)」(Web開催)での資料3事務局説明資料(1)には、第6回の検討会での各委員からの意見がまとめられており、今後の検討の進め方、当日の議論のテーマが記載されています。知財投資・活用に関する指標の在り方、そして、ガイドライン骨子案が議論されています。次回(11月26日)、次々回(12月)の後、ガイドライン案が公表されることになっているようです。
事務局説明資料(1) https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai7/siryou3.pdf 11月9日に開かれた「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会(第7回)」(Web開催)でのプレゼンテーション(1)「知的資産に着目した中小企業 サポートの実践」(株式会社きらぼしコンサルティング 強瀬理一氏)の資料は、金融機関の見方として参考になりました。
知的資産に着目した中小企業サポートの実践 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai7/siryou4.pdf 事業を理解し、クライアント企業のライフステージに応じた支援を実施 きらぼし銀行は「知的資産」の理解を基本としている きらぼし銀行は、知的資産の視点を見えざる強みとして着目している きらぼし銀行は企業の事業性を見るが、事業性理解を基本とする顧客との対話により、知的資産を把握することで事業性を理解する 事業価値を高める経営レポートの活用(企業概要、内部環境、外部環境、今後のビジョン、価値創造のストーリー) 経営デザインシートで将来を考える 知的資産の“見える化”により企業価値を向上させる 事例1 国内ハサミメーカーの事例 事例2 建設業界の事例 がん免疫治療薬オプジーボの特許使用料などをめぐり京都大学の本庶佑特別教授と小野薬品が争っていた裁判で、11月12日に和解が成立、小野薬品は解決金として本庶氏に50億円を支払うほか、京都大学内に設立される基金「小野薬品・本庶 記念研究基金」に230億円の寄付を行うという。
本庶佑特別教授は「裁判所の調整によって納得できる内容の解決に至ることができた。企業から還流される資金や善意の寄付により、基礎研究を長期的展望で支援していきたい。企業と大学が協力して若い研究者が人生をかけてチャレンジできる研究環境を用意していくことが国の成長には不可欠」とのコメントを述べているとのことで、非常に良い結果となったようです。 一方の小野薬品にとっても、「当社と本庶氏は、免疫抑制の阻害による新たながん治療法の発見、およびそれを活用したがん免疫治療薬(オプジーボ)の開発におけるそれぞれの貢献を高く評価するとともに、我が国における産学連携の新たな形を示すために和解によって本訴訟を終了させることにいたしました。なお、今回合意した和解内容は、2020年6月19日付けにて提起されたPD-1特許に関する対第三者訴訟関連金として約262億円を請求する本訴訟のみならず、2006年10月23日に締結された「PD-1遺伝子特許実施権許諾に関する契約書」(以下「ライセンス契約」)に係る当社と本庶氏との紛争について全面解決を図るものとなります。」ということで、今回の訴訟だけにとどまらない全面解決とのことで、良い結果のようです。 <和解の要旨>で気になるところが何か所かありますが、当事者以外には詳細は不明で仕方ないことでしょう。 小野薬品 がん免疫治療薬オプジーボをめぐる本庶氏との訴訟で和解 解決金50億円支払、基金に230億円寄付 公開日時 2021/11/12 17:00 https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=72100 2021.11.12 訴訟の和解成立に関するお知らせ https://www.ono.co.jp/news/20211112_2.html 訴訟の和解成立に関するお知らせ https://www.ono.co.jp/sites/default/files/ja/news/press/news_%E8%A8%B4%E8%A8%9F%E3%81%AE%E5%92%8C%E8%A7%A3%E6%88%90%E7%AB%8B%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B_20211112.pdf <和解の要旨> 1.当社は、ライセンス契約で定められたロイヤルティ料率を変更することなく、今後も本庶氏にロイヤルティを支払います。 2.当社は、以下の趣旨で、本庶氏に対し50億円を支払います。 1)ライセンス契約に係る紛争の全面解決に対する解決金 2)3つの特許(特許第4409430号、特許第5159730号および特許第5885764号、以下「本特許」)及びこれに関連する国内外の特許の有効性を巡る対第三者訴訟において本庶氏が当社に協力したことに対する報奨金 3)本特許を含むライセンス契約の対象特許における本庶氏以外の発明者に対する清算金 3.当社は、国立大学法人京都大学(以下「京都大学」)における今後の教育研究環境の充実及び教育研究支援事業に対する経済的基盤を拡充し、我が国における産学連携の新たな形を示すために、かねてより社内にて検討してきたとおり、当社の自由な意思に基づいて、京都大学内に設立される基金「小野薬品・本庶 記念研究基金」に230億円の寄付を行います。 特許庁が、IPランドスケープを活用した知財経営の普及・定着に貢献することを目的として、10月25日から公開している「第2回IPランドスケープセミナー(無料)」の第1部 IPLの導入と実践に向けて(パネルディスカッション)【モデレータ】株式会社シクロ・ハイジア 代表取締役CEO 小林 誠 【パネリスト】株式会社ブリヂストン 知的財産部門 部門長 荒木 充 株式会社リコー 理事 プロフェッショナルサービス部 知的財産センター 所長 石島 尚 昭和電工株式会社 知的財産部長 続木 敏 の中の「昭和電工株式会社の取組について(22分24秒)」では、昭和電工株式会社におけるIPランドスケープの実態について紹介されています。
「知財部はCID : Central Intelligence Department(中央情報部)になるべきだ」「王道(見渡す)があってこその応用(M&A ヘッドハンティング)」「大型合併例」など、参考になりました。 昭和電工株式会社の取組について https://ipeplat.inpit.go.jp/Elearning/View/Course/P_studyview2.aspx#no-back 当社事業のご紹介 「ワールドクラス」の化学工業を目指して。 世界で存在感のめる高機能性化字品のサプライヤを目指す あえてコングロマリットプレミアムを追求する IPランドスケープ(IPL)導入の経緯 自社特許の価値評価ツールとして着目(2015年頃) 増大する知財(維持)費用をコントロールする必要がある。客観的な相対評価を簡便にやりたい 望むべくは見栄え良いデータとして社内外に示したい ツールの急速な充実(2017年頃) 「見せる」「理解させる」機能がどんどん洗練されてきた 特許明細書の対局ともいえる画面に新鮮さを感じて 実績が上がってきた~頼りにされるようになってきた(2019年頃) 徐々にファンも増え、 忙しさが嬉しい悲鳴に 研究テーマ周辺の分析から、事業展望へ、経営戦略提言を視野 「特許部」からの自己進化の欲求(かなり前から) 特許の出願だけをずっとやり続けるのか.経営に貢献したい、近づきたい. 知財部はCID : Central Intelligence Departmentへ(近未来) 知財部門がこの手法による他情報ハンドリングもやるのが効率的では? AI駆使による自然言語処理で.規格化の進んでいない情報も処理できる? IPLの当社展開 【価値評価ツールとして】 自社パテントポートフォリオの客観的評価•SWOT :各種スコア 【王道】 製品分野の技術動向分析 業界・企業の事業動向分析 :マップ×トレンド分析 企業の開発動向分析・技術戦略分析 【応用】 既存製品の新規用途・開発テーマ探索 OI策・協業先の選定 :技術・製品分類マップ M&A先の選定・価値評価 ヘッドハンティングの候補選定 :発明者マップ 【注意点】 時に18カ月のタイムラグが致命傷になる 中国語訳文のDBは誤訳が散見される なぜ今IPLなのか? 当社の場合 これまで 特定事業の「業界通」による新事業・新製品を発案する。 大型の引き出しを持つ「生き字引き」が解決策を発案する。 「カベ」に突き当たった… 全世界の情報数が指数関数的に増加している。 技術開発が加速している。 中国の技術的台頭。 「業界通」「生き字引き」がレッド・データ・ブックに。 これから 信頼できる適度なサイズのデジタルデータベースを擁し AIを含む機械処理によって、データを検索・分析し、 経験を有する専業のアナリストとプロファイラが熟考して、 技術戦略・事業戦略・経営戦略を立案する。 IPLが有用な理由~整理してみると DBの中身の信憑性が高い。 創作だらけの明細書!も確かにある。 でも、コストをかけてその特許を出願した車実には嘘がない。 DBの網羅性が保証されている。 情報が高度に構造化・規格化されており、機械処理に向く。 分析ツールが増え、多様化が進み、コストが低下している。 実績と経験値、信頼度が増加している。 IPLのこれから—私見 【将来有望】 戦略策定の手法として重要性が高まる。 社内(研究者から社長まで)社会(コンサルから製造業まで)の認知が進む。 展開の局面と目的が増加する。 【課題】 人材の確保が難しい。 そもそも経験の深い人材が少ない。 AIとの連携をこなせる人材となるともっと少ない。 【フェーズの進展は速い!】 IPLは、導入期・成長期を経て新たなフェーズヘ入りつつある。 IPベースではないDBの整備が進む。 AIの進歩が相補的かもしれない。 知財部からインテリジェンス部へ? IPLで自社が「どう見るか」から、他社へ「どう見せるか」の戦略立案が必要。 当社事例紹介:合併のためのIPL分析 【技術軸の分析】当社•他社と合併候補先とのIPL分析により、技術がオーバーラップする部分と候補先でのみ保有する部分及び自社のみの部分を可視化。 他社と比較し、当社が製品も技術の共通性が高い⇒最も技術進化の効果が見込まれる。 【製品軸の分析】当社と合併候補先とのIPL分析により、製品がオーバーラップする部分 を可祝化。 オーバーラップする製品が少ない。 ⇒共通技術により市場拡大の機会が多い。 以下、過去のブログです。 昭和電工の知的財産活動 18/8/2021 Clarivateのオンデマンドウェブセミナー「経営に資する研究開発と知的財産活動のDXを推進 ~IPランドスケープ、知財データ分析およびAI活用~(昭和電工株式会社の事例紹介)」を視聴しました。 昭和電工株式会社 知的財産部 増嶌氏の講演で、「“三位一体”の戦略を継続し、推進する」という目標を掲げて、強い特許網の構築、グローバルIPマネジメント体制の整備、インテリジェンス機能の強化を柱とした方針を掲げている昭和電工の知的財産活動の紹介されています。 特に、インテリジェンス機能の強化では、「AI」と「IP Landscape」が2本柱で、 「AI」では、過去に監視判定された特許公報を教師データとして類似順に並び替える「類似順ソートAI」の運用。2つ目は、平均読解時間を減らすために任意の特許について請求項の構造を解析してわかりやすく表示する「可読性向上システム」の導入により、最終的には読む特許の数を20%、平均読解時間を50%に短縮することで、研究者の特許読解時間を10%まで縮小させ、空いた90%の時間を研究開発のための創造的な活動に回せるようにすることを現在の目標としている。 「IP Landscape」では、他社の動向、新用途探索、トレンド把握、相乗効果領域の抽出という4つの分析方法・手順・その内容について紹介されています。 旧日立化成(現昭和電工マテリアルズ)を買収した昭和電工にとって、両社の相乗効果の最大化は重要な経営課題ですが、ここへの取り組みに触れられている点が新しい点です。 企業の三つの財産として「人」「インテリジェンス」「金」を挙げ、「インテリジェンス」で有益な情報を提供できるのは知的財産部のみ、と言い切っているように感じましたが、ちょっと言い過ぎのような気がしています。 Derwent オンデマンド ウェブセミナー https://clarivate.com/ja/derwent-ondemand-webinars/ 昭和電工による“知財DX”の実践──「AI活用による特許情報の効率的収集」と「IPランドスケープ」 https://bizzine.jp/article/detail/4971 昭和電工のIPランドスケープ。定着の要因は、長年の地道な活動があったこと。 https://apricot-meow.com/intellectual_property24/ 昭和電工のIPランドスケープ活動 昭和電工株式会社 https://www.patentsight.com/ja/psj-summit-report-showadenko ソニー、デンソー、本田技研、昭和電工、住友化学、旭化成の知財活動 27/12/2020 2020年9月8日 & 9月9日に行われたPatentSight Summit Japan ONLINE『経営に戦略的に活かす知財情報』の講演の一部を、本ブログ9月にご紹介しました(9月11日ソニー、9月14日デンソー、9月15日本⽥技研工業、9月16日昭和電工、9月17日住友化学、9月18日旭化成)。 ちゃんとした報告がアップされていましたので、ご参考まで。 知財部門における情報分析活動と、新しい価値の創出 ソニー株式会社 https://www.patentsight.com/ja/psj-summit-report-sony AIと特許価値情報を活用した知財ポートフォリオの管理 本田技研工業株式会社 https://www.patentsight.com/ja/psj-summit-report-honda 昭和電工による“知財DX”の実践──「AI活用による特許情報の効率的収集」と「IPランドスケープ」 https://bizzine.jp/article/detail/4971 昭和電工のIPランドスケープ活動 昭和電工株式会社 https://www.patentsight.com/ja/psj-summit-report-showadenko 住友化学による、IPランドスケープを活用した経営戦略──事業・R&D戦略立案に資する情報解析とは? https://bizzine.jp/article/detail/4970 旭化成が挑戦する経営戦略としてのIPランドスケープ──先進企業と語った人材の「要件」と「評価・育成」 https://bizzine.jp/article/detail/5025 IPランドスケープを支える知財アナリストの育成 旭化成様、昭和電工様、住友化学様の鼎談 https://www.patentsight.com/ja/psj-summit-report-ipl-talent |
著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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