2月12日(日)放送のNHK「NHKスペシャル 混迷の世紀 第8回 『“貿易立国”日本の苦闘〜グローバリゼーションはどこへ〜』」では、三菱電機漆間社長のインタビューや経済安全保障統括室長の密着取材、テクノスマート柳井社長のインタビューなどが放送されました。
これまで恩恵を受けてきた世界経済をつなぐ仕組みが土台から崩れようとしている激動のグローバル社会で、今何が起こっているのか?それに立ち向かう日本企業の姿(三菱電機、テクノスマートなど)が描かれていました。 経済安全保障の重要性がよくわかります。 ■放送局名 NHK(全国) ■番組名 「NHK スペシャル」 混迷の世紀 第8回 「“貿易立国”日本の苦闘〜グローバリゼーションはどこへ〜」 ■放送日時 2月12日(日)21:00~21:50 ■番組URL https://www.nhk.jp/.../ts/2NY2QQLPM3/episode/te/PM8RQN5JGN/ NHK+で、配信期限 :2/19(日) 午後9:49 まで https://plus.nhk.jp/watch/st/g1_2023021234213 2月16日(木)午前1:15 再放送予定 https://www.nhk.jp/p/special/ts/2NY2QQLPM3/schedule/te/PM8RQN5JGN/ さよならグローバル化? 欲しいものが手に入らなくなるのか https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230209/k10013975771000.html 【NHK】「経済」と「安全保障」が重なる時代。これまで恩恵を受けてきた世界経済をつなぐ仕組みが土台から崩れようとしている。 各国で“見えないルール”も避ける時代 経済安保、企業活動に網 海外規制の「域外適用」も 2023.1.27 https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/01337/ 経済安保で天下り?その訳は 三菱電機役員の元エネ庁長官に聞く 2022年5月12日 https://digital.asahi.com/articles/ASQ5D5WZNQ5DULFA00F.html 安全保障貿易管理と大学・研究機関における機微技術管理について https://www.meti.go.jp/policy/anpo/daigaku/seminer/r4/meti2.pdf 安全保障貿易管理について~安全保障貿易管理説明会~ https://www.meti.go.jp/policy/anpo/seminer/shiryo/anpo_anpokanri_2022.pdf 経済安保、対応急ぐ三菱電機やデンソー 人材難で支援ビジネスも 2021.11.15 https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00030/111500277/ 三菱電機、経済安保リスク管理統括室を新設 2020年9月17日 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO63917450W0A910C2TJ2000/ 執行役職務分掌変更及び組織改編のお知らせ https://www.mitsubishielectric.co.jp/news/2020/0916-a.pdf 各国の経済安全保障政策の急激な変化に対応して、政策動向や法制度を調査・分析し、全社における輸出、情報セキュリティ、投資、開発等に関わる経済安全保障の観点から見たリスク制御を統合的に行うことを目的に、社長直轄組織として「経済安全保障統括室」を新設する。
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Youtube「弁護士・高石秀樹の特許チャンネル」で2023/02/09にアップされた「【特許】分割出願戦略(23分完全版)(弁護士・弁理士・米国California州弁護士 高石秀樹)」は、親子孫(三世代)分割出願の留意点がわかりやすく説明されています。
欧州、米国、中国に出願する場合の注意事項も参考になります。 弁護士・高石秀樹の特許チャンネル 【特許】分割出願戦略(23分完全版)(弁護士・弁理士・米国California州弁護士 高石秀樹)2023/02/09 https://www.youtube.com/watch?v=nB0lo8UagWI <目次> 1.出願統計(分割出願、諸外国移行) 2.親子孫(三世代)分割出願の留意点 3.明細書の記載追加と「新規事項追加」 4.新規事項追加の判断基準(一般論) 5.分割出願戦略が成功した事例紹介 分割出願戦略と留意点(親子孫出願)(2023年1月1日) https://www.nakapat.gr.jp/wp-content/uploads/2023/01/20220101%E3%80%80%E5%88%86%E5%89%B2%E5%87%BA%E9%A1%98%E6%88%A6%E7%95%A5%E3%81%A8%E7%95%99%E6%84%8F%E7%82%B9_.pdf 1月27日に行われた「グローバル知財戦略フォーラム2023」では「成功するIPLと失敗するIPL」と題した、パネルディスカッション(約80分)がおこなわれました。2/17まで無料でアーカイブ配信中ですので、まだ視聴されていない方は、視聴されると参考になります。https://ip-forum2023.inpit.go.jp/regist.html
パネルディスカッションのテーマは、 ①成功の定義・失敗の定義 ②成功するためには?失敗しないためには? ③成功・失敗を計測するためには?-KPIなどへの取り組み- でしたが、モデレーターの野崎氏の軽妙なトークが引き出したのかもしれません、ぽろっと本音が語られていたりしています。 「グローバル知財戦略フォーラム2023」を開催しました https://www.jpo.go.jp/news/ugoki/202302/2023020601.html パネルディスカッション「成功するIPLと失敗するIPL」 <モデレーター> 野崎 篤志 氏 株式会社イーパテント 代表取締役社長/知財情報コンサルタント KIT虎ノ門大学院 客員教授 大阪工業大学院 客員教授 本パネルディスカッションの進め方 https://cdn-nws.stage.ac/dldocs/ipforum2023/pd2-1.pdf 本パネルディスカッションの背景 IPランドスケープといえば? 知財人材スキル標準とIPランドスケープ 特許庁のIPランドスケープの定義 業界・業種別IPランドスケープの実施状況 CGC改定と知財情報開示への流れ 改訂版コードとWho・Where・Whatの関係 パネルディスカッションを進める上で <パネリスト> 荒木 充 氏 株式会社ブリヂストン 知的財産部門 部門長 ブリヂストン 知財マネジメントでの学び・気付き https://cdn-nws.stage.ac/dldocs/ipforum2023/pd2-4.pdf 企業知財担当としての想い/反省 (経験談)IPLの背後にあるリスク 中村 栄 氏 旭化成株式会社 知財インテリジェンス室 シニアフェロー 旭化成におけるIPランドスケープ活動 https://cdn-nws.stage.ac/dldocs/ipforum2023/pd2-3.pdf 伏見 雅英 氏 株式会社ミューラボ 代表取締役社長 https://cdn-nws.stage.ac/dldocs/ipforum2023/pd2-2.pdf ミューラボ 創立のきっかけ 福島大学発ベンチャー企業の設立 IPL・特許情報活用の取り組み 1月27日に行われた「グローバル知財戦略フォーラム2023」では、株式会社ダイセルの小河義美代表取締役社長から、「新たなバリューチェーン構築に向けて ~DXによる新スキームの提案~」と題して、企業が直面している社会課題への対応に向けた知財戦略について、経営トップの視点からの基調講演がありました。
ダイセルは、中期戦略(Accelerate2025)で、事業創出力の3本の柱の一つとして、「技術・知的財産」が挙げられ、「Proactive IPで事業を強く、事業を創出するキープロセスのアンテナ、市場から技術・事業の方向性を解析 IPランドスケープ」とIPランドスケープが位置づけられ、IPランドスケープにより機能を意訳して事業創出力に繋げています。 IPランドスケープの活用により、特許解析から、技術動向・開発ステージ・プロダクトライフサイクルなど様々な情報を得、出願人・技術カテゴリ・技術分布・発明者の相関・変化など種々の分析・解析結果を、事業のブラッシュアップ(市場成長性、競争優位性の確認)、及び、知財Exit(ライセンス・特許売却)候補選定に利用しています。 対象製品について、機能を分解して特許調査を行い、その機能ごとに将来構想を創ることを行っており、火工品からワンタイムエナジーへの転換へと、技術をベースに「機能」を社会のニーズで意訳し、「製品」に展開している事例が紹介されました。 ダイセル式生産革新により、カーボンニュートラルを実行、それを協業により、バーチャルカンパニーを実現することで、カーボンニュートラル/バイオマスバリューチェーンの道筋をつける「バイオマスバリューチェーン(一次産業と二次産業の共創循環を通じて、永続的な産業生態系をめざす)」を提唱されています。広大な構想で、その中に知財がしっかり位置づけられているのが印象的でした。 グローバル知財戦略フォーラム2023 基調講演 「企業における社会課題解決と知財戦略」 小河 義美 氏 株式会社ダイセル 代表取締役社長 https://cdn-nws.stage.ac/dldocs/ipforum2023/kn1.pdf 新たなバリューチェーン構築に向けて ~DXによる新スキームの提案~ 目次 1.会社概要、中期戦略抜粋 2.バーチャルカンパニー構想 3.IPランドスケープの活用 4.機能の意訳 5.カーボンニュートラルの道筋 グローバル知財戦略フォーラム2023(2/17までアーカイブ配信中) 7/2/2023 https://yorozuipsc.com/blog/2023217 イノベーション 知的財産/無形資産投資について https://www.daicel.com/innovation/ip/intangible-investment.html ダイセル×知財図鑑、WEBメディア「Bipass(バイパス)」をオープン─仲間と繋がり、資源の新しいルートを探るメディア 2023年1月24日 https://chizaizukan.com/news/xIIBjf2xe6y2WhoyNjspf 知財図鑑は、株式会社ダイセルとともに、価値共創の促進に向けて、志を同じくする仲間と繋がるためのWEBメディア「Bipass(バイパス)」を2023年1月24日、オープンしました。 「Bipass」は、「資源の新しいルートを探るメディア」として、ダイセルのコア技術である「バイオマス」に関するテーマにおいて、ダイセルだけでない、あらゆる企業・団体などの取り組みを紹介し、未来へ向けた問題提起、議論の場として機能することで、バイオマスの社会的認知の拡大、仲間集めを行います。 Bipassの運営は、企業の枠を飛び出し、未来に繋がる挑戦をすべくダイセルと知財図鑑のメンバーを中心に結成したユニットAC-CELL(アクセル)が行います。既存の発想にとらわれず、自らが起点となってあらゆる人や技術と交流し、志を同じくする仲間とともにイノベーションの創出を図ります。今後、リアルイベント開催のほか、新たな共創体の構築、共創体によるモノづくり・コトづくり、自治体との連携などにも取り組んでまいります。 ちざい げんき きんき 事例紹介 株式会社ダイセル 2022年1月28日掲載 https://www.kjpaa.jp/aboutus/case/daicel ダイセル中期戦略ACCELARATE2025‐ⅡにおけるIPランドスケープ 21/2/2021 https://yorozuipsc.com/blog/accelarate2025-iiip 技術・知財戦略に期待する、ダイセル新中期経営計画の真意 21/11/2020 https://yorozuipsc.com/blog/7704356 「IPランドスケープが変える、「攻め」の経営 ~技術・知財戦略に期待する、ダイセル新中期経営計画の真意~」 https://mkt.ub-speeda.com/rs/550-EMV-558/images/20200825_WP_SPEEDAH2H.pdf ダイセルのIPランドスケープ 26/8/2020 https://yorozuipsc.com/blog/ip3361704 エクオール特許権侵害で損害賠償請求 大塚製薬がダイセルなど2社を提訴 2022/11/22 https://wellness-news.co.jp/posts/%e3%82%a8%e3%82%af%e3%82%aa%e3%83%bc%e3%83%ab%e7%89%b9%e8%a8%b1%e6%a8%a9%e4%be%b5%e5%ae%b3%e3%81%a7%e6%90%8d%e5%ae%b3%e8%b3%a0%e5%84%9f%e8%ab%8b%e6%b1%82%e3%80%80%e5%a4%a7%e5%a1%9a%e8%a3%bd%e8%96%ac/ エクオール特許訴訟に最高裁決定 ダイセルらの「上告棄却」と大塚製薬が発表 2022/11/21 https://wellness-news.co.jp/posts/%e3%82%a8%e3%82%af%e3%82%aa%e3%83%bc%e3%83%ab%e7%89%b9%e8%a8%b1%e8%a8%b4%e8%a8%9f%e3%81%ab%e6%9c%80%e9%ab%98%e8%a3%81%e6%b1%ba%e5%ae%9a%e3%80%80%e3%83%80%e3%82%a4%e3%82%bb%e3%83%ab%e3%82%89%e3%81%ae/ 大塚製薬 エクオール含有食品に関する特許訴訟に対する最高裁判所の決定について https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2022/20221121_1.html 【特許★】特許権侵害差止請求控訴事件(特許法104条により生産方法が推定された事例。優先権主張が認められ、「本件特許の特許出願」日が原出願日と判断された。特許権者逆転勝訴。) 2022年09月12日 -令和2年(ネ)第10059号「エクオール含有抽出物及びその製造方法」事件<本多裁判長>- https://www.nakapat.gr.jp/ja/legal_updates_jp/%E3%80%90%E7%89%B9%E8%A8%B1%E2%98%85%E3%80%91%E7%89%B9%E8%A8%B1%E6%A8%A9%E4%BE%B5%E5%AE%B3%E5%B7%AE%E6%AD%A2%E8%AB%8B%E6%B1%82%E6%8E%A7%E8%A8%B4%E4%BA%8B%E4%BB%B6%EF%BC%88%E7%89%B9%E8%A8%B1%E6%B3%9510/ エクオールめぐる訴訟 どう決着? 製法特許係争 知財高裁、大塚製薬の主張認めるも行方不透明 2022/02/15 https://wellness-news.co.jp/posts/%e3%82%a8%e3%82%af%e3%82%aa%e3%83%bc%e3%83%ab%e5%b7%a1%e3%82%8b%e8%a8%b4%e8%a8%9f-%e3%81%a9%e3%81%86%e6%b1%ba%e7%9d%80%ef%bc%9f%e3%80%80%e8%a3%bd%e6%b3%95%e7%89%b9%e8%a8%b1%e4%bf%82%e4%ba%89%e3%80%80/ 日本大学知財ジャーナルvol.15(2022年3月発行)掲載の論説「化学分野における特許出願戦略とAIの活用」(太陽インキ製造株式会社 荒井康昭弁理士)は、「1つの発明について複数の権利を認めるべきではなく重複特許を排除すべきであるという大原則」であるにもかかわらず、化学分野では多面的に発明を特定して特許出願することが可能であるということで、選択発明、数値限定発明、パラメータ発明、用途発明、プロダクト・バイ・プロセス・クレームという、多面的に発明を特定する方法を駆使した化学分野の特許出願戦略が披露されています。
また、特許分野において AI の導入が増えているという状況でAI 搭載特許検索ソフトであるAI Samurai を用いた検証結果について紹介されています。 Ⅰ.はじめに Ⅱ.化学分野の特許出願戦略 Ⅲ.AI の活用 Ⅳ.まとめ 化学分野における特許出願戦略とAIの活用 https://www.publication.law.nihon-u.ac.jp/pdf/property/property_15/each/10.pdf 「当たり前のことが特許になって困っています」と感じている方は少なくないようです。
<例えば、知財実務オンライン【第103回】「数値限定発明の憂鬱」(野中啓孝 弁理士)、数値限定発明に特有の留意点の解説(野中啓孝 弁理士)> 知財実務オンライン【第103回】「数値限定発明の憂鬱」 https://www.youtube.com/watch?v=iauqkoQmMzE&t=4340s 数値限定発明に特有の留意点の解説~明細書作成時から特許訴訟時まで~ https://books.chosakai.or.jp/books/catalog/30633.html 「知財とパブリック・ドメイン 第1巻:特許法篇」(東京大学 田村善之 教授編著)の基になっているパテント誌に掲載された田村教授の論文「際物(キワモノ)発明に関する特許権の行使に対する規律のあり方― 創作物アプローチ vs. パブリック・ドメイン・アプローチ ―」を読んだとき、数値限定発明や用途発明に代表されるような「当たり前のことが特許になってしまう」状況は、知財高裁や特許庁が現状の「創作者主義・創作物中心主義」を改めない限り、改善されないのではないかと感じたことを思い出します。 「知財とパブリック・ドメイン 第1巻:特許法篇」(東京大学 田村善之 教授編著)の帯のキャッチコピーには、『知的財産法の究極の目的は、どこにあるのだろうか?』と大きく書かれ、さらに、『従来、知的財産権の及ばない領域にあるものとして、ともすれば知的財産権に対立するものと考えられることが多かった「パブリック・ドメイン」。しかし、それは、知的財産の創作を促すために不可欠のものであり、その醸成と利用の確保こそが、知的財産権の究極の目的なのではないだろうか。本書では、そのような視点から、全3巻を通して各法を横断的に分析し、真の意味での産業や文化の発展に資する知的財産制度の構築を目指す。第1巻では、特許法を扱う。』と書かれています。 「知財とパブリック・ドメイン 第1巻:特許法篇」 https://www.keisoshobo.co.jp/book/b618832.html そして、本の紹介欄では、『パブリック・ドメインの醸成と確保という視点から、新たな時代に対応できる柔軟な知的財産法の構築を目指す意欲的研究書』として、『知的財産法の世界では、近年のめざましい技術の進歩を背景として、パブリック・ドメインとの境界線上における紛争が多発している。本書では、従来あまり重視されてこなかったパブリック・ドメインを中心に据えて、創作の奨励や産業・文化の発展のため、いかにしてパブリック・ドメインを豊かにし、その利用を確保するのかという観点から、各種の知的財産法の構築を目指す。』とされています。 はしがきに書かれている下記の部分は、非常に共感します。ただ、今のところ裁判所が認めていないこうした議論は、裁判所、特許庁の判断動向のウォッチや実務に忙しい企業の知財部員、弁理士、弁護士にとっては、むしろ邪魔な議論かもしれませんが・・・・。 『・・・知的財産法の目的が産業や文化の発展にあるのだとすると,知的創作物の創作の奨励とその保護は,産業や文化の発展を実現するための手段だということになる.そして,産業や文化の発展は,パブリック・ドメインを豊かにしその利用を確保することで果たされるはずである.そうだとすると,パブリック・ドメインの醸成こそが,知的財産法の究極の目的であると理解しなければならない. たとえば,特許法の世界では,意識的ないし無意識的に,知的「創作物」を保護するというマインド・セッティングがとられていた結果,ビジネス・モデルや金融商品などの抽象的なアイディアであっても,そこに創作が働いている限り,特許を認めるという発想がとられていたり,食品等について新たな用途が発見された場合,これまで発明がなかった以上は新規であり,ゆえに特許を認めるという結論がとられたり,既存の公知技術と構成は同じであっても顕著な効果を見出した場合に特許が認められたり,数値限定発明,用法用量限定発明等のパブリック・ドメインと境を接する特許が認められた場合,パブリック・ドメインに浸食するような場合でも創作者の保護を優先して差止請求を認めるアプローチがとられたりしてきた.他方で,パブリック・ドメインの醸成というマインド・セッティングの下では,抽象的なアイディアに関してパブリ ック・ドメインに属すべきと判断した以上は,いかにそこに独創性が認められても特許すべきではないことになる。そこで,公衆がこれまで享受していたパブリック・ドメインを保護するために,公知技術と区別できない以上は新規性がなく特許を否定するという結論をとることになり,新しい効果が見出されたとしても,公知技術と構成を同じくするのであれば進歩性を否定するという結論をとることになり,数値限定や用法用量発明について特許を認めるとしても,パブリ ック・ドメインと区別しうる場合に限り保護を認める工夫を施すことになる.』 目次 はしがき[田村善之] 第1部 総論 第1章 特許制度における創作物アプローチとパブリック・ドメイン・アプローチの相剋[田村善之] Ⅰ 問題の所在:創作物アプローチvs.パブリック・ドメイン・アプローチ Ⅱ 特許制度における課題 Ⅲ 権利の入口の場面における相剋 Ⅳ 権利の出口の場面における相剋 Ⅴ 結びに代えて:権利の出口と入口のインタラクティヴな関係 第2部 特許要件 第2章 特許適格性要件の機能と意義に関する一考察[田村善之] Ⅰ 関連規定 Ⅱ 自然法則の利用の要件の淵源 Ⅲ 事例研究 Ⅳ 解釈論の構築 Ⅴ 新規性・進歩性要件との関係 Ⅵ 結び 第3章 用途発明の意義──用途特許の効力と新規性の判断[前田 健] Ⅰ はじめに Ⅱ 用途発明の意義 Ⅲ 用途発明の特許権の効力 Ⅳ 用途発明の新規性 Ⅴ おわりに 第4章 パブリック・ドメイン保護要件としての新規性/進歩性の再構成──内在的同一について特許を認めたロシュv.アムジェン事件を端緒として[吉田広志] Ⅰ 特許要件は何のために存在するか? Ⅱ 内在的同一におけるPDと特許権の調整 Ⅲ 従来の裁判例 Ⅳ 検討 Ⅴ 終わりに代えて 第5章 AIと進歩性──若干の問題提起[中山一郎] Ⅰ はじめに Ⅱ 従来の議論 Ⅲ 問題の所在 Ⅳ 米国の先行研究 Ⅴ 若干の検討 Ⅵ おわりに 第3部 侵害の成否 第6章 「広すぎる」特許の規律とその法的構成──クレーム解釈・記載要件の役割分担と特殊法理の必要性[前田 健] Ⅰ はじめに Ⅱ 「広すぎる」特許はどのように処理されてきたか Ⅲ 「広すぎる」特許はどのように処理すべきか Ⅳ 保護の限界としての「明細書に開示された技術的思想」 Ⅴ おわりに 第7章 クレイム制度の補完としての均等論と第5要件の検討──第4要件との関係から考えるコンプリート・バーとフレキシブル・バーの相克[吉田広志] Ⅰ 方法論としてのクレイム制度とその功罪 Ⅱ マキサカルシトール最高裁判決 Ⅲ 補正・訂正と第5要件──コンプリート・バーかフレキシブル・バーか Ⅳ 第5要件と第4要件との関係 Ⅴ コンプリート・バー/フレキシブル・バーに関する裁判例──その1・否定例 Ⅵ コンプリート・バー/フレキシブル・バーに関する裁判例──その2・肯定例 Ⅶ 試論・あるべきフレキシブル・バーの高さを巡って Ⅷ 結びに代えて 第8章 特許法の先使用権に関する一考察──制度趣旨に鑑みた要件論の展開[田村善之] Ⅰ 問題の所在 Ⅱ 先使用権制度の趣旨 Ⅲ 発明の完成・事業の準備 Ⅳ 発明の同一性 Ⅴ 実施形式の変更の可否 Ⅵ 結びに代えて 第4部 救済 第9章 特許権侵害に対する差止請求権の制限に関する一考察[鈴木將文] Ⅰ 本稿の目的 Ⅱ 特許制度における差止請求権の意義 Ⅲ 我が国の動向と課題 Ⅳ 国際的動向 Ⅴ 検討 第10章 COVID-19パンデミックにおける公衆衛生と特許──TRIPS協定ウェイバー提案を踏まえて[中山一郎] Ⅰ はじめに Ⅱ 公衆衛生と特許権の関係 Ⅲ COVID-19パンデミック下での医薬品アクセスと特許をめぐる動向 Ⅳ 今後の展望 Ⅴ おわりに 第11章 Kimble最高裁判決を通して見る米国における特許権のミスユースの展開──財産権・反トラスト・パブリックドメインという観点から[橘 雄介] Ⅰ はじめに Ⅱ Kimble事件 Ⅲ 特許権とミスユースの関係史 Ⅳ 反トラスト法とミスユースの関係史 Ⅴ おわりに:Kimble判決の意義と特許権の外延論への示唆 索引 初出一覧 執筆者紹介 際物(キワモノ)発明に関する特許権の行使に対する規律のあり方 ― 創作物アプローチ vs. パブリック・ドメイン・アプローチ ― 東京大学大学院法学政治学研究科 教授 田村 善之 https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3399 特許法における創作物アプローチとパブリック・ドメイン・アプローチの相剋 ~権利成立の場面を題材として~ 東京大学大学院法学政治学研究科 教授 田村 善之 https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3350 特許適格性要件の機能と意義に関する一考察 (1) 田村善之 https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/87427/1/64_02_Tamura.pdf 特許適格性要件の機能と意義に関する一考察 (2・完) 田村善之 https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/87436/1/65_03_Tamura.pdf 用途発明の意義―用途特許の効力と新規性の判断― 前田 健 https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3403 パブリック・ドメイン保護要件としての新規性/進歩性の再構成 : 内在的同一について特許を認めたロシュ v. アムジェン事件を端緒として 𠮷田広志 https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/84887/1/61_04-Yoshida.pdf AI と進歩性― 若干の問題提起 ― 中山 一郎 https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3405 「広すぎる」特許規律の法的構成―クレーム解釈・記載要件の役割分担と特殊法理の必要性― 前田 健 https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3260 クレイム制度の補完としての均等論と第5要件の検討 : 第4要件との関係から考えるコンプリート・バーとフレキシブル・バーの相克 吉田広志 https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/79515/1/56_02-%e8%ab%96%e8%aa%ac_%e5%90%89%e7%94%b0.pdf 特許法の先使用権に関する一考察 (1) : 制度趣旨に鑑みた要件論の展開 田村善之 https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/73429/1/53_05-Tamura.pdf 特許法の先使用権に関する一考察 (2) : 制度趣旨に鑑みた要件論の展開 田村善之 https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/76026/4/54_05-Tamura.pdf 特許法の先使用権に関する一考察 (3・完) : 制度趣旨に鑑みた要件論の展開 田村善之 https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/78744/1/55_03-Tamura.pdf COVID-19パンデミックにおける公衆衛生と特許 中山一郎 知財管理 71 4 566 - 585 2021年04月 https://researchmap.jp/IchiroNakayama1966/published_papers/32210283 デイリー新潮の『ドローンビジネスは「特許」から組み立てる』は、
『各地で実証実験が進み、間もなく事業化されるドローン配送。その先端を走るエアロネクストは、既存の物流と組み、山間部など過疎地のラストワンマイルをドローンで担う仕組みを作っている。現在の物流の弱点をカバーし、同時に地域の問題をも解消するこの計画の背後には、独創的な「特許経営」があった。』 と、エアロネクスト社のドローンビジネス、独創的な「特許経営」を取り上げています。 エアロネクスト代表取締役CEO 田路圭輔氏の話、さすがです。 『私の事業戦略は、レイヤー構造になっていて、まず知財を作る、これを技術に変える、その技術を製品にする、そしてその製品をサービスにしていくわけです。さらにサービスをプラットフォームにして拡散させる。』 『大企業はそうした部分を注意深く見ていて、儲かるとなれば参入してきます。そうしたら、私たちはセットバック(後退)するんです。どんどん引いていって、最終的にはIPが残る。ここで効率良く稼げばいい。これがスタートアップの一番合理的なやり方だと思います。』 『私がやりたいことは、「いまはない当たり前を作る」ということに尽きます。ドローンが当たり前のようにモノを運び、さらにヒトも乗れるようになる未来を作る。そしてその根幹には私たちの知財があり、利益を生み出し続ける。この形ができれば、起業家として言うことはないですね。』 ドローンビジネスは「特許」から組み立てる――田路圭輔(エアロネクスト代表取締役CEO)【佐藤優の頂上対決】2023年02月07日 https://www.dailyshincho.jp/article/2023/02070555/?all=1 エアロネクスト田路CEO「ドローン物流網を整備」2023/2/7 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC022FB0S3A200C2000000/ 出前館とエアロネクスト、ドローンを活用した新しい商品流通の仕組みの構築に向けて業務提携 2023年1月27日 https://news.infoseek.co.jp/article/prtimes_000000087_000032193/ テクノロジーによって「新しい空域の経済化」を目指す~エアロネクスト(1) https://www.canal-v.com/_ct/17528939 エアロネクスト | 我々は発明で産業を創る。重心制御技術「4D Gravity®」×知財戦略で起こす次世代ドローン革命 2019年04月18日 https://tomoruba.eiicon.net/articles/603 エアロネクストの「知的財産戦略」とはーー特許によって新たな市場を創造する 2019.03.05 https://gemba-pi.jp/post-186145 エアロネクスト https://aeronext.co.jp/ パテント誌「化学分野における自明性(米国)/進歩性(日本)拒絶理由通知への対応の違い」(パテント Vol. 75 No. 13 2022)は、日米における進歩性/非自明性の相違点等を考慮しつつ、米国拒絶理由への効果的な対応策を検討しています。
乾麺の製造方法事件 平成 29 年(行ケ)第 10013 号、熱間プレス材事件 平成 29 年(行ケ)第10041 号の事例での考察です。 1.はじめに 2.日本での進歩性の考え方 2.1 審査基準 2.2 裁判所の考え方 3.米国での非自明性の考え方 3.1 審査基準 3.2 「自明」への反論 4.日本の事例との比較/実務的留意点 4.1 乾麺の製造方法事件 平成 29 年(行ケ)第 10013 号 知財高裁) 4.2 熱間プレス材事件(平成 29 年(行ケ)第10041 号 知財高裁) 4.3 まとめ 5.おわりに 化学分野における自明性(米国)/進歩性(日本)拒絶理由通知への対応の違い https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/4116 乾麺の製造方法事件 平成29年(行ケ)第10013号 審決取消請求事件 https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/723/087723_hanrei.pdf https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/723/087723_point.pdf 本件は,発明の名称を「乾麺およびその製造方法」とする本件特許の請求項2ないし1 0に係る無効審判不成立審決に対する取消訴訟であり,原告は,取消事由として,進歩性 判断の誤り,サポート要件違反の判断の誤りを主張した。 本判決は,概要,以下のとおり判断して,原告の請求を棄却した。 (1)進歩性判断の誤り ア 本件発明2と引用発明1Aは,乾燥工程の短縮や,復元性の高い麺の製造を可能と する製造方法を提供する点で課題を共通にし,また,多孔質構造の麺を製造する点におい ても共通する。しかし,引用発明1Aは,既に多孔質構造を実現しているのであるから, 課題達成のため,油脂を添加する方法により多孔質構造を形成する動機付けがあるとはい えない上,油脂を添加することには阻害事由がある。よって,粉末油脂を麺に添加すると の技術事項を引用発明1Aに適用することはできないから,引用発明1Aに基づき本件発 明2を想到することは容易とはいえない。 イ 本件発明2と引用発明2は,復元性の高い麺の製造を可能とする製造方法を提供す る点で,課題を共通にする。しかし,引用発明2は,既に多孔質化を実現しているのであ るから,課題達成のため,生麺体を高温熱風乾燥する方法により多孔質化を実現する甲1 ~3技術事項を適用する動機付けはない。また,引用発明2においては,気泡や膨化とは 異なる多孔質化技術を利用することに,格別な技術的意義があるといえるから,引用発明 2において,乾麺を多孔質化する手段として気泡や膨化によることは,引用発明2の課題 解決に反することになる。しかし,甲1~3文献に記載された多孔質化は,気泡や膨化を 利用するものであるから,これらを引用発明2に適用することには阻害事由がある。よっ て,引用発明2に甲1~3技術事項を組み合わせることはできないから,引用発明2に基 づき本件発明2を想到することは容易とはいえない。 ウ 本件発明2と引用発明3は,ひび割れや過発泡を解決するために乾燥工程を短縮し, 良好に調理可能な麺の製造を可能とする製造方法を提供する点で,課題を共通にする。し かし,引用発明3については,麺線内部及び麺線表面に(適度なサイズの)穴が形成され, 既に多孔質化を実現しているのであるから,課題達成のため,生麺及び蒸し麺に高温熱風 乾燥を行う周知技術を適用する動機付けはない。また,引用発明3においては,麺線を蒸 煮してから熱風により膨化乾燥するとの工程によることに,格別な技術的意義があり,蒸 煮工程を経ずに熱風による膨化乾燥を行うことは,その課題解決に反することになるから, 蒸煮工程を経ないで高温熱風乾燥を行うことには,阻害事由がある。よって,引用発明3 に,蒸煮工程を経ない高温熱風乾燥を適用することはできないから,引用発明3に基づき 本件発明2を想到することは容易とはいえない。 エ 本件発明3ないし10についても,同様である。 (2)サポート要件違反の判断の誤り ア 本件発明は,多孔質構造を有すること及び30%~75%の糊化度が達成されるこ との双方により,「簡単且つ短時間で良好に調理可能な乾麺及びその製造方法を提供する」 との課題を実現するものである。 イ 本件明細書の記載に接した当業者は,本件発明の製造方法の実施例において製造し た乾麺が,多孔質構造を有し,かつ品質良好なものであるとされていることから,これら の乾麺及びその製造方法は,多孔質構造及び30%~75%の糊化度を有することにより, 簡単かつ短時間で良好に調理可能な乾麺の製造方法を提供するとの本件発明の課題を解決 することができるものと理解することができ,サポート要件に適合するものである。 他方,比較例15ないし20については,多孔質構造を達成することはできても,「3 0%~75%の糊化度」を充足しない以上,多孔質構造及び30%~75%の糊化度を有 することにより,簡単かつ短時間で良好に調理可能な乾麺及びその製造方法を提供すると の本件発明の課題を解決できないことを示すものであり,それゆえに「比較例」とされて いるものと理解するというべきである。 本件審決が,比較例15ないし20が本件発明の技術的範囲に含まれることを前提に, サポート要件について判断したことは,誤りであるが,技術的範囲に含まれない以上,サ ポート要件違反との原告の主張は失当である。 ウ 本件発明において,空隙率や単位空隙率によって多孔質構造を特定することが,本 件発明の課題解決手段として,必要不可欠な技術的事項であると解することはできず,本 件明細書の記載に接した当業者は,多孔質構造が特定されていなくても,多孔質構造及び 30%~75%の糊化度を有することにより,本件発明の課題を解決することができるも のと理解することができる。よって,本件発明において多孔質構造が限定されていないこ とをもって,サポート要件に違反するものとはいえない。 熱間プレス部材事件 平成29年(行ケ)第10041号 審決取消請求事件 https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/563/087563_hanrei.pdf https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/563/087563_point.pdf 判 決 要 旨 発明の名称を「熱間プレス部材」とする発明に係る特許について,特許無効審判請求が されたところ,特許庁は,請求項1ないし3に係る発明についての特許を無効とし,請求 項4及び5に係る発明についての特許無効審判請求を不成立などとする審決をした。本件 は,特許権者が,審決のうち請求項1ないし3に係る部分の,無効審判請求人が,審決の うち請求項4及び5に係る部分の,各取消しを求める事案である。 審決は,請求項1ないし3に係る発明は,引用例1に記載された発明(引用発明)及び 甲3に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであると して,請求項1ないし3に係る発明についての特許を無効とした。 本判決は,以下のとおり,当業者が,引用発明に基づいて,相違点⑴ないし⑶に係る本 件発明1の構成を容易に想到できるということはできないなどとして,審決のうち,請求 項1ないし3に係る部分を取り消した。なお,請求項4及び5に係る発明についての特許 無効審判請求を不成立とした審決は維持された。 ⑴ 相違点⑴について 引用例1及び甲3に接した当業者が,引用発明における鋼板について,鋼板の強度を向 上させる効果を有するTiをあえて含有しない構成とすることの動機付けは存在せず,む しろ阻害事由がある。したがって,当業者が,引用発明に基づいて,相違点⑴に係る本件 発明1の構成を容易に想到できるということはできない。 ⑵ 相違点⑵について 引用例1には,引用発明が相違点⑵に係る構成,すなわち,引用発明の鋼板表面の皮膜 状態の構造が,Ni拡散領域上に,順にγ相に相当する金属間化合物層及びZnO層を有 しており,かつ,25℃±5℃の空気飽和した0.5MNaCl水溶液中で示す自然浸漬 電位が標準水素電極基準で-600~-360mVであることを示す記載はなく,このこ とを示唆する記載もない。また,本件優先日以前に頒布された刊行物には,Zn-Niめ っき鋼板の熱間プレス部材の表面構造に関する記載はない。したがって,これらの記載か ら,熱間プレス部材である引用発明の鋼板表面の皮膜状態の構造が上記のとおりであるこ とが技術常識であったと認めることはできない。また,本件特許の優先日時点の当業者に おいて,技術常識に基づき,引用発明の鋼板表面の皮膜状態の構造が上記のとおりである ことを認識することができたものとも認められない。よって,相違点⑵は実質的な相違点 ではないとはいえないし,相違点⑵につき,引用発明及び技術常識に基づいて当業者が容 易に想到できたものということもできない。 ⑶ 相違点⑶について 引用例1には,引用発明が相違点⑶に係る構成,すなわち,耐水素侵入性(腐食に伴う 鋼中への水素侵入が抑制されること)を有していることを示す記載はなく,このことを示 唆する記載もない。また,本件特許の優先日当時において,引用発明が耐水素侵入性を有 していることが技術常識であったことを認めるに足りる証拠はない。本件特許の優先日時 点の当業者において,技術常識に基づき,引用発明が耐水素侵入性を有していることを認 識することができたものとも認められない。よって,相違点⑶は実質的な相違点ではない とはいえないし,相違点⑶につき,引用発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に想到 できたものということもできない。 2023年1月27日に開催された「グローバル知財戦略フォーラム2023」(当日、現地とオンライン合わせて1,800名を超える方々が参加)のアーカイブ動画が2月6日から2月17日までアーカイブ配信中です。参加申込をされていなかった方も、これから特設ホームページから申込をすれば視聴可能であり、やさしい配慮です。一部の方の資料を除き、講演資料のダウンロードもできます。
「グローバル知財戦略フォーラム2023」を開催しました https://www.jpo.go.jp/news/ugoki/202302/2023020601.html 特許庁濱野長官からの開会挨拶 株式会社ダイセルの小河義美代表取締役社長から、企業が直面している社会課題への対応に向けた知財戦略について、経営トップの視点から講演 一橋大学商学部の加賀谷哲之教授から、学術的な視点で企業価値向上に向けた社会課題解決のための知財の役割について講演 I-OPENプロジェクトパネルディスカッション 海外各国・地域における日系企業情報交換グループ(IPG)の活動紹介動画 IPランドスケープ(IPL)を実践している先進企業各社による、成功するIPLと失敗するIPLについてパネルディスカッション 世界的に活躍するスタートアップの成長に伴う知財戦略の取組についてパネルディスカッション 独立行政法人工業所有権情報・研修館の久保理事長より閉会の挨拶 アーカイブ配信閲覧を申込む特設ホームページ参加申込フォーム https://ip-forum2023.inpit.go.jp/regist.html 企業の知財部は、事業がモノづくりからコトづくりへとシフトしていくなかで、ビジネス関連発明への対応を求められています。
特に、グローバルな観点でのビジネス関連発明の特許権利化については、課題が残っている企業が多いと思われます。 パテント誌「企業知財部のビジネス関連発明における明細書作成ガイドラインの試み~モノ売りからコト売りに変化するなかでの企業知財部の対応~」(パテント Vol. 75 No. 13 2022)は、『第1 国出願を日本とし、PCT 出願として海外に出願していく場合には、第 1 国出願時の明細書をできるだけ修正することなくグローバルで通用するビジネス関連発明の特許明細書の書き方基準があれば理想である。勤務先企業の知財部において、筆者がプロジェクトリーダーを担当し、ビジネス関連発明について、上記理想のもと、ビジネス関連発明をグローバルな観点で適切に特許権利化するための明細書作成ガイドラインを作成するプロジェクトを試みた。本稿は、この試みを紹介するものである。』というもので、参考になります。 目次 1.はじめに 2.明細書作成ガイドラインの位置づけ 2.1 明細書作成ガイドラインの定義と役割 2.2 グローバルでの統一作成基準の作成とその困難さ 2.3 発明全般における明細書作成ガイドラインとの関係 3.作成過程とその検討内容 3.1 作成過程の概要 3.2 ビジネス関連発明特有の論点における各主要国の傾向とガイドラインとしての検討内容 4.今後の課題 5.おわりに パテント誌「企業知財部のビジネス関連発明における明細書作成ガイドラインの試み~モノ売りからコト売りに変化するなかでの企業知財部の対応~」(パテント Vol. 75 No. 13 2022) https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/4118 通常、企業の知財部は、明細書作成ガイドライン(クレームや明細書につき、どのように記載すべきかの一定の方針を定めたもの)を作成し、取引先の特許事務所はこれに沿って特許明細書を作成している。また、近年、企業の事業がモノづくりからコトづくりへとシフトしていくなかで、企業においてビジネス関連発明の重要性が急速に高まっている。そして、企業の知財部自体も、この変化への対応を求められている。 本稿では、一企業の知財部がチャレンジした、ビジネス関連発明をグローバルな観点で適切に権利化するための明細書作成ガイドラインの作成過程とその一部の結果を紹介する。 ビジネス関連発明ならではの論点につき、各主要国での傾向や統一した明細書作成基準を策定するにあたり主要国間で生じる矛盾にいかに対応するかなどの検討過程を紹介することで、多くの企業知財部(又は特許事務所)の共通の悩みである、グローバルな観点でのビジネス関連発明の適切な特許明細書のあり方について、一読に値する考察材料を提供したい。 「コト」の時代におけるビジネス関連発明の権利取得について https://www.jpo.go.jp/news/shinchaku/event/seminer/document/chizai_setumeikai_jitsumu/28_text.pdf ビジネスモデル特許の明細書の書き方について解説! https://www.lhpat.com/software/business/application.html ビジネスモデル発明を特許にするための方法 https://www.ne.jp/asahi/patent/toyama/jitsumu/bm6.htm コンピュータソフトウエア関連発明の特許明細書の研究 第7回 クレームのカテゴリー https://www.nihonbashi-ip.jp/wp-content/uploads/2021/09/%E7%AC%AC%EF%BC%97%E5%9B%9E.pdf コンピュータソフトウエア関連発明の特許明細書の研究 第 12 回 米国出願を見据えた明細書の作成 https://www.chosakai.or.jp/intell/contents22/202202/202202_8.pdf コンピュータソフトウエア関連発明の特許明細書の研究 第 13 回 欧州、中国出願を見据えた明細書の作成 https://www.chosakai.or.jp/intell/contents22/202203/202203_12.pdf ソニーグループ株式会社は、現 取締役 代表執行役 副社長 兼 CFOの十時裕樹が、2023年4月1日付で、取締役 代表執行役 社長 COO 兼 CFOに就任することを決定、経営体制強化の一環として、現 執行役 専務の御供俊元が、2023年4月1日付で、執行役 副社長 CSOに就任することも決議、ということです。
日経新聞の記事では、『「最大の注目点は副社長人事ではないか」。2日、あるソニー関係者はつぶやいた。御供(みとも)俊元・執行役専務が4月から副社長CSO(チーフ・ストラテジー・オフィサー、最高戦略責任者)に就くことだ。』『御供氏は1985年のソニー入社以来、40年近く知財部門に携わるエキスパートだ。スタートアップへの投資戦略の責任者でもある。そんな知財を知り尽くした人物が副社長として戦略責任を担うことになる。』と話を進めています。 期待したいと思います。 ソニーグループの経営体制について https://www.sony.com/ja/SonyInfo/News/Press/202302/23-003/ ソニーG、パーパス経営へ戦略責任者復活 知財が要 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC02D2O0S3A200C2000000/ なぜ大企業はWeb3に取り組むべきなのか? MUFG、ソニー、伊藤穰一が語った理由 2022年11月22日 https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2211/22/news065_2.html 仮想現実は新時代へ知財で探る「メタバース」 ソニーグループ株式会社 Vol.53 Contents 広報誌「とっきょ」2022年8月1日発行号 https://www.jpo.go.jp/news/koho/kohoshi/vol53/01_page1.html 世界的企業が続々と参入を進める「メタバース」。今号ではこの“バズワード”を、知財を鍵に解き明かします。専門家の視点から見たメタバースにおける知財保護の懸念点や展望、そして日本におけるXR領域のリーディングカンパニーであるソニーグループの取組を紹介します。 Corporate Report 2022 統合報告書 https://www.sony.com/ja/SonyInfo/IR/library/corporatereport/CorporateReport2022_J.pdf コーポレートガバナンス報告書 2022年7月5日 https://www.sony.com/ja/SonyInfo/IR/library/Governance_report.pdf ホンダとソニーのEV連合 https://yorozuipsc.com/blog/ev 共創を加速する知財戦略 ソニーの新素材プロジェクトを紐解く https://yorozuipsc.com/blog/6335174 ソニーグループ株式会社(企業価値向上に資する知的財産活用事例集) https://yorozuipsc.com/blog/2178370 ソニーが新ファンド運用開始、投資事業へ本格参入 250億円超の規模目指す 2022年2月17日 https://jp.reuters.com/article/sony-fund-idJPKBN2KM0BH ソニーの取組事例:知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会(第3回)13/9/2021 https://yorozuipsc.com/blog/34043715 ソニーが圧倒的な高収益体質に大復活、知財や人材力、高PBRに反映 17/7/2021 https://yorozuipsc.com/blog/pbr ソニー、デンソー、本田技研、昭和電工、住友化学、旭化成の知財活動 27/12/2020 https://yorozuipsc.com/blog/2274786 経営に戦略的に活かす知財情報 ソニー 11/9/2020 https://yorozuipsc.com/blog/6378475 事業・知財連携 DNA伝える ソニー常務 御供俊元氏 2020/7/27付日本経済新聞 朝刊 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61816790S0A720C2TCJ000/ 知財管理 70巻(2020年) / 5号 / 585頁 AI倫理に関する動向とソニーの取り組み ─クリエイティビティとテクノロジーの力で,世界を感動で満たす─ http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/search/detail.php?chizai_id=1d6c784a039f4af076c62fd243a08288 近年、AIはディープラーニングの時代を迎え、その性能が飛躍的に進歩することで実社会 に幅広く浸透するようになってきた。一方で、AIのブラックボックス化による判断プロセスの不透明 さやデータ等のバイアスに基づく差別、AIによって代替される雇用や創出される雇用にどう対応して いくかといった様々な課題が提起されている。そこで、各国の政府機関・企業・標準化団体は、AI倫 理に関する指針や標準規格の検討を進めている。しかし、米国政府等からはAIへの過度の規制で技術 の発展を阻害しないようにとの意見も出てきている。本稿は、各国の政府機関・企業・標準化団体の AI倫理に関する動向を紹介しつつ、エレクトロニクスからエンターテイメント、金融事業までAIを 活用した多様なビジネスをグローバルに手掛けるソニーのAI倫理に関する取り組みを紹介する。そし て、日本企業に対して、AI技術を人間との協調のために活用することで、多様性を許容し、様々な人 たちが快適に生活し、活躍できる「インクルージョン社会1)」を実現していくことを提言するもので ある。 創業者と仕事をした最後の世代が語るソニー流外部連携術 2019.10.30 https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00005/102400063/ ソニーが新型アイボ開発を「発売日ありき」で進めた真の理由 2018.6.14 https://diamond.jp/articles/-/168825 知財管理 68巻(2018年) / 4号 / 517頁 知財部門による新たな価値創造の模索─ソニーの知財部門におけるインキュベーション活動の取り組み─ http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/search/detail.php?chizai_id=670c42fd1f589a22a9f0aa314bffe40c 第4次産業革命において、異業種間の垣根が低くなるとともにデータ流通による新しい産業やエコシステムが生まれてきている。知財部門はその環境変化を的確に捉えるとともに新しい価値の創造をしていくべきではないだろうか。ソニーの知的財産部門では特許分析などを活用した技術・業界動向の分析を行うとともに、社内では開発を行っていない技術領域において他社や研究機関との知財協業による知財主導での知財創出を行い、またそれらを通じて得た知見をもとに新規事業創出支援を行う専門組織を設けている。また社内のコーポレートベンチャー投資活動との連携も進めている。これら新たなインキュベーション活動を紹介しながら、知財部門による新たな価値創造とは何か、そしてそれに必要な人材とその育成について述べる。 【ソニー・御供俊元 執行役員コーポレートエグゼクティブ インタビュー】知財は道具だ 「発明者に寄り添い、発明者の想いにどう会社として向き合っていくのか」2017/12/27 https://journal.meti.go.jp/p/164/ 知財活性化プロジェクト 活動報告 http://www.jipa.or.jp/jyohou_hasin/sympo/pdf/17sympo/chizai_kassei.pdf 【秘録】特許訴訟で、ウォークマンの「発明者」が消えた日 2017/8/14 https://newspicks.com/news/2429703/body/ 特許6922737 移動体、情報処理装置、移動体システム、情報処理方法および情報処理プログラム ソニー株式会社【発明者】御供 俊元 芹田 和俊 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-6922737/5E81F2F21A73354E1BDF6E4658471F41A412A468C8416A350C2355664E2F94CD/15/ja 米AIスタートアップ企業に資本参加 ソニー 2016.05.25 https://www.newssalt.com/7633 2月3日、政府は昨年5月に成立した経済安全保障推進法の運用に向け、電気、ガスなど14事業の基幹インフラサービスの安定提供確保に関する制度の基本指針案、安全保障にかかわる先端技術の流出を防ぐため導入する「特許出願の非公開制度」に関する基本指針案を策定し、自民党経済安全保障推進本部に二つの指針案を示し了承され、4月にも閣議決定し、2024年4月をめどに運用を始めるようです。
特許非公開に関する基本指針案では、安全保障上の懸念から非公開とすべき発明として、安全保障に「多大な影響を与え得る最新技術」を保全指定の対象とし、「極超音速兵器の推進技術」や「宇宙・サイバーなどの最新技術」が例示された他、「国民生活や経済活動に甚大な被害を生じさせる手段となり得る技術」も対象とし、「大量破壊兵器への転用が可能な核技術」も含まれるとのことです。軍事、民生の両方で使える「デュアルユース(軍民両用)」技術については、一律非公開とはせず、経済活動や技術革新に支障を及ぼしかねないかどうかを考慮。指定は防衛目的で開発された場合などに限定するとしています。 宇宙・サイバー、特許非公開の対象分野に 政府指針案 2023年2月3日 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA033PM0T00C23A2000000/ 先端技術の特許非公開 政府が経済安保で指針案 宇宙・サイバー領域も 2023/2/3 https://www.sankei.com/article/20230203-43IKHRZSI5MM3PBS4IYVQ73JEQ/ 2023-02-03 重要インフラ設備に届け出制=経済安保法で指針案―政府 https://sp.m.jiji.com/article/show/2889974 経済安保「特許非公開」対象に極超音速、宇宙・サイバー技術…政府指針原案 2023/02/03 https://www.yomiuri.co.jp/politics/20230202-OYT1T50263/ 1月31日に行われた「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会」(第19回)では、内閣府知的財産戦略推進事務局から、改訂版ガイドラインの編集方針の説明が行われ、説明を踏まえ、ガイドラインの改訂案について議論されたとのことです。
今後は、第20回(2月14日)で、ガイドラインの改訂案、普及促進の取組みについて話し合われ、ガイドラインの改訂案はパブリックコメントに付され、第21回(3月24日)で、パブリックコメント後のガイドラインの改訂案が決定される計画です。 事務局説明資料 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai19/siryou3.pdf 改訂版ガイドラインの編集方針 改訂版ガイドラインについては、現状、大きく次の編集方針を考えている。 Ver.1公表後に明らかになった重要課題である「企業と投資家・金融機関との思考構造のギャップ」とこのギャップを埋めていく必要性を踏まえ、企業と投資家・金融機関等との協創につなげるべく、両者の相互理解を向上させる観点、企業との対話を通じて知財・無形資産の投資・活用による企業価値向上を促すことについての投資家の役割明確化の観点で改訂する。 大企業による知財活用状況の見える化、スタートアップへの経営資源提供などが企業自身の隠れた価値の顕在化・創造につながることを重視する観点でも改訂を行う。 Ver.1公表後の動向、すなわち、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)を加速化させるための「価値協創ガイダンス2.0」、人的資本開示指針の公表など非財務情報開示の環境変化を踏まえ、これらの指針とともに利用しやすくするための改訂も行う。 Ver.1で提示した5つの原則・7つのアクションは踏襲し、これらについて理解を深めるために役立つ内容を記載。 「5つの原則・7つのアクション」とVer.2で明示する「ストーリー」「ROIC逆ツリー」「企図する因果パス」との関係については、次のように捉える。すなわち、 「5つの原則・7つのアクション」 を踏まえて、投資家・金融機関が重視する「ストーリー」「ROIC逆ツリー」「企図する因果パス」 の視点で戦略を構築し、その戦略の開示発信を起点に投資家・金融機関と対話する。 章立ては、「1.本ガイドラインの目的・考え方」に続いて、次の順番で記載する。 -Ver.1と同様、企業側の内容(基本となる考え方、ガバナンス)として「2.投資家や金融機関に伝わる知財・無形資産の投資・活用戦略の構築・開示・発信」、「3.知財・無形資産を経営変革や企業価値に繋ぐガバナンスの実践」 -企業側と投資家・金融機関側に共通の内容で、今回の改訂のポイントにもなる内容として「4.企業価値を顕在化する企業と投資家・金融機関のコミュニケーション・フレームワーク」 -投資家・金融機関等側の内容として「5.投資家や金融機関等に期待される役割」 -企業と投資家・金融機関等との対話として「6.企業と投資家・金融機関の望ましい対話」 令和3年(行ケ)第10140号「電鋳管の製造方法及び電鋳管」事件は、プロダクト・バイ・プロセス・クレームの形式により特定された発明について、不可能・非実際的事情があるので明確性要件を充足するとした審決の判断に、誤りがあるとされた事例として紹介されています。
審決取消訴訟の審理過程で、被告特許権者は、不可能・非実際的事情が存しないことを認めており、本判決が本件発明6について明確性要件を充足しないとした理由は次のとおり(訂正発明9も同旨。)。 「 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている 場合において、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号にいう「発明が明確であ ること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特 性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存 在するときに限られる(最高裁判所平成24年(受)第1204号同27年6月5日第 二小法廷判決・民集69巻4号700頁)。 もっとも、上記のように解釈される趣旨は、物の発明について、その特許請求の範囲 にその物の製造方法が記載されている場合(プロダクト・バイ・プロセス・クレーム)、 当該発明の技術的範囲は当該製造方法により製造された物と構造、特性等が同一である 物として確定されるところ(前掲最高裁判決)、一般的には、当該製造方法が当該物の どのような構造又は特性を表しているのか、又は物の発明であってもその発明の技術的 範囲を当該製造方法により製造された物に限定しているか不明であり、特許請求の範囲 等の記載を読む者において、当該発明の内容を明確に理解することができず、権利者が その範囲において独占権を有するのかについて予測可能性を奪う結果となり、第三者の 利益が不当に害されることが生じかねないところにある。 そうすると、物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記 載されている場合であっても、上記一般的な場合と異なり、出願時において当該製造方 法により製造される物がどのような構造又は特性を表しているのかが、特許請求の範囲、 明細書、図面の記載や技術常識より一義的に明らかな場合には、第三者の利益が不当に 害されることはないから、不可能・非実際的事情がないとしても、明確性要件違反には 当たらないと解される。」 PBPクレームについては、「知財高裁と特許庁が、最高裁判所の判決直後から、ともに判決の射程を限定し、実質的にその適用を回避する実務運用を採用」とか「最高裁判決の骨抜き」とかいわれているようですが、さらに裁判例の蓄積が待たれるようです。 2023.01.20知財判決ダイジェスト 特許 令和3年(行ケ)第10140号「電鋳管の製造方法及び電鋳管」(知的財産高等裁判所 令和 4年11月16日) https://www.soei.com/%E7%89%B9%E8%A8%B1%E3%80%80%E4%BB%A4%E5%92%8C%EF%BC%93%E5%B9%B4%EF%BC%88%E8%A1%8C%E3%82%B1%EF%BC%89%E7%AC%AC%EF%BC%91%EF%BC%90%EF%BC%91%EF%BC%94%EF%BC%90%E5%8F%B7%E3%80%8C%E9%9B%BB%E9%8B%B3%E7%AE%A1/ 令和3年(行ケ)第10140号「電鋳管の製造方法及び電鋳管」事件 https://unius-pa.com/decision_cancellation/9972/ 知財高裁令和3(行ケ)10140号(令和4年11月16日判決) https://iwanagalaw.livedoor.blog/archives/17861039.html プロダクト・バイ・プロセス(PBP)クレームについて明確性要件違反を認めた「電鋳管の製造方法及び電鋳管」事件知財高裁判決について https://innoventier.com/archives/2023/01/14529 プロダクト・バイ・プロセスクレームについて 明確性要件違反を認めた知財高裁判決 https://www.lexology.com/library/detail.aspx?g=c7097be6-b048-4b14-ad47-de18d051e3c7 令和3年(行ケ)第10140号 審決取消請求事件 判決 https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/552/091552_hanrei.pdf 要旨 https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/552/091552_point.pdf 知財管理 2023年1月号の「米国におけるパラメータ特許の戦略」は、米国におけるパラメータ特許の審査や訴訟対応において直面する問題を探り,戦略を提案しています。
日本との共通点、相違点に注意して検討する必要があります。参考文献を示しました。 1. はじめに 2.パラメータ特許の例 3.パラメータ特許に共通する特許性の問題 3.1 新規性 3.2 自明性 3.3 記載要件 3.4 実施可能要件 3.5 不明瞭性 4.明細書作成及びクレーム作成への戦略 4.1 明細書作成への指針 4.2 クレーム作成への指針 5.特許出願から訴訟までにおける対応方法 5.1 特許出願中の対応 5.2 特許発行後から訴訟までの対応 5.3 訴訟直前・訴訟中の対応 6.おわりに 米国におけるパラメータ特許の戦略 http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/mokuji/mokuji2301.html 抄 録 パラメータ特許は,パラメータを記載したクレームを含む特許であり,化学・医薬分野において様々な形で重宝されており,取得を目指す出願人が多い。一方,よく似た先行技術文献がしばしば存在するため,出願審査中に,新規性や自明性において問題に直面することが多くある。さらに,それらのハードルを乗り越えたとしても,記載要件,実施可能要件,不明瞭性などにおいて,PTAB手続きや訴訟中に問題となり得る可能性がある。本稿では,米国において,パラメータ特許を取得・権利行使する際に出願人/特許権者が直面する一般的問題と,それらの問題を回避・克服するための戦略について,最近の判例を参照しながら検討する。 日本と海外における特殊パラメータ発明 http://www.inoue-as.com/assets/files/Chizai%20Kanri_2018_06_p794-799.pdf 特殊パラメータ特許 ― 5極特許庁比較 季刊創英ヴォイス Vol.95 https://www.soei.com/wp/wp-content/uploads/2022/12/%E7%89%B9%E6%AE%8A%E3%83%91%E3%83%A9%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%BF%E7%89%B9%E8%A8%B1%EF%BC%8D5%E6%A5%B5%E7%89%B9%E8%A8%B1%E5%BA%81%E6%AF%94%E8%BC%83.pdf 数値限定発明の論点 https://www.soei.com/wp/wp-content/uploads/2022/03/%E6%95%B0%E5%80%A4%E9%99%90%E5%AE%9A%E7%99%BA%E6%98%8E%E3%81%AE%E8%AB%96%E7%82%B9.pdf 化学分野における特許出願戦略と AI の活用 https://www.publication.law.nihon-u.ac.jp/pdf/property/property_15/each/10.pdf |
著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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