10月24日、音楽教室における著作物使用に関わる請求権不存在確認請求事件の最高裁判決が出され、知財高裁の判断が維持され、「音楽教室の運営者と演奏技術等の教授に関する契約を締結した者(生徒)のレッスンにおける演奏に関し上記運営者が音楽著作物の利用主体であるということはできないとされた事例」として、判決文が公開されています。
今年夏の北大サマーセミナーで上野達弘先生が取り上げられていましたが、『今回の最高裁判断について早稲田大学の上野達弘教授は「クラブ・キャッツアイ判決と同じ演奏権をめぐる訴訟でありながら同判例を引用しないばかりか、カラオケ法理に沿わずに楽曲の利用主体を判断した。今後は下級審でも同法理を適用することはなくなるだろう。技術革新にもプラスとなる」と評価する。』(日経新聞) 『他方、福井健策弁護士は「JASRACなどの団体が管理しておらず、個別の権利者を探し許可を得ることが難しいゲーム音楽、インディーズ系の人気楽曲を教室で使うことへの萎縮が広がる懸念がある」と指摘する。』(日経新聞)としていますが、「弁護士 福井健策のコラムでは、『今回の結論は、一般の感覚にも合致する条文解釈という点で、知財高裁と最高裁が適正なバランスを追い求めた上での判決であったと、個人的には評価したいと思います。』とされています。 『著作権法に詳しい神戸大学法学部の前田健教授は、「生徒の演奏を教室の演奏だとするのはそもそも無理があった。最高裁も全て無料とまでいえなくても、高額な徴収は望ましくないと考えたのではないか」と指摘します。』という指摘もありました。 栗原潔弁理士(知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授)は、『音楽教室において先生が演奏しないということは想定しがたいので、結局のところ、音楽教室側がJASRACに著作権使用料を払わなければいけないという結論に変わりはなく、変わるとするならば、JASRACが元々要求してきた2.5%という著作権使用料率の算定根拠が変わるので、料率が変わる可能性があるということになります。一部メディアが「音楽教室の生徒演奏、著作権料は不要」と言ったぱっと見ると誤解しそうな見出しで報道したりしているので勘違いしないよう願います。』としています。 学習院大の横山久芳教授(知的財産法)は、『とても短い判決でしたが、私は妥当な判断だと考えます。判決は、考慮すべき点として演奏の目的や態様などを挙げ、二審と同様に「生徒の演奏に教室が著作権料を払う必要はない」とする結論でした。カラオケ法理は「管理と利益」を特に重視するものでしたが、「演奏の目的や態様など、もっと幅広く様々な事情を考慮すべきだ」という考え方を打ち出しました。カラオケ法理を融通無碍(ゆうずうむげ)に拡張して解釈するのではなく、線引きをしたわけです。この点は重要で、演奏以外の著作権の考え方にも影響を与えると思います。カラオケは「歌うこと」自体が目的ですが、判決が言うように、音楽教室の生徒にとっては「教授・指導を受けること」が目的であり、演奏は手段だと言えます。性質が全く違うので、最高裁は常識的な判断をしたと思います。』(朝日新聞) 今後、様々な影響が出そうです。 令和3年(受)第1112号 音楽教室における著作物使用に関わる請求権不存在確認請求事件 令和4年10月24日 第一小法廷判決 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/473/091473_hanrei.pdf 音楽教室側、判決を歓迎 JASRACは「誠に残念」 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE24AER0U2A021C2000000/ 音楽教室の著作権使用料「生徒は対象外」最高裁判決ポイントは https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221024/k10013868361000.html 音楽教室訴訟 最高裁、技術萎縮の「カラオケ法理」脱却(日経新聞) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD218OO0R21C22A0000000/ 弁護士 福井健策のコラム 2022年10月19日 (2022/10/24追記) 「ついにJASRAC・音楽教室裁判が最高裁決着論点と、判決の影響をもう一度駆け足で考えてみる」 https://www.kottolaw.com/column/221019.html JASRAC対音楽教室裁判の最高裁判決について https://news.yahoo.co.jp/byline/kuriharakiyoshi/20221024-00320799 危うい「カラオケ法理」と線引き 音楽教室訴訟、識者はどう見たか https://digital.asahi.com/articles/ASQBS67HNQBNUTIL02B.html 2022年10月24日 一般社団法人 日本音楽著作権協会(JASRAC) 音楽教室における請求権不存在確認訴訟の最高裁の判断について https://www.jasrac.or.jp/release/22/10_2.html JASRAC、最高裁で主張認められず「率直に言って残念」 使用料率の見解については明言避ける https://www.oricon.co.jp/news/2253966/full/ 音楽教室における生徒の演奏 10月24日に最高裁判決 https://yorozuipsc.com/blog/-1024 JASRACと音楽教室の裁判、10月24日に最高裁で決着へ https://yorozuipsc.com/blog/jasrac1024
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「知財管理」10月号に、積水ハウスの知財活動が紹介されています。
『当社では,知的財産を「武器」ではなく「事業支援のツール」と考えています。』『「知的財産でこれを解決できる」を事業部門に提供し,またそれを実践し,「知財室のおかげで事業がうまくいったよ」と言われることが私たちの組織目標です。』としており、特徴的な活動として、『知財業務のレベルアップのために年度毎に10件ほどのテーマを設定して行うプロジェクト活動』を挙げています。 『リーダーもメンバーも立候補制』というこの取組みの成果が期待されます。 わが社の知財活動 積水ハウス株式会社 https://www.jipa.or.jp/kaiin/kikansi/honbun/2022_10_1292.pdf 3. わが社の知的財産活動 (1)活動の基本方針 当社では,知的財産を「武器」ではなく「事業支援のツール」と考えています。よって,知的財産権のライセンスや売却で直接収益を得るのでなく,事業の様々なステージで,その成功をサポートするための活動をしています。 (2)特徴的な活動 知的財産室では2021年度から「新たな取り組み」を開始しています。これは知財業務のレベルアップのために年度毎に10件ほどのテーマを設定して行うプロジェクト活動です。 各プロジェクトは,業務全体を俯瞰しながら取り組めるため,日常業務とは異なる成果が得られ,また,新たなことに取り組むことで各人の能力を高める機会となっており,リーダーもメンバーも立候補制なので,多忙でもモチベーションを維持しながら推進できています。 4. 目指すもの,願うこと 「知的財産でこれを解決できる」を事業部門に提供し,またそれを実践し,「知財室のおかげで事業がうまくいったよ」と言われることが私たちの組織目標です。 Value Report 2022 説明会資料 - 積水ハウス https://www.sekisuihouse.co.jp/company/financial/library/ir_document/2022/p20220805.pdf Value Report 2022 — Our Engage(統合報告書) https://www.sekisuihouse.co.jp/company/financial/library/ir_document/2022/2022_togo/00_2022_Value_report_all.pdf コーポレートガバナンス報告書 最終更新日:2022年6月30日 https://www.sekisuihouse.co.jp/library/company/info/gov/g20220630_1.pdf (3)知的財産への投資 <投資> 当社グループは、研究開発の重要性を認識し、「総合住宅研究所」「住生活研究所」を中心とする研究開発拠点への十分な研究開発費の投入や積極的な設備投資を行っています。 また、近年では、プラットフォームハウス事業などの新規事業領域を中心として、産学連携や、異業種の企業とパートナーシップにより、将来的な事業の推進に資する分野にも積極的に投資しております。 さらに、お客様参加型イベントの開催や住環境に関する様々な体験の機会提供する「納得工房」など、直接な技術開発以外にも積極的に投資し、これらよって得られるものを総合して、経営資源(知的資本)と位置付けております。 <成果の保護> こうした知的資本のうち、技術、デザインは、特許権や意匠権で保護を図り、また、お客様からいただいたお声に加え、長年の取り組みによるノウハウ、データなども、営業秘密として保護を図っております。 さらに、投資結果の事業化段階においては、ネーミングにもこだわり、バリューチェーンを通じお客様にご満足、安心を提供するための象徴として商標権で保護しています。 このように当社は知的資本を、各知的財産権をバランスよく用い保護しています。 さらに、他社との共有の知的財産権の取扱いは、事業の方向性や、お取引先様との価格を決めるため、契約も知的財産の保護ツールと位置付けています なお、これらの活動を従来以上に重要視し、2021年8月には、知的財産を統括する専門組織として、知的財産室を新設し、また、社内での育成にとどまらず、他社で知財の統括責任者を務めた人物を含め、知財の専門家を積極的に採用しています。 <継続的成長のための活用とリスク管理> このような投資とその成果の保護の両輪によって、当社のコアコンピタンスである「技術力」、「施工力」、「顧客基盤」を構築し、また、住まいづくりのすべてのプロセスを担う「独自のバリューチェーン」で価格決定力をもとに、競争優位性を発揮し、お客様への価値提供とともに、継続的な企業成長を支える根幹を成しています。 なお、当社の継続成長のために把握しておくべき知的財産に関するリスクを取締役に共有し、毎年そのリスクを見直す体制を構築しています。 (2022年1月末実績) ・研究開発費 94億円 ・意匠権保有件数 343件 ・特許権保有件数 716件、商標権保有件数947件 積水ハウス株式会社コーポレートガバナンス報告書 https://yorozuipsc.com/blog/2372626 優れたコーポレート・ガバナンス報告書 https://yorozuipsc.com/blog/4578652 マッサージチェアのシェア1位であるフジ医療器とシェア3位のファミリーイナダが、互いの製品に関する特許侵害を巡りあらそっている訴訟で、最近判決がでています。
フジ医療器が原告となった訴訟での知財高裁における判決は10月20日に言い渡され、ファミリーイナダに約3億9千万円の賠償と製品の製造・販売差し止めが命じられました。 ファミリーイナダが原告となった2件の訴訟での大阪地裁における判決は9月15日に言い渡され、フジ医療器に、1件では約28億円の賠償、もう1件では製品の廃棄と約5千万円の賠償が命じられました。 いずれも、侵害で生じた特許権者の損害について、相手方が得た利益などを基に推定した金額に、特許のライセンスを供与したとみなして算出した金額を上乗せできると判断した上で賠償額を算定しており、特許権者の利益を幅広く認めています。 特許訴訟による賠償額の高額化の流れは続きそうです。 お取引様各位(特許裁判判決に関するご連絡) ファミリーイナダ株式会社 https://www.family-chair.co.jp/wp-content/uploads/20221021.pdf お取引様各位 平素は格別のお引き立てを賜り、誠にありがとうございます。 既にご存知のお取引様もおられるかとは存じますが、弊社は株式会社フジ医療器(以下、フジといいます)と特許裁判を行っており、この度、フジが原告となっている下記の特許裁判(以下、本事件①といいます)について、2022年10月20日付けで知的財産高等裁判所より判決を受けましたので、報告申し上げます。 記 知的財産尚等裁判所令和2年(ネ)第10024号特許権侵害差止等請求控訴事件 事件① 本事件①において、被告製品1(製品名:INADADREAMWAVE,型番:HCP 11001)および被告製品2(製品名:ファミリーメデイカルチェアSOGNO,型番:FMC 10000)の2製品がフジの特許権l件を侵害するとして、弊社に対して製造販売の差止と3億9000万円余りの賠倍を命じる判決がなされました。 しかし、被告製品1は海外向け製品であり既に廃番となっております。被告製品2は国内向け製品ではありますが2010年3月末日に廃番となっており、アフターサービスも2016年3月末日をもってサポートが終了しております。従いまして、貴社の販売活動に一切影響を及ぼすことはございません。 一方、別件で弊社が原告の下記の特許裁判(以下、本事件②,③といいます)もあります。 記 大阪地方裁判所平成29年(ワ)第7384号特許権侵害差止等請求事件 事件② 大阪地方裁判所平成30年(ワ)第1391号特許権侵害差止等請求事件 事件③ 本事件②,③は2022年9月15日付けで判決を受け、両当事者が控訴しなかったため、同年10月5日をもって判決が確定しております。そして、本事件②,③では、フジに対して本事件②,③を合わせて28億円超の賠償を命じる判決がなされています。 上記次第であり、貴社とのお取引において影響はございませんので、ご安心ください。 なお、本事件①に対しては、判決内容を精査のうえ、最高裁への上告も含めた対応を検討中であることを申し添えます。 以上のとおりでございますので、今後とも変わらぬお付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます。 特許巡り損害広く認定 マッサージチェア大手訴訟、27億円賠償も https://www.nikkei.com/article/DGKKZO65361800R21C22A0CT0000/ 特許侵害の損害 広く認め 3億9000万円余の賠償命じる 知財高裁 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221020/k10013865651000.html 知的財産尚等裁判所令和2年(ネ)第10024号特許権侵害差止等請求控訴事件 判決の要旨 https://www.ip.courts.go.jp/vc-files/ip/2022/2n10024.pdf 大阪地方裁判所平成29年(ワ)第7384号特許権侵害差止等請求事件 判決 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/463/091463_hanrei.pdf 大阪地方裁判所平成30年(ワ)第1391号特許権侵害差止等請求事件 判決 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/462/091462_hanrei.pdf いよいよJASRACと音楽教室の裁判の最高裁判決が10月24日に出されます。
音楽教室における生徒の演奏に著作権料が課されるのかが争点です。 YouTubeにアップされている動画「 JASRAC vs 音楽教室 決着へ【“法廷の決断”司法記者が徹底解説】」がわかりやすい。 JASRACと音楽教室の裁判、決着へ 生徒の演奏に著作権料は? https://digital.asahi.com/articles/ASQBP5G18QBMUTIL02L.html JASRAC vs 音楽教室 決着へ【“法廷の決断”司法記者が徹底解説】(2022年10月21日) https://www.youtube.com/watch?v=VYJKjCJVrzU 「ついにJASRAC・音楽教室裁判が最高裁決着へ 論点と、判決の影響をもう一度駆け足で考えてみる」 https://www.kottolaw.com/column/221019.html 音楽教室における生徒の演奏 10月24日に最高裁判決 https://yorozuipsc.com/blog/-1024 令和2年(ネ)第10022号 音楽教室における著作物使用にかかわる請求権不 存在確認控訴事件(原審・東京地方裁判所平成29年(ワ)第20502号,同第25300号) 口頭弁論終結日 令和3年1月14日 判 決 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/223/090223_hanrei.pdf 平成29年(ワ)第20502号,同第25300号 音楽教室における著作物使 用にかかわる請求権不存在確認事件 口頭弁論終結日 令和元年12月13日 判 決 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/632/089632_hanrei.pdf 季刊じぱ Vol.23AUTUMN 2022に、「変化する医療の最先端に立ち、科学の進歩を患者さんの『価値』に変える」アステラス製薬株式会社の記事がでていました。
アステラス製薬は、山之内製薬と藤沢薬品工業が合併して2005年4月に誕生した医療用医薬品を中核事業とするグローバル製薬企業ですが、医療の変化を捉えることで、継続的にアンメットメディカルニーズ(満たされない医療ニーズ)を特定し、革新的な技術・モダリティを創出する発明を奨励しそれらを適切に保護する知財を創出、強力な知財ポートフォリオを構築しています。 季刊じぱVol.23AUTUMN 2022 2022年10月15日発行 http://www.jipa.or.jp/kikansi/jipa/pdf/2022_Autumn.pdf コーポレートガバナンス報告書 [2022年6月30日] https://www.astellas.com/en/system/files/corporate_governance_report_jp_20220630_0.pdf <知的財産への投資> 研究開発型製薬企業である当社のビジネスにとって、知的財産への投資は必要不可欠です。当社は、アンメットメディカルニーズとより良い治療アプローチに焦点を当てた、新しい技術や革新的な医療ソリューションへ継続的に投資しています。 経営計画2021では、研究開発戦略の考え方であるFocus Areaアプローチの実行をさらに強化して優先度の高いPrimary Focusを加速、拡大し、複数の革新的な治療法の確立を目指しています。また、新たな事業領域として立ち上げた「Rx+事業」では、革新的なデジタル、デバイス技術や、診断技術、バイオエレクトロニクスなどを用いて、科学の進歩を患者さんの価値に変えるための新たな方法を探求しています。これら注力している研究開発領域において、製品に関わる知的財産権のみならず、先端的なモダリティ/テクノロジーの基盤となる知的財産・無形資産に対する投資を重点的に行っています。また、社外に補うべき資産や能力、人材を有しているパートナーが見つかった場合には、共同研究、外部提携、買収などを実施しています。 研究開発費及び無形資産については、「2022年3月期(第17期)有価証券報告書」に記載しています。 https://www.astellas.com/jp/investors/ir-library/securities-report 共同研究、外部提携や買収等による技術の獲得については、適時適切にプレスリリースにて開示しています。 https://www.astellas.com/jp/news?tab=latest&page=0 2022年3月期 統合報告書2022 https://www.astellas.com/en/system/files/astellas_ir2022_jp_20221004.pdf 製品に関わる特許のみならず、グローバルでの新薬開発・商業化のノウハウや多様な新規モダリティに対応する技術力という競争力の源泉となる知的資本を保有しています。 知的財産に関するポリシー https://www.astellas.com/en/system/files/property.pdf 途上国における知的財産権についての基本的な考え方 https://www.astellas.com/en/system/files/ip_jp_20200316.pdf 「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第13回)令和4年10月7日(水)における事務局説明資料では、投資家の目線から企業の開示・対話・ガバナンスが評価される観点について4点を挙げています。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai13/siryou3.pdf P.10 企業の開示・対話・ガバナンスが評価される観点 ・対話のきっかけとなる開示を意識すること ・価値創造ストーリー等を踏まえた全体戦略・ミッションを起点とした論理構造化された取組ツリーを示すこと ・将来価値や財務パフォーマンスにつながるロジカルなストーリー(因果パス)を伝えること ・知財・無形資産と人材投資とのつながりや好循環による組織能力の向上を意識すること 特に、P.12には、『企業と投資家の思考構造(ロジックツリー)のギャップを埋める点において、自社の全体的な戦略ストーリーを踏まえた上で、知財・無形資産の役割(差別化等)と財務とのつながりを示すことが有効である。事例として、以下の「ROIC逆ツリー」が挙げられる。ROIC逆ツリーの改善ドライバーにどの知財・無形資産を寄与させようとしているかを明確に示した上で、どのような論拠で有意な改善ドライバーのパフォーマンス向上につながるのかの因果関係の証明(因果パス)を加えて、はじめて説得力を持つ。』と説明され、「OMRON統合レポート2022」を基に事務局にて加工し、知財・無形資産の例として、「先端技術、特許、斬新な意匠等」を付加価値率に紐付け、「破壊的な製造コスト削減をもたらす革新技術等」を製造固定費率に紐付け、「顧客基盤・ネットワーク等」を販管費率に紐付けた「ROIC逆ツリーの例(オムロン株式会社)」が示されています。 OMRON統合レポート 2022 https://www.omron.com/jp/ja/ir/irlib/pdfs/ar22j/OMRON_Integrated_Report_2022_jp_A4.pdf 金融庁が、法務省と連携しながら、技術力や知的財産も担保にできる新法を検討しているようです。無形資産を含めた事業価値全体を対象とする「事業成長担保権」をつくる方向で、実現すれば、不動産担保や経営者保証を前提としてきた日本独自の融資慣行が変わり、不動産の保有が少ない中小・新興企業にマネーを供給する新たな流れにもなるようです。
技術力や知的財産の評価も、課題のようです。注目したい流れのひとつです。 技術力や知的財産も担保、融資可能に 金融庁が新法検討 https://vs-group.jp/tax/vspicks/news/20221018-id7988/ 技術力・知財、融資の担保に 中小・新興にマネー供給 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB141A00U2A011C2000000/ 企業向けデジタル金融 三井住友「アジア最大狙う」 マイクロソフトと連携「金融超えたサービス提供」 2022/10/19付 https://www.nikkei.com/nkd/industry/article/?DisplayType=2&n_m_code=121&ng=DGKKZO65248300Y2A011C2EE9000 令和4年10月7日におこなわれた「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第13回)では、事務局説明(内閣府知的財産戦略推進事務局)の他、味の素株式会社、株式会社荏原製作所、東京海上ホールディングス株式会社、 株式会社丸井グループのプレゼンテーションがありました。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai13/gijisidai.html 丸井グループの無形資産投資 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai13/siryou7.pdf 「証券アナリストによるディスクロージャー優良企業選定」において 丸井グループが小売業部門で「第1位」を2年連続で獲得している丸井グループ。 丸井グループの無形資産投資は2020年3月期では、無形投資倍率(無形投資/有形投資)が2.0倍となっており、ビジネスモデルが労働集約型の小売主導から知識創造型(小売×フィンテック×未来投資)に進化していることがわかります。 未来投資は、共創投資(スタートアップ・ファンドへの投資)と新規事業投資(ECを基軸としながら当社の店舗イベント運営やフィンテックを活かし、独自の障壁の高いビジネスモデルを構築)です。 単年度の損益項目から中長期的に企業価値向上につながる項目を「人的資本投資」として再定義、将来収益に貢献する人的資本投資を120億円まで拡大し、人件費に占める割合は35%まで上昇、未来投資など今後の成長領域を支えるWeb系人材を拡充、知識創造型企業への進化をはかっており、26年3月期には収入(限界利益)がコスト(人的資本投資の償却費)の5倍を見込むとのことです。(人的資本投資 IRRは 11.7%となり、株主資本コストを上回る見通し) 「証券アナリストによるディスクロージャー優良企業選定」において 丸井グループが小売業部門で「第1位」を2年連続で獲得 2022年10月13日 https://www.0101maruigroup.co.jp/pdf/settlement/22_1013/22_1013_2.pdf 丸井がエポスカード特許訴訟ではまった罠、「社員の発明対価」の備えを怠った企業の末路 https://diamond.jp/articles/-/300569 丸井Gエポスカード特許訴訟第1回、「発明は会社に600億円の利益」と元役員 https://diamond.jp/articles/-/303348 丸井Gが「5万円」の発明報奨金を急ごしらえ、狙いは訴訟対策と社員に対する“踏み絵”? https://diamond.jp/articles/-/303349 令和4年10月7日におこなわれた「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第13回)では、事務局説明(内閣府知的財産戦略推進事務局)の他、味の素株式会社、株式会社荏原製作所、東京海上ホールディングス株式会社、 株式会社丸井グループのプレゼンテーションがありました。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai13/gijisidai.html 東京海上ホールディングス株式会社 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai13/siryou6.pdf 「直近の統合報告書における知財・無形資産の開示」で行われた東京海上ホールディングスのプレゼンテーションでは、 「保有データ・デジタル技術」、「M&A・PMIの実⾏⼒」を競争⼒の源泉としての重要な知的財産・無形資産と位置付け、統合報告書では、「非財務資本」強化のパートで「人的資本」と共に開示している他、随所に関連情報を盛り込んでいる、とのことです。 「保有データ・デジタル技術」は、「いつも支える存在」へと進化するための「キードライバー」としても位置付けていて、保有データとデジタル技術をどのように活用するのか、それによってどのような価値を創出するのかを分かり易く図示しています。 「M&A・PMI実⾏⼒」が、グローバルリスク分散の実現には「手段」として不可⽋としてその重要性を具体的に示し、「厳格な買収基準」を具体的に開示、買収だけでなく、「フォワードルッキングな事業売却」とセットで実⾏している実績を具体的に示すことで、実効性を強調しています。 「知的資本」の活用・強化が、当社の事業活動や企業価値向上に対して、どう位置付けられているのかをシンプルに図示、統合報告書で訴求している当社の「3つの強み」を、「知的資本」の強化によって向上・下支えする関係性を示しています。 東京海上というと、東京海上日動火災保険が10月からM&A(合併・買収)後に買収先の知的財産を巡るトラブルを補償する保険を売り出す、というようなニュースで、知財との関係が出てきますが、無形資産という見方をするとより幅広い活動が見えてきます。 東京海上、シンガポールITに出資 デジタルで保険販売 2022/10/15 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB1234Q0S2A011C2000000/ 東京海上ホールディングス統合レポート 2022 https://www.tokiomarinehd.com/ir/download/l6guv3000000fubw-att/Integrated_Report_2022_J.pdf 東京海上、買収先の知財トラブルを補償 特許侵害に備え 2022年9月21日 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB152Z50V10C22A8000000/ (株)AI Samuraiは、東京海上日動火災保険と連携し、知的財産権リスクの補償を行う国内M&A保険(表明保証保険)を開発しました。 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000241.000021559.html 令和4年10月7日におこなわれた「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第13回)では、事務局説明(内閣府知的財産戦略推進事務局)の他、味の素株式会社、株式会社荏原製作所、東京海上ホールディングス株式会社、 株式会社丸井グループのプレゼンテーションがありました。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai13/gijisidai.html 荏原製作所 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai13/siryou5.pdf 荏原製作所のプレゼンテーションでは、 1.情報開示の充実について 2.統合報告書について 3.会社概要 4.新規事業の開拓・創出 が触れられています。 2022年版統合報告書のポイントの中でも、新たな取り組みである「技術人材戦略」が注目されます。特に、c①風目されるのは、荏原グループ全社技術の全体俯瞰、②戦略的技術強化施策の策定・実践、③コア技術の組み合わせによる新事業・新製品・新サービスの提供、④技術補完、M&A展開、⑤技術技能継承、⑥人材ローテーション戦略、を目的として、「技術人材の見える化」=技術・技能を持つ専門人材を紐づけたデータベースとして構築した「技術元素表」です。 荏原製作所における知財価値評価とその活用 https://www.ebara.co.jp/jihou/no/list/detail/262-6.html 荏原製作所における知財価値評価とその活用 26/7/2022 https://yorozuipsc.com/blog/8444205 令和4年10月7日におこなわれた「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第13回)では、事務局説明(内閣府知的財産戦略推進事務局)の他、味の素株式会社、株式会社荏原製作所、東京海上ホールディングス株式会社、 株式会社丸井グループのプレゼンテーションがありました。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai13/gijisidai.html 味の素グループにおける無形資産を活かす価値創造の取組みでは、 無形資産を活かした持続的価値創造、イノベーションによる持続的成長戦略を進めていること、 事業モデル変革(BMX)の4つの成長領域(ヘルスケア、フード&ウェルネス、ICT、グリーン)、 4つの無形資産(人財、技術、顧客、組織)を重視していること、 技術資産の強化では、高度化と融合、Smart R&D、 顧客資産の強化では、ブランディング、ブランド価値向上(コーポレートブランド価値の外部指標:インターブランドを採用。)、 人財資産の強化では、個人と組織の共成長、ASVマネジメントサイクル、エンゲージメントサーベイと業績の相関、ASV実現プロセスの導入、人財投資と成果、 をポイントとしています。 2030年に向けた成長イメージも明確です。 味の素グループにおける無形資産を活かす価値創造の取組み https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai13/siryou4.pdf IR Day 2022オープニングリマークス ~ASV経営の進化 サステナビリティと人財資産~ https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/ir/event/ir_day/main/01/teaserItems1/01/linkList/0/link/Opening%20Remarks_J.pdf 社長メッセージ2022|統合報告書|ESG・サステナビリティ https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/activity/ir/ceo_2022.html 味の素グループASVレポート 2022(統合報告書) https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/ir/library/annual/main/014/teaserItems1/00/linkList/00/link/ASV%20Report%202022_J_A3.pdf 事業モデル変革(BMX)による成長戦略 - 味の素 https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/ir/event/business_briefing/main/0112/teaserItems1/00/linkList/00/link/Business%20Model%20Transformation_J.pdf 知財・無形資産の投資・活用戦略の開示及びガバナンスに関する取組事例集 2022年6月27日内閣府知的財産戦略推進事務局 P9企業の取組事例:事例2|味の素 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai11/siryou6.pdf 味の素のIPランドスケープとCGC改定対応 https://yorozuipsc.com/blog/ipcgc 味の素(株)の知的財産活動 https://yorozuipsc.com/blog/5004645 10月12日特許庁から令和4年度審査の質についてのユーザー評価調査報告書が公表されました。平成24年度から継続されているユーザー評価調査で、年々評価が上がってきていて特許庁の努力の成果が表れています。
今年の評価結果で気になったのが「図 24:国際段階と国内段階との間での判断の一貫性についての評価」で、令和3年、令和4年と2年続けて評価が下がっています。不満・やや不満を合わせた数字が17.8%で、28年以降で最も高い数字になっています。何か要因があるのでしょうか。 『分析の結果、「判断の均質性」、「第29条第2項(進歩性)の判断の均質性」、「国際段階と国内段階との間での判断の一貫性」の項目が、国内出願における特許審査及びPCT出願における国際調査等の全般の質の評価への影響が大きく、かつ相対的な評価が低いことが分かったため、これらを優先的に取り組むべき項目と設定しました。』と記載されており、改善されるものと期待しています。 令和4年度審査の質についてのユーザー評価調査報告書を公表します https://www.meti.go.jp/press/2022/10/20221012002/20221012002.html 令和4年度特許審査の質についてのユーザー評価調査報告書 https://www.jpo.go.jp/resources/report/user/2022-tokkyo.html 令和4年10月12日 特許庁調整課品質管理室 世界最高品質の特許審査を実現するためには、特許審査に対するユーザー(出願人や権利を行使される第三者等)の皆様のニーズや期待を適切に把握することが不可欠であるとの認識のもと、特許庁は、平成24年度より特許審査の質についてのユーザー評価調査を実施しております。 今般、令和4年度調査の結果を報告書に取りまとめましたのでお知らせします。 本報告書は、令和3年度の特許審査・国際調査等全般の質について「満足」、「比較的満足」、「普通」、「比較的不満」、「不満」の5段階で評価いただいた結果を取りまとめたものです。調査は令和4年5月~6月に実施し、回答率は8割を超えました(調査対象715者中607者)。御協力いただいたユーザーの皆様には、この場を借りて御礼申し上げます。 国内出願における特許審査全般の質についての評価(全体評価)は、「普通」以上の評価の割合が95.7%、上位評価割合(「満足」・「比較的満足」の評価の割合)が61.3%でした。 PCT出願における国際調査等全般の質についての評価(全体評価)は、「普通」以上の評価の割合が97.5%、上位評価割合が59.0%でした。 分析の結果、「判断の均質性」、「第29条第2項(進歩性)の判断の均質性」、「国際段階と国内段階との間での判断の一貫性」の項目が、国内出願における特許審査及びPCT出願における国際調査等の全般の質の評価への影響が大きく、かつ相対的な評価が低いことが分かったため、これらを優先的に取り組むべき項目と設定しました。今後も、法令・審査基準・指針に即した審査を行いつつ、ユーザーへのコンタクト等を通じた具体的な課題の把握、審査官間の協議等を通じた審査官相互の知識の共有を進め、判断の均質性の向上に努めてまいります。 特許庁は、引き続き特許審査の質の維持・向上に努めてまいります。 https://www.jpo.go.jp/resources/report/user/document/2022-tokkyo/2022-tokkyo.pdf 経済産業省 METI Journal ONLINE9月号で、知財で挑むESG経営という政策特集が組まれ、vol.4とvol.5 で、「知財を活躍させる企業統治」とは。プロが明かす重要ポイント」が取り上げられています。
スリーダムアライアンス社執行役員の原田雅子氏は、 『知財部署は他から分離させず、社内のどこにでも潜んでいる感じにしています。技術だけでなくビジネスも分かっている存在です。周囲が研究開発の話をしているときでも臆せず、仲間として「ビジネスの面からはこういう技術にはできないのか」などと持ちかけています。』と話しています。 スタートアップならではとも言えますが、ブリヂストンの荒木充氏(知的財産部門 部門長)も『会社が持っている知財を「こんなふうに使えるはず」とか「ここをちょっと変えてみれば」と社内で提案するのです。ブリヂストンではそのために、知財部門が開発部門や事業部門などに草の根的に入り、つなぎ役をしています。』と話していますように、基本は一緒でしょう。 経済産業省ウェブサイト「METI Journal ONLINE」 「知財を活躍させる企業統治」とは。プロが明かす重要ポイント【前編】 URL:https://journal.meti.go.jp/p/23628/ 「知財を活躍させる企業統治」とは。プロが明かす重要ポイント【後編】 URL:https://journal.meti.go.jp/p/23682/ 特許庁が第2回IPランドスケープセミナーを無料公開 26/10/2021 https://yorozuipsc.com/blog/2ip スタートアップのIPランドスケープ~経営層の意識は高い!~ 5/1/2021 https://yorozuipsc.com/blog/ip5682275 経済産業省 METI Journal ONLINE9月号で、知財で挑むESG経営という政策特集が組まれ、vol.4とvol.5 で、「知財を活躍させる企業統治」とは。プロが明かす重要ポイント」が取り上げられています。『知財は価値を生む「ウナギ屋秘伝のタレ」』は、荒木充氏(ブリヂストン 知的財産部門 部門長)の言葉です。
「知財のことを特許だと思っている人は多いです。重要な部分ではありますが、それだけではないという認識をまずもっていただきたいです。ブリヂストンは1988年に発泡ゴムを使ったスタッドレスタイヤを製品化しました。関連する特許権(※)はとっくに切れていますが、他社にマネされません。性能を安定させ、商売になるコストで生産するためには、特許の周りにあるノウハウやナレッジが欠かせないのです。知財は、注ぎ足しながら使っていくウナギ屋の秘伝のタレのようなものと言えます。 価値を生んでいるのは、知財なのです。しかし、明確には見えないので、管理が難しい。うまく使える企業と、そうでない企業とでは、大きな差が出ることになります。」 その通りですね。 政策特集 知財で挑むESG経営 vol.1 環境技術こそ「企業戦略のゲームチェンジャー」だ! vol.2 「知財フル活用」で社会課題を解決、笑顔と創造の輪を広げよう! vol.3 投資家も注目する知財戦略。カギを握る「企業の情報開示」 vol.4 「知財を活躍させる企業統治」とは。プロが明かす重要ポイント【前編】 vol.5 「知財を活躍させる企業統治」とは。プロが明かす重要ポイント【後編】 知財で挑むESG経営 - 経済産業省 METI Journal ONLINE https://journal.meti.go.jp/policy/202209/ ブリヂストン、『Bridgestone 3.0 Journey Report(統合報告2022)』を発行 https://www.bridgestone.co.jp/corporate/news/2022062901.html Bridgestone 3.0 Journey Report(統合報告2022) 知的財産戦略 https://www.bridgestone.co.jp/ir/library/integrated_report/pdf/ir2022_65-66.pdf ブリヂストンにおけるIPランドスケープの活用 8/11/2021 https://yorozuipsc.com/blog/ip9669315 ブリヂストンでの知財投資 3/9/2021 https://yorozuipsc.com/blog/9385185 ブリヂストンでの知財投資 Aug. 26 2021 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai2/siryou5.pdf ブリヂストンのIPランドスケープ 22/6/2021 https://yorozuipsc.com/blog/ip8178738 昨年6月、東京証券取引所が公表したコーポレートガバナンス・コード(CGC)の改訂版に、初めて知的財産に関わる項目が盛り込まれ、このCGC改訂に速やかに対応するための企業の「知的財産戦略のあるべき姿」「知財活用のやり方」「知財情報の開示の仕方」が変わりつつあります。各企業の統合報告書の内容も大きく変化しています。
企業だけでなく、弁理士などの役割、投資家の役割をも変えようというのがこのCGC改訂です。 一方、知財・無形資産の価値を時価総額から導き出すことの問題点も指摘されています。 各企業、知財に関わる専門家の創意工夫が求められているのが現状でしょう。 特許情報開示、企業と投資家結ぶ弁理士 10/9(日) https://news.yahoo.co.jp/articles/98373c1c45334ef0d9782f4f891fdbc3d5ca7904 知財活用の歴史を立体的な目線で振り返る 2022年10月7日 https://note.com/t_habu/n/n9a7e843e075f コーポレートガバナンス・コード改訂で変わる知財戦略 ~戦略的な開示に向けた知的財産の考え方~2022.10.06 https://project.nikkeibp.co.jp/decom/atcl/080900021/091600002/ 20 2 2 - 1 0- 8 時価総額だけが「価値」じゃない。 https://k-houmu-sensi2005.hatenablog.com/entry/2022/10/08/233000 東証、TOPIXの構成比率493社引き下げ 2割強対象 2022年10月7日 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB078NL0X01C22A0000000/ 2019年に特許戦略部を新設し、各部門で扱っていた特許技術を一元的に管理できるようにした、株式会社明治は、チョコレートやヨーグルトなどで国内シェア1位の食品メーカーで、商品開発で培った特許技術を生かした組織づくりを進めています。
「培ってきた特許技術で新しい価値を届けていきたい。」と社長が牽引しているようです。 「明治グループ統合報告書2022」では、非財務情報や無形資産への関心の高まりを受け、初めて人的資本や知的資本のページを設けています。 知的資本のページ(P46-P49)では、 (1)戦略的な特許取得、(2)技術ノウハウの管理、(3)meijiらしい商標の活用の3つの観点から知的財産戦略を展開していること、 知的財産マネジメントは、「明治グループサステナビリティ2026ビジョン」の実現にも寄与していること(外部機関が提供する特許分析ツールLexisNexis® PatentSight®を用いて、明治グループが保有する特許を解析した結果、約半数がSDGsと関連していた。国内食品企業で、明治グループはSDGs、なかでもSDG 3に関連する特許の割合および件数が高いポジションにある。)、 (株)パテント・リザルトが提供するパテントスコア®を用いて比較した結果、右図に示す通り、主要カテゴリーで競合企業に対して、質・量とも価値の高い特許を保有し、総合力で優位を示していること、 技術ノウハウの管理では、主要な技術ノウハウが整理され、素材、評価、加工の領域で、長年にわたって技術基盤を蓄積、この基盤をもとに、世界トップレベルの優れた技術ノウハウを生み、meijiならではの価値創造につなげていること、 meijiらしい商標の活用では、商標を通じて商品の価値や魅力を伝えており、特許・技術ノノウハウ」と「商標」のシナジーにより、商品ライフ長期化を実現していること、 などが述べられています。 そして、食品・医薬品の各セグメントの特徴ある知的財産戦略について、事例を交えて解説しています。 「特許技術の可能性を追求」明治・松田克也社長<じっくりトーク> 2022年10月9日 https://www.tokyo-np.co.jp/article/206992 統合報告書 2022 P46-49 知的財産マネジメント https://www.meiji.com/investor/library/integratedreports/2022/pdf/integrated-reports_2022_ja_05.pdf 特許を巡る争い<72>明治・チーズソース特許 https://patent.mfworks.info/2022/09/29/post-4028/ 知財活用、先進企業に聞く 知財幹部、異業種から登用 明治HD https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61180250X20C22A5TCJ000/ 知財開示、キリンや明治が先行 統治コード改訂が後押し https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH079X80X00C22A4000000/ お菓子のかたちと立体商標~商標の識別力は商品・役務との関係でみる~ https://www.meilin-law.jp/%E3%81%8A%E8%8F%93%E5%AD%90%E3%81%AE%E3%81%8B%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%81%A8%E7%AB%8B%E4%BD%93%E5%95%86%E6%A8%99/ 株式会社明治のIPランドスケープ https://yorozuipsc.com/blog/ip3030825 特許庁は、10月7日付けで、リーフレット「DX時代における特許審査官とのコミュニケーション テレワーク中の審査官との電話連絡や、オンライン面接の手続等について」を公開しました。テレワーク中の審査官との電話連絡やオンライン面接の手続等について紹介しています。 特許庁ステータスレポート2022によれば、特許審査においては、2021年に実施された面接審査1,689件のうち、1,423件をオンラインで実施(昨年比40.2%増)。また、審判においては、「オンライン口頭審理」を2021年10月に開始し、10月以降に実施された口頭審理20件のうち、13件をオンラインで実施したということです。 テレワーク中の審査官との電話連絡:2021年4月1日より、テレワーク中の審査官に対して電話連絡ができる手段が整備され、テレワーク中の審査官から折り返しの電話が可能となっています。 オンライン面接:従来の「特許庁での面接」、「出張面接」に加えて、「オンライン面接」を導入 、未公開出願でもオンライン面接が可能。補正案や説明資料を画面共有すると、説明のポイントがわかりやすく、よりよいコミュニケーションが可能。書類だけでなく、動画を共有することも可能。 DX時代における特許審査官とのコミュニケーション 2022年10月作成 https://www.jpo.go.jp/resources/report/sonota-info/panhu.html オンライン面接について https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/mensetu/telesys_mensetu.html 特許庁ステータスレポート2022 https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220330004/20220330004.html ~知らないと損をする!より広く・より有利な権利取得に役立つ~ 特許面接審査の活用ノウハウ https://www.tech-d.jp/seminar/show/6343 ドワンゴ v. FC2事件控訴審(令和4年(ネ)第10046号)で、ドワンゴ側の申し立てに基づき、今年4月施行の改正特許法で導入された「第三者意見募集制度」が採用されました。
動画サイトの「ニコニコ動画」を運営する株式会社ドワンゴが、再生中の動画にコメントを表示する特許を侵害されたとして、「FC2動画」の運営会社を訴えている裁判で、意見募集事項は、下記の通りです。 1 サーバと複数の端末装置とを構成要素とする「システム」の発明において、当該サーバが日本国外で作り出され、存在する場合、発明の実施行為である「生産」(特許法2条3項1号)に該当し得ると考えるべきか。 2 1で「生産」に該当し得るとの考え方に立つ場合、該当するというためには、どのような要件が必要か。 この「日本版アミカスブリーフ」と呼ばれるやり方がどう裁判に影響するのか注目したいと思います。 第三者意見募集制度 https://www.ip.courts.go.jp/tetuduki/daisansha/index.html 第三者意見募集制度(日本版アミカスブリーフ制度)の意義と活用の可能性 https://www.businesslawyers.jp/practices/1375 第三者意見募集を実施している事件について https://www.ip.courts.go.jp/tetuduki/daisanshaiken/index.html 知的財産高等裁判所第1部に係属中の以下の事件について、広く一般から意見を記載した書面の提出を求めることとなりましたので、お知らせします。 募集要項https://www.ip.courts.go.jp/vc-files/ip/2022/boshuuyoukou_n_n.pdf 事案の概要https://www.ip.courts.go.jp/vc-files/ip/2022/boshuugaiyou_n.pdf 動画配信巡る特許権訴訟 「第三者意見募集」初採用 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE303AX0Q2A930C2000000/ 特許訴訟で初めて 当事者以外から争点の意見募集へ 知財高裁 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221001/k10013844351000.html 特許法の八衢 NTP事件CAFC判決、及びそれを引用する2つのCAFC判決の紹介 ― ドワンゴ v. FC2事件控訴審(令和4年(ネ)第10046号)第三者意見募集に関連して 2022-10-02 https://patent-law.hatenablog.com/entry/2022/10/02/151755 グローバル・イノベーション・インデックス (GII)は、日本を含む世界の132の経済圏(国 ・地域)のイノベーションパフォーマンスをランキング付けした報告書で、世界中の官民のデータソースから81の指標を収集して分析、透明性が高く再現可能な計算方法論を採ることからイノベーション指標として注目されています。
日本は昨年に続き第13位で、スイスが12年連続1位、米国が2位(昨年3位)、次いでスウェーデン(昨年2位)、英国、オランダ、韓国の順。アジアでは、1位韓国、2位シンガポール、3位中国、4位日本の順。 日本の強みは、特許出願(1)、PCT国際特許出願(1)、パテントファミリー数(1)、企業内の研究者フルタイム換算(3)、輸出品の多様性(1)、企業によるR&D総支出率(2)、民間部への国内貸し付け(3)など。(括弧内は世界順位) 日本の弱みは、「理工系大学院生数」(68)、「対GDP教育への支出率」(107)など教育、「研究開発費の海外資金調達率」(66)、「対GDPの海外直接投資流入額」(104)など日本の魅力。 知財の面では、知財権に基づく資金調達が注目されています。GII 2020の中でも、アジア各国における知財を裏付けとする融資プログラムの事例が紹介されていて、GII順位を上げている中国などが、公的な融資プログラムを提供しているようです。 日本でも、スタートアップ・大学の知財エコシステムの強化、企業による知財・無形資産への投資、などが好循環を生み出すことが期待されています。 韓国や香港、中国より下位の日本の技術革新力 一体何が原因か https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00736/00019/ Global Innovation Index 2022 What is the future of innovationdriven growth? https://www.wipo.int/edocs/pubdocs/en/wipo-pub-2000-2022-section1-en-gii-2022-at-a-glance-global-innovation-index-2022-15th-edition.pdf JAPAN P.6 Strengths and weaknesses for Japan https://www.wipo.int/edocs/pubdocs/en/wipo_pub_2000_2022/jp.pdf 知的財産推進計画2022(概要) ~意欲ある個人・プレイヤーが社会の知財・無形資産をフル活用できる経済社会への変革~ 2022年6月 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/chizaikeikaku2022_gaiyou.pdf かっぱ寿司社長が逮捕され、営業秘密、不正競争防止法に対する関心が高まっています。
2003年の改正で刑事罰が導入され、2015年の改正では、営業秘密を漏らした場合、企業に科される罰金の上限をそれまでの3億円から5億円に引き上げられ、営業秘密を盗んだり使ったりすることに失敗するなど「未遂」であっても罰則対象となりましたが、営業秘密侵害の事件が続いています。 平成31年1月に改訂された営業秘密管理指針、令和4年 5月に改訂された「秘密情報の保護ハンドブック~企業価値向上に向けて~」に基づいた社内体制の整備と教育が重要です。 「かっぱ寿司事件」は他人事じゃない!「不正競争防止法」とは GGO編集部2022.10.5 https://gentosha-go.com/articles/-/45939 かっぱ寿司社長、辞任。新社長が会見「不正競争防止法に対する認識の不足があったのでは」 2022年10月3日 https://gourmet.watch.impress.co.jp/docs/news/1444507.html かっぱ寿司社長逮捕「迂闊な引き抜き」への警告 前勤務先の営業秘密流出はどれほど危ない行為なのか 2022/10/01 10:59 https://toyokeizai.net/articles/-/623039 刑事罰導入から20年、それでも後を絶たない「営業秘密の侵害」 2022年9月30日 19時00分 https://digital.asahi.com/articles/ASQ9Z622CQ9ZULFA01W.html 「かっぱ寿司」社長を逮捕、問われた営業秘密とは? 2022年9月30日 2:00 (2022年9月30日 16:58更新) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE203E70Q2A520C2000000/ 秘密情報の保護ハンドブック~企業価値向上に向けて~ 令和4年 5月 経済産業省 知的財産政策室 https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/1706blueppt.pdf 秘密情報の保護ハンドブック(PDF形式:1,441KB)平成28年2月 (最終改訂:令和4年5月) 経済産業省 https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/chiteki_zaisan/fusei_kyoso/pdf/20220517_3.pdf 営業秘密管理指針 https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/guideline/h31ts.pdf |
著者萬秀憲 アーカイブ
July 2025
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