ソニーグループ株式会社は、現 取締役 代表執行役 副社長 兼 CFOの十時裕樹が、2023年4月1日付で、取締役 代表執行役 社長 COO 兼 CFOに就任することを決定、経営体制強化の一環として、現 執行役 専務の御供俊元が、2023年4月1日付で、執行役 副社長 CSOに就任することも決議、ということです。
日経新聞の記事では、『「最大の注目点は副社長人事ではないか」。2日、あるソニー関係者はつぶやいた。御供(みとも)俊元・執行役専務が4月から副社長CSO(チーフ・ストラテジー・オフィサー、最高戦略責任者)に就くことだ。』『御供氏は1985年のソニー入社以来、40年近く知財部門に携わるエキスパートだ。スタートアップへの投資戦略の責任者でもある。そんな知財を知り尽くした人物が副社長として戦略責任を担うことになる。』と話を進めています。 期待したいと思います。 ソニーグループの経営体制について https://www.sony.com/ja/SonyInfo/News/Press/202302/23-003/ ソニーG、パーパス経営へ戦略責任者復活 知財が要 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC02D2O0S3A200C2000000/ なぜ大企業はWeb3に取り組むべきなのか? MUFG、ソニー、伊藤穰一が語った理由 2022年11月22日 https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2211/22/news065_2.html 仮想現実は新時代へ知財で探る「メタバース」 ソニーグループ株式会社 Vol.53 Contents 広報誌「とっきょ」2022年8月1日発行号 https://www.jpo.go.jp/news/koho/kohoshi/vol53/01_page1.html 世界的企業が続々と参入を進める「メタバース」。今号ではこの“バズワード”を、知財を鍵に解き明かします。専門家の視点から見たメタバースにおける知財保護の懸念点や展望、そして日本におけるXR領域のリーディングカンパニーであるソニーグループの取組を紹介します。 Corporate Report 2022 統合報告書 https://www.sony.com/ja/SonyInfo/IR/library/corporatereport/CorporateReport2022_J.pdf コーポレートガバナンス報告書 2022年7月5日 https://www.sony.com/ja/SonyInfo/IR/library/Governance_report.pdf ホンダとソニーのEV連合 https://yorozuipsc.com/blog/ev 共創を加速する知財戦略 ソニーの新素材プロジェクトを紐解く https://yorozuipsc.com/blog/6335174 ソニーグループ株式会社(企業価値向上に資する知的財産活用事例集) https://yorozuipsc.com/blog/2178370 ソニーが新ファンド運用開始、投資事業へ本格参入 250億円超の規模目指す 2022年2月17日 https://jp.reuters.com/article/sony-fund-idJPKBN2KM0BH ソニーの取組事例:知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会(第3回)13/9/2021 https://yorozuipsc.com/blog/34043715 ソニーが圧倒的な高収益体質に大復活、知財や人材力、高PBRに反映 17/7/2021 https://yorozuipsc.com/blog/pbr ソニー、デンソー、本田技研、昭和電工、住友化学、旭化成の知財活動 27/12/2020 https://yorozuipsc.com/blog/2274786 経営に戦略的に活かす知財情報 ソニー 11/9/2020 https://yorozuipsc.com/blog/6378475 事業・知財連携 DNA伝える ソニー常務 御供俊元氏 2020/7/27付日本経済新聞 朝刊 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61816790S0A720C2TCJ000/ 知財管理 70巻(2020年) / 5号 / 585頁 AI倫理に関する動向とソニーの取り組み ─クリエイティビティとテクノロジーの力で,世界を感動で満たす─ http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/search/detail.php?chizai_id=1d6c784a039f4af076c62fd243a08288 近年、AIはディープラーニングの時代を迎え、その性能が飛躍的に進歩することで実社会 に幅広く浸透するようになってきた。一方で、AIのブラックボックス化による判断プロセスの不透明 さやデータ等のバイアスに基づく差別、AIによって代替される雇用や創出される雇用にどう対応して いくかといった様々な課題が提起されている。そこで、各国の政府機関・企業・標準化団体は、AI倫 理に関する指針や標準規格の検討を進めている。しかし、米国政府等からはAIへの過度の規制で技術 の発展を阻害しないようにとの意見も出てきている。本稿は、各国の政府機関・企業・標準化団体の AI倫理に関する動向を紹介しつつ、エレクトロニクスからエンターテイメント、金融事業までAIを 活用した多様なビジネスをグローバルに手掛けるソニーのAI倫理に関する取り組みを紹介する。そし て、日本企業に対して、AI技術を人間との協調のために活用することで、多様性を許容し、様々な人 たちが快適に生活し、活躍できる「インクルージョン社会1)」を実現していくことを提言するもので ある。 創業者と仕事をした最後の世代が語るソニー流外部連携術 2019.10.30 https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00005/102400063/ ソニーが新型アイボ開発を「発売日ありき」で進めた真の理由 2018.6.14 https://diamond.jp/articles/-/168825 知財管理 68巻(2018年) / 4号 / 517頁 知財部門による新たな価値創造の模索─ソニーの知財部門におけるインキュベーション活動の取り組み─ http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/search/detail.php?chizai_id=670c42fd1f589a22a9f0aa314bffe40c 第4次産業革命において、異業種間の垣根が低くなるとともにデータ流通による新しい産業やエコシステムが生まれてきている。知財部門はその環境変化を的確に捉えるとともに新しい価値の創造をしていくべきではないだろうか。ソニーの知的財産部門では特許分析などを活用した技術・業界動向の分析を行うとともに、社内では開発を行っていない技術領域において他社や研究機関との知財協業による知財主導での知財創出を行い、またそれらを通じて得た知見をもとに新規事業創出支援を行う専門組織を設けている。また社内のコーポレートベンチャー投資活動との連携も進めている。これら新たなインキュベーション活動を紹介しながら、知財部門による新たな価値創造とは何か、そしてそれに必要な人材とその育成について述べる。 【ソニー・御供俊元 執行役員コーポレートエグゼクティブ インタビュー】知財は道具だ 「発明者に寄り添い、発明者の想いにどう会社として向き合っていくのか」2017/12/27 https://journal.meti.go.jp/p/164/ 知財活性化プロジェクト 活動報告 http://www.jipa.or.jp/jyohou_hasin/sympo/pdf/17sympo/chizai_kassei.pdf 【秘録】特許訴訟で、ウォークマンの「発明者」が消えた日 2017/8/14 https://newspicks.com/news/2429703/body/ 特許6922737 移動体、情報処理装置、移動体システム、情報処理方法および情報処理プログラム ソニー株式会社【発明者】御供 俊元 芹田 和俊 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-6922737/5E81F2F21A73354E1BDF6E4658471F41A412A468C8416A350C2355664E2F94CD/15/ja 米AIスタートアップ企業に資本参加 ソニー 2016.05.25 https://www.newssalt.com/7633
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2月3日、政府は昨年5月に成立した経済安全保障推進法の運用に向け、電気、ガスなど14事業の基幹インフラサービスの安定提供確保に関する制度の基本指針案、安全保障にかかわる先端技術の流出を防ぐため導入する「特許出願の非公開制度」に関する基本指針案を策定し、自民党経済安全保障推進本部に二つの指針案を示し了承され、4月にも閣議決定し、2024年4月をめどに運用を始めるようです。
特許非公開に関する基本指針案では、安全保障上の懸念から非公開とすべき発明として、安全保障に「多大な影響を与え得る最新技術」を保全指定の対象とし、「極超音速兵器の推進技術」や「宇宙・サイバーなどの最新技術」が例示された他、「国民生活や経済活動に甚大な被害を生じさせる手段となり得る技術」も対象とし、「大量破壊兵器への転用が可能な核技術」も含まれるとのことです。軍事、民生の両方で使える「デュアルユース(軍民両用)」技術については、一律非公開とはせず、経済活動や技術革新に支障を及ぼしかねないかどうかを考慮。指定は防衛目的で開発された場合などに限定するとしています。 宇宙・サイバー、特許非公開の対象分野に 政府指針案 2023年2月3日 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA033PM0T00C23A2000000/ 先端技術の特許非公開 政府が経済安保で指針案 宇宙・サイバー領域も 2023/2/3 https://www.sankei.com/article/20230203-43IKHRZSI5MM3PBS4IYVQ73JEQ/ 2023-02-03 重要インフラ設備に届け出制=経済安保法で指針案―政府 https://sp.m.jiji.com/article/show/2889974 経済安保「特許非公開」対象に極超音速、宇宙・サイバー技術…政府指針原案 2023/02/03 https://www.yomiuri.co.jp/politics/20230202-OYT1T50263/ 1月31日に行われた「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第19回)では、内閣府知的財産戦略推進事務局から、改訂版ガイドラインの編集方針の説明が行われ、説明を踏まえ、ガイドラインの改訂案について議論されたとのことです。
今後は、第20回(2月14日)で、ガイドラインの改訂案、普及促進の取組みについて話し合われ、ガイドラインの改訂案はパブリックコメントに付され、第21回(3月24日)で、パブリックコメント後のガイドラインの改訂案が決定される計画です。 事務局説明資料 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai19/siryou3.pdf 改訂版ガイドラインの編集方針 改訂版ガイドラインについては、現状、大きく次の編集方針を考えている。 Ver.1公表後に明らかになった重要課題である「企業と投資家・金融機関との思考構造のギャップ」とこのギャップを埋めていく必要性を踏まえ、企業と投資家・金融機関等との協創につなげるべく、両者の相互理解を向上させる観点、企業との対話を通じて知財・無形資産の投資・活用による企業価値向上を促すことについての投資家の役割明確化の観点で改訂する。 大企業による知財活用状況の見える化、スタートアップへの経営資源提供などが企業自身の隠れた価値の顕在化・創造につながることを重視する観点でも改訂を行う。 Ver.1公表後の動向、すなわち、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)を加速化させるための「価値協創ガイダンス2.0」、人的資本開示指針の公表など非財務情報開示の環境変化を踏まえ、これらの指針とともに利用しやすくするための改訂も行う。 Ver.1で提示した5つの原則・7つのアクションは踏襲し、これらについて理解を深めるために役立つ内容を記載。 「5つの原則・7つのアクション」とVer.2で明示する「ストーリー」「ROIC逆ツリー」「企図する因果パス」との関係については、次のように捉える。すなわち、 「5つの原則・7つのアクション」 を踏まえて、投資家・金融機関が重視する「ストーリー」「ROIC逆ツリー」「企図する因果パス」 の視点で戦略を構築し、その戦略の開示発信を起点に投資家・金融機関と対話する。 章立ては、「1.本ガイドラインの目的・考え方」に続いて、次の順番で記載する。 -Ver.1と同様、企業側の内容(基本となる考え方、ガバナンス)として「2.投資家や金融機関に伝わる知財・無形資産の投資・活用戦略の構築・開示・発信」、「3.知財・無形資産を経営変革や企業価値に繋ぐガバナンスの実践」 -企業側と投資家・金融機関側に共通の内容で、今回の改訂のポイントにもなる内容として「4.企業価値を顕在化する企業と投資家・金融機関のコミュニケーション・フレームワーク」 -投資家・金融機関等側の内容として「5.投資家や金融機関等に期待される役割」 -企業と投資家・金融機関等との対話として「6.企業と投資家・金融機関の望ましい対話」 令和3年(行ケ)第10140号「電鋳管の製造方法及び電鋳管」事件は、プロダクト・バイ・プロセス・クレームの形式により特定された発明について、不可能・非実際的事情があるので明確性要件を充足するとした審決の判断に、誤りがあるとされた事例として紹介されています。
審決取消訴訟の審理過程で、被告特許権者は、不可能・非実際的事情が存しないことを認めており、本判決が本件発明6について明確性要件を充足しないとした理由は次のとおり(訂正発明9も同旨。)。 「 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている 場合において、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号にいう「発明が明確であ ること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特 性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存 在するときに限られる(最高裁判所平成24年(受)第1204号同27年6月5日第 二小法廷判決・民集69巻4号700頁)。 もっとも、上記のように解釈される趣旨は、物の発明について、その特許請求の範囲 にその物の製造方法が記載されている場合(プロダクト・バイ・プロセス・クレーム)、 当該発明の技術的範囲は当該製造方法により製造された物と構造、特性等が同一である 物として確定されるところ(前掲最高裁判決)、一般的には、当該製造方法が当該物の どのような構造又は特性を表しているのか、又は物の発明であってもその発明の技術的 範囲を当該製造方法により製造された物に限定しているか不明であり、特許請求の範囲 等の記載を読む者において、当該発明の内容を明確に理解することができず、権利者が その範囲において独占権を有するのかについて予測可能性を奪う結果となり、第三者の 利益が不当に害されることが生じかねないところにある。 そうすると、物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記 載されている場合であっても、上記一般的な場合と異なり、出願時において当該製造方 法により製造される物がどのような構造又は特性を表しているのかが、特許請求の範囲、 明細書、図面の記載や技術常識より一義的に明らかな場合には、第三者の利益が不当に 害されることはないから、不可能・非実際的事情がないとしても、明確性要件違反には 当たらないと解される。」 PBPクレームについては、「知財高裁と特許庁が、最高裁判所の判決直後から、ともに判決の射程を限定し、実質的にその適用を回避する実務運用を採用」とか「最高裁判決の骨抜き」とかいわれているようですが、さらに裁判例の蓄積が待たれるようです。 2023.01.20知財判決ダイジェスト 特許 令和3年(行ケ)第10140号「電鋳管の製造方法及び電鋳管」(知的財産高等裁判所 令和 4年11月16日) https://www.soei.com/%E7%89%B9%E8%A8%B1%E3%80%80%E4%BB%A4%E5%92%8C%EF%BC%93%E5%B9%B4%EF%BC%88%E8%A1%8C%E3%82%B1%EF%BC%89%E7%AC%AC%EF%BC%91%EF%BC%90%EF%BC%91%EF%BC%94%EF%BC%90%E5%8F%B7%E3%80%8C%E9%9B%BB%E9%8B%B3%E7%AE%A1/ 令和3年(行ケ)第10140号「電鋳管の製造方法及び電鋳管」事件 https://unius-pa.com/decision_cancellation/9972/ 知財高裁令和3(行ケ)10140号(令和4年11月16日判決) https://iwanagalaw.livedoor.blog/archives/17861039.html プロダクト・バイ・プロセス(PBP)クレームについて明確性要件違反を認めた「電鋳管の製造方法及び電鋳管」事件知財高裁判決について https://innoventier.com/archives/2023/01/14529 プロダクト・バイ・プロセスクレームについて 明確性要件違反を認めた知財高裁判決 https://www.lexology.com/library/detail.aspx?g=c7097be6-b048-4b14-ad47-de18d051e3c7 令和3年(行ケ)第10140号 審決取消請求事件 判決 https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/552/091552_hanrei.pdf 要旨 https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/552/091552_point.pdf 知財管理 2023年1月号の「米国におけるパラメータ特許の戦略」は、米国におけるパラメータ特許の審査や訴訟対応において直面する問題を探り,戦略を提案しています。
日本との共通点、相違点に注意して検討する必要があります。参考文献を示しました。 1. はじめに 2.パラメータ特許の例 3.パラメータ特許に共通する特許性の問題 3.1 新規性 3.2 自明性 3.3 記載要件 3.4 実施可能要件 3.5 不明瞭性 4.明細書作成及びクレーム作成への戦略 4.1 明細書作成への指針 4.2 クレーム作成への指針 5.特許出願から訴訟までにおける対応方法 5.1 特許出願中の対応 5.2 特許発行後から訴訟までの対応 5.3 訴訟直前・訴訟中の対応 6.おわりに 米国におけるパラメータ特許の戦略 http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/mokuji/mokuji2301.html 抄 録 パラメータ特許は,パラメータを記載したクレームを含む特許であり,化学・医薬分野において様々な形で重宝されており,取得を目指す出願人が多い。一方,よく似た先行技術文献がしばしば存在するため,出願審査中に,新規性や自明性において問題に直面することが多くある。さらに,それらのハードルを乗り越えたとしても,記載要件,実施可能要件,不明瞭性などにおいて,PTAB手続きや訴訟中に問題となり得る可能性がある。本稿では,米国において,パラメータ特許を取得・権利行使する際に出願人/特許権者が直面する一般的問題と,それらの問題を回避・克服するための戦略について,最近の判例を参照しながら検討する。 日本と海外における特殊パラメータ発明 http://www.inoue-as.com/assets/files/Chizai%20Kanri_2018_06_p794-799.pdf 特殊パラメータ特許 ― 5極特許庁比較 季刊創英ヴォイス Vol.95 https://www.soei.com/wp/wp-content/uploads/2022/12/%E7%89%B9%E6%AE%8A%E3%83%91%E3%83%A9%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%BF%E7%89%B9%E8%A8%B1%EF%BC%8D5%E6%A5%B5%E7%89%B9%E8%A8%B1%E5%BA%81%E6%AF%94%E8%BC%83.pdf 数値限定発明の論点 https://www.soei.com/wp/wp-content/uploads/2022/03/%E6%95%B0%E5%80%A4%E9%99%90%E5%AE%9A%E7%99%BA%E6%98%8E%E3%81%AE%E8%AB%96%E7%82%B9.pdf 化学分野における特許出願戦略と AI の活用 https://www.publication.law.nihon-u.ac.jp/pdf/property/property_15/each/10.pdf 北大サマーセミナー2023の日程が、8月26日~29日で確定したとのことです。
今年は、特許権の年です。 現時点(2023年1月19日)では、開催方式は未定とのことですが、やはり対面が良いですね。 サマーセミナー2023の日程 https://www.juris.hokudai.ac.jp/riilp/news/seminer2023.html 開講日 開講時間 講師 テーマ 8月26日(土) 10:00-12:30 髙部 知的財産判例の形成と発展 14:00-16:30 駒田 ビジネス環境の国際化の進展と特許権の属地性 8月27日(日) 10:00-12:30 田村 特許適格性要件の機能と意義 14:00-16:30 金子 特許権侵害による損害額の算定 ―近時の議論の焦点を中心に 16:45-17:30 韓 メタバース、AI時代における知財紛争解決方法の望ましいモデル ~紛争解決機関及び手続き等を中心に 8月28日(月) 10:00-12:30 中山 公衆衛生と特許権 14:00-16:30 𠮷田 特許法におけるパブリック・ドメインの保護 8月29日(火) 10:00-12:30 野中 数値限定発明に特有の留意点 14:00-16:30 田村 記載要件:サポート要件と実施可能要件との関係~食品官能試験・バイオテクノロジーを素材として~ *講師 髙部 眞規子(西村あさひ法律事務所弁護士) 韓 相郁(韓国 金・張法律事務所弁護士) 田村 善之(東京大学大学院法学政治学研究科教授、北海道大学名誉教授) 中山 一郎(北海道大学大学院法学研究科教授) 駒田 泰土(上智大学法学部教授) 𠮷田 広志(北海道大学大学院法学研究科教授) 野中 啓孝(弁理士法人レクシード・テック弁護士・弁理士) 金子 敏哉(明治大学法学部教授) *開催方法は未定。 *Webサイトからの「申込みフォーム」は、5月以降に利用可能となる予定です。 改訂CGCに対応した知財KPIの策定と開示に悩んでおられる知財担当者が多いと思います。
『知財KPI策定の勘所-改訂CGC対応に向けた知財KPI策定の基礎と実践-』(知財管理 2023年1月号、株式会社知財ランドスケープCEO 山内明弁理士,高野誠司特許事務所 高野誠司弁理士)では、『知財KPIの策定に難儀し,他社の動きを様子見するとともにコーポレートガバナンス報告書等への開示を躊躇している企業を想定し,かかる状況打開の一助となるよう,知財KPI策定の基本的な考え方や事例』が紹介されています。 想定された企業だけでなく、すでにコーポレートガバナンス報告書等への開示を行っている企業にとっても、参考になるものと思います。 1. はじめに 2.改訂CGC対応実態と知財KPI開示事例 2.1 改訂CGC対応の実態 2.2 知財KPIの開示事例 3.知財KPI策定上の留意事項 4.知財KPIの策定事例 4.1 KPI項目の検討例 4.2 KPI策定事例とIPランドスケープとの関係 5.おわりに 知財管理 2023年1月号 31頁 知財KPI策定の勘所-改訂CGC対応に向けた知財KPI策定の基礎と実践- http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/search/detail.php?chizai_id=ea4885b7e94520914625251454f6c220 2021年6月のコーポレートガバナンス・コード(以下、CGCと略す)改訂1)を受け、知的財産への投資等について事業戦略との整合性や実効性等の開示が実質的に義務化されたことに伴い、かかる知財活動を定量化したKPI(以下、知財KPIと略す)策定が喫緊の課題となっている。しかしながら、本稿執筆時点(2022年9月)においてもコーポレートガバナンス報告書等で知財KPIを開示している企業は僅かであり、また開示された知財KPI自体、特許件数やイノベーション投資額といった無難なものが殆どである。大半の企業が改訂CGCの趣旨を理解していても、知財KPIの策定に難儀し、他社の動きを様子見するとともに開示を躊躇している状況が窺える。そこで本稿では、かかる状況打開の一助となるよう、知財KPI策定の基本的な考え方や事例を紹介したい。 『協業相手選定におけるIPランドスケープの活用と契約交渉時における留意点』(知財管理 2023年1月号)では、
どこまで使えるようになるのかという点で疑問もありますが、協業候補の選定や交渉にIPランドスケープ指標が活用可能なことは間違いないでしょう。 目次 1. はじめに 2.仮想事例 3.IPランドスケープによる協業相手の選定 3.1 目 的 3.2 比較分析 3.3 まとめ 4.知財権の取扱いにおける協業相手との契約交渉時の留意点 4.1 仮想事例の補足 4.2 二者購買を実現するための留意点 4.3 市場独占を実現するための留意点 4.4 IPランドスケープ指標から見る,協手との交渉時における留意点 5.おわりに 協業相手選定におけるIPランドスケープの活用と契約交渉時における留意点 「知財管理」73巻(2023年) / 1号 / 90頁 http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/search/detail.php?chizai_id=d11b111ed0e3d4216ac35ce5e15b994e 抄 録 近年,IPランドスケープにより経営・事業に貢献する機運が高まっており,特に新規事業・用途開発での活用が期待されている。本稿では,新規事業・用途開発段階において,協業相手の選定を目的としたIPランドスケープの活用方法を検討し,更に,選定した協業相手との契約交渉上の留意点を提案する。具体的には,仮想事例を設定し,IPランドスケープにより協業相手の技術力,事業力,及び,共同開発成果の帰属に対するスタンスを予測し,協業相手を精査した。続いて,協業におけるありたい姿として二者購買や市場独占を挙げ,これを実現する上での契約交渉時における留意点を整理し,IPランドスケープで精査した協業相手に対する契約交渉時の考え方を検討した。 『イノベーション創出に貢献する「架け橋」としての知財部門のあり方』(知財管理 2023年1月号)では、『イノベーション創出に貢献する知財部門のあり方』のうち、「架け橋」としての役割にフォーカスし、『企業活動のフェーズとして,技術開発,製品・サービス開発,事業創出の3パターン』、『つなぐ相手として,社内をつなぐ,社外から社内へつなぐ,社内から社外へつなぐ,の3パターン』を想定し、3×3の計9パターンについて、考察しています。
『各企業活動のフェーズにおいて知財部門がイノベーション創出に貢献する「架け橋」を担うためには,知財業務により培われる基本的なスキルセットに加え,それぞれに応じたプラスアルファの知見や素養,それを備える人材や組織構成が重要となる。 しかし,ひとえにプラスアルファの知見や素養と言っても, 技術開発では幅広い技術知識と異なる技術分野を組み合わせるセンス, 製品・サービス開発では利害の異なる様々な部門間をつなぐコミュニケーション力やロジック構築力, 事業創出では様々な情報を俯瞰的に捉えるビジネスセンス と,知財部門が新たにコミットしようとする領域に応じて必要とされるものが異なる。』 として、それぞれに応じた『知財部門がイノベーション創出に貢献する「架け橋」となるために重要なマネジメントのポイント』が整理されているのも参考になります。 目次 1. はじめに 2. イノベーション創出に貢献する「架け橋」とは? 2.1 「架け橋」のパターン 2.2 仮説の検証 3. ヒアリング結果と考察 3.1 技術開発 3.2 製品・サービス開発 3.3 事業創出 4.「架け橋」として貢献するために(提言) 4.1 技術開発 4.2 製品・サービス開発 4.3 事業創出 5. おわりに イノベーション創出に貢献する「架け橋」としての知財部門のあり方 「知財管理」73巻(2023年) / 1号 / 78頁 http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/search/detail.php?chizai_id=fb87bab9e286d2ce704f2c56ed09ebf1 企業活動において知財部門がイノベーション創出に貢献する「架け橋」となるために効果的な組織・人材マネジメントを検討するため,本研究では,技術開発,製品・サービス開発,事業創出といったイノベーション創出のきっかけとなる各企業活動のフェーズと,社内部門間,社外から社内,社内から社外の技術やアイディア,情報をつなぐ相手ごとに「架け橋」のパターンを整理した。それぞれのパターンにおいて知財部門が「架け橋」として活動している企業の事例において,「架け橋」が求められる背景,知財部門の役割,活動を推進する組織・人材,情報の活用等を調査し,当該活動を成功に導くポイントを考察した。 2020年に設立された株式会社CyberneXは、富士ゼロックスの脳研究技術開発チームがスピンアウトしたブレインテックスタートアップ、独立時に国内外80件以上の関連知財を買い取っており、知財譲渡の契約は内田鮫島法律事務所の鮫島正洋弁護士が支援し、現在は技術法務担当顧問弁護士として参画しているということです。
研究開発型イノベーション創出のケーススタディとして紹介されており、参考になります。 富士ゼロックスで培った0→1の価値創造、特許戦略のノウハウを実践で社会に還元する2023.01.26 https://ascii.jp/elem/000/004/120/4120937/ 大企業スピンアウトからブレインテック/ニューロテックを牽引するユニコーンを目指すCyberneX 2023.01.20 https://www.joic.jp/cases/interview/article16.html CyberneX 脳情報を日常に解放する https://cybernex.co.jp/ 「早期審査された特許の無効性に 影響を与える要因の分析」(知財管理Vol. 73No. 1,2023)では、本稿では異議申立が早期審査された特許に及ぼす影響を解析し、「早期審査された特許は,通常審査されたものと比べて異議申立による取消決定の割合が高く,中でも拒絶査定されずに登録された特許は,拒絶査定を覆したものと比較して,取消決定の割合が高かった。更に,取消決定の割合が高かったものは,拒絶理由通知では指摘されず,異議申立で初めて申立てられたサポート要件違反が高い傾向が認められた。」と結論づけています。
そして、「早期審査の審査過程ではサポート要件違反が見過ごされやすいことを示唆している」と考察しています。そのうえで、早期審査に係るサポート要件違反の回避策について提案しています。 「明確性要件もサポート要件と同様の傾向が認められている。」とのことなので、今後の研究に期待したいと思います。 早期審査された特許の無効性に 影響を与える要因の分析 http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/search/detail.php?chizai_id=26c5a5c9d6c8e0da93afa204a40fcdd1 2021年版の特許行政年次報告書1)によると、早期審査制度の活用実績は上昇しており、そのニーズの高さが窺える。一方、早期審査された特許は、通常審査されたものと比較して無効審判を請求される割合が高く、無効リスクを内在していると言われている2)。また、近年、特許異議申立件数は無効審判請求件数を大きく上回り、利便性の高さが窺える。早期審査と異議申立の活用実績は、共に上昇傾向にあることから、本稿では異議申立が早期審査された特許に及ぼす影響を解析した。早期審査された特許は、通常審査されたものと比べて異議申立による取消決定の割合が高く、中でも拒絶査定されずに登録された特許は、拒絶査定を覆したものと比較して、取消決定の割合が高かった。更に、取消決定の割合が高かったものは、拒絶理由通知では指摘されず、異議申立で初めて申立てられたサポート要件違反が高い傾向が認められた。本稿では、早期審査に係るサポート要件違反の回避策についても提案する。 「メタバース上のコンテンツ等をめぐる新たな法的課題への対応に関する官民連携会議」が開催され、メタバースのエコシステムと法的課題(ルール形成)等について、課題把握と論点整理が3つの分科会で進められています。
【第一分科会】 〇現実空間と仮想空間を交錯する知財利用、仮想オブジェクトのデザイン等に関する権利の取扱いについて 【第二分科会】 〇アバターの肖像等に関する取扱いについて 【第三分科会】 〇仮想オブジェクトやアバターに対する行為、アバター間の行為をめぐるルールの形成、規制措置等の取扱いについて 分科会での論点整理を受け、さらに必要に応じて官民一体となったソフトローの整備等について検討するようですが、新聞報道によれば、政府が今国会に特許法や不正競争防止法など知財関連6法の改正案を提出する予定で、不正競争防止法改正案では、仮想空間「メタバース」などにおけるデジタル上の模倣品を規制する内容なども盛り込む考えだと報じられています。国境のないメタバース空間におけるルール形成も課題に挙げられており、国内の法整備と国際調和も期待しています。 なお、公正取引委員会競争政策研究センター(CPRC)が、令和5年2月17日に第21回国際シンポジウム「メタバースと独占禁止法・競争政策」を開催するとのことです。 メタバース上のコンテンツ等をめぐる新たな法的課題への対応に関する官民連携会議 第一分科会(第1回)議事次第(1月13日 首相官邸) https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kanmin_renkei/dai1bunkakai/dai1/gijisidai.html 模倣行為の差し止め請求権、メタバースも対象へ 知的財産の改正法案(1月17日 朝日新聞) https://digital.asahi.com/articles/ASR1K565WR1KUTFK009.html メタバースでも模倣品規制 政府、知財デジタル化に対応(1月17日 日本経済新聞) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA171W30X10C23A1000000/ メタバース上の模倣品を規制 政府、関連改正法案を国会提出へ(1月18日 共同通信) https://www.47news.jp/8825208.html 令和5年2月17日 第21回国際シンポジウム「メタバースと独占禁止法・競争政策」の開催について https://www.jftc.go.jp/cprc/events/symposium/2022/230217sympo.html 公正取引委員会競争政策研究センター(CPRC)は、令和5年2月17日(金)に、以下のとおり、第21回国際シンポジウムを開催いたします。 1 開催趣旨 メタバースは今後一層の発展が予想されるサービスであり、統一的な定義は未だ定まっていないものの、その多くは、仮想空間内において、ユーザーが自らのアバターを用い、様々なコンテンツ等を制作・消費し、現実世界と同様に他のユーザーと交流することが可能であるという性質を有します。 メタバースはユーザーに対して新しい体験を提供することが期待される一方で、デジタル市場における革新的なサービスであるために、様々な法律上の論点に関して議論が必要であることが指摘されています。 メタバースと独占禁止法・競争政策に関しては、メタバース運営者がサービスの提供に当たって反競争的な行為を行う可能性が海外において指摘され、また、メタバースに関連する分野における海外競争当局の執行活動も見られつつあります。 今後の発展が見込まれるメタバースではありますが、我々の生活に大きな影響を与える可能性があることから、デジタル・プラットフォームへの独占禁止法の適用の経験を踏まえ、メタバースと独占禁止法・競争政策の関係について議論を始めることは重要です。 本シンポジウムでは、メタバースの実態等を踏まえ、メタバースと独占禁止法・競争政策がどのように関係してくるのかを探り、競争上の問題が生じる可能性について広く理解していただくことを目的として、有識者による講演やパネルディスカッションを行います。 2 日時・会場 タイトル 「メタバースと独占禁止法・競争政策」 日 時 令和5年2月17日(金曜)16時30分~18時30分 会 場 イイノホール/オンライン開催(ライブ配信)同時開催 →地図(外部サイトへリンクします) 開催言語 日本語⇔英語(同時通訳あり) 参加料 無料 主催者 公正取引委員会競争政策研究センター 共催者 株式会社日本経済新聞社、公益財団法人公正取引協会 令和5年1月17日(火)に行われた「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第18回)議事次第の事務局説明資料によれば、2月中旬には、昨年しめされた「知財・無形資産ガバナンスガイドラインVer.1」の改訂版として、「知財・無形資産ガバナンスガイドラインVer.2」の案がパブリックコメントにかけられるようです。
事務局資料は、企業は『経営者が自ずから、自社の経営戦略等に応じ、知財・無形資産投資を ①全体戦略や経営改革と繋がるストーリーの中で説明する ②具体的な企業価値向上のKPIとつなげて説明する ③企図する因果パスの中で説明する 等の必要性があるのではないか。』としており、ストーリー(企業変革への道筋:知財・無形資産投資を、全体戦略や経営改革と繋がるストーリーの中に位置付け、キャピタルアロケーションとして、自社の戦略を成立させる重要な要素として示し、Unlock Valueに寄与)、ROIC逆ツリー(繋がり・進捗検証:「アセット」としての知財・無形資産や、それを生み出す「組織能力」と、利益率の向上や企業価値(PER等)の関係を紐づけて示す)、企図する因果パス(ロジック:知財・無形資産による製品・サービスの独自性・優位性・持続可能性について、トラックレコード等も踏まえ、関係性をもって語る)が求められそうです。 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第18回)事務局説明資料 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai18/siryou3.pdf 今後の検討の進め方(現時点の見込み) 第18回(1月17日) 改訂版ガイドラインの方向性、骨子案について 第19回(1月下旬から2月上旬(P)) ガイドラインの改訂案 第20回(2月14日) ガイドラインの改訂案(⇒パブリックコメント)普及促進の取組みについて 第21回(3月下旬(P))ガイドラインの改訂案(パブリックコメント後) 特許庁が運営するポータルサイト「IP BASE」に掲載されている「投資家向けの知財ホワイトペーパー」は、
1. 投資家による知的財産支援の意義とは 2. 投資家による知財戦略支援とは 3. ラウンド別のよくある落とし⽳ 4. IPAS 知財メンター、知財アソシエイトメンター紹介 5. メンターインタビュー情報 という内容で、スタートアップと仕事をすることを考えている人にとって参考になります。 スタートアップ投資の落とし穴とは? IP BASE、「投資家向けの知財ホワイトペーパー」公開 2023年01月20日 https://weekly.ascii.jp/elem/000/004/121/4121377/ スタートアップに投資を行う投資家必見 特許庁が運営するポータルサイト「IP BASE」が 投資家向けの知財ホワイトペーパーを公開 2023.01.20 https://www.atpress.ne.jp/news/342437 特許庁が開設している知財コミュニティポータルサイト「IP BASE」は、スタートアップに投資を行う投資家向けに知財戦略の基本的なポイントについて、「よくある知財の落とし穴とその対策」をラウンド別にわかりやすく解説したホワイトペーパーを1月20日に公開しました。 知財戦略のポイントだけでなく、2021年度のIPAS(知財アクセラレーションプログラム)の知財メンター、知財アソシエイトメンターの所属や得意分野がわかるインデックスも記載しています。 投資家のための知財ホワイトペーパー https://ipbase.go.jp/learn/wp-forvc/ ベンチャー投資家のための知的財産に対する評価・支援の手引 https://www.jpo.go.jp/support/startup/document/index/venture_tebiki.pdf 本書の特徴は以下の3点です。 ①投資家向けに書かれた初めての知的財産に関する手引きであること ②投資の際に実際に起きたリアルな落とし⽳を集めていること ③国内外の事例を取り扱っていること 1月16日、日本取締役協会が発表した、コーポレートガバナンスを用いて、中長期的に健全な成長を遂げている企業を応援する「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー」の2022年度受賞企業は、Grand Prize Companyが株式会社 日立製作所、Winner Companyが株式会社 野村総合研究所、株式会社 村田製作所、特別賞・経済産業大臣賞が株式会社 荏原製作所、特別賞・東京都知事賞が株式会社 クボタでした。
選定理由をみると、なるほどと思います。 コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー®2022 受賞企業/受賞者発表 https://www.jacd.jp/news/cgoy/230116_2022-1.html 2023年1月16日 日本取締役協会は、企業表彰コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤーの2022年度受賞企業/受賞者を決定しました。 本表彰は、コーポレートガバナンスを用いて、中長期的に健全な成長を遂げている企業を応援するため、2015年より開設されました。 受賞企業 Grand Prize Company 株式会社 日立製作所 Winner Company 株式会社 野村総合研究所 株式会社 村田製作所 特別賞・経済産業大臣賞 株式会社 荏原製作所 特別賞・東京都知事賞 株式会社 クボタ 石灰石を主原料とした新素材「LIMEX」で234億円の資金を調達し、グローバルでの事業拡大を進めているスタートアップ「株式会社TBM」が注目されています。
「合計234億円もの資金調達につながった特許戦略」が経営トップと知財担当から語られていて参考になります。 合計234億円もの資金調達につながった特許戦略とは 株式会社TBM代表取締役CEO 山﨑 敦義氏インタビュー 特集 STARTUP×知財戦略 2023.01.19 https://ascii.jp/elem/000/004/120/4120892/ 株式会社TBMは、環境に配慮した新素材の開発・製造・販売と資源循環の2つのビジネスを展開。石灰石を主原料とした新素材「LIMEX」(ライメックス)の開発に知財と連携した体制を構築し、世界40カ国以上で特許を取得。知財に裏打ちされた技術力を武器に合計234億円の資金を調達し、グローバルでの事業拡大を進めている。こうした知財の活用が評価され、令和4年度の知財功労賞を受賞。株式会社TBM代表取締役CEOの山﨑 敦義氏と同社の知財を担当する中村 宏氏に、スタートアップにおける知財活用と社内の知財体制について伺った。 知財戦略どうやって取り組んでいるの︖ 株式会社TBM https://www.jpo.go.jp/news/koho/kohoshi/vol54/03_page1.html 株式会社 TBM 関連する知財 https://www.shogipremium.jp/live/121 58歳、ベンチャー正社員、ひろしの挑戦。 https://www.media.tb-m.com/332/ BM、知財活用ベンチャーとして「知財功労賞 経済産業大臣表彰」を受賞 ~ LIMEX のグローバル展開における知的財産活用の取り組みを評価~ https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000241.000016815.html 日本の特許分析と素材戦争 期間限定WEBINAR 20/12/2022 https://yorozuipsc.com/blog/-webinar 発明の効果をクレームアップするやり方が注目されています。
請求項中に記載された「効果」が発明特定事項と認められた裁判例における発明では、クレームアップされた「効果」が、物(の構成、用途等)を、更に特定するものであるものが大多数で、請求項中に記載された「効果」が発明特定事項と認められなかった裁判例における発明では、クレームアップされた「効果」が、物(の構成、用途等)を、更に特定するものではないため、発明特定事項と認められなかったと考えられます。 令和3年(行ケ)第10090号「噴射製品および噴射方法」事件では、『請求項1の「噴射製品」及び請求項3の「噴射方法」の各記載事項に、それぞれ「粘膜への刺激が低減された」又は「粘膜への刺激を低減する」という作用に係る記載事項を加える訂正(訂正事項1及び2)は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものか。』が争点となり、 『本件明細書には、本件訂正前の請求項1及び3の上記各構成にした場合であっても、「粘膜への刺激の低減」の作用効果を奏しない場合があることについての記載も示唆もない。』として、『訂正事項1及び2により加えられた「粘膜への刺激が低減された」又は「粘膜への刺激を低減する」という作用に係る記載事項は、本件訂正前の請求項1及び3の上記各構成によって奏される作用効果を記載したにすぎないものであるから、訂正事項1及び2は、本件訂正前の請求項1及び3の各発明に係る特許請求の範囲を狭くしたものと認めることはできない。したがって、訂正事項1及び2は、「特許請求の範囲の減縮」…を目的とするものと認めることはできない…。』としました。 発明の効果をクレームアップする場合には注意すべき事項でしょう。 【特許】効果のクレームアップ(進歩性) https://www.youtube.com/watch?v=-w3mbeWXA_M 令和3年(行ケ)第10090号「噴射製品および噴射方法」(知的財産高等裁判所 令和4年8月4日) 1月4日(水)配信 https://ipforce.jp/articles/soei-patent/hanketsu/2023-01-04-5572 令和3年(行ケ)第10090号「噴射製品および噴射方法」(知的財産高等裁判所 令和4年8月4日) https://www.soei.com/%e7%89%b9%e8%a8%b1%e3%80%80%e4%bb%a4%e5%92%8c%ef%bc%93%e5%b9%b4%ef%bc%88%e8%a1%8c%e3%82%b1%ef%bc%89%e7%ac%ac%ef%bc%91%ef%bc%90%ef%bc%90%ef%bc%99%ef%bc%90%e5%8f%b7%e3%80%8c%e5%99%b4%e5%b0%84%e8%a3%bd/ 令和3年(行ケ)第10090号 判例要旨 https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/366/091366_point.pdf ○ 発明の名称を「噴射製品および噴射方法」とする発明に係る特許の無効審判におけ る訂正請求が「特許請求の範囲の減縮」(特許法134条の2第1項ただし書1号)を目 的とするものと認められず、審決には訂正要件の判断に誤りがあるとして、審決が取り 消された事例。 (事件類型)審決(取消・不成立)取消 (結論)審決取消 (関連条文)特許法134条の2第1項ただし書1号 (関連する権利番号等)特願2018-509670号 (審決 ) 無効2020-800014号 判 決 要 旨 1 原告は、被告が特許権を有する発明の名称を「噴射製品および噴射方法」とする発明 に係る本件特許について無効審判を請求した。被告が本件特許について訂正請求(以下 「本件訂正」という。)をしたところ、特許庁は、本件訂正を認めた上で、「本件審判の 請求は、成り立たない。」との審決をした。 2 本判決は、要旨次のとおり判断し、本件訂正の訂正事項1及び2は「特許請求の範囲 の減縮」(特許法134条の2第1項ただし書1号)を目的とするものと認められず、 本件審決には訂正要件の判断に誤りがあるとして、本件審決を取り消した。 ⑴ 訂正事項1及び2は、本件訂正前の請求項1の「噴射製品」及び請求項3の「噴射 方法」の各記載事項に、それぞれ「粘膜への刺激が低減された」又は「粘膜への刺激 を低減する」という作用に係る記載事項を加えたものと認められる。 しかるところ、本件明細書の「粘膜への刺激の低減」に関する各記載によれば、本 件明細書には、「粘膜への刺激の低減」の作用効果は、本件訂正前の請求項1の「前 記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均 粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避 組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上と なるよう調整され」との構成又は本件訂正前の請求項3の「前記噴口から15cm離 れた位置における50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置にお ける50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となり」 との構成によって奏することの開示があることが認められる。一方で、本件明細書に は、本件訂正前の請求項1及び3の上記各構成にした場合であっても、「粘膜への刺 激の低減」の作用効果を奏しない場合があることについての記載も示唆もない。 そうすると、訂正事項1及び2により加えられた「粘膜への刺激が低減された」又 は「粘膜への刺激を低減する」という作用に係る記載事項は、本件訂正前の請求項1 及び3の上記各構成によって奏される作用効果を記載したにすぎないものであるか ら、訂正事項1及び2は、本件訂正前の請求項1及び3の各発明に係る特許請求の範 囲を狭くしたものと認めることはできない。 ⑵ したがって、訂正事項1及び2は、「特許請求の範囲の減縮」(特許法134条の 2第1項ただし書1号)を目的とするものと認めることはできない。 本件審決には、本件訂正の訂正要件の判断に誤りがあり、この判断の誤りは、本件 特許の特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明の要旨認定の誤りに帰するか ら、本件審決は取り消されるべきものである。 令和4年8月4日判決言渡 令和3年(行ケ)第10090号 審決取消請求事件 https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/366/091366_hanrei.pdf IPジャーナル第23号に、「リコーにおけるIPランドスケープの取り組み」が紹介されていました。
リコーグループは、複写機やプリンタなどのOAメーカーからデジタルサービスの会社への大きな事業転換を進めており、この事業転換に合わせて知財戦略も変化させています。IPランドスケープの取り組みがこの知財戦略の変化の中核のひとつであることがよくわかります。 「IPランドスケープの自己評価」について一部開示されていることも参考になります。
図3 リコーグループの知財戦略
図5 ステークホルダーマップ 図6 知財情報解析の取り組み事例 図7 解析メニュー 図8 IPランドスケープの自己評価
図10 科学研究費からの将来有望領域の探索 図11 lPランドスケープの進化した取組み IPジャーナル 第23号 (第15回)リコーにおけるIPランドスケープの取り組み 石島 尚 株式会社リコー プロフェッショナルサービス部 知的財産センター(エキスパート) http://fdn-ip.or.jp/ipjournal/latest.php リコーグループは、複写機やプリンタの提供を通じてお客様のオフィスでのデジタル化をお手伝いしてきた。人々の生活や働き方が大きく変化している中、OAメーカーからデジタルサービスの会社への事業転換を進めている。さらにその先の未来を描き、2036年ビジョン「"はたらく"に歓びを」作り出す会社になるための挑戦も行っている。本稿では、リコーグループのIPランドスケープの取り組みを、このような事業転換に合わせて変化させている知財戦略と共に紹介する。 リコーグループ 知的財産への取り組み https://jp.ricoh.com/technology/rd/ip リコーグループは、技術開発の成果である知的財産を重要な経営資産のひとつと捉えています。事業戦略、技術戦略に基づく価値ある知的財産の創出を奨励すると共に、事業の保護と成長に貢献する知的財産の獲得と活用に取り組んでいます。 知的財産の獲得状況 日本公開特許件数 2,140件(2021年度) 日本保有特許件数 15,372件(2022年3月末現在) 海外保有特許件数 22,105件(2022年3月末現在) 活動内容 活動体制 知的財産活動を支える組織能力向上への取り組み 知的財産情報解析の取り組み 開放特許への取り組み 社会貢献 知的財産活動を通じたSDGsへの貢献 マテリアリティに対する取り組み事例 WIPO GREENへの参画 表彰 リコー グループ統合報告書2022 https://jp.ricoh.com/-/media/Ricoh/Sites/jp_ricoh/about/integrated-report/pdf2022/all_J_spread.pdf?rev=81aa6d290ef3408397316c8ba9d3323e 知的資本 デバイスの開発力や共創プラットフォーム(RSI)、 さらには社内実践で培ったノウハウが強み これまで培ってきたエッジデバイスの技術力(画像処理技術、光学技術)や開発力、生産能力は、デジタルサービスの会社としてお客様の“はたらく”をデータ化するエッジデバイスを提供する上で大切な力です。共創プラットフォーム(RICOH Smart Integration; RSI)の強化によりデジタルとデータの利活用を促進します。 デジタル技術を活用した業務プロセス改革を間接業務だけでなく開発、生産などの現場も含め全社で実践するなど自ら培ったノウハウのもと、お客様のオフィスの生産性向上に長年貢献してきました。 事業戦略、技術戦略に基づく価値ある知的財産の創出を奨励するとともに、事業成長に貢献しうる知的財産の獲得と活用に取り組んでいます。 ・特許保有権利数 約40,000件 ・研究開発費 967億円 スタートアップ連携にかかるリコー、デンソーの事例 14/12/2022 https://yorozuipsc.com/blog/4460174 リコー対ディエスジャパン 再生トナーカートリッジ訴訟 21/11/2022 https://yorozuipsc.com/blog/7082333 リコーにおけるIPランドスケープの取組と課題 9/11/2021 https://yorozuipsc.com/blog/ip7661624 リコーのビッグデータ解析の取組 15/6/2021 https://yorozuipsc.com/blog/8061275 リコーのIPランドスケープ 21/5/2021 https://yorozuipsc.com/blog/ip1839990 1月13日に行われた進歩性に関する東北大学知財セミナーを聴講しました。
【東北大学知財セミナー】ご案内 https://www.rpip.tohoku.ac.jp/jp/property/chizai-seminar.html まず、進歩性の論点に関する第31回東北大学知財セミナーへの導入として、特許庁で平成26年4月-平成27年9月、特許・実用新案審査基準および審査ハンドブックの全面改訂業務にプロジェクトリーダとして従事された東北大学大学院法学研究科 戸次一夫 教授から、「進歩性の審査基準のポイント解説」がありました。非常に上手な説明でした。 第30回 東北大学知財セミナー「進歩性の審査基準のポイント解説」 https://peatix.com/event/3419524/view 次に、中村合同特許法律事務所 高石秀樹 弁護士から、第31回東北大学知財セミナー「進歩性の全論点(+各論点毎のポイント整理、他の特許要件との関係、諸外国移行を踏まえた出願戦略)」がありました。高石秀樹 弁護士は、特許裁判例を全件チェックし、書籍『特許裁判例事典(第3版)』を執筆されており、進歩性に関する全論点を網羅的に、特許法上の他の論点との相同性、更に各論点についての諸外国との対比も説明されました。高石秀樹 弁護士は、YouTube「弁護士・高石秀樹の特許チャンネル」で、20年間にわたる特許侵害訴訟・特許審決取消訴訟の経験と、特許裁判例事典・意匠裁判例事典を執筆した網羅的な裁判例情報に基づいて、知財実務に役に立つ情報を提供されていますが、最新版となっていました。 第31回 東北大学知財セミナー「進歩性の全論点(+各論点毎のポイント整理、他の特許要件との関係、諸外国移行を踏まえた出願戦略)」 https://peatix.com/event/3419526/view YouTube「弁護士・高石秀樹の特許チャンネル」 https://www.youtube.com/@tokkyo 東北大学知財セミナーは、次回以降も魅力的なセミナーを企画されています。 第32回 東北大学知財セミナー「事件から見えて来る秘密管理性の課題/営業秘密管理の基本事項と組織に求められる具体的な対策」 https://peatix.com/event/3419527/view ◆セミナーの内容 管理レベルを上げることによって企業秘密を、不正競争防止法で規定されている営業秘密として守ることができます。図面、製造ノウハウ、顧客名簿などは、営業秘密として守るべき情報です。 警察庁からは、警察が検挙した実際の事例を踏まえ、漏洩事故が起きた際の営業秘密侵害事犯の立証ポイント、秘密管理措置や営業秘密侵害事犯発生時の対処要領について説明するとともに、INPITからは、日常的に、企業の現場で秘密管理を指導している知財戦略アドバイザーが、これまでの経験に基づき、権利化と秘匿化、営業秘密管理の重要事項、管理体制構築実務に関する重要ポイントを解説します。 ◆講師 警察庁生活安全局 大野 則幸 生活経済対策管理官付 不正商品係長 独立行政法人 工業所有権情報・研修館 (INPIT) 小原 荘平 知財戦略アドバイザー ◆日時 2023年2月1日(水)15:00-16:30(開場:14:50) 第33回 東北大学知財セミナー「データの戦略的利活用と知財戦略」 https://peatix.com/event/3419528/view ◆セミナーの内容 データに関して法的に誤った理解を前提とする契約がまだまだ散見されています。そこで、データの取扱いに関する契約の具体的な条項を踏まえて、正しいデータ法務をご説明させて頂きます。加えて、具体的なデータの利活用スキーム(データプラットフォーム)をご紹介し、そのスキームに含まれる法的な論点や知財戦略もご説明させて頂きます。 ◆講師 iCraft法律事務所 内田 誠 弁護士・弁理士 ◆日時 2023年2月21日(火)15:00-16:30(開場:14:50) 令和4年(行ケ)第10019号「多角形断面線材用ダイス」事件は、『発明の名称を「多角形断面線材用ダイス」とする発明について、発明特定事項における「略多角形」は第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとして、特許無効審判請求を不成立とした審決を取り消した事例』です。
「約、略、実質的に」など表現は便利ですが、やはり、こういう判決を見ると、できる限り「略」のような表現の使用は避けた方がよいですね。どうしても使用しなければいけないような場合には、客観的にその範囲が理解できる程度に明細書及び図面に記載しておくことを考えるべきです。 知財高裁令和4(行ケ)10019号(令和4年11月16日判決) : 理系弁護士の何でもノート2 2023/01/13 https://iwanagalaw.livedoor.blog/archives/17705338.html 令和4年(行ケ)第10019号「多角形断面線材用ダイス」(知的財産高等裁判所 令和4年11月16日) 2022.12.20 https://www.soei.com/%E7%89%B9%E8%A8%B1%E3%80%80%E4%BB%A4%E5%92%8C%EF%BC%94%E5%B9%B4%EF%BC%88%E8%A1%8C%E3%82%B1%EF%BC%89%E7%AC%AC%EF%BC%91%EF%BC%90%EF%BC%90%EF%BC%91%EF%BC%99%E5%8F%B7%E3%80%8C%E5%A4%9A%E8%A7%92%E5%BD%A2/ 令和4年(行ケ)第10019号 判決要旨 https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/532/091532_point.pdf (事件類型)審決(無効不成立)取消 (結論)審決取消 (関連条文)特許法36条6項2号 (関連する権利番号等)特許第6031654号 (審決)無効2020-800043号 判 決 要 旨 1 本件は、発明の名称を「多角形断面線材用ダイス」とする本件発明1ないし12(本 件各発明)についての特許無効審判請求を不成立とした審決(本件審決)に対する取消訴 訟である。本件審決は、本件各発明の「略多角形」は明確であると判断した。 2 本件発明1(なお、本件発明2ないし12も、発明特定事項に「略多角形」を含むも のである。) 略円筒形形状をもつ引抜加工用ダイスを保持し前記引抜加工用ダイスの前記略円筒形形 状の中心軸を中心として前記引抜加工用ダイスを回転させるダイスホルダーと、 内部に収納された潤滑剤が材料線材に塗布された後前記引抜加工用ダイスに前記材料線 材が引き込まれるボックスと、を含む引抜加工機であって、 前記引抜加工用ダイスのベアリング部の開口部は略多角形の断面形状を有し、 前記開口部の断面形状は前記材料線材の引抜方向に沿って同じであることを特徴とする 引抜加工機。 3 本判決は、以下のとおり、本件各発明の「略多角形」が明確であるとした本件審決の 判断には誤りがあるとして、本件審決を取り消した。 本件各発明の「略多角形」の意義 特許請求の範囲の記載及び本件明細書の記載によると、本件各発明の「略多角形」とは、 本件各発明の効果(ダイスのベアリング部の開口部(以下「開口部」という。)の角部に 潤滑剤がたまりにくくなること)を得るため、「基礎となる多角形断面」の角部の全部又 は一部を円弧、鈍角の集合又は自由曲線に置き換えた図形(以下、角部を円弧、鈍角の集 合又は自由曲線に置き換えることを「角部を丸める」などといい、角部に生じた円弧、鈍 角の集合又は自由曲線を「角部の丸み」などということがある。)をいうものと解するこ とができる。そして、特許請求の範囲の記載及び本件明細書の記載によると、「基礎とな る多角形断面」とは、従来技術における開口部(角部を丸める積極的な処理をしていない - 2 - もの)の断面を指すものと解されるから、結局、本件各発明の「略多角形」とは、本件各 発明の上記効果を得るため、その角部を丸める積極的な処理をしていない開口部につき、 その角部の全部又は一部を丸める積極的な処理をした図形をいうものと一応解することが できる。 「略多角形」と「基礎となる多角形断面」との区別 前記 のとおり、本件各発明の「略多角形」は、「基礎となる多角形断面」の角部の全 部又は一部を丸めた図形をいうものと一応解されるから、両者の意義に従うと、両者は、 明確に区別されるべきものである。 しかしながら、証拠及び弁論の全趣旨によると、ワイヤー放電により、その断面形状が 多角形である開口部を形成するくり抜き加工をした場合、開口部の角部には、不可避的に 丸みが生じるものと認められる。そうすると、「基礎となる多角形断面」も、くり抜き加 工をした後の開口部の断面である以上、角部が丸まった多角形の断面であることがあり、 その場合、客観的な形状からは、「略多角形」の断面と区別がつかないことになるから、 本件各発明の「略多角形」は、「基礎となる多角形断面」と区別するのが困難であり、本 件各発明の技術的範囲は、明らかでない。 「略多角形」の角部の形状 開口部の角部の丸みについては、その曲率半径がどの程度まで小さければ不可避的に生 じる丸みであるといえ、どの程度より大きければ不可避的に生じる丸みを超えて積極的に 角部を丸める処理をしたものであるといえるのかを客観的に判断する基準はないし、また、 当該曲率半径がどの程度を超えれば本件各発明の上記効果が得られるようになるのかは、 客観的に明らかとはいえないから、本件各発明の「略多角形」については、特許請求の範 囲の記載、本件明細書の記載及び本件出願日当時の技術常識を踏まえても、「基礎となる 多角形断面」の角部にどの程度の大きさの丸みを帯びさせたものがこれに該当するのかが 明らかでなく、この点でも、本件各発明の技術的範囲は、明らかでないというべきである。 以上のとおり、本件各発明に係る特許請求の範囲の記載及び本件明細書の記載によ ると、本件各発明の「略多角形」とは、本件各発明の上記効果を得るため、その角部を丸 める積極的な処理をしていない開口部につき、その角部の全部又は一部を丸める積極的な 処理をした図形をいうものと一応解することができるものの、客観的な形状からは、本件 各発明の「略多角形」と「基礎となる多角形断面」とを区別することができず、また、「基 礎となる多角形断面」の角部にどの程度の大きさの丸みを帯びさせたものが本件各発明の 「略多角形」に該当するのかも明らかでなく、本件各発明の技術的範囲は明らかでないと いうほかないから、本件各発明の「略多角形」は、第三者の利益が不当に害されるほどに 不明確であると評価せざるを得ず、その他、本件各発明の「略多角形」が明確であると評 価すべき事情を認めるに足りる証拠はない。 令和4年11月16日判決言渡 令和4年(行ケ)第10019号 審決取消請求事件 https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/532/091532_hanrei.pdf |
著者萬秀憲 アーカイブ
February 2023
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