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ChatGPTで使える「食べログ」は“選ぶ負担”を軽減してくれるツールとして普及しそうですが、「食べログ」のChatGPTプラグインを提供したカカクコムは、ChatGPTに価格.comの商品データベースを連携、ChatGPTを使って希望に合う商品を簡単に検索できるというサービスを開始しました。課題は開発よりも法務ということのようです。 ChatGPTで使える「食べログ」は“選ぶ負担”を軽減してくれる? 従来の検索との違いを検証してみた 6/9(金) https://news.yahoo.co.jp/articles/8148bd86b1f87ff00594d2ec39e0775ce717a432 「食べログ」のChatGPTプラグインを提供したカカクコム、課題は開発よりも法務 2023.06.09 https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02480/060700003/ 2023年06月02日 価格.com、ChatGPTプラグインの提供を開始 ChatGPTに価格.comの商品データベースを連携、 ChatGPTを使って希望に合う商品を簡単に検索できます https://corporate.kakaku.com/press/release/20230602
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6月7日に行われた(第146回)知財実務オンライン:「特許文書読解アシスタント「サマリア」~人工知能技術の特許実務への活用・展望~」(ゲスト:パテント・インテグレーション株式会社 代表取締役CEO 大瀬 佳之)のアーカイブ動画(約1時間半)を視聴しました。
サマリアは、ChatGPTを上手く使っている特許文書読解アシスタントで、現在無料提供されており、なかなか使い勝手が良いと思います。 6月6日からのアップデートで2文書の比較ができるようになっているということなので、一致点、相違点の比較でどの程度使えるか期待感があります。週末トライしてみます。 1.A I・ディープラーニングの進化とLLM ・A Iの歴史、ディープラーニング ・トランスフォーマー、G P T- 3 ・大規模言語モデル( LLM) ・生成型人工知能モデル 2.知財実務/法務実務における最近のトピック ・サマリア: LLMを利用した特許文書読解支援システム ・知財領域での活用事例 ・法務領域での活用事例(LeagalOn Technologies、弁護士ドットコム、株式会社WEB STAFF) ・LLMが得意なこと、苦手なこと(知財領域における活用可能性) 明細書読解支援、知財戦略立案、アイデア創出、特許調査、スクリーニング、自社分類 付与、明細書作成、明細書翻訳、中間対応について、深層学習とLLMの比較 3.サマリアのご紹介 ・ユー ザ登録 ・どのような問題を解決するのか? ・機能の概要 ・どのようなベネフィットを提供するのか? (第146回)知財実務オンライン:「特許文書読解アシスタント「サマリア」」(ゲスト:パテント・インテグレーション株式会社 代表取締役CEO 大瀬 佳之) https://www.youtube.com/watch?v=0vzoQEN8uCo サマリア(Summaria) | 特許文書読解支援サービス https://patent-i.com/summaria/ サマリア 20230606 アップデート https://www.youtube.com/watch?v=WD_WFQ6OWMc 自民党AIの進化と実装に関するプロジェクトチーム https://note.com/akihisa_shiozaki/n/n4c126c27fd3d 昨年5月に成立した経済安全保障推進法に基づき、機密性が高い技術について政府が「特許非公開」とする計25の技術分野をまとめ、6月中に開かれる有識者会議に制度案を示し、パブリックコメントにかけ、来春の運用を目指すということです。
現行制度では、特許は出願1年半後に原則公開されますが、制度案では、安全保障上拡散すべきでない技術分野に関わる特許について、国が保全指定をして公開されないようにしたり、外国への出願を禁止したりしますので、その範囲が広くなると大きな影響が出かねません。それほど広くはなっていないような感じがします。 特許公開を制限、ステルスやロケットなど25分野 経済安保で制度案 2023年6月7日 https://digital.asahi.com/articles/ASR67661JR67ULFA01V.html 経済安保強化へ、政府が25分野「特許非公開」…戦闘機のステルス性能や極超音速飛行の関連技術 2023/06/07 https://www.yomiuri.co.jp/politics/20230606-OYT1T50279/ 特許出願の非公開に関する基本指針(案)の概要 2023年2月 内閣官房・内閣府 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/keizai_anzen_hosyohousei/r5_dai5/siryou4.pdf 特許出願の非公開制度の基本指針案 2023.02.13 https://www.tmi.gr.jp/eyes/blog/2023/14361.html 特許出願の非公開化時代の到来と新たな研究開発戦略〜鍵となりうる「デュアルユース」とリスク回避〜 https://www.nttdata-strategy.com/knowledge/infofuture/69/report09/ 6月1日、欧州統一特許裁判所(UPC)は、UPC協定が発効し、UPCが業務を開始したと発表しました。UPC協定発効により、同日から単一特許規則の適用も開始され、欧州単一効特許と統一特許裁判所のパッケージからなる欧州単一特許制度が開始されました。
なんと統一特許裁判所における最初の取消訴訟の当事者は日本企業だということで、今後に注目です。 UPCでの記念すべき最初の取消訴訟の当事者は日本企業です 2023.06.07 https://hasegawa-ip.com/news/first-revocation/ 2023年6月1日に統一特許裁判所(UPC)協定が発効し、統一特許裁判所における特許権侵害訴訟そして取消訴訟をはじめとする手続きが可能になりました。 そこで記念すべき最初の取消訴訟を調べてみました。 統一特許裁判所のCase Management System(CMS)のサーチ機能を用いて調べてみたところ現在統一特許裁判所に係属している取消訴訟は以下に示すようACT_459505/2023、ACT_464985/2023そしてACT_465342/2023の3件です。 3件とも2023年6月1日に提起されていますが、その内最も早い時刻(17:20:14 CEST)に提起されたケースがEP3056563に対する取消訴訟であるACT_464985/2023です。 EP3056563は特許権利者が日本企業(株式会社ヘリオス、理研そして大阪大学による共願)である欧州特許です。そして無効訴訟提起人はアステラス製薬の米国子会社であるアステラス再生医療研究所です。なんと原告も被告も日本に所縁があります。 また2件目のケースであるACT_465342/2023(17:51:05 CEST提出)の対象であるEP3056564も特許権者が株式会社ヘリオスそして大阪大学であり、無効訴訟提起人がアステラス再生医療研究所です。EP3056564はなんと欧州特許庁で異議が係属中です。統一特許裁判所が欧州特許庁の判断に対してどのように反応するか、または欧州特許庁が統一特許裁判所の判断に対してどのように反応するかも興味深いです。 このように統一特許裁判所における最初の取消訴訟は当事者が日本に所縁があるという点というだけでなく、統一特許裁判所と欧州特許庁との平行手続きという観点からも非常に興味深いです。 本件の今後を注視したいと思います。 欧州単一特許制度がついに始動 2023年06月07日 https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/06/f0ecaf9f2c6e2f80.html 統一特許裁判所(UPC)は6月1日、UPC協定が同日から発効し、UPCが業務を開始したと発表した。UPC協定発効により、同日から単一特許規則の適用も開始され、欧州単一効特許と統一特許裁判所のパッケージからなる欧州単一特許制度が開始された。 欧州単一特許制度が開始したことにより、欧州各国で特許を取得する場合、欧州特許庁(EPO)が欧州特許を付与した後、欧州各国ごとに有効化(Validation)の手続きを経ずに、UPC協定の全批准国(注1)で単一の効力を有する欧州特許を取得できる。権利侵害時には、UPCへ提起すると全批准国で権利行使が可能となる。 (注1)オーストリア、ベルギー、ブルガリア、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ポルトガル、スロベニア、スウェーデン、ドイツの17カ国が批准済み。 統一特許裁判所(UPC)、待望の欧州単一特許制度がついに開始 https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/europe/2023/20230601.pdf 欧州統一特許裁判所協定(UPCA)に関するご案内【2023年6月改訂】 https://www.kyowapatent.co.jp/ipinfo/news/2023-6 1.KDDIの知財戦略
KDDIは知財戦略を非常に重視していて、知的財産をサステナブルな事業成長のための重要な経営資源と位置づけて事業戦略と一体化した知的財産活動を推進しており、事業展開において重要な役割を果たしています。
2.KDDIの知財評価指標 KDDIの知財評価指標は、杉光教授が作成された「知財評価指標」を活用しているようです。この指標は、知財・無形資産の投資・活用による事業成果を評価するためのもので、以下の4つの要素からなります。 知財・無形資産の投資額 知財・無形資産の活用度 知財・無形資産による収益性 知財・無形資産による成長性 KDDIは、この指標に自社事業を当てはめた結果を開示しており、KDDIは、知財・無形資産の投資額と活用度が高く、収益性と成長性も高いことがわかります。これは、KDDIが競争力の基盤となるあらゆる知財・無形資産を戦略的に獲得し、事業に則して総合的に活用することにより、安定的な事業収益と高い利益率を確保するビジネスモデルを構築していることを示しています。 3.KDDIの知財KPI KDDIは知財KPIを公表していませんが、事業戦略と一体化した知財活動を推進しており、以下のような過去の実績を示しています。 これらの数値を基に、外部には発表していませんが、内部的には今後の事業成長に向けた知財活動の目標を設定していると思われ、これらは実質的にKDDIの知財KPIと考えても良いでしょう。 ・通信ネットワークに関する特許件数と特許資産価値 ・新規事業・サービス件数と保有特許件数 ・グループ会社・出資先の企業数と知的財産活動の支援先の企業数 ・スマートドローンに関する保有特許件数と特許資産価値 知的財産情報の開示 ブリヂストン、KDDI、ソフトバンク、富士通 22/3/2023 https://yorozuipsc.com/blog/-kddi KDDIが1位 オープンイノベーションに積極的な大企業 28/7/2022 https://yorozuipsc.com/blog/kddi1 KDDI 株式会社(企業価値向上に資する知的財産活用事例集) 21/5/2022 https://yorozuipsc.com/blog/kddi2995704 KDDIのIPランドスケープ(「フォアキャストIPL」と「バックキャストIPL」) 16/2/2022 https://yorozuipsc.com/blog/kddiipiplipl KDDIの「知財・無形資産」投資・活用への取り組み 2/11/2021 https://yorozuipsc.com/blog/kddi IPランドスケープの効果的な活用 旭化成 貝印 KDDI 15/4/2021 https://yorozuipsc.com/blog/ip-kddi 文化庁は、著作権法の観点から生成AIについて解説するセミナー「AIと著作権」を6月19日にYouTubeライブで受講者のみに限定配信すると発表しました。受講料は無料で、事前登録が必要。
セミナーは2部構成で、著作権に関する基礎知識などをレクチャーする第1部「著作権制度の概要」の後、第2部「AIと著作権」では、他人の著作物をAIに学習させる行為や、AIが生成したコンテンツが著作権法上どのように取り扱われるかなどを解説するとのこと。 令和5年度著作権セミナー「AIと著作権」を開催します https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/93892101.html 令和5年度著作権セミナー「AIと著作権」を下記のとおり開催いたしますので、お知らせします。 1.日時 令和5年6月19日(月)14時~15時 2.場所 オンライン配信 3.日程 第1部 「著作権制度の概要」 第2部 「AIと著作権」 4.対象者 著作権制度を学びたい方(どなたでも参加可能です) 5.受講料 無料 6.申込期間及び申込方法 申込期間:令和5年6月2日(金)~6月16日(金)まで 文化庁ホームページ掲載の申込フォームより受付します。 ChatGPT(チャットGPT)などの生成AIは、多くが英文を学習しているため、日本語・日本の情報が極端に少なくなっています。WEB検索が併用できることが標準になりつつあるなかでどれほど意味があるのかという議論はありますが、日本語・日本の情報をしっかり学習させた大規模言語モデル(LLM)は、日本人にとっては重要です。収益モデルが厳しいようですが、ぜひ実現して、世界へ向かって発信してほしいものです。
生成AI、国内企業の参入続々…「日本の言葉や文化に強いモデルは少ない」 2023/06/03 https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230602-OYT1T50301/ AI起業に再び熱視線 国内最大級117億円ファンドも 2023年5月30日 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC248950U3A520C2000000/ 日本の新興勢、ChatGPTにどう対抗? 識者に聞く 2023年6月6日 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC300J60Q3A530C2000000/?n_cid=NMAIL006_20230606_A 富士通は「富岳」活用し独自LLM構築急ぐ、IT各社がChatGPT特需でつばぜり合い 2023.06.06 https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02423/060200031/?n_cid=nbpnxt_mled_itmh 日本語特化の生成AIが続々、オルツは1600億パラメーターでChatGPTを追う 2023.06.05 https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02423/053100030/?n_cid=nbpnxt_mled_itmh 自民党「AIの進化と実装に関するプロジェクトチーム」(座長:平将明衆議院議員)の第12回会合(2023年6月2日16時〜17時)で、民間における生成系AIの利活用に関し、「パナソニックグループにおけるChatGPT活用状況のご紹介」というテーマで、パナソニックホールディングス執行役員・CIO 玉置肇 氏が話された資料が公開されていました。
パナソニックグループでは、ChatGPTの社内向け環境を構築し4月14日より国内従業員9万人に「PX-AI」として社内公開しています。 パナソニックグループにおけるChatGPT活用状況がしっかり紹介されています。 「情報システムだけではDXは失敗。だからこそ全ての層をPX(パナソニックトランスフォーメーション;DX)で変える」と2023年3月「役員合宿」で幹部役員全員がコミットメント。従来は“リスクヘッジもない中での先進IT技術の活用は困難”だったのを、PXによる風土変革(・早さを優先、まずはみんなで使ってみて体感する、・失敗を恐れず挑戦するカルチャーをつくる) AI活用の経緯は、 2019年頃 各組織でAIに対する様々な取り組みが本格化 2022年1月 グループ内でAI倫理委員会立ち上げ 2022年8月 「AI倫理原則」を対外公表 https://news.panasonic.com/jp/press/jn220829-1 2022年12月 ChatGPTの世界的な盛り上がりを受け、社内IT部門中心に 評価体制の立上げ、およびガイドライン検討開始 2023年2月 パナソニック コネクト㈱において社内向け生成AI 「ConnectAI」 リリース (対象1.2万人) https://news.panasonic.com/jp/topics/205071 2023年3月 全社CIO会議にて全社展開を決定 2023年4月 パナソニックグループにおいて国内全従業員向け生成AI「PX-AI」 リリース (対象9万人) https://news.panasonic.com/jp/press/jn230414-1 「PX-AI」導入の狙いは、 業務 先進的AI活用による、アイデア創出 ガバナンス 野良Chat GPT利用の抑止(セキュリティ観点) 働き方 PXにおけるアジャイルなワークスタイルの実践 その他 人材育成やEX観点/社員満足度向上 など 環境構築:セキュリティと利便性の両立 •マイクロソフト社の Azure OpenAI Service の利用により既存の契約や取引きを活用、入力情報を二次利用しない点や準拠法が日本法にできる点など、 セキュリティに関する透明性やコントロール性(契約面、技術面双方)を確保 ※但し、二次利用が無いとはいえ、インシデント発生時などマイクロソフト社等が データを閲覧する可能性があるため、機密情報の入力は不可 •通信経路は社内イントラネット網経由のみとし、盗聴や外部からの攻撃に対する セキュリティ強度を確保 ※Azure環境においても、VNETによりグループ内に閉じた環境を実現 •社員が入力した問い合わせを記録し、問題ある利用の有無などを セキュリティ部門・IT部門がチェックできる仕組みも実装 •その他、日本語→英語の変換機能、問い合わせ時のテンプレート提供機能、 使用感やアイデアをフィードバックする機能等を実装 •AI倫理委員会などの組織とIT部門が連携して生成AI活用のガイドラインを制定、 今後も拡張予定 利用状況 実績は、 パナソニックグループ社員9万人対象にスタート、約1カ月で25万回の使用 約3万人の社員がアクセスと高い割合で試用・活用が進む (全従業員の1/3がアクセス、1人8回以上の利用) • 代表的なユースケースは ◇ データ分析 例:社内のテキスト分析 ◇ 社外文書の要約 例:法律文書の要約 ◇ 社内文書作成補助 例:社内向けアナウンス文書作成 ◇ プログラミング支援 など • これらの利用で「生産性が大幅に向上した」などの意見も複数あり 活用が上手/適用しやすい業務の社員には、既に大きな効果が出ている • 現状では機密情報は入力NGであり、アウトプットにも著作権や肖像権等の様々な課題が ある事について、認識が徐々に拡大 今後の推進予定 •社内認証基盤と連携した各種セキュリティ、利便性等の機能向上 ★特に、セキュリティ強化とのバランスを見ながら、入力できる情報の範囲拡大等を検討 •社内のバックオフィス部門からの 「問い合わせ対応や社内情報検索を効率化したい」という多数の要望への対応 ★社内情報の学習が必要となるため、他の仕組み(セマンティック検索等)を 組み合わせた実装を検討 •ChatGPTのその他機能や進化への対応 •ChatGPT以外にも、進化し続ける生成AIツールへの対応検討 など 自民党AIの進化と実装に関するプロジェクトチーム https://note.com/akihisa_shiozaki/n/n4c126c27fd3d?fbclid=IwAR0AQPCMVziWXw_nDQczw4Kefo-ku_yAcXMUmv7AcZmUgkk3FmOgSJFGi1s パナソニック・ベネッセ・日清食品、大手企業を突き動かしたChatGPTへの確信 2023.05.31 https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02469/052600001/ パナソニックが全社へ「社内ChatGPT」を導入、国内9万人の社員が業務利用 4/14(金) https://news.yahoo.co.jp/articles/816e69ab3d8fc25a3310b0e74be8f532c70f94c7 令和4年(行ケ)第10030号「積層体」事件は、は、オープンクレームにおいて特許請求の範囲や明細書で直接的に開示されていないものの、抽象的に含まれる可能性のある構成を「除く」とする訂正につき、特許請求の範囲の減縮にあたり、また、新規事項の追加にあたらないとしたものです。
「除くクレーム」とは、請求項に記載した事項の記載表現を残したままで、請求項に係る発明に包含される一部の事項のみをその請求項に記載した事項から除外することを明示した請求項をいい、「除くクレーム」が、補正(訂正)前の明細書等から導かれる技術的事項に何らかの変更を生じさせるものとはいえない、つまり、新たな技術的事項を導入するものではない場合に、許されます。 今回、被告である特許庁は、除くクレームとする本件訂正に関し、本件明細書に記載のない構成であり、先行技術文献に記載の構成を除くとする訂正について、訂正前の請求項の構成「内」について除くとする訂正に該当しないため、特許請求の範囲の減縮に該当せず、訂正要件違反であると主張しましたが、裁判所が指摘する通り、訂正前の請求項はオープンクレームであり、その他の構成(任意の層)を含む余地があり、前記その他の構成を含む積層体を除く本件訂正が、特許請求の範囲の減縮に該当することは明らかと考えられますので、被告である特許庁の主張には無理があるとした裁判所の判断は妥当であると考えられます。 本件は、「ソルダーレジスト(除くクレーム)事件」についての知財高裁大合議判決(知財高判平 20.5.30、平 18(行ケ)第 10563 号)が、新たな技術事項の導入があるか否かは、明細書や図面に限定事項の具体的な記載があるかどうかに関わらず、実質的観点から判断するものとした考え方にしたがったものです。 「除くクレーム」と訂正要件に関する「ポリエステル樹脂組成物の積層体」事件知財高裁判決について 投稿日 : 2023年4月5日 https://innoventier.com/archives/2023/04/14856 新規事項の審査基準の改訂について https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/kijun_wg/document/seisakubukai-04-shiryou/05.pdf 1. 背景 特許庁では、「ソルダーレジスト(除くクレーム)事件」についての知財高裁大合議判決(知財高判平 20.5.30、平 18(行ケ)第 10563 号)を受けて、審査における、より適切な新規事項の判断基準について、この大合議判決の上告・上告受理申立ての結果、及び、その後の後続判決等を注視しつつ検討を行うこととし、それまでの間は審査基準を変更しないとしていた。 今般、この大合議判決は、上告・上告受理申立てが取り下げられ、確定した。 そこで、この大合議判決の内容、後続判決の調査などを踏まえ、審査基準の「第 Ⅲ部第Ⅰ節 新規事項」について、審査基準改訂の検討を行うこととする。 2. ソルダーレジスト(除くクレーム)事件について 3. 後続判決について 4.現行の審査基準の整理 5.審査基準改訂の方向性 新規事項の審査基準改訂骨子(案) 特許 令和4年(行ケ)第10030号「ポリエステル樹脂組成物の積層体」(知的財産高等裁判所 令和5年3月9日) 2023.05.20 https://www.soei.com/%e7%89%b9%e8%a8%b1%e3%80%80%e4%bb%a4%e5%92%8c%ef%bc%94%e5%b9%b4%ef%bc%88%e8%a1%8c%e3%82%b1%ef%bc%89%e7%ac%ac%ef%bc%91%ef%bc%90%ef%bc%90%ef%bc%93%ef%bc%90%e5%8f%b7%e3%80%8c%e3%83%9d%e3%83%aa%e3%82%a8/ 化学・バイオ特許判例紹介(30) ~補正・訂正の許否の判断~ 令和4年(行ケ)第10030号 原告:大日本印刷株式会社、被告:特許庁長官 2023年4月21日 https://knpt.com/contents/chemistry/chemistry2023.04.21.pdf 令和4年(行ケ)第10030号「積層体」事件 https://unius-pa.com/decision_cancellation/10015/ 「積層体」事件(知財高判令和5年3月9日 令和4年(行ケ)第10030号) https://www.fukamipat.gr.jp/wp/wp-content/uploads/2023/04/11_2022_Gyo-Ke_10030-.pdf 令和5年3月9日判決言渡 令和4年(行ケ)第10030号 特許取消決定取消請求事件 口頭弁論終結日 令和4年12月21日 判 決 https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/870/091870_hanrei.pdf 数値等の重複を避けるだけの「除くクレーム」での対応を試みる価値はある 29/3/2023 https://yorozuipsc.com/blog/6614236 除くクレーム 14/3/2022 https://yorozuipsc.com/blog/4130957 除くクレームの活用(補正/訂正要件、進歩性) 29/7/2021 https://yorozuipsc.com/blog/9352162 内閣府の関係省庁連携ページに「生成AIと著作権」に関する分かりやすい資料が公開されています。
基本的な考え方としては、 ・著作権法では、著作権者の権利・利益の保護と著作物の円滑な利用のバランスが重要 ・著作権は、「思想又は感情を創作的に表現した」著作物を保護するものであり、単なるデータ(事実)やアイデア(作風・画風など)は含まれない ・AIと著作権の関係については、「AI開発・学習段階」と「生成・利用段階」では、著作権法の適用条文が異なり、分けて考えることが必要 と整理されています。 そのうえで、現状は、 ・AI開発・学習段階では、原則として、学習は著作権者の許諾なしに利用が可能、ただし、「必要と認められる限度」を超える場合や「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」は、この規定の対象とはならない ・生成・利用段階では、生成物をアップロードしたり販売する場合は通常の著作権侵害の判断と同様。(生成された画像等に既存の画像等(著作物)との類似性(創作的表現が同一又は類似であること)や依拠性(既存の著作物をもとに創作したこと)が認められれば、著作権者は著作権侵害として損害賠償請求・差止請求が可能であるほか、刑事罰の対象ともなる) とされています。 そして、今後の対応として、下記をおこなうとのことです。 ・「現状の整理」等について、セミナー等の開催を通じて速やかに普及・啓発 ・知的財産法学者・弁護士等を交え、文化庁においてAIの開発やAI生成物の利用に当たっての論点を速やかに整理し、考え方を周知・啓発 ・コンテンツ産業など、今後の産業との関係性に関する検討等について 今後の進展によっては、さらに厳しい規制が行われることも十分考えられますが、現状はこの資料のとおりでしょう。 AI戦略チーム(関係省庁連携)(第3回) https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/ai_team/3kai/3kai.html 資料 AIと著作権の関係について(PDF:380KB) https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/ai_team/3kai/shiryo.pdf 5月26日、政府のAI戦略会議は、AIに関する政策の論点整理をまとめ、AIがもたらす変化は、産業革命やインターネット革命を超えるとして、日本にとって「大きなチャンスの到来」と位置づけ、生成AIのリスクとしては、個人情報の不適正利用や偽情報の氾濫、犯罪の巧妙化、著作権侵害などを挙げ、利活用とリスクへの対応を「バランスを取りながら進めていく」と明記しました。
しかし、「生成AIが社会に与える影響は極めて深刻」「既存の法制度の周知徹底でバランスが取れるほどリスクは軽いものではない。新たな規制や法整備を行うことが先決だ。」という考え方もあります。 国際的調和の中で新たな規制や法整備を行いリスクへ対応しながら、「大きなチャンス」を活かすことが重要に思えます。現状、「大きなチャンス」を活かす視点の欠如の方が問題に見えます。 AI戦略会議 リスクを深刻に受け止めよ2023/06/02 https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20230601-OYT1T50232/ AI に関する暫定的な論点整理 2023 年 5 ⽉26⽇ AI 戦略会議 https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/ai_senryaku/2kai/ronten.pdf AI に関する暫定的な論点整理(要旨) ※本論点整理は、最近の技術の急激な変化や広島 AI プロセスを踏まえて、AI 戦略会議構成員が AI 関連の論点を整理したものである。 https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/ai_senryaku/2kai/ronten_yoshi.pdf AI戦略会議、「論点整理」でリスク列挙 開発競争に残る課題 5/27(土) https://news.yahoo.co.jp/articles/963e1cbee7f4c29de63b649296a3766d39776db1 生成AI、活用促進へリスク対処 政府が論点整理 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA25E5C0V20C23A5000000/ 知的財産管理技能士会のYouTubeチャンネルで「ChatGPTを活用した知財業務の革新:AI技術を用いた最新の実例紹介と実践的スキル習得」という5月25日に開催されたセミナー(約60分)の動画が公開されています。
ChatGPTの活用方法や課題についてわかりやすく話されています。 https://www.youtube.com/watch?v=8Mo3lftU4IY&t=50s この研修では、ChatGPTを活用した知財業務の革新を目指し、AI技術を用いた最新の実例紹介と実践的スキル習得に焦点を当てます。OpenAIの論文やChatGPTの活用方法やプロンプトの書き方を習得し、実例紹介により具体的な活用方法を理解します。 1.ChatGPTと知財業務の革新: 概要と最新動向 2.OpenAIの論文: ChatGPTと仕事への影響 3.グレーゾーン解消制度: 弁護士と弁理士の役割 4.ChatGPTのプロンプトの書き方: 効果的な指示の仕方と注意点 5.ChatGPTを活用した特許調査の実例紹介 6.ChatGPTによる明細書作成の実例紹介 7.白坂弁理士との対談: 現場でのChatGPTの活用方法と課題 8.総括: ChatGPTを活用した知財業務の革新と今後の展望 9.熊巳氏と白坂氏による対談 【講師】 熊巳 創 氏(オムロン株式会社 技術・知財本部 知財専門職、知財サイエンス代表) 白坂 一 氏(弁理士法人白坂 SHIRASAKA Patent Attorney Corporation) 収録日:2023年5月25日 企業の技術者向けの知的財産教育については、各企業の中で体系的な研修の仕組みが作られて実施されている場合が多くなっていますが、他に、日本知的財産協会の研修等の外部研修に委ねるケースも少なくありません。
知財管理誌2023年4月号に掲載された「技術者向け知的財産教育」は、研究開発部門および事業部門における技術者に対する知的財産教育の在り方ついて、体系的な整理がされており、参考になります。 技術者向け知的財産教育 山下伸一郎、小林誠 知財管理 Vol. 73 No. 4 2023 http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/search/detail.php?chizai_id=d49363ccd3b270ae1164cba0e1b4df2b 抄 録 企業経営に関して有形資産よりも人的資産や知的財産の無形資産が重要視されるようになってきている中で,組織における知的財産教育は必須のものとなっています。本稿では,知的財産部門にとって重要なミッションのひとつである研究開発部門および事業部門における技術者に対する知的財産教育の在り方ついて,体系的な整理を行うとともに,そのポイントについて解説します。
2.2 講師の心構え
3.2 研修スタイル 3.3 研修教材
知的財産マインドの向上を意識した 企業の知的財産教育のあり方 渡邉豊之 「知財管理」誌 72巻(2022年) / 7号 / 803頁 http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/search/detail.php?chizai_id=c6b97d49c72c1a7c9fa5df438dacbbc1 抄録 企業活動において知的財産は経営資源の一つであり、知的財産の知識が必要となる場面は多い。そのため、社員の知的財産教育が重要であることは認識されているが、企業において知的財産教育として社員に教育すべき内容は、産業財産権法全般となり、場合によっては国内法のみならず外国法も対象となり広範となる。対象となる社員の経験や職種、企業の規模や業種によって重要となる論点、知的財産教育の目的は大きく異なる。そのため各社、受講者層や社内実態に合わせた多種多様な教育が行われているのが実情である。また知的財産教育において、社員の知的財産マインドの向上は各社が抱える課題の一つである。本稿では、知的財産教育の立ち位置を確認して、企業内の知的財産の教育例を対象者ごとに切り分け、それぞれに対して、知的財産教育が必要な理由や目的、及び教育内容について述べる。 1. はじめに 2. 知的財産マインドの向上の必要性 3. 企業における知的財産教育の必要性 4. 体系的知的財産教育の留意点 4.1 社歴に合わせた知的財産教育の留意点 4.2 所属部署に合わせた知的財産教育の留意点 5. ポストコロナ時代の知的財産教育 6. おわりに 企業における知的財産教育の実例 https://jpaa-patent.info/patent/viewPdf/3023 企業活動において知的財産権の知識が必要な場面は非常に多く,コンプライアンスの一環として,知的財産法の遵守も求められている。そのため知的財産に関する教育の重要性は企業において広く認識されている。 企業において知的財産教育として教育すべき内容は,産業財産権法全般に及び,場合によっては国内法のみならず海外法についても含まれる。さらには,知的財産業務に付随する税法などの教育を併せて行う場合もある。対象となる従業員の経験や職種,企業の規模や業種によって重要となる論点,知的財産教育の目的は大きく異なる。そのため各社,受講者層や社内実態に合わせた多種多様な教育が行われているのが実情であり,ここですべてのケースについて述べることは難しい。 本稿では,技術者(研究,開発等に従事する者),営業等(技術者以外で知的財産権に関与する可能性がある者),知的財産部門所属者,新入社員,管理職及び経営者,海外を含む関係会社所属者という対象者ごとに切り分け,それぞれに対して,知的財産教育が必要な理由や目的,教育内容,および効果について,近時のトピックスを交えながら述べることにする。 目次 1.はじめに 2.企業における知的財産教育の必要性 3.対象者・対象部門ごとにみる知的財産教育 3.1 技術者・技術部門に対する知的財産教育 3.2 営業職,企画など技術部門以外に対する知的財産教育 3.3 知的財産部員・知的財産関連部門に対する知的財産教育 3.4 新人・新入社員に対する知的財産教育 3.5 管理職,役員,経営者に対する知的財産教育 3.6 国内外子会社など所属会社と異なる会社に対する知的財産教育 4.まとめ 5.企業内弁理士向けスキルアッププログラムの紹介 企業における若手技術者向け知財教育の取り組み事例 https://jpaa-patent.info/patent/viewPdf/3022 筆者は現在,中堅電機メーカーの知財部門に所属しており,技術者向けの知財教育にも携わっています。弊社における技術者向けの知財教育は,若手の技術系社員を対象としており,入社 2 年目で全員参加の必須研修としています。本研修は,①技術者として,企業における知財の重要性を認識すること,②発明を創出する意識を高めること,③発明者として,自己の発明を先行技術と比較することにより,発明のポイント(構成上の相違点,先行技術にない作用・効果)を抽出し,知財部門に対して端的に説明できるようになること,以上 3つを主な目的としています。このような能力は,若い時期に基本を身に着け,一生涯にわたって向上を続けていくべきものと考えます。入社 2 年目の若手社員を対象にしたのは,会社業務にも慣れてきたこの時期が,本研修の目的を達成するのに最も適していると考えたからです。本研修では,集合研修に先立って,各自で発明アイデアを準備します。集合研修時には,先行技術調査を行い,自己の発明のポイント(構成上の相違点,先行技術にない作用・効果)を抽出した結果を資料としてまとめ,その資料を元に受講生全員が発表を行います。 ここでは,ディスカッションすることによって,様々な気付きを得ることができるようにしています。本研修には,知財部門の特許担当者も参加し,研究・開発部門に所属する若手技術者との交流を深めるという狙いもあります。弊社での取り組み事例が,他の企業等における技術者向け知財教育のご参考になれば幸いです。 目次 1.はじめに 2.過去の技術者向け知財教育の問題点 3.近年の技術者向け知財教育の内容 (1)研修の概要 (2)事前課題としての発明アイデアの提出とブラッシュアップ (3)集合研修 1 日目の内容 (4)集合研修 2 日目の内容 4.まとめ 5.今後の課題と日本弁理士会への要望 知財教育、特に特許教育は、とても大切 28/7/2020 https://yorozuipsc.com/blog/8018378 1.ナブテスコの知財戦略
ナブテスコの知財戦略とは、ナブテスコグループの事業競争力の源泉である現在および未来の「コア価値(知財・無形資産)」の持続的な競争優位を担保するための戦略です。ナブテスコは、知財創造活動、権利活用、新市場開拓、新製品開発などに関する活動を通して、コア価値を獲得・強化しています。また、ナブテスコは、全社知財戦略審議、知的財産強化委員会、カンパニー知財戦略審議という3つの審議体を設けて、知的財産戦略の実行・監督体制を構築しています。 2.ナブテスコのコア価値 ナブテスコのコア価値とは、ナブテスコの事業競争力の源泉である現在および未来の「知財・無形資産」のことです。コア価値には、製品を構成する技術やアイデア、設計や製造のノウハウ、営業情報やお客さまとの信頼関係など有形無形の知的財産が含まれています。ナブテスコは、現在のコア価値(例えば、高出力密度設計技術、加工組立・表面処理、販売施工網など)や未来のコア価値(例えば、IoT活用技術、電動アクチュエータ―関連技術など)を事業毎に定めています。 ナブテスコのコア価値の分析は、事業競争力の源泉となるコア価値を洗い出し、「非公開情報として保護するもの」、「特許などで権利化していくもの」などに分類して、適切な管理とともに戦略的な活用を推進しています。また、IPランドスケープを活用して、市場の動向や顧客のニーズ、競合他社の事業活動状況や技術開発動向を調査・分析し、コア価値の保護・活用に加え、新事業や開発テーマ、M&A/CVC候補の探索・分析等を行っています。さらに、知財創造を新たな業績評価の基準に加え、各カンパニーが事業計画にコア価値の創造、保護・管理、活用、リスク管理等の知財戦略を盛り込み、実行することを義務づけています。 ナブテスコのコア価値創造は、業績評価の項目に加えられており、各カンパニーが数値目標を設定し、実行計画として策定しています。また、コア価値創造によって会社の発展や事業拡大に貢献した発明や発明者は、CEOから優秀発明表彰を受けることができます。さらに、ナブテスコは2018年に知財功労賞経済産業大臣表彰を受賞しました。これらのことから、ナブテスコのコア価値創造は高く評価されていると言えます。 ナブテスコのコア価値創造の具体例として、以下のようなものがあります。 精密減速機:ナブテスコは、産業用ロボットや人工衛星などに使われる精密減速機の世界シェアトップを誇ります。この製品は、高い精度と耐久性を持ち、微細な動きを正確に制御することができます。ナブテスコは、この技術を活かして、新たな市場や用途に展開しています。例えば、医療用ロボットや自動運転車などです。 航空機器:ナブテスコは、航空機の飛行制御や降着装置などに使われる油圧機器や電動機器を開発・製造しています。これらの製品は、安全性と信頼性が非常に高く、世界の主要な航空機メーカーから採用されています。ナブテスコは、航空機の環境負荷を低減するために、電動化や軽量化などの技術革新に取り組んでいます。 自動ドア:ナブテスコは、日本国内で最も多くの自動ドアを設置しているメーカーです。この製品は、安全性と快適性を兼ね備えた高品質なもので、駅や空港などの公共施設だけでなく、商業施設やオフィスビルなどでも広く利用されています。ナブテスコは、自動ドアのシステム化やモジュール化を進めており、お客さまのニーズに応える多様なソリューションを提供しています。 3.ナブテスコのIPランドスケープ ナブテスコのIPランドスケープは、市場の動向や顧客のニーズ、競合他社の技術開発状況などを調査・分析し、事業のコア価値を保護・活用するための知的財産戦略活動です。ナブテスコは、このIPランドスケープを用いて、新事業や開発テーマ、M&A/CVC候補の探索・分析などを行い、企業価値の向上や事業成長に貢献しています。ナブテスコの知的財産部は、IPランドスケープに基づくコア価値の獲得強化策や知財リスク管理などを全社で推進する役割を担っており、経営者型の知財経営戦略を実践しています。 4.ナブテスコの知財KPI ナブテスコの知財KPIは、知的財産活動の成果や効果を定量的に評価するための指標で、以下のようなKPIを設定しています。 知財創造届出件数:発明、意匠、ノウハウに関する知財創造届出の件数です。このKPIは、知財創造活動の活性度やイノベーション創出の加速度を示すものです。ナブテスコでは、2013年度から2021年度にかけて、このKPIを約5倍に増大させました。 発明者割合:開発者だけでなく生産技術者を含む技術者に対する知財創造届出を行った発明者等の実数の比率です。このKPIは、知財創造する人の多様性や知の探索によるイノベーションを推進する施策の効果を示すものです。ナブテスコでは、2022年からこのKPIを設定しました。 知財創造届出件数を増やすために、ナブテスコでは以下のような取り組みをしています。 業績評価の基準に「知財創造」を設定:社内カンパニーとグループ会社の業績評価項目に「知財創造」を新たに加え、コア価値(知財・無形資産)を獲得・強化するための知的財産戦略活動を体系化し、事業計画の一つとして策定、実行することを徹底しています。また、その活動結果を知的財産部長が審査を行い、カンパニー社長や社員の賞与等の業績評価に反映しています。 優秀発明者表彰:事業に貢献する発明をなした方々に対して、会社の創立記念式典で優秀発明者表彰を行い、全社でその栄誉を称え、社員の創造意欲の高揚を図っています。優秀発明者は、本社エントランスに掲示されている発明等や、優秀発明者を示すバッジで紹介されています。 知財創造支援者制度:新たな市場ニーズ等を収集し、イノベーションに繋げた営業担当者等を対象とした知財創造支援者制度により、全社一丸となったイノベーション推進を図っています。知財創造支援者は、技術者と連携してアイデアやノウハウの創出や特許出願等の手続きをサポートします。 発明者割合のKPIとは、開発者だけでなく生産技術者を含む技術者に対する知財創造届出を行った発明者等の実数の比率です。このKPIは、知財創造する人の多様性や知の探索によるイノベーションを推進する施策の効果を示すものです。ナブテスコでは、2022年からこのKPIを設定しました。ナブテスコの発明者割合(ノウハウ・意匠創作者含む)の目標は、2024年度に80%となっています。 発明者割合のKPIは、年度単位で算出されるものであり、多様性が継続的に維持・改善されているかを示すものです。ナブテスコでは、このKPIを高めるために、以下のような取り組みをしています。 知財創造支援者制度:新たな市場ニーズ等を収集し、イノベーションに繋げた営業担当者等を対象とした知財創造支援者制度により、全社一丸となったイノベーション推進を図っています。知財創造支援者は、技術者と連携してアイデアやノウハウの創出や特許出願等の手続きをサポートします。 社内外のコラボレーション:社内外の専門家やパートナー企業とのコラボレーションにより、新たな視点や知見を得て、知財創造活動に活かしています。例えば、オープンイノベーションセンター「Nabtesco Open Innovation Lab(NOIL)」では、社内外のスタートアップや大学と連携して、新事業や新技術の開発に取り組んでいます。 イノベーション創出を支える知財活動 https://nabtesco.disclosure.site/ja/themes/80 知財ガバナンスに関する企業の取組事例集(旭化成、味の素、伊藤忠商事、オムロン、キリンHD、東京海上HD、ナブテスコ、日立製作所、丸井グループ) 12/7/2022 https://yorozuipsc.com/blog/3518906 知財ガバナンス時代におけるナブテスコの知財活動 15/2/2022 https://yorozuipsc.com/blog/6890739 ナブテスコにおける知財・無形資産の投資・活用戦略 16/12/2021 https://yorozuipsc.com/blog/6835057 ナブテスコのイノベーションリーダーへの変貌を促す知財ガバナンスへの挑戦 8/9/2021 https://yorozuipsc.com/blog/5552126 H2Hセミナー「ナブテスコ知財経営戦略の伝承と深化~」 20/1/2021 https://yorozuipsc.com/blog/h2h5168433 前任と新任者が語る、ナブテスコ知財経営戦略の伝承と深化 17/1/2021 https://yorozuipsc.com/blog/6804418 ナブテスコのIPランドスケープ 5/12/2020 https://yorozuipsc.com/blog/ip1607966 知財高裁でのドワンゴ逆転勝訴、属地主義の原則は維持しつつ一定の条件下において緩やかに侵害を認める判断として歓迎されているようで、予見できる明確な基準が次の課題のようです。
令和4年(ネ)第10046号事件は、ドワンゴ社が、FC2社とホームページシステム社に対してコメント配信システムの特許権を侵害しているとして差止めと10億円の損害賠償を求めたもので、サーバとネットワークを介して接続された複数の端末装置を備えるシステムの発明に関する特許権侵害の争点となったものです。具体的には、そのサーバが日本国外に存在し、ユーザ端末が日本国内に存在するシステムを新たに作り出す行為が、「生産」に該当し、それが特許権を侵害するか否かが問われました。 原審(東京地裁)では、属地主義の原則に基づき被告システムの直接侵害は認められずドワンゴ社の請求はすべて棄却されました。しかし、日本弁理士会や日本国際知的財産保護協会(AIPPI)などの意見は、条件付きで域外適用を肯定する方向性を示しています。特にAIPPIは、国際調和の観点から、被告システムの生産が日本の領域内で行われたものとして評価し得るとの立場をとっていました。 控訴審(知財高裁大合議)ではFC2社に対する一部の請求が認容されました。すなわち、控訴審では、FC2社が日本国外にあるサーバから日本国内にあるユーザ端末にファイルを配信することで、コメント配信システムを新たに作り出す行為が、特許法2条3項1号の「生産」に該当し、特許権を侵害すると判断され、FC2社にコメント機能の配信差し止めと1100万円余りの賠償を命じました。特に、システムが日本領域内から制御され、サービスが日本の顧客に向けられているという事実が重要視されました。 この判断には、令和3年の特許法改正で導入された第三者意見募集制度が初めて適用され、多数の意見書が提出されたこと(寄せられた意見のうち計45通が証拠として提出されたとのこと)が影響したと考えられます。 ドワンゴ社は26日付でリリースを発表し、「知財高裁が大合議で、サーバを国外に置くことにより容易に特許権を潜脱することを認めず、我が国の特許権を適切に保護すべき旨を示したものであり、画期的な判決であると考えている」としています。 この問題は、海外クラウドサーバを使用したWeb2.0だけでなく、ブロックチェーン技術を用いたWeb3.0関連特許に対しても影響を与える可能性があります。特に、ブロックチェーンではノード端末が世界中に分散しているため、Web3関連の発明は大きな影響を受ける可能性が指摘されています。 令和4年(ネ)第10046号 判決要旨 https://www.ip.courts.go.jp/vc-files/ip/2023/R4ne10046.pdf ネット時代「抜け道」塞ぐ ドワンゴ逆転勝訴、知財高裁 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE159UW0V10C23A5000000/ ドワンゴ事件-大合議判決(域外適用を認めた画期的な判決) https://ipstart.jp/grand-panel-decision-on-dwango-case/ FC2等に対する特許権侵害訴訟の控訴審大合議判決に関するお知らせ 2023.05.26 株式会社ドワンゴ https://dwango.co.jp/news/6282152199061504/ 国境を跨ぐ行為が「生産」に当たると判断された事案の「判決要旨」 ― 知財高大判令和5年5月26日(令和4年(ネ)第10046号) 2023-05-28 https://patent-law.hatenablog.com/entry/2023/05/28/110845 はじめに 知財高大判令和5年5月26日(令和4年(ネ)第10046号)[コメント配信システム]につき、判決言渡日当日、知財高裁ウェブページにおいて「判決要旨」が掲載された一方、判決文については現時点(2023年5月28日)では掲載されていない。 本判決について多数の報道がなされてはいるが、「判決要旨」を読むと多くの疑問が沸く。(いずれ掲載されるであろう)判決文を見れば解決する疑問もあるだろうし、そもそも便宜的に用意された「判決要旨」を細かく分析することに意味はないかも知れないが、私個人の備忘録として、これら疑問を記すのが本稿の目的である。 1.ブリヂストンの知財戦略
ブリヂストンは、2018年までは知的財産報告書を毎年公開し、その中で知的財産活動の重点課題や事業への貢献、リスク対応情報などを紹介していましたが、知的財産活動の内容や成果をより分かりやすく伝えるために、その後は、統合報告書に統合しており、統合報告書では、知的財産活動の概要や事例、知財KPIなどが紹介されています。 統合報告書の中の、知的財産活動の概要や事例については、以下のように紹介されています。 知的財産活動の概要 ブリヂストンは、知財戦略を「事業価値創出の重要な要素」と位置づけており、知財活動を通じて事業価値を高めることを目指しています。そのために、ROICを中核とした新たな経営指標や、知財ミックスを活用したソリューション提供などの施策を展開しています。 ブリヂストンは、知財活動の進捗状況を定期的に公表しており、サステナビリティビジネス構想やBridgestone Innovation Parkなどの取り組みを紹介しています。また、モータースポーツ活動における知財の役割や、化工品・多角化事業における知財活用などについても説明しています。 知的財産活動の事例 ブリヂストンは、自社や業界の知財を分析するツールであるIPL(IPランドスケープ)を活用して、見える知財(特許など)と見えない知財(ノウハウなど)を組み合わせた知財ミックスを設計し、事業変革やソリューション提供に役立てています。例えば、タイヤ空気圧管理システム「Tirematics」やタイヤライフサイクルマネジメントシステム「Tirematics Fleet Solution」などがその成果です。 ブリヂストンは、Bridgestone Innovation Parkという研究開発拠点を2020年に開所しました。ここでは、最先端の技術やデザインを駆使して、新たな価値創造に挑戦しています。例えば、空気が不要なタイヤ「Air Free Concept Tire」や、タイヤと道路の摩擦熱を電気エネルギーに変換するタイヤ「Thermo Piezo Tire」などがその成果です。 2.ブリヂストンの知財KPI ブリヂストンは、Bridgestone 3.0 Journey Report(統合報告2022)のP.66で、「知財の投資効果測定及び検証には経営の重要指標であるROICの考え方を取り入れており、PDCAを通じた、効率的で戦略的な知財投資マネジメントを推進しています。各事業領域における知財価値を算定するROIC投資対効果指数を結果系KPI、知財ミックス策定数と契約達成数を要因系KPIと位置づけ、知財活用の事業価値転換度の測定・検証を行っています。」と記載しています。 ブリヂストン の知財KPIは、以下のようになります。実際にどの程度の目標を掲げ、どの程度の達成度になっているのかなどは、開示されていないようです。 結果系KPI:ROIC投資対効果指数 各事業領域における知財価値を算定する指標で、知財投資額に対する知財収益額の割合を示す。 知財投資額は、特許出願費用やライセンス料などの知財関連コストを、知財収益額は、特許使用料やライセンス収入などの知財関連収入を表す。 ROIC投資対効果指数が高いほど、知財の投資効果が高いと判断できる。 要因系KPI:知財ミックス策定数と契約達成数 知財ミックスとは、見える知財(特許など)と見えない知財(ノウハウなど)を組み合わせて、事業価値を創出する知財エコシステムのことである。 知財ミックス策定数は、IPL(IPランドスケープ)を用いて、自社や業界の知財を分析し、事業変革やソリューション提供に役立つ知財ミックスを設計した数を示す。 契約達成数は、知財ミックスを活用して、事業提携やライセンス契約などを実現した数を示す。 知財ミックス策定数と契約達成数が多いほど、知財の活用度が高いと判断できる。 知的財産情報の開示 ブリヂストン、KDDI、ソフトバンク、富士通 22/3/2023 https://yorozuipsc.com/blog/-kddi ブリヂストンの知財・無形資産投資の開示 29/11/2022 https://yorozuipsc.com/blog/6855102 「証券アナリストによるディスクロージャー優良企業」(2022年度)に選定 自動車・同部品・タイヤ部門において第1位を初受賞 2022年10月14日 https://www.bridgestone.co.jp/corporate/news/2022101401.html デジタルトランスフォーメーションを推進する企業として「DX銘柄2022」に3年連続で選定 https://www.bridgestone.co.jp/corporate/news/2022060801.html Bridgestone 3.0 Journey Report(統合報告2022) https://www.bridgestone.co.jp/ir/library/integrated_report/pdf/ir2022_07_spread.pdf ブリヂストンとトッパンフォームズ、通信性能を最大化するタイヤ用次世代RFIDタグの開発と実装に向けた共同開発開始 2022年10月31日 09:30 https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1451613.html ブリヂストンとトッパンフォームズが通信性能を最大化するタイヤ用次世代RFIDタグの開発とその実装に向けた共同開発を開始 2022年10月28日 https://www.bridgestone.co.jp/corporate/news/2022102801.html ブリヂストンCEO「自動運転用タイヤ開発」 新興と連携 2022年10月20日 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2064R0Q2A021C2000000/ 知財は価値を生む「ウナギ屋秘伝のタレ」 ブリヂストン https://yorozuipsc.com/blog/7515775 ブリヂストンにおけるIPランドスケープの活用 https://yorozuipsc.com/blog/ip9669315 IP ePlatビジネス https://ipeplat.inpit.go.jp/Elearning/View/Course/P_coseview.aspx#no-back 第2回IPランドスケープセミナー(第1部) 株式会社ブリヂストンの取組について(10分55秒) https://ipeplat.inpit.go.jp/Elearning/View/Course/P_studyview2.aspx#no-back ブリヂストンでの知財投資 https://yorozuipsc.com/blog/9385185 ブリヂストンのIPランドスケープ https://yorozuipsc.com/blog/ip8178738 「知財ガバナンス研究会」の分科会のひとつ「知財コンサル等分科会」では、特許事務所やコンサルティング会社32社が参加し、プライム市場上場企業のうち時価総額上位 950 社を対象に、知財・無形資産投資・活用戦略等に関する情報開示内容を調査・分析し、「東証プライム市場上場企業における知財・無形資産ガバナンスに関する対応状況調査・分析」としてまとめました。 その際に、知財・無形資産に関する KPI の記載についても調査しましたが、複数の組織で分担して調査した結果を観ると、企業が将来の目標として掲げている指標(KPI)なのか、単なる過去の実績(エビデンスの類)として掲載したものなのか、峻別が困難な例が散見され、境界を厳格に定めることが困難であったため、報告内容には、知財・無形資産 KPI の事例は除かれました。 その後、「知財コンサル等分科会」サブリーダの高野誠司弁理士が、上記分析の調査過程で記録された各種情報源の URL などを活用し再調査を行い、グレーなものは全て排除して、KPI と明示のある指標と、企業の明確な目標となっている指標を抽出した結果、 31 社の 47 指標(KPI)がピックアップされています。 特許関連の KPI を細分化すると、特許出願数が大半であり、専門家が KPI として有望視する被引用件数に関する KPI はわずか1件のみ、KPI の名称が記載されていても具体的な目標数値が伏せられているケースがあったり、自らコントロール可能な KPI を無難に表現しているなど、辛口の分析になっています。 今後の各社の工夫が期待されます。 知財・無形資産 KPI の事例分析 https://takano-pat.com/struct/wp-content/uploads/Report20230407V1.1.pdf CGC 対応における知財・無形資産指標(KPI)の留意点 https://takano-pat.com/struct/wp-content/uploads/Report20230130V1.1.pdf 東証プライム市場上場企業における知財・無形資産ガバナンスに関する対応状況調査・分析 2023年3月24日 知財ガバナンス研究会 知財コンサル等分科会 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai21/siryou7-1.pdf 1.旭化成の知財戦略
旭化成は、新事業創出に向けて、事業戦略、知的財産戦略、研究開発戦略の一体化を図っており、強い権利の確保と活用に重点を置いています。特に、海外知的財産戦略では、アメリカ、中国、ヨーロッパ、および新興国における知財力の向上を目指しています。 また、旭化成は自社や競合の知的財産情報を分析して事業戦略に生かす「知財のDX」に力を注いでおり、IP(知財)ランドスケープにより、特許情報や市場情報などを可視化し、自社の技術や特許のポジショニングや競合他社の戦略を把握し、研究開発と事業経営に直結した知的財産活動を推進することで、事業競争力を維持することを目指しています。 旭化成の知財戦略に関する詳細な資料としては、旭化成の知的財産報告書があります。これは、旭化成グループの研究開発と知的財産の考え方や活動を掲載したもので、毎年発行されており、最新版は2022年版で、2021年度の実績や中期経営計画における知財戦略などが紹介されています。 2.知財戦略説明会 旭化成は2021年7月に「知財戦略説明会」を開催し、前中期経営計画に整合した知財活動や新中期経営計画達成に向けた知財・無形資産活用戦略、GG10(次の成長を牽引する事業)の加速に向けた知財・無形資産活用戦略例などが説明されました。説明会の資料は旭化成のウェブサイトで公開されています。 この説明会では、旭化成グループにおける無形資産の考え方、ならびに知財・無形資産活用の戦略について、代表取締役社長兼社長執行役員の工藤氏と知財インテリジェンス室シニアフェローの中村氏が説明しました。 説明会では、以下の3つの内容が紹介されました。 1. 前中期経営計画(2020年度~2021年度)に整合した知財活動 - 戦略的知財網構築/活用 - 新事業創出に向けたプラットフォーム構築 - IPランドスケープの推進 2. 新中期経営計画(2022年度~2024年度)達成に向けた知財・無形資産活用戦略 - 経営・事業方針にタイムリーに呼応 - 多様な自社知財の価値最大化 - IPLを活用した自他社の無形資産の可視化 3. GG10(次の成長を牽引する事業)の加速に向けた知財・無形資産活用戦略例 - 水素関連事業 - 自動車関連事業 - 環境配慮型住宅事業 - グローバルスペシャリティファーマ関連事業 旭化成の知財戦略説明会について、投資家やステークホルダーなどの評判は、概ね好意的なものが多かったようです。例えば、日刊ケミカルニュースは、旭化成の知財戦略が「徹底的に事業・経営の戦略に絡んでおり一言でいえば野心的だ」と紹介しました。また、経済産業省METI Journal ONLINEは、投資家から「知財を把握し、経営戦略の方向性に沿って活用していることが理解できた」といったコメントがあったと報じました。 一方で、企業価値の向上と知財・無形資産の結びつきをより明確にしてほしいという要望も出たということです。 3.知財活動の成果 これらの知財戦略は、旭化成の競争力や収益力につながっています。 例えば、2018年に米自動車内装材大手のセージ・オートモーティブ・インテリアズを1200億円で買収した際には、IPランドスケープを活用して自社保有の技術とマッチングさせて共同開発の提案を行うことができました。 また、2021年度連結決算では、売上高が前期比3.5%増の2兆100億円、営業利益が同9.4%増の2100億円となり、過去最高水準を更新しました。 4.知的財産部と知財インテリジェンス室 旭化成でIPランドスケープを推進しているのは、知的財産部と知財インテリジェンス室です。 知的財産部は、特許の出願や権利化に向けた手続きを行うとともに、IPランドスケープによる分析や提案を行っています。 知財インテリジェンス室は、2022年4月に新設された組織で、経営企画担当役員に直属し、自社や他社の無形資産を可視化し、経営・事業戦略に資する情報を提供しています。 知財インテリジェンス室の具体的な活動内容は、以下のようなものです。 経営・事業方針にタイムリーに呼応し、自社の無形資産を最大限活用するための戦略モデルを考案し、経営層や事業部門に提供する。 IPランドスケープを活用して、自社や他社の無形資産を可視化し、市場動向や競合状況、パートナー探索などに役立てる。 無形資産を活用した新事業創出やビジネスモデル策定に知財面から貢献する。 人財レコメンドシステムを開発・提供し、異なる領域の技術を有する従業員同士の繋がりやコミュニティー創出をサポートする。 5.旭化成の知財KPI 旭化成の知財KPIは、GG10(次の成長を牽引する事業)関連の有効特許件数で、2021年度の30%超を2030年度に50%超にすると宣言しています。 また、知財KPIに準ずる指標として、特許価値の向上、有効特許件数の増加、無形資産活用による収益貢献の3つの指標があり、これらの指標が、旭化成グループの中期経営計画に沿った知財戦略の達成度を測るために設定されています。 旭化成がAI特許調査プラットフォームAMPLIFIED を全社員に導入 事業発案を後押し 28/11/2022 https://yorozuipsc.com/blog/archives/11-2022 旭化成グループにおける知財インテリジェンス活動 https://yorozuipsc.com/blog/2845998 オムロン、旭化成の事例 https://yorozuipsc.com/blog/september-13th-2022 旭化成 「特許価値」を投資家との対話に生かす https://yorozuipsc.com/blog/1755370 経営目標への「非財務KPI」の導入 旭化成、三井化学 https://yorozuipsc.com/blog/kpi7686701 知財ガバナンスに関する企業の取組事例集(旭化成、味の素、伊藤忠商事、オムロン、キリンHD、東京海上HD、ナブテスコ、日立製作所、丸井グループ) https://yorozuipsc.com/blog/3518906 旭化成初の「知財戦略説明会」 https://yorozuipsc.com/blog/3788397 旭化成IPランドスケープの新段階、知財インテリジェンス室の創設 https://yorozuipsc.com/blog/ip7277107 「経営判断の重要なツール」旭化成会長 小堀秀毅氏 https://yorozuipsc.com/blog/3283962 旭化成が注力する「知財のDX」 https://yorozuipsc.com/blog/dx4752850 コーポレートガバナンスコード改訂を見据えた旭化成の考え方・対応 https://yorozuipsc.com/blog/5564456 IPランドスケープのススメ「旭化成株式会社」 https://yorozuipsc.com/blog/ip3713748 旭化成、レンタル移籍で他流試合 https://yorozuipsc.com/blog/7597460 IPランドスケープの効果的な活用 旭化成 貝印 KDDI https://yorozuipsc.com/blog/ip-kddi 旭化成、知財のDX化 自由奔放なリケジョが仕掛け人 https://yorozuipsc.com/blog/dx3072161 旭化成CVCが米国で10年間成長し続ける秘訣 https://yorozuipsc.com/blog/cvc10 旭化成CVC「CVCから事業を生み出す3つの仕組み」 https://yorozuipsc.com/blog/cvccvc3 新たな価値提供分野における旭化成のIPランドスケープ https://yorozuipsc.com/blog/ip9319379 ソニー、デンソー、本田技研、昭和電工、住友化学、旭化成の知財活動 https://yorozuipsc.com/blog/2274786 新事業創出に向けての旭化成におけるIPランドスケープ https://yorozuipsc.com/blog/ip6773386 知財を企業価値に変える ~旭化成が挑むIP人材育成を紐解く~ https://yorozuipsc.com/blog/-ip7565863 日本知財学会2020年度秋季シンポジウム 旭化成 https://yorozuipsc.com/blog/20203497122 「経営に戦略的に活かす知財情報」旭化成 https://yorozuipsc.com/blog/6719876 旭化成のDX主要テーマ IPランドスケープ https://yorozuipsc.com/blog/dx-ip 古河電工は、2022年5月に発表した中期経営計画2022~2025(25中計)において、IPランドスケープを知財活動の中心に据えることを宣言しました。古河電工は、IPランドスケープを確実に実行することで、各事業領域で活用する知的資産をオープン&クローズ戦略に基づいて創出・蓄積し、蓄積した知的資産で事業・コア技術を保護し、競争優位の構築に貢献することを目指しています。
このような取り組みの一環として、古河電工はIPランドスケープの実施率を知財KPIとして使用しています。IPランドスケープの実施率とは、各事業部門が定めたIPランドスケープの実施計画に対する実施状況の割合を示す指標です。古河電工は、この指標を用いて、知財部門と事業部門の連携や意識向上を図り、IPランドスケープの質や内容の向上にも努めています。 古河電工がIPランドスケープの実施率を知財KPIとして使用していることについては、以下のような議論があります。 •肯定的な見方としては、以下のような点が挙げられます。 IPランドスケープは、知財・無形資産の活用において重要なマネジメントツールであり、その実施率を知財KPIとして使用することで、知財活動の進捗状況や成果測定を客観的に行うことができる。 IPランドスケープの実施率を知財KPIとして使用することで、知財部門と事業部門のコミュニケーションや協働が促進され、知財戦略と事業戦略の連携が強化される。 IPランドスケープの実施率を知財KPIとして使用することで、IPランドスケープの重要性や意義が経営陣や事業担当者に浸透し、知財意識や文化が醸成される。 •否定的な見方としては、以下のような点が挙げられます。 IPランドスケープの実施率は、知財・無形資産の活用に関するプロセス指標であり、その単純な数値だけでは、知財・無形資産の活用の成果や効果を示すことはできない。 IPランドスケープの実施率を知財KPIとして使用することで、IPランドスケープの数値目標達成が目的化され、IPランドスケープの質や内容が軽視される恐れがある。 IPランドスケープの実施率は、自社内でのみ有効な指標であり、他社と比較することはできない。また、IPランドスケープは自社の事業内容や目的に応じて選択や重み付けを行う必要があるため、一律に適用することは適切ではない。 以上のように、古河電工がIPランドスケープの実施率を知財KPIとして使用していることについては、肯定的な見方も否定的な見方もあることがわかります。 また、古河電工は、IPランドスケープの質や内容を評価するために、以下のような取り組みを行っています。 • IPランドスケープの実施計画には、分析の目的や対象、方法、期間、担当者などを明確に記載し、事前に知財部門と事業部門で合意することで、分析の方向性や範囲を確認しています。 • IPランドスケープの実施後には、分析結果や提案内容を知財部門と事業部門で共有し、フィードバックや改善点を検討しています。また、分析結果や提案内容を経営陣や関係者に報告し、評価や承認を得ています。 • IPランドスケープの実施状況や成果は、知財KPIとして定期的にモニタリングし、達成度や効果測定を行っています。また、知財KPIは事業部門の業績評価にも反映されています。 • IPランドスケープの実施者は、知財部門と事業部門から選出され、必要な知識やスキルを習得するために教育プログラムや講演会などに参加しています。また、実施者同士で情報交換やベストプラクティスの共有を行っています。 以上のように、古河電工はIPランドスケープの質や内容を評価するために、計画・実施・評価・改善のサイクルを回し、知財部門と事業部門の連携や実施者の育成にも力を入れています。 古河電工がIPランドスケープで分析した事例がいくつか紹介されています。 • 電力事業部門では、海外市場における電力ケーブルの需要や競合状況を分析し、自社の強みや弱みを把握するとともに、新規参入や拡販のための知的財産戦略を立案しました1。 • ファイバ・ケーブル事業部門では、光ファイバの技術動向や特許動向を分析し、自社の技術ポートフォリオと比較することで、技術開発の方向性や特許出願の優先順位を決定しました1。 • 自動車部品事業部門では、自動車産業の変革に伴うワイヤハーネスの需要や競合状況を分析し、自社の製品やサービスの差別化要因や付加価値を明確にするとともに、知的財産権で保護することで、競争優位性を高めました2。 • AT・機能樹脂事業部門では、半導体製造用テープの技術動向や特許動向を分析し、自社の技術ポートフォリオと比較することで、技術開発の方向性や特許出願の優先順位を決定しました3。 以上のように、古河電工はIPランドスケープで分析した事例をもとに、事業戦略や研究開発戦略に反映させることで、「守りの知財」と「攻めの知財」を両立させています。 古河電工グループ 中期経営計画2022-2025の達成を支える知財活動 https://www.furukawa.co.jp/rd/review/fj142/fj142_02.pdf 収益機会のサステナビリティ指標としてIPランドスケープ実施率を設定している古河電工 https://yorozuipsc.com/blog/ip8868546 特許庁が毎年行っている産業財産権制度問題調査研究の令和4年度報告書が公表されました。
令和4年度の研究テーマは、 (1)企業価値向上に資する知財経営の普及啓発に関する調査研究 (2)イノベーションの事業化促進において知財人材に求められるスキルに関する調査研究 (3)オープンイノベーション促進のためのモデル契約書に関する調査研究 で、いずれも非常に参考になるものです。 特許庁産業財産権制度問題調査研究について 令和5年5月 特許庁企画調査課 https://www.jpo.go.jp/resources/report/sonota/zaisanken-seidomondai.html 産業財産権制度を巡る国内外の環境が激しく変化する中、我が国の産業財産権制度や運用等が更なるイノベーション促進や産業競争力の強化に資するものとなるよう、実態を踏まえた不断の見直しを行う際に必要となる情報収集や課題抽出・分析、事例把握等を行うとともに、専門家を交えた研究委員会を開催する等して、産業財産権法のみならず隣接法領域を含む広い視点から分析・研究を行っております。以下、令和4年度までに実施した当該事業において取りまとめられた報告書を公表いたします。 令和4年度研究テーマ一覧 (1)企業価値向上に資する知財経営の普及啓発に関する調査研究 調査対象企業において、経営層と知財部門を含む企業内チームとの十分な意思疎通・連携のもと、知財情報を活用しつつ中長期的な事業成長に資する知財戦略を策定・実践することを通じ、国内企業における知財経営の普及啓発につなげることを目的として、本調査を実施した。 全体版(PDF:3,494KB) 要約版(PDF:608KB) 「知財経営の実践に向けたコミュニケーションガイドブック~経営層と知財部門が連携し企業価値向上を実現する実践事例集~」について (2)イノベーションの事業化促進において知財人材に求められるスキルに関する調査研究 昨今、スタートアップによるイノベーションの加速が求められているところ、スタートアップの事業成長に必要となる知財戦略の設計と実装を担う知財人材の育成・拡充を目的として、本調査を実施した。 全体版(PDF:16,793KB) 要約版(PDF:1,702KB) (3)オープンイノベーション促進のためのモデル契約書に関する調査研究 オープンイノベーションを実現するための手段として、従来の常識とされていた交渉の落とし所ではない新たな選択肢を提示したモデル契約書の認知度を向上させるべく、関係各所のヒアリング等を通じて、モデル契約書のより望ましい広報戦略の在り方を検討するとともに、民間事業者やコミュニティが主体的にモデル契約書を改善・発展させていくまでのプロセスや方法論を実証しつつ、その効果や実現可能性を検討することを目的として、本調査を実施した。 全体版(PDF:1,921KB) 要約版(PDF:1,030KB) |
著者萬秀憲 アーカイブ
June 2023
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