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​よろず知財コンサルティングのブログ

パブリック・ドメインの醸成こそが,知的財産法の究極の目的

9/2/2023

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「当たり前のことが特許になって困っています」と感じている方は少なくないようです。
<例えば、知財実務オンライン【第103回】「数値限定発明の憂鬱」(野中啓孝 弁理士)、数値限定発明に特有の留意点の解説(野中啓孝 弁理士)>
知財実務オンライン【第103回】「数値限定発明の憂鬱」
https://www.youtube.com/watch?v=iauqkoQmMzE&t=4340s
数値限定発明に特有の留意点の解説~明細書作成時から特許訴訟時まで~
https://books.chosakai.or.jp/books/catalog/30633.html
 
「知財とパブリック・ドメイン 第1巻:特許法篇」(東京大学 田村善之 教授編著)の基になっているパテント誌に掲載された田村教授の論文「際物(キワモノ)発明に関する特許権の行使に対する規律のあり方― 創作物アプローチ vs. パブリック・ドメイン・アプローチ ―」を読んだとき、数値限定発明や用途発明に代表されるような「当たり前のことが特許になってしまう」状況は、知財高裁や特許庁が現状の「創作者主義・創作物中心主義」を改めない限り、改善されないのではないかと感じたことを思い出します。
 
「知財とパブリック・ドメイン 第1巻:特許法篇」(東京大学 田村善之 教授編著)の帯のキャッチコピーには、『知的財産法の究極の目的は、どこにあるのだろうか?』と大きく書かれ、さらに、『従来、知的財産権の及ばない領域にあるものとして、ともすれば知的財産権に対立するものと考えられることが多かった「パブリック・ドメイン」。しかし、それは、知的財産の創作を促すために不可欠のものであり、その醸成と利用の確保こそが、知的財産権の究極の目的なのではないだろうか。本書では、そのような視点から、全3巻を通して各法を横断的に分析し、真の意味での産業や文化の発展に資する知的財産制度の構築を目指す。第1巻では、特許法を扱う。』と書かれています。
「知財とパブリック・ドメイン 第1巻:特許法篇」
https://www.keisoshobo.co.jp/book/b618832.html
 
そして、本の紹介欄では、『パブリック・ドメインの醸成と確保という視点から、新たな時代に対応できる柔軟な知的財産法の構築を目指す意欲的研究書』として、『知的財産法の世界では、近年のめざましい技術の進歩を背景として、パブリック・ドメインとの境界線上における紛争が多発している。本書では、従来あまり重視されてこなかったパブリック・ドメインを中心に据えて、創作の奨励や産業・文化の発展のため、いかにしてパブリック・ドメインを豊かにし、その利用を確保するのかという観点から、各種の知的財産法の構築を目指す。』とされています。
はしがきに書かれている下記の部分は、非常に共感します。ただ、今のところ裁判所が認めていないこうした議論は、裁判所、特許庁の判断動向のウォッチや実務に忙しい企業の知財部員、弁理士、弁護士にとっては、むしろ邪魔な議論かもしれませんが・・・・。
 
『・・・知的財産法の目的が産業や文化の発展にあるのだとすると,知的創作物の創作の奨励とその保護は,産業や文化の発展を実現するための手段だということになる.そして,産業や文化の発展は,パブリック・ドメインを豊かにしその利用を確保することで果たされるはずである.そうだとすると,パブリック・ドメインの醸成こそが,知的財産法の究極の目的であると理解しなければならない.
たとえば,特許法の世界では,意識的ないし無意識的に,知的「創作物」を保護するというマインド・セッティングがとられていた結果,ビジネス・モデルや金融商品などの抽象的なアイディアであっても,そこに創作が働いている限り,特許を認めるという発想がとられていたり,食品等について新たな用途が発見された場合,これまで発明がなかった以上は新規であり,ゆえに特許を認めるという結論がとられたり,既存の公知技術と構成は同じであっても顕著な効果を見出した場合に特許が認められたり,数値限定発明,用法用量限定発明等のパブリック・ドメインと境を接する特許が認められた場合,パブリック・ドメインに浸食するような場合でも創作者の保護を優先して差止請求を認めるアプローチがとられたりしてきた.他方で,パブリック・ドメインの醸成というマインド・セッティングの下では,抽象的なアイディアに関してパブリ ック・ドメインに属すべきと判断した以上は,いかにそこに独創性が認められても特許すべきではないことになる。そこで,公衆がこれまで享受していたパブリック・ドメインを保護するために,公知技術と区別できない以上は新規性がなく特許を否定するという結論をとることになり,新しい効果が見出されたとしても,公知技術と構成を同じくするのであれば進歩性を否定するという結論をとることになり,数値限定や用法用量発明について特許を認めるとしても,パブリ ック・ドメインと区別しうる場合に限り保護を認める工夫を施すことになる.』
 
 
目次
はしがき[田村善之]
第1部 総論
 
第1章 特許制度における創作物アプローチとパブリック・ドメイン・アプローチの相剋[田村善之]
 Ⅰ 問題の所在:創作物アプローチvs.パブリック・ドメイン・アプローチ
 Ⅱ 特許制度における課題
 Ⅲ 権利の入口の場面における相剋
 Ⅳ 権利の出口の場面における相剋
 Ⅴ 結びに代えて:権利の出口と入口のインタラクティヴな関係
 
第2部 特許要件
 
第2章 特許適格性要件の機能と意義に関する一考察[田村善之]
 Ⅰ 関連規定
 Ⅱ 自然法則の利用の要件の淵源
 Ⅲ 事例研究
 Ⅳ 解釈論の構築
 Ⅴ 新規性・進歩性要件との関係
 Ⅵ 結び
 
第3章 用途発明の意義──用途特許の効力と新規性の判断[前田 健]
 Ⅰ はじめに
 Ⅱ 用途発明の意義
 Ⅲ 用途発明の特許権の効力
 Ⅳ 用途発明の新規性
 Ⅴ おわりに
 
第4章 パブリック・ドメイン保護要件としての新規性/進歩性の再構成──内在的同一について特許を認めたロシュv.アムジェン事件を端緒として[吉田広志]
 Ⅰ 特許要件は何のために存在するか?
 Ⅱ 内在的同一におけるPDと特許権の調整
 Ⅲ 従来の裁判例
 Ⅳ 検討
 Ⅴ 終わりに代えて
 
第5章 AIと進歩性──若干の問題提起[中山一郎]
 Ⅰ はじめに
 Ⅱ 従来の議論
 Ⅲ 問題の所在
 Ⅳ 米国の先行研究
 Ⅴ 若干の検討
 Ⅵ おわりに
 
第3部 侵害の成否
 
第6章 「広すぎる」特許の規律とその法的構成──クレーム解釈・記載要件の役割分担と特殊法理の必要性[前田 健]
 Ⅰ はじめに
 Ⅱ 「広すぎる」特許はどのように処理されてきたか
 Ⅲ 「広すぎる」特許はどのように処理すべきか
 Ⅳ 保護の限界としての「明細書に開示された技術的思想」
 Ⅴ おわりに
 
第7章 クレイム制度の補完としての均等論と第5要件の検討──第4要件との関係から考えるコンプリート・バーとフレキシブル・バーの相克[吉田広志]
 Ⅰ 方法論としてのクレイム制度とその功罪
 Ⅱ マキサカルシトール最高裁判決
 Ⅲ 補正・訂正と第5要件──コンプリート・バーかフレキシブル・バーか
 Ⅳ 第5要件と第4要件との関係
 Ⅴ コンプリート・バー/フレキシブル・バーに関する裁判例──その1・否定例
 Ⅵ コンプリート・バー/フレキシブル・バーに関する裁判例──その2・肯定例
 Ⅶ 試論・あるべきフレキシブル・バーの高さを巡って
 Ⅷ 結びに代えて
 
第8章 特許法の先使用権に関する一考察──制度趣旨に鑑みた要件論の展開[田村善之]
 Ⅰ 問題の所在
 Ⅱ 先使用権制度の趣旨
 Ⅲ 発明の完成・事業の準備
 Ⅳ 発明の同一性
 Ⅴ 実施形式の変更の可否
 Ⅵ 結びに代えて
 
第4部 救済
 
第9章 特許権侵害に対する差止請求権の制限に関する一考察[鈴木將文]
 Ⅰ 本稿の目的
 Ⅱ 特許制度における差止請求権の意義
 Ⅲ 我が国の動向と課題
 Ⅳ 国際的動向
 Ⅴ 検討
 
第10章 COVID-19パンデミックにおける公衆衛生と特許──TRIPS協定ウェイバー提案を踏まえて[中山一郎]
 Ⅰ はじめに
 Ⅱ 公衆衛生と特許権の関係
 Ⅲ COVID-19パンデミック下での医薬品アクセスと特許をめぐる動向
 Ⅳ 今後の展望
 Ⅴ おわりに
 
第11章 Kimble最高裁判決を通して見る米国における特許権のミスユースの展開──財産権・反トラスト・パブリックドメインという観点から[橘 雄介]
 Ⅰ はじめに
 Ⅱ Kimble事件
 Ⅲ 特許権とミスユースの関係史
 Ⅳ 反トラスト法とミスユースの関係史
 Ⅴ おわりに:Kimble判決の意義と特許権の外延論への示唆
 
索引
初出一覧
執筆者紹介
 
 
際物(キワモノ)発明に関する特許権の行使に対する規律のあり方
― 創作物アプローチ vs. パブリック・ドメイン・アプローチ ―
東京大学大学院法学政治学研究科 教授 田村 善之
https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3399
 
特許法における創作物アプローチとパブリック・ドメイン・アプローチの相剋
~権利成立の場面を題材として~
東京大学大学院法学政治学研究科 教授 田村 善之
https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3350
 
特許適格性要件の機能と意義に関する一考察 (1)
田村善之
https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/87427/1/64_02_Tamura.pdf
 
特許適格性要件の機能と意義に関する一考察 (2・完) 
田村善之
https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/87436/1/65_03_Tamura.pdf
 
用途発明の意義―用途特許の効力と新規性の判断―
前田 健
https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3403
 
パブリック・ドメイン保護要件としての新規性/進歩性の再構成 : 内在的同一について特許を認めたロシュ v. アムジェン事件を端緒として
𠮷田広志
https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/84887/1/61_04-Yoshida.pdf
 
AI と進歩性― 若干の問題提起 ―
中山 一郎
https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3405
 
「広すぎる」特許規律の法的構成―クレーム解釈・記載要件の役割分担と特殊法理の必要性―
前田 健
https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3260
 
クレイム制度の補完としての均等論と第5要件の検討 : 第4要件との関係から考えるコンプリート・バーとフレキシブル・バーの相克
吉田広志
https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/79515/1/56_02-%e8%ab%96%e8%aa%ac_%e5%90%89%e7%94%b0.pdf
 
特許法の先使用権に関する一考察 (1) : 制度趣旨に鑑みた要件論の展開
田村善之
https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/73429/1/53_05-Tamura.pdf
 
特許法の先使用権に関する一考察 (2) : 制度趣旨に鑑みた要件論の展開
田村善之
https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/76026/4/54_05-Tamura.pdf
 
特許法の先使用権に関する一考察 (3・完) : 制度趣旨に鑑みた要件論の展開
田村善之
https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/78744/1/55_03-Tamura.pdf
 
COVID-19パンデミックにおける公衆衛生と特許
中山一郎
知財管理 71 4 566 - 585 2021年04月
https://researchmap.jp/IchiroNakayama1966/published_papers/32210283

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