10月24日、音楽教室における著作物使用に関わる請求権不存在確認請求事件の最高裁判決が出され、知財高裁の判断が維持され、「音楽教室の運営者と演奏技術等の教授に関する契約を締結した者(生徒)のレッスンにおける演奏に関し上記運営者が音楽著作物の利用主体であるということはできないとされた事例」として、判決文が公開されています。
今年夏の北大サマーセミナーで上野達弘先生が取り上げられていましたが、『今回の最高裁判断について早稲田大学の上野達弘教授は「クラブ・キャッツアイ判決と同じ演奏権をめぐる訴訟でありながら同判例を引用しないばかりか、カラオケ法理に沿わずに楽曲の利用主体を判断した。今後は下級審でも同法理を適用することはなくなるだろう。技術革新にもプラスとなる」と評価する。』(日経新聞) 『他方、福井健策弁護士は「JASRACなどの団体が管理しておらず、個別の権利者を探し許可を得ることが難しいゲーム音楽、インディーズ系の人気楽曲を教室で使うことへの萎縮が広がる懸念がある」と指摘する。』(日経新聞)としていますが、「弁護士 福井健策のコラムでは、『今回の結論は、一般の感覚にも合致する条文解釈という点で、知財高裁と最高裁が適正なバランスを追い求めた上での判決であったと、個人的には評価したいと思います。』とされています。 『著作権法に詳しい神戸大学法学部の前田健教授は、「生徒の演奏を教室の演奏だとするのはそもそも無理があった。最高裁も全て無料とまでいえなくても、高額な徴収は望ましくないと考えたのではないか」と指摘します。』という指摘もありました。 栗原潔弁理士(知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授)は、『音楽教室において先生が演奏しないということは想定しがたいので、結局のところ、音楽教室側がJASRACに著作権使用料を払わなければいけないという結論に変わりはなく、変わるとするならば、JASRACが元々要求してきた2.5%という著作権使用料率の算定根拠が変わるので、料率が変わる可能性があるということになります。一部メディアが「音楽教室の生徒演奏、著作権料は不要」と言ったぱっと見ると誤解しそうな見出しで報道したりしているので勘違いしないよう願います。』としています。 学習院大の横山久芳教授(知的財産法)は、『とても短い判決でしたが、私は妥当な判断だと考えます。判決は、考慮すべき点として演奏の目的や態様などを挙げ、二審と同様に「生徒の演奏に教室が著作権料を払う必要はない」とする結論でした。カラオケ法理は「管理と利益」を特に重視するものでしたが、「演奏の目的や態様など、もっと幅広く様々な事情を考慮すべきだ」という考え方を打ち出しました。カラオケ法理を融通無碍(ゆうずうむげ)に拡張して解釈するのではなく、線引きをしたわけです。この点は重要で、演奏以外の著作権の考え方にも影響を与えると思います。カラオケは「歌うこと」自体が目的ですが、判決が言うように、音楽教室の生徒にとっては「教授・指導を受けること」が目的であり、演奏は手段だと言えます。性質が全く違うので、最高裁は常識的な判断をしたと思います。』(朝日新聞) 今後、様々な影響が出そうです。 令和3年(受)第1112号 音楽教室における著作物使用に関わる請求権不存在確認請求事件 令和4年10月24日 第一小法廷判決 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/473/091473_hanrei.pdf 音楽教室側、判決を歓迎 JASRACは「誠に残念」 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE24AER0U2A021C2000000/ 音楽教室の著作権使用料「生徒は対象外」最高裁判決ポイントは https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221024/k10013868361000.html 音楽教室訴訟 最高裁、技術萎縮の「カラオケ法理」脱却(日経新聞) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD218OO0R21C22A0000000/ 弁護士 福井健策のコラム 2022年10月19日 (2022/10/24追記) 「ついにJASRAC・音楽教室裁判が最高裁決着論点と、判決の影響をもう一度駆け足で考えてみる」 https://www.kottolaw.com/column/221019.html JASRAC対音楽教室裁判の最高裁判決について https://news.yahoo.co.jp/byline/kuriharakiyoshi/20221024-00320799 危うい「カラオケ法理」と線引き 音楽教室訴訟、識者はどう見たか https://digital.asahi.com/articles/ASQBS67HNQBNUTIL02B.html 2022年10月24日 一般社団法人 日本音楽著作権協会(JASRAC) 音楽教室における請求権不存在確認訴訟の最高裁の判断について https://www.jasrac.or.jp/release/22/10_2.html JASRAC、最高裁で主張認められず「率直に言って残念」 使用料率の見解については明言避ける https://www.oricon.co.jp/news/2253966/full/ 音楽教室における生徒の演奏 10月24日に最高裁判決 https://yorozuipsc.com/blog/-1024 JASRACと音楽教室の裁判、10月24日に最高裁で決着へ https://yorozuipsc.com/blog/jasrac1024
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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