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知財実務オンラインは、マクスウェル国際特許事務所 パートナー弁理士 加島 広基さんと特許業務法人IPX 代表弁理士CEO 押谷 昌宗さんが運営している無料のYouTubeオンラインセミナーです。チャンネル登録者数1,000人を目標にしていて、現在900人弱まできているとのこと。
先日(10月1日)、(第17回)知財実務オンラインで、「共同開発・知的財産で会社を元気にする ~共同開発・契約のコツ、特許出願大幅増・質向上のコツ~」というテーマで話しました。アーカイブ動画をYouTubeで見ることができますが、視聴回数が1,300回を超えたようです。より多くの方に視聴していただければ幸いです。 https://www.youtube.com/watch?v=xU9G0fc_wzI ちなみに、知財実務オンラインの中で視聴回数のトップは、(第3回)「ここで差がつく!意外と知らない調査の基本」(スマートワークス株式会社 代表取締役 酒井美里先生)で2,100回を超えており、二番目が(第5回)「経営で重み増す「共創・協創」の知財戦略」(東京知財経営コンサルティング 代表弁理士 林力一先生)で1,600回を超えていて、(第17回)は視聴回数では知財実務オンラインの中で3番目ということです。 (第3回)「ここで差がつく!意外と知らない調査の基本」 https://www.youtube.com/watch?v=mb_9luiL-3k (第5回)「経営で重み増す「共創・協創」の知財戦略」 https://www.youtube.com/watch?v=r8NYpio8PKg 知財実務オンラインの次回は、10月29日に、(第21回)知財実務オンライン:「IPランドスケープ実践に役立つ知財情報戦略 」(ゲスト:株式会社知財ランドスケープ CEO 山内 明先生)ということで、楽しみです。 https://www.youtube.com/watch?v=NQ-ngtpdNJs ネットで入手できる山内先生の主な著作には、下記があります。 ・「IPランドスケープ3.0」 JAPIO YEAR BOOK 2019 https://japio.or.jp/00yearbook/files/2019book/19_2_10.pdf ・「IPランドスケープ2.0」 JAPIO YEAR BOOK 2018 https://www.japio.or.jp/00yearbook/files/2018book/18_2_08.pdf ・「IPランドスケープ実践に役立つ知財情報戦略―特許マーケティングを中心として―」 JAPIO YEAR BOOK 2017 https://japio.or.jp/00yearbook/files/2017book/17_2_10.pdf
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金沢工業大学大学院・イノベーションマネジメント研究科杉光一成教授らが翻訳された『コトラーのB2Bブランド・マネジメント』の出版記念オンラインイベントが、10月21日(水) 19:00 〜 20:30 行われました。
杉光教授の講演が予定の60分を大きく超える熱演で、コトラー博士の説の解説だけでなく、杉光教授の持論も紹介され、とても勉強になりました。 コトラー博士からは、本イベントに特別のビデオ・メッセージが届き、紹介されました。 本書は、杉光教授にとっては、コトラーのイノベーション・ブランド戦略 (日本語) 単行本 – 2014/12/22に続く2冊目の翻訳とのことでした。 ■イベント概要 ブランディングという強力なコンセプトは、食料品や化粧品、自動車などを製造するB2C企業において大きな発展を遂げました。「ブランドはB2Cビジネスの話で、B2Bビジネスには関係ない」「技術力が売りの会社にブランド構築は必要ない」「自社のブランドをネーミングして商標出願もしているから問題ない」と思われている方も多いのではないでしょうか。 しかし最近では、半導体メーカーのインテルの成功に見られるように、企業というプロを顧客とするB2B企業にもブランド構築は可能かつ必要であり、しかも有効である、という点は完全にコンセンサスを得ていると言えます。 B2B企業におけるブランド・マネジメントの気運が高まる中、2020年9月16日に白桃書房から『コトラーのB2Bブランド・マネジメント』が上梓されました。本書は、フェデックス、サムスン、セメックス、IBM、シーメンス、ランクセス、レノボなどB2B企業の成功事例をもとに、ブランドの基礎知識・理論を解説した上で、B2B企業のブランド構築とその運用についての指針を示しつつ、詳しく解説しています。 また、一般消費者にも身近なB2C企業との比較や相違を見ることで、B2B企業の将来をも展望しており、ブランドを構築する上で必要となるコンセプトや得られる価値、オンライン上での口コミ効果など最新の実践方法を知ることができます。 今回のKITプロフェッショナルミーティングでは、本書の出版を記念して、翻訳者でもあり監修者の杉光一成教授による特別講演を開催します。さらに、「マーケティングの神様」と評されるフィリップ・コトラー博士からビデオメッセージが届きましたので、日本で最初にご覧いただける貴重な機会となります。イベント後半の交流会および質疑応答セッションでは、参加者の皆さまからの闊達なご意見や質問を受け付けて参ります。 本書は、ブランドの基礎知識・理論を解説した上で、B2Bブランドとその構築・運用(ブランディング)についての指針を示しつつ、そのベストプラクティスを紹介する。さらに、B2Cブランディングとの比較や相違を見ることで、B2Bブランドの将来をも検討しており、B2Bブランドのコンセプトやメリット、価値について理解することができる。 2014年刊の『コトラーのイノベーション・ブランド戦略 ものづくり企業のための要素技術の「見える化」』も大変な好評を得ており、ものづくり企業にかかわる方たちは、この本でさらに考えを深めることもできよう。 【目次】 第1章 有名になるか、無名で埋もれるか 第2章 ブランド化するか、しないか 第3章 B2Bブランディングの次元 第4章 ブランディングによる加速化 第5章 B2Bブランディングの成功事例 第6章 ブランディングの落とし穴への注意 第7章 将来への展望 著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より) コトラー,フィリップ 「近代マーケティングの父」と称され、マーケティングに関する書籍・論文多数。現在、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院SCジョンソン&サン特別教授であり、シカゴ大学で経済学の分野で修士号、MITにおいて同分野で博士号を取得している ファルチ,ヴァルデマール マーケティングを専門とするプフォルツハイム大学の国際ビジネス名誉教授。経済とビジネスの2つの修士号を持ち、ベルリン自由大学において社会科学の博士号を取得している 杉光/一成 1999年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。2006年東北大学大学院博士後期課程(技術経営分野)修了。博士(工学)。金沢工業大学大学院・イノベーションマネジメント研究科教授。デザイン・ブランド等のマーケティングに関係する知財を専門とし、「技術のブランド化」について経営学及び法学の共同研究に従事(平成21~24年)。受賞歴としてTEPIA第1回知的財産学術奨励賞(会長大賞)、経済産業省より知財功労賞(特許庁長官表彰)がある 川上/智子 2000年神戸大学大学院博士後期課程修了。博士(商学)。2015年より早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授。専門はマーケティング、イノベーション。2006年日本商業学会賞・日本経営学会賞を受賞。2017年アジアのマーケティング研究者トップ100に選出。2019年フィリップ・コトラー教授とワールド・マーケティング・サミット東京で共演。日本マーケティング学会理事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) 登録情報 発売日 : 2020/9/16 単行本 : 311ページ ISBN-10 : 4561662359 ISBN-13 : 978-4561662358 出版社 : 白桃書房 (2020/9/16) 言語: : 日本語 Amazon 売れ筋ランキング: - 483位本 (の売れ筋ランキングを見る本) - 6位マーケティング・セールス一般関連書籍 - 7位マーケティング・セールス全般関連書籍 Paragraph. ここをクリックして編集する. 10月17日に開催された第6回東京大学定期株主総会は、ライブ中継最大同時視聴者数が279名だったそうです。
YouTubeオンデマンドで配信されています。 https://www.u-tokyo.ac.jp/adm/hcd/event/2020_event_13.html https://youtu.be/grHrt1IptbU 10月9日に、産業構造審議会知的財産分科会 第1回基本問題小委員会が開かれ、「ウィズコロナ/ポストコロナ時代における産業財産権行政の在り方」が議論され、詳細な議事録が公開されました。
下記の5つの論点について自由討議が行われ、課題が明確化されてきているようです。今後の議論に期待します。 個人的に気になった点は、スーパー早期審査に対する評価が大企業と中小企業で大きく異なっていること、特許庁の財政がひっ迫していることでした。特許庁には、筋肉質になるよう体質改善を早急に行っていただきたいと感じます。 5つの論点 1 特許庁を取り巻く現状 ―産業構造の変化と特許出願の動向― 産業構造の変化・イノベーション戦略の変化は出願構造にどのような変化をもたらしたか 日本特許庁への出願が増加しないのはなぜか 欧米と比較して、日本企業による 4 庁(米欧中韓)以外への出願が少ないのはなぜか 欧米と比較して、国外からの出願件数の伸びが低いのはなぜか 2 特許、意匠、商標、審判の現状と取組 特許審査、意匠審査、商標審査、審判の現状に対する評価・要望 3 近年の主要な取組 特許庁の近年の取組と、今後の方向性に対する要望 4 コロナ禍の影響 ―足下の対応と新たな日常への対応― コロナ禍で顕在化した課題(レジリエントな業務体制の構築、手続きのオンライン化、柔軟な救済措置の整備など)への対応に対する要望 イノベーション促進に向けた、ポスト/ウィズコロナ時代の産業財産権制度への期待と要望 5 特許庁の財政状況とこれからコロナ禍の影響 ―現状認識と今後の論点― 特許庁の財政の現状に対する評価・要望 今後の特許庁に求められること 産業構造審議会 知的財産分科会 第1回基本問題小委員会 議事録 https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/kihonmondai_shoi/document/index/01_gijiroku.pdf 産業構造審議会 知的財産分科会 第1回基本問題小委員会 議事次第 日 時:令和2年10月9日(金)14時00分~16時00分 会 場:特許庁庁舎9階 庁議室(オンライン会議併用) (議事次第) 1.開会 2. ウィズコロナ/ポストコロナ時代における産業財産権行政の在り方 3.自由討議 4.閉会 (配布資料) 議事次第 委員名簿 産業構造審議会 知的財産分科会 基本問題小委員会 委員名簿 長岡 貞男 東京経済大学経済学部 教授【委員長】 萩原 恒昭 日本経済団体連合会 知的財産委員会 企画部会長代行 凸版印刷(株) 法務・知的財産本部 顧問 戸田 裕二 日本知的財産協会 理事長 (株)日立製作所 知的財産本部長 濱田 百合子 日本弁理士会 副会長 特許業務法人栄光特許事務所 所長 弁理士 山内 清行 日本商工会議所 産業政策第一部長 本田 圭子 株式会社東京大学 TLO 副社長 鮫島 正洋 弁護士法人 内田・鮫島法律事務所 弁護士 松山 智恵 TMI 総合法律事務所 弁護士 合計 8 名 (敬称略) 資料1:ウィズコロナ/ポストコロナ時代における産業財産権行政の在り方 (80頁の資料) https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/kihonmondai_shoi/document/01-shiryou/01-shiryo01.pdf 資料2:特に御議論いただきたい論点 特に御議論いただきたい論点 1 特許庁を取り巻く現状 ―産業構造の変化と特許出願の動向― 産業構造の変化・イノベーション戦略の変化は出願構造にどのような変化をもたらしたか 日本特許庁への出願が増加しないのはなぜか 欧米と比較して、日本企業による 4 庁(米欧中韓)以外への出願が少ないのはなぜか 欧米と比較して、国外からの出願件数の伸びが低いのはなぜか 2 特許、意匠、商標、審判の現状と取組 特許審査、意匠審査、商標審査、審判の現状に対する評価・ご要望 3 近年の主要な取組 特許庁の近年の取組と、今後の方向性に対するご要望 4 コロナ禍の影響 ―足下の対応と新たな日常への対応― コロナ禍で顕在化した課題(レジリエントな業務体制の構築、手続きのオンライン化、柔軟な救済措置の整備など)への対応に対するご要望 イノベーション促進に向けた、ポスト/ウィズコロナ時代の産業財産権制度への期待とご要望 5 特許庁の財政状況とこれからコロナ禍の影響 ―現状認識と今後の論点― 特許庁の財政の現状に対する評価・ご要望 今後の特許庁に求められること 10月17日に行われた東京大学第6回定期株主総会を視聴しました。
東京大学が国立初の大学債「東大債」を今年10月8日に発行し即日完売、研究力強化へ200億円を調達したこと、元内閣府知的財産戦略推進事務局長で、知的財産戦略ビジョンをまとめたほか、経営デザインシートを提案した住田孝之氏(現住友商事株式会社顧問)がパネリストとして登壇されるとのことで、視聴しました。 東京大学FSI債の概要 https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/public-info/for_investors.html 東京大学五神真総長の挨拶や2019事業年度決算報告を聞くと、大学が収益を得る組織体へ変身しつつあるように感じました。 ただ、東大の価値の8割が土地や建物などの有形資産であるという報告で、「大学の無形の価値を未来社会に向けてどのように位置づけるか」という特別座談会を興味深く聞かせていただきました。 10年前には不可能と思われていた「(大学の)無形の価値」を何とか表そうとしていて、それが不可能ではなさそうであり、評価方法の標準化がすすみ、今後急速に価値としての評価が進むだろうという感覚だけはわかりました。 東京大学第6回定期株主総会 開催日時:2020年10月17日(土)13時30分から15時20分まで 開催方法:Zoom(ウェビナー)によるライブ配信 【プログラム詳細】 13:30- 総長挨拶 東京大学総長 五神 真 13:40- 2019事業年度決算報告(オリジナル財務諸表説明を含む) 14:05- 特別座談会「大学の無形の価値を未来社会に向けてどのように位置づけるか」 <パネリスト> 渋澤健氏(コモンズ投信取締役会長) 住田孝之氏(住友商事株式会社顧問) 石井菜穂子(東京大学理事・未来ビジョン研究センター教授) <モデレーター> 坂田一郎(東京大学副学長・未来ビジョン研究センター教授) 14:35- Q&Aセッション(視聴者の皆様から頂いたご質問に、登壇者がお答えいたします。) <登壇者> 渋澤健氏(コモンズ投信取締役会長) 住田孝之氏(住友商事株式会社顧問) 石井菜穂子(東京大学理事・未来ビジョン研究センター教授) 有馬孝尚(東京大学総長特任補佐・新領域創成科学研究科教授) 高橋慎一郎(東京大学史料編纂所教授) <モデレーター> 坂田一郎(東京大学副学長・未来ビジョン研究センター教授) <統合報告書ダウンロードURL(ファイルサイズ:19MB)> https://webfs.adm.u-tokyo.ac.jp/public/yQtEQAHIsM6AZDsB0Zl1rggpDUaPqM0JpXZba-SUnH8R Siemens AGは、インダストリー4.0を先導する企業として、デジタル化が進むサービス分野に事業変革を進め、イノベーションを加速させるとともに、顧客が感じる価値を知財として保護しているドイツに本社を置くグローバル企業です。
Siemensにおいて価値の高い特許とは「顧客の感じる価値」を保護する特許のことであり、そのような特許を広範な地域にわたって権利を取得して、グローバルに保護することを目標とする知財戦略がSiemens の“Value Driven IP Strategy”。 日本企業に多く見られる、“Invention Driven”と呼ばれる、R&Dの成果を単に特許化するような、発明が提案されて始動する活動ではなく、事業創造を狙う領域や時間軸等を理解した上での活動が求められ、イノベーションの現場に入り込み、R&D部門に先んじて将来を見据え、戦略の策定・実行を進めることを目指しているということです。 経営層や事業部門等へ分かりやすく特許の価値を表現する方法については、市販のツール(Patentsight社)を使った「市場カバー率」と「技術的価値」という二つの指標を導入しており、知財担当者にもビジネス教育が行われ、最近ではソフトウエア発明に関する教育も実施しているということです。 ここまでビジネスに寄り添う知財活動をしている企業は少ないでしょう。 特許庁, 経営戦略を成功に導く知財戦略【実践事例集】(2020) https://www.jpo.go.jp/support/example/chizai_senryaku_2020.html 株式会社知財ランドスケープCEOの山内明氏は、IPランドスケープによってAI×医療(医療診断/シミュレーション、診断のための検出/測定)を巡る各国企業間の開発競争を深掘り分析した結果、 「IBMでは、AI/ディープラーニングを活用した画像分析支援プラットフォームへの傾注が認められ、Siemensでは、医療機器の売り切りからAIによる医療画像診断サービス、さらにはAs a Serviceモデルへの移行志向が認められた。また、SamsungおよびLGでは、スマートウオッチや家電といった既存の商材についてAIを駆使して訴求力を高める志向が認められた。」 と分析しています。 その中でも、Siemensは、「放射線診断や超音波診断、MRI診断への傾注が認められ」、「AIによる医療画像診断サービス関連の出願に力を入れており、同社が医療機器の売り切りだけではなく、診断サービスへの展開やAs a Service(サービス事業)モデルへの移行を志向していることが明らかになった。」としています。 知財担当者にもビジネスやソフトウエア発明に関する教育を実施している所以でしょう。 山内 明, IBMとシーメンス、サムスン、LGの次の収益源、鍵は医療×AI (第2回 IPランドスケープで医療分野の開発を深掘り分析) 2020.10.15 https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/04717/ 「知財が本当に経営に刺さっているかということです。社長、経営トップ、事業部門のトップの人達が本当に知財を信用し、知財に頼っていますか。」コニカミノルタの知財トップのこの言葉は重く噛みしめたい言葉です。
コニカミノルタは、「ジャンルトップ戦略」(成長が見込める領域、勝算のある領域にリソースを集中し、その領域のトップポジションを狙う戦略)」を着々と進めています。 2010年以降は、M&Aでいろいろな技術、人、ノウハウを獲得しながら、デジタルトランスフォーメーションに注力しています。何でも「アナログ」を「デジタル」に置き換えて済む話ではなく、「デジタルによる付加価値」と「顧客関係強化」の2つの軸で考え、プロダクトアウト型から顧客価値創出型への変革に取り組んでいるようです。 会社の目指す方向は「持続性ある高収益体質」です。これを知財力で支え、進化させるための3つの戦略「知的財産戦略2017-2020」「質向上のための戦略と施策」「人材育成のための戦略と施策」がコニカミノルタの知的財産戦略です。 こうした素晴らしい知財活動を進めているコニカミノルタの知財トップの下記の言葉は非常に共感します。この危機意識の下で、さらに成果を積み重ねられるものと期待しています。 「重要なポイントは、知財が本当に経営に刺さっているかということです。社長、経営トップ、事業部門のトップの人達が本当に知財を信用し、知財に頼っていますか。ここは非常に大事だと思います。 一方で、知財部員そのものがトランスフォーメーションについて、いろいろと考えた方がよいと思います。会社の成長のために何ができるかという、知財部と、その組織を構成する知財部員のマインドが知的財産であり、知的資本です。 そして、新たなビジネスモデルを確実に取り込むためには、特許だけではなく、知財を戦略として構築し、実行して、完結させることが必要です。 更に、知財資本と企業価値が、非常に関係してくるようになったと思います。特許の件数以上の価値を示していかないと、経営に刺さらないのではないかという問題意識を持っています。」 松枝哲也 コニカミノルタにおけるデジタルトランスフォーメーション( DX)× 知的財産戦略 2019年 9 月 25 日 https://www.inpit.go.jp/katsuyo/chiiki-forum/ip-forum2019nagoya.pdf https://www.inpit.go.jp/content/100868663.pdf コニカミノルタの知的財産報告書2020の本文によれば、 当社では、知的財産情報などに基づいて事業環境を分析し、経営や事業に対して戦略提案を行う「IP ランドスケープ」の重要性にいち早く着目し、特許解析ツールを用いた他社特許動向の解析や開発テーマの探索などを実施してきました。 「知的財産戦略2017-2022」 における特許情報分析・解析力の強化方針を実行すべく、2019年4月には知的財産部内に知的財産戦略を担当する専門組織を立ち上げ、経営に資する戦略提案の強化を図っています。 知的財産報告書2020 https://www.konicaminolta.com/jp-ja/investors/ir_library/intellectual_property/pdf/ip2020.pdf 富士通は現在、先端技術の活用によって社会課題や顧客課題を解決するサービスを提供する「DX(デジタルトランスフォーメーション)企業」への変革を目指しています。
富士通の知的財産活動は、Digital Co-creationを推進する知的財産戦略「EX3×IP2」として、イノベーションの水先案内人として、富士通の技術の強みを知財の専門性で活かし、デジタル時代の波を渡り、ビジネスをつなげることで、新たな価値を共創し、顧客エクスペリエンスを提供しています。 コア技術の知的財産権の確保(AR(拡張現実)技術を活用し製造部材の診断を効率化、スポーツICT)、ハッカソン支援、SDGs貢献活動(WIPO GREENとのパートナーシップ締結)、オープンライセンス活動(地域との共生を目的とした知的財産の活用<川崎モデル>)、標準化活動、OSS支援、共同研究支援、法務部門と連携したビジネス支援などが柱で、どう進化していくのか楽しみです。 富士通HP https://www.fujitsu.com/jp/about/businesspolicy/tech/intellectualproperty/ 知的財産活動のご紹介、富士通株式会社2017年12月 https://www.fujitsu.com/jp/Images/port2017.pdf 大水眞己, INPITビジネス×知財フォーラム 産業構造が大きく変わる時代の知的財産戦略, 25th September 2019 https://www.inpit.go.jp/content/100868665.pdf 富士通とフジクラが語る知財戦略の取り組みとは https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/2002/27/news019_2.html 加藤幹之, 富士通の知的財産戦略 2008年 https://pr.fujitsu.com/jp/ir/library/presentation/pdf/20080404-02.pdf 【10/8開催】富士通の知財戦略。コロナ時代の特許業務の取組み事例。≪Webセミナー≫ 令和2年度「知財功労賞」経済産業大臣賞を受賞した武田薬品工業は、インバウンド型オープンイノベーション(製品導⼊)の活⽤、ライフサイエンス/ヘルスケア業界におけるデジタル化とそれによる変革を推進する新たな取り組みなど、従来の枠組みを超えた取り組みにチャレンジしています。
知財戦略も相当変化しているようです。 令和2年度「知財功労賞」経済産業大臣賞を初受賞 【受賞ポイント】 2017年に湘南研究施設をオープンイノベーションエコシステムに変えるというビジョンを打ち出し、湘南ヘルスイノベーションパーク(所在地:神奈川県藤沢市)を2018年に開所した。ライフサイエンス研究に特化した設備を基盤に、現時点で産官学から60以上の企業・団体が結集し、最先端技術・知見を活用したアイデアやソリューションの創出、実現を加速化している。また、神奈川県、藤沢市、鎌倉市、湘南鎌倉総合病院と連携・協力に関する覚書を締結し、地域との連携も進めている。 創薬ターゲット・技術に関する募集課題を提⽰して、⼤学・企業等に所属する外部研究者のアイデアを幅広く募集し、研究助成を通じて研究を推進するプログラム「COCKPI-T」を2015年に、特定化合物群を外部研究者に提供することで新規細胞アッセイ系の研究推進を⽬指す「SKITOPEN Innovation」を2017年に開始している。 10年前は主要製品の7割以上が⾃前で開発したものであったが、近年ではインバウンド型オープンイノベーション(製品導⼊)等を活⽤することにより、⾃前で開発したものは同規模ながら5割程度と、⾃前主義から脱却した製品開発を加速している。 https://www.takeda.com/ja-jp/announcements/2020/2/ 武田、コロナ薬で問われるシャイアー買収の成果, 日経新聞 2020年10月12日 20:20 武⽥薬品⼯業などが開発中の新型コロナウイルス感染症治療薬が最終段階の臨床試験(治験)に⼊った。回復した患者の⾎液成分を使う⾎液製剤で、武⽥は2019年に6兆円超で買収したアイルランド製薬⼤⼿シャイアーの技術を活⽤した。新型コロナ治療薬という注⽬分野で⼤型買収の成果が問われている。 https://r.nikkei.com/article/DGXMZO64906710S0A011C2TJ1000?s=5 武田、大衆薬売却を正式発表 米ファンドに2420億円, 日経新聞 2020/8/24 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62977840U0A820C2TJ2000/ 地域医療の充実のための次世代ヘルスケア社会システムを神奈川県とともに構築へ 2020年5月29日 -2019年9月に神奈川県と武田薬品が締結した「地域医療の充実及び医療費適正化の推進等に係る連携・協力に関する協定」に基づき、質が高く、切れ目のない医療サービスの提供を目指す -患者さんの症状をデジタルデバイスによりモニタリングすることで、パーキンソン病医療へ貢献を目指す -オンライン診療およびオンライン服薬指導を充実させ、患者に寄り添った包括的な医療環境の提供を目指す 武田薬品工業HP https://www.takeda.com/ja-jp/announcements/2020/collaboration-with-kanagawa/ セールスフォース・ドットコム、 武田薬品工業によるパーキンソン病患者を対象とした臨床研究へ技術提供 〜患者情報を包括的に管理・分析できる「Salesforce Health Cloud」を武田薬品工業へ提供〜 2020年5月29日 セールスフォース・ドットコムHP https://www.salesforce.com/jp/company/news-press/press-releases/2020/05/2005291/ 武田薬品 6・2兆円の買収劇、コードネームは「Yamazaki」「Hibiki」 2020.5.6 https://www.sankeibiz.jp/business/print/200506/bsc2005060640001-c.htm H29「バイオ医薬品分野における知的財産戦略及び活用の最適化に関する調査研究報告書」の概要(アンケート)について https://www.amed.go.jp/content/000032001.pdf 平井 真以子 武田薬品工業(株) オープン&クローズ戦略のための営業秘密・活用策 グローバル知的財産フォーラム2016 https://www.inpit.go.jp/content/100778933.pdf IBMは、特許取得で圧倒的な取得数を保持して首位を譲っていません。
そして、バックグラウンドIPを保有したうえで共同研究を進めアライアンスを前提とした出願や特許のオープン化の知財戦略をとっています。 IBMはうまくいっていない、という評価もあるようですが、事業の大胆な組み換え、特許をNPEに売却するなど、後からみるとこういう戦略だったのか、という解説本が現れることになりそうです。 國光 健一/Kenichi Kunimitsu デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー パートナー デジタルヘルス領域における特許出願と知財戦略の最新動向 異業種の参入が進むヘルスケア業界における新たな知財戦略のあり方 https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/strategy/articles/ipa/digital-health.html 主要プレイヤー(IBM)の知財戦略 主要プレイヤーの動向の例としてIBMの例を取り上げる。IBMは2015年にTeva Pharmaceuticalとデジタルヘルス領域における提携を発表、注力領域のひとつとして、既存医薬品の中から新規疾患へ適用可能な治療薬を探索する技術である「ドラッグ・リポジショニング」を挙げていた。 このアライアンスの成果としてIBMとTevaは2018年に、多剤併用する場合において、既存薬の新規疾患への適用可能性を評価する技術につき共同出願を行っている。 注目すべき点として、IBMはアライアンスよりも前に、類似の技術を単独で特許出願しているのである。具体的には、2014年から2017年にかけてIBMは、単剤の場合において、既存薬の新規疾患への適用可能性を評価する技術についての特許出願を5件行っている。これはIT業界においてよく行われる「バックグラウンドIP」の確保と呼ばれる方法である。 IBMはこのバックグラウンドIPを保有することにより、単剤での評価技術については自社固有の技術と主張することが可能になるため、共同開発成果の帰属の按分に関して一定の権利を確保することが可能となる。また単剤での評価技術についてはIBMの権利で取り扱うことができるため、IBMはこのIPを利用して類似したソリューションを他クライアントに展開することが可能になる。 IT企業は事業保護だけではなく、アライアンスを前提とした出願や特許のオープン化など、多様な知財戦略に長けているという強みがある。こうした新しい知財戦略が、今後デジタルヘルス領域ではスタンダードになってゆくと考えられる。製薬会社や医療機器メーカーがデジタルヘルス業界において発展するためには、こうした業界の特性を理解し、社内体制や知財戦略をアップデートしてゆくことが必要であると考えられる。 IBMがレガシーインフラ事業をスピンアウト、クラウド事業に全⾯的に舵を切る 2020年10月11日 by Ron Miller 翻訳:TechCrunch Japan https://jp.techcrunch.com/2020/10/11/2020-10-08-as-ibm-spins-out-legacy-infrastructure-management-biz-ceo-goes-all-in-on-the-cloud/ IBMがインフラサービス事業を2兆円規模の独立事業として分社化する計画を発表 2020年10月10日 by Ingrid Lunden (翻訳:滑川海彦@Facebook) https://jp.techcrunch.com/2020/10/10/2020-10-08-ibm-plans-to-spin-off-infrastructure-services-as-a-separate-19b-business/ 野⼝剛史, 戦略の変化︖︕IBMが特許をNPEに売却か︖ Open Legal Community https://openlegalcommunity.com/ibm-may-have-sold-patents-to-npe/ IBMはとてつもない特許数を保持していることで有名ですが、そのような豊富な資産の活⽤の⼀環として特許の売却も積極的に⾏っています。今まではサービスや製品を提供している運営会社(operating company)にのみ売却を⾏っていましたが、最新の取引ではどうやら売却先はNPEのようです。 IBMの特許分析 アッシュ(某企業の知財部員) 2020/01/20 17:14 https://note.com/zshiki/n/n30f3cbc44e3b US No1の称号は、外国企業に渡さないということでしょうか︖US以外への出願はそれほどでもないのでファミリー特許数では、今回2位のサムスン電⼦にダブルスコア近くだった記憶もありますが、IBMのアメリカでの出願は今年もトップでした。 ⾺場錬成, ⼤丈夫か⽇本企業の特許戦略, 潮流 (No.123), 2020.10.07 https://www.hatsumei.co.jp/column/index.php?a=column_detail&id=359 コンピュータ時代の覇者IBMは、依然として特許取得で圧倒的な取得数を保持して首位を譲っていない。追いすがるのが韓国のサムスン電子である。2010年の勢いでは首位を奪還するのは時間の問題だと思っていたが、そこからのIBMの底力はすごいもので、首位を譲らず今では差は開く一方である。 IBMは取得した膨大な特許群を一部開放して、自社の企業戦略に役立てようと方針転換した。しかしそれがうまくいって業績を上げたようには見えない。 上野 剛史 日本アイ・ビー・エム株式会社 理事・知的財産部長, データが価値を生み出す時代における、ビジネス変革とそれを支える知財・データ戦略 グローバル知財戦略フォーラム2018 https://www.inpit.go.jp/katsuyo/gippd/forumkokunai/forum_kokunai000030.pdf 上野剛史, グローバルな事業活動に貢献するIBM知財戦略, INPIT グローバル知財戦略フォーラム2015, January 26, 2015 https://www.inpit.go.jp/content/100639464.pdf 「知財管理」誌 Vol.64 記事詳細 掲載巻(発行年) / 号 / 頁 64巻(2014年) / 4号 / 487頁 論文区分 特集(知財パラダイムシフト) 論文名 IBMの知的財産戦略-ビジネスへの貢献- 著者 上野剛史 抄録 経営に資する知財ということが唱えられてから久しいが、具体的にどのように資するのか、企業知財部門としては常に追求し続ける命題であろう。知財戦略の巧拙が企業業績に大きな影響を与えるようになり、ときには会社の存亡にも関わりかねない。IBMは、21年間にわたり米国特許取得件数トップを続け、約10億ドルの知財収入を生み出し、オープンな知財活用にも積極的に取り組んでいる。このような実績を上げるためにも、IBMでは、イノベーションの文化を醸成し、知的財産部門において発明者が生み出したイノベーションを集中管理とグローバルな分散オペレーションにより戦略的・効率的に保護し、知的財産の価値を最大化するように活用しており、これらを通じて年間1,000億ドルにおよぶIBMビジネスに貢献している。知的財産が企業戦略の一環として明確に位置づけられているものであり、その有機的な仕組を紹介する。 http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/syoroku/64/4_487.html http://www.jipa.or.jp/kaiin/kikansi/honbun/2014_04_487.pdf 竹内誠也,上野剛史, イノベーション推進のための知財戦略, 〈日本知財学会誌〉Vol.5 No.2 ― 2008 : 17- 28 https://www.ipaj.org/bulletin/pdfs/JIPAJ5-2PDF/5-2_p017-028.pdf 知財実務オンライン第18回は、⼤野総合法律事務所パートナー弁理士の森⽥裕氏による「バイオテクノロジー分野において、米国の特許出願の分析から分かったイノベーション保護に有効と考えられた特許」でした。
⽶ホワイトヘッド研究所のiPS細胞における特許戦略の分析から、バイオテクノロジー分野においては、これまでとは異なる特許戦略が必須として、下記の提言を行っているとのことです。 ●社会還元のために必須の特許 ●低い効果を狙った発明の戦略的権利化 ●分割出願戦略の有効性(最重要特許について) ●ビジネス指向で考える特許戦略 ●早期からの特許戦略と研究戦略への提言 高石秀樹弁護士が「※1:12:00に、オフレコと言いながら有用な発言あり。」と書かれていた部分がアーカイブ動画では削除されていませんでしたが、オフレコの資料1枚分がそっくり削除されていました。非常に共感するもので、オフレコで残念でした。 「高度な発明は特許制度になじまない 権利範囲を狭めてしまう誤解とは」から引用 森田氏が注力しているのが、海外の知財戦略の調査だ。公開された特許を分析することで、戦略が見えてくるという。 「いちばん興味深かったのは、米国のアカデミアでiPS細胞を製造するための中心技術の特許が成立していたこと。iPS細胞を開発し、ノーベル賞を獲得したのは山中伸弥教授なのに、iPS細胞の発見をしていない人がより広い特許を権利化できているのです」(森田氏) 米国のアカデミアが取得している特許は、細胞の初期化因子であるOct4を発現した初代体細胞を権利化したものだという。iPS細胞が発見される以前に出願されたもので、誰も活用しておらず、知られていなかった出願だが、Oct4はiPS細胞の製造において、ほぼすべての手法に必要となる。 一方で、京都大学iPS細胞研究所のiPS細胞関連技術の特許は、ほかの因子も多数組み合わせて達成する発明としており、権利の範囲が狭くなってしまっているそうだ。 この事例から浮かび上がるのは、研究成果をそのまま出願するのではなく、特許戦略になじむ形に加工してから出願したほうが権利として有利に働く、ということだ。森田氏は、特許の権利範囲が狭くなってしまう原因として、特許制度への誤解があると指摘する。 「高度な技術でないと特許にはならないと信じてられていますが、じつは高度な発明は、あまり特許制度になじまないのです」 一般的に、高度な発明とされるものは、いろいろな技術を組み合わせ、積み上げて達するものだ。その技術がひとつでも欠けると発明ではなくなる。その結果、権利の範囲が狭くなってしまう。 大学やベンチャーの要素技術の場合、製薬会社に技術導出して製品化するケースが多い。まだ具体的な製品が決まっていない段階で、狭い権利範囲の特許を出願してしまうのは不利に働いてしまう場合がある。一方で、研究成果の効果がそれほど高くなくても、特許性が得られる場合が存在する。 「特許制度では、効果よりも“進歩性”が重要。必ずしも効果が高くなくても、容易に思いつかないものであれば、特許になる。他者が思いつかないようなもので、広くとれるものを狙っていくことこそが、戦略です」 膨大な期間と知力、あらゆる資産を投入して、ようやく得られた研究成果を効果的に保護するには、研究戦略とは別次元で、知財戦略を立てていく必要があるのだ。 https://ipbase.go.jp/special/d5868d5d968b7c10e60d8be815f5723c5444ab84.php バイオ系スタートアップは「発明の低性能化」を⽬指すべき 最先端特許戦略ディスカッション、2020年03⽉27⽇ 09時30分更新、STARTUP×知財戦略 第62回「RINK FESTIVAL 2020」セッションレポート ⽂● 松下典⼦ 編集●北島幹雄/ASCII STARTUP 撮影●平原克彦 https://ascii.jp/elem/000/001/908/1908982/ 森田弁理士の特許“攻防”戦略 https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/032800019/ シスメックス株式会社 知的財産本部 理事 本部長の井上二三夫氏の講演を聴講する機会を得ました。努力の天才「イチロー」の「来た球を打ち返す」という当たり前の期待に応えられるように厳しい練習を続けるプロとしての生き様を念頭におかれて、「当たり前のことを当たり前に」をモットーに知財活動を推進しておられ、「IPランドスケープ」という言葉は使ってないけれども、そういう活動は昔からやっているよと、多くの実績に裏付けられた話はとても勉強になりました。
シスメックスは、2015年、個別化医療の実現に向けた研究開発の取り組みを加速させるため、新たなイノベーション創出の場としてオープンイノベーションラボ「Sysmex Open Innovation Lab.(略称:SOLA)」をシスメックスの研究開発の中核拠点「テクノパーク」(神戸市西区)内に開設するなどして、オープンイノベーションに取り組んでいます。 シスメックスのオープンイノベーションの特徴は、大学や研究機関、企業などが持つ技術・ナレッジとシスメックスの持つ技術を融合させ、新たな臨床価値を効率的に生み出す活動を推進していることで、より活動を加速させるために、国内外の研究者をテクノパークに招聘し、当社研究員とのコラボレーションを実現する場を設けています。 シスメックスは、検体検査(機器+試薬+サービス・サポート)を事業領域として、世界190 カ国以上の医療現場に製品・サービスを提供しており、海外売上比率は85%以上を占め、臨床検査機器、試薬で高いシェアを持っています。 それを支える知財活動の目標は、研究開発と事業展開の自由度を確保し、経営に資すること。 1.当たり前のことを当たり前に実施するプロフェショナル集団 2.“当たり前”のことは、「経営層」「研究開発部門」「事業部門」にとって当たり前のことであり、「知財部門」の当たり前ではない 3.知財活動の貢献度は、「経営」「研究開発」「事業」の成功度合いで評価 4.全社員の知財マインド向上施策 5.経営層への知財教育の必要性 6.定常的(日常的)な知財啓発活動 7.業務を通じての知財啓発 8.知財部門の意識改革 以下、いずれもシスメックスHP ・新たに研究開発オープンイノベーションラボを開設 2015.09.17 ・イノベーションの早期創出に向けグローバルR&D体制を強化 2018.10.22 ・ヘルスケア分野における新たなイノベーション創出に向けシスメックスと大阪大学が包括連携契約を締結 2019.05.27 https://www.sysmex.co.jp/news/2019/190527.html シスメックスとオプティム、医療⽤AI・IoTオープンプラットフォームおよびデジタルトランスフォーメーション・ソリューションの企画・開発・運営会社を共同設⽴ https://www.optim.co.jp/newsdetail/20200601-pressrelease-01 井上二三夫, アジア地域の国々と共存共栄を図る知財活動, Japio YEAR BOOK 2013 P32 https://japio.or.jp/00yearbook/files/2013book/13_a_06.pdf 井上二三夫, シスメックス株式会社のご紹介~事業のグローバル展開とそれを支える知財活動~, 国際知的財産活用フォーラム2013 https://www.inpit.go.jp/content/100519263.pdf 積水化学工業は、本年5月、「 Innovation for the Earth 」をビジョンステートメントとして掲げた、2030年度までの長期ビジョン「Vision 2030」を策定しました。
レジデンシャル(住まい)、アドバンストライフライン(社会インフラ)、イノベーティブモビリティ(エレクトロニクス/移動体)、ライフサイエンス(健康・医療)の4つのドメイン、及び、ネクストフロンティア(大きなパラダイムシフトを見据えた新しい事業ドメインの創出)において、際立つコア技術を起点にイノベーションを起こし続けることで新領域を創出し、積水化学グループの持続的成長と社会の持続性向上を実現していくとのことです。 積水化学グループ 中期経営計画 「Drive 2022」の策定について https://www.sekisui.co.jp/news/2020/1350089_36493.html また、本年8月31日には、同社の高機能プラスチックスカンパニーが、水無瀬イノベーションセンター(通称MIC)を開設したと発表しました。 MICでは、1階部分をオープンイノベーションスペースとしている。同スペース内には、「テクノロジーガレージ」と名付けた展示・デモ実験エリアを設け、高機能プラスチックスカンパニーの最新技術・製品とともに、昨年制作したコンセプトカーを常設するほか、実験設備を備えた「ラボスタジオ」や打ち合わせスペースを併設。顧客との意見交換やプロトタイピングを促進、スピーディーにイノベーションのタネを創出するとともに、顧客との関係強化も図るそうです。 イノベーションセンター開設 積水化学、開発研究所内に, ゴムタイムス,2020年9月1日 https://www.gomutimes.co.jp/?p=157015 同社では、CTOは新領域で事業を立上げることに_重きを置いており、強いリーダーシップを発揮して「戦略知財活動」を推進しています。同社では知財部貝に対して、研究開発部門や企両部門の社貝との議論の機会を与えるとともに、「戦略知財部員」として求められる要件(スキルセット)を定めることで効果的に育成を進めており、「戦略知財部員」には、CTO、企画、 R&D部門等の密なディスカッションを促し、新規事業領域でのより高度な知財戦略の策定につなげています。同社では策定した知財戦略を、新領域の事業化や開発の方向性決定に資する情報として活用しており、この枠組みを「戦略知財活動」と呼んでいます。 「戦略知財活動」の成果が期待されます。 積水化学工業, 「戦略知財部員」を養成し、事業戦略に踏み込んだインサイトを提供し新事業創造に貢献, 経営における 知的財産戦略事例集 - 特許庁 https://www.jpo.go.jp/support/example/document/keiei_senryaku_2019/keiei_chizaisenryaku.pdf 三菱電機は2017年に、自前主義からの脱却を掲げてスタートアップとのオープンイノベーションに乗り出しました。「世界一流の技術を持つ機関との連携で、世界で勝てる技術を創出」の主体となったのは研究開発部門に当たる開発本部のデザイン研究所に設置した「未来イノベーションセンター」で、事業部門や研究部門との橋渡し役を担っています。
三菱電機は企業別の国際特許出願件数で2019年に世界2位、日本で1位を獲得するなど知的財産を重要な経営資源と位置付けていますが、自社に足りないピースの取り込み(「FAシステム」や「電力・産業システム」といった既存の事業部門にない技術を明確にし、ベンチャーキャピタルなどとともに協業先となるスタートアップを探す)と、研究所で埋もれた技術を外部に開放する、という2つの取組みが柱です。 50程度の案件を進めてきた3年間で実証実験に進んだのは8件にとどまり、いずれも実用化には至っていないとのことで、踊り場にきているようです。 今年4月には、従来の縦割り組織の弊害を改め事業本部間の連携を増やし、新たな事業を創出するのが狙いに、BI本部が設置され、BI本部が起点となり、外部企業と新たな事業を創出する「オープンイノベーション」を推進する方針も打ち出し、スタートアップに100億円を投資することも決めたということです。 黄金崎元, 「優等生」三菱電機、縦割り弊害を打破 オープンイノベーションに転換, 10/5(月) 7:17配信, (SankeiBiz) - Yahoo!ニュース https://news.yahoo.co.jp/articles/283a5fc61e64fdf2609921d61e039e48253ff627 佐伯真也, オープンイノベーションは難しい、それでも止めぬ三菱電機, 日経ビジネス2020年6月12日 https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00112/061200006/ 新時代を創る日本発の「ものづくり」のかたちー三菱電機・未来イノベーションセンターのOI戦略, 2020年05月25日 https://tomoruba.eiicon.net/articles/1772 加藤恒, 変革の時代に向き合う知財戦略とは?, グローバル知財戦略フォーラム2020 https://www.inpit.go.jp/katsuyo/gippd/forumkokunai/forum_kokunai2020.pdf 藤田正弘, 三菱電機の研究開発戦略,三菱電機株式会社HP, 2019年2月 https://www.mitsubishielectric.co.jp/news/2019/0213-a.pdf ライオン株式会社は2018年にイノベーションラボを設立し、「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニー」を目指し、新規事業創造に向けた活動を推進しています。イノベーションラボの宇野所長は、初日に皆に「既存事業の仕事はしない」「皆で起業家を目指そう」「僕を所長と呼ぶのは禁止」の3つを言ったそうです。
表情筋にアプローチする新美容機器VISOURIRE(ヴィスリール)はクラウドファンディングで392%を達成し、口臭リスクを判定するアプリRePERO(リペロ)はビジネス分野向けの新サービスとしてローンチするなど成果を上げています。 ライオン株式会社は、いち早く副業を認めるなど新しい意欲的な取り組みを進めていますので、今後の成果も期待したいと思います。 100年先を見据えたライオンのイノベーションマネジメント(前編) FUJITSU JOURNAL 2019年11月21日 https://blog.global.fujitsu.com/jp/2019-11-21/01/ Mitsutaka Kaneko Jan 08, 2020 大企業におけるイノベーションラボのリアル −パナソニックとライオンの事例より− https://blog.btrax.com/jp/innovation-lab-in-big-company/ 加藤 隼, 【ライオン_RePERO】オーラルケアを起点に企業カルチャーを変革する, incubation inside https://incubationinside.jp/2019/11/15/lion-repero/ なお、ライオン株式会社は、平成31年度知的財産権制度活用優良企業等表彰 知財功労賞 特許庁長官表彰, 知財活用企業(商標)として表彰されたように、ライオンの商標権活用、経営戦略・事業戦略・研究戦略と連携した知財戦略の策定には、かなり特徴があり、参考になると思います。 高岡弘光, お客様から愛されるブランドに-ライオンの商標権活用-, グローバル知財戦略フォーラム2020 https://www.inpit.go.jp/content/100869492.pdf 平成31年度 知的財産権制度活用優良企業等表彰 知財功労賞 特許庁長官表彰, 知財活用企業(商標) ●コーポレートブランドの「LION」、キャラクターのライオンちゃん立体商標、各プロダクトブランド及び国内最多8件の音商標など様々な商標を登録し、お客様との共感・信頼・親近感を蓄積、醸成させている。また、自社コンセプトの独自性を確保して競合の同質化を防ぐべく、キーメッセージ(例:オーラルケア製品「口臭科学」)を商標登録するなど、製品企画の初期段階より商標を戦略的に活用している。これらで保護した歯磨き、歯ブラシ、ハンドソープは、国内トップシェアである。 ●海外売り上げを伸ばす経営戦略と連動し、「LION」商標を広く海外に出願している。一般的な動物の名前であるため、既権利者の存在など権利取得が困難な場合も多いが、現在は「LION」を世界88 ヶ国で出願・登録している。また、各種商標権に基づいた海外での模倣品排除活動を推進しており、泡ハンドソープやボディソープなどの模倣品や代理店詐称の差止に成功している。 ●経営戦略・事業戦略・研究戦略と連携した知財戦略を策定。知財担当役員を委員長とする知財委員会を年2回開催して、経営企画・事業・研究・生産の代表者と戦略推進を徹底させている。また、経営直下の本社スタッフとして知的財産部を組織化し、法務・コンプライアンス部門と協働して事業企画・研究開発部門を支援している。 ダイキン工業は、2018年12月に東京大学と産学協創協定を締結し、10年間で100億円を約束し、東大にダイキンの部長級を含むスタッフ約20人が常駐し、ダイキンの技術者約700人が東大を訪れ共同研究へ議論を進めるなど、「組織」対「組織」の産学連携の推進を進めてきましたが、2020年からはさらに予算を当初の倍の年間20億円に引き上げ、ダイキンの研究拠点に東大の研究者約100人を受け入れ共同研究を始めています。
この活動の中核になっているのが、ダイキン工業が2015年に設立した「テクノロジー・イノベーションセンター(TIC)」で、ここに集められた技術者約700人のうち7割程度がオープンイノベーションを通じた新たな価値創造に取り組んでおり、TICには本社の知財部門と密に連携した知財部門が配置され、協創活動に伴う知財面のとりまとめを担当しているとのことです。 ダイキン工業の本気度、東京大学の本気度がわかります。この動きが多くの日本企業、大学に波及し、日本社会を変えるトリガーになってほしいと願っています。 吉野次郎ら, ソフトバンク、ダイキン、IBM──、東大の産学連携は異次元に, 日経ビジネス 2020年6月5日 https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/00447/ ダイキン、東⼤から研究者100⼈ AIや化学で技術⾰新, ⽇本経済新聞 電⼦版2020/2/22 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55897370Q0A220C2962M00/ ダイキン工業、オープンイノベーション部門に知財機能を設置し、調査・出願の側面から協創活動を円滑化, 特許庁 経営における知的財産戦略事例集P.34(2019) https://www.jpo.go.jp/support/example/document/keiei_senryaku_2019/keiei_chizaisenryaku.pdf 河原克己(ダイキン工業株式会社 テクノロジー・イノベーションセンター 副センター長), ダイキン工業における協創イノベーションの取組み, 2019年4月5日未来投資会議 構造改革徹底推進会合「企業関連制度・産業構造改革・イノベーション」会合 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/innov/dai4/siryou5.pdf ダイキン工業は2018年12月に東京大学と産学連携協定を結びました。今後、社会で重要性が増す「空気の価値化」を軸にイノベーションを生みだすことを目指します。研究者の相互派遣や、東大発スタートアップ企業との協業を加速。10年間で100億円規模の研究資金の提供もします。自前主義を脱却し、外部の異質な人材と新しい価値を創造するため、これまでの産学連携ではあまり例を見ない大胆な大規模人材交流の手法など、連携協定の内容を聞きます。 ダイキン工業 テクノロジー・イノベーションセンター 副センター長 河原 克己, 「ダイキン×東京大学 産学協創“空気の価値化”でイノベーション創造」, シリーズESG #17, 放送日時2019年3月20日(水) 08:29-08:40 https://markets.nikkei-cnbc.co.jp/watch/vod/22930 下記は、東京大学側の資料です。 大学の役割を拡張し、 変革の原動力とするには ~大学改革の拡大・加速~ 2020.2.21 国立大学の戦略的経営実現 に向けた検討会議(第1回)東京大学総長 五神 真 https://www.mext.go.jp/content/20200226-mxt_hojinka-000005220_6.pdf また、ダイキン工業は、オープン領域と下地球温暖化への影響を低減する基本技術の特許を無償開放し、グローバルに技術を普及して、市場を拡大するとともに、クローズ領域の競争力のある特許で競争力を確保して販売台数を拡大しています。 特許庁 経営戦略を成功に導く知財戦略【実践事例集】, p40(2020) https://www.jpo.go.jp/support/example/document/chizai_senryaku_2020/all.pdf 王子ホールディングスは、2012年に会社名(商号)を「王子製紙」から「王子ホールディングス」へ変え、需要の激減が続く製紙業から大胆な事業構造転換を図っています。そのイノベーションの中核になっているのがイノベーション推進本部で、横⼭勝専務グループ経営委員がイノベーション推進本部⻑を務められ、製紙業で培ったコアコンピタンスを軸に「オンリーワン」の技術開発を進めています。
横山さんは、松下電工で研究開発25年され、松下電工などで知財部長を務められ、その後、2012年に王子製紙に入社され知財部長に就任されました。その後、研究開発本部長を兼務され、研究開発本部をイノベーション推進本部に名称変更、王子グループのイノベーションを推進されています。 同じ業界の知財畑ということで、業界の特許委員会で年に数回いろいろな話をさせていただきました。 印象的だったのは、横山さんが、新素材として期待されているセルロースナノファイバーの研究開発を1年間ストップしたときです。確か「横並びの研究開発をやっているならばやめてしまおう、先行している他社にセルロースナノファイバーの開発は任せればよい。」ということだったと記憶していますが、大丈夫かなあと思ったものです。1年後、横山さんはセルロースナノファイバー開発の推進者として振舞います。「オンリーワン」の技術だからと。横山さんに「オンリーワン」の技術であることを示した王子グループの開発の方々、それを見極めた横山さんの眼力には感服しました。その後、森林資源からアンメットメディカルニーズにこたえる医薬品の開発に乗り出してオンリーワンの世界を着実に広げています。 この中心に知財部が存在していて、王子HDの知財活動も目に見えて変化しています。昔からの知財部員が少数派で転職組が多数派でどうなることかと思っていたら、着実に成果をだしていることがわかります。 そのあたり、一部が垣間見られるのが、大阪大学ナノキャリアアップ特論での「企業におけるイノベーションの創造」、及び、知財管理の「企業におけるイノベーションの重要性」です。 横山勝, 企業におけるイノベーションの創造, 大阪大学ナノキャリアアップ特論(2020.8) http://www.insd.osaka-u.ac.jp/nano/R2careerup/20200731_yokoyama.pdf 横山勝, 企業におけるイノベーションの重要性, 知財管理, 69, 10, 1341-1342 (2019) http://www.jipa.or.jp/kaiin/kikansi/honbun/2019_10_1341.pdf また、イノベーション推進本部が媒介し、営業、研究、工場まで、横串を通して組織が融合する組織変革が全社で進んでいることも特筆すべきでしょう。 岡田達也, 王⼦HD、300⼈のハブ組織で⾰新⽣む, 日経ビジネス, 2020年9月25日 https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00114/00081/ 花王は、2021年1月1日付けで、長谷部佳宏・代表取締役専務執行役員が新社長に就任すると発表しました。
長谷部佳宏次期社長は、グローバル知財戦略フォーラム2020で、「ESG経営を加速する共創イノベーションと知財戦略」という題で講演しています。パナソニック、Preferred Networks、富士フイルムとの事例を紹介されていました。特に富士フイルムとの事例は、圧巻でした。 長谷部 佳宏 ESG経営を加速する共創イノベーションと知財戦略 https://www.inpit.go.jp/content/100869490.pdf 同上報告書 https://www.inpit.go.jp/katsuyo/gippd/forumkokunai/forum_kokunai2020.pdf 富士フイルム側からの紹介です。 花王と富士フイルムの共創から生まれた新技術とは? https://www.facebook.com/watch/?v=1775690755785909 http://brand.fujifilm.co.jp/aquarium/case06.html 昨年12月の花王の「イノベーション」を生み出す組織のつくり方に関する長谷部氏の講演の動画は、人事担当者向けに話されたものですが、一見の価値ありです。 2019.12.05長谷部 佳宏 花王の「イノベーション」を生み出す組織のつくり方 https://globis.jp/article/7351 https://www.youtube.com/watch?v=9h3JpW4g25U 花王の「イノベーション」を生み出す組織のつくり方 長谷部佳宏 https://www.slideshare.net/murachef/ss-202999693?from_action=save 花王「マトリックス運営」に学ぶ、イノベーターを生む組織のつくり方 https://www.kao.com/jp/kaonokao/media/f20190524/ 花王のおオープンイノベーションに関しては、下記も参考になります。 花王のオープンイノベーションで、技術と消費者ニーズは一貫して融合する https://beautytech.jp/n/n994328bb6f2c 順天堂大学 ×花王株式会社 テーマ「健康を科学する」のもと長いスパンの基礎研究を志向し「技術説明会」等で互いに行き来して研究課題を模索、各組織を熟知した双方の窓口が最適なマッチングを行う 経済産業省 産業技術環境局 大学連携推進室, 「組織」対「組織」の本格的な産学連携構築プロセス実例集 https://www.meti.go.jp/press/2019/07/20190719007/20190719007-1.pdf 花王の知財に関しては下記が参考になります。 知的財産, 花王サステナビリティ データブック 2020 https://www.kao.com/content/dam/sites/kao/www-kao-com/jp/ja/corporate/sustainability/pdf/sus-db-2020-07.pdf “研究・事業戦略と共創する”花王の知財教育 http://www.tokugikon.jp/gikonshi/295/295tokusyu3.pdf 9月28日にWEBで行われた「中国知的財産制度の転換点について」と題する、林達劉グループ北京魏啓学法律事務所所長弁護士・弁理士魏啓学(Chixue WEI)先生の講演を視聴しました。
海外からの講義も、WEBで聞くことが今後は標準になるのかもしれません。 昨年も話された内容(※1参照)ですが、最新版になっています。 ※1:「中国知的財産制度の転換点について」, 第3回「国際特許シンポジウム」日本、韓国、中国、欧州、米国における最新の特許等関連情報 2019年12月 https://www.fukamipat.gr.jp/wp/wp-content/uploads/2019/12/29abd25a8edf135c8b02bc3025d59a78.pdf 以下、内容メモです。 新型コロナウイルスの感染拡大によって、2020年1QのGDP成長率が前年比-6.8%というマイナス成長を記録していた中国経済はV字回復を遂げてきた。 2020年1月~6月の実績は、特許(68.3万、同期比5%増)、実用新案(127.2万、同期比2.6%増)、意匠(32.9万、同期比3.5%減)で、特許、実用新案の出願は増加している。 2020年1月~6月、PCT出願の受理件数は前年同期比22.6%増の2.95万件であった。 (2019年同期:2.4万件)中国市場主体の知的財産権の海外における配置意識が向上している。外国出願人にとって中国市場の魅力が高まっている。 不服審判及び無効審判の結審件数が顕著に増加した。審査スピードが加速している。 2020年1月~8月の中国商標出願件数は603万件で、前年同期比20.98%増加した。2020年8月末までの中国有効な商標登録件数は2823万件である。 1.量から質へ 特・実・意の出願件数連続9年世界トップ、商標出願件数連続18年世界トップ。研究開発能力及びビジネス能力とは一致しているのか?問題視されている。
① 特許法の改正 2020年内に改正完了の見込み? ② 特許運営プラットフォームを設立して、特許譲渡及び実施を促進する。 ③国有企業に対して社内知財権ライセンス、譲渡制度に関する体制作りを指導し、促進する。 ④ 大学、国有研究機関に対して知財権実施、ライセンス、譲渡について、指導し、促進する。 ⑤ 知財権に基づく融資などを促進する。 3.司法原則及び裁判基準、審査基準を統一 民法典の立法(2021年1月1日から実施) 懲罰的損害賠償の適用範囲が拡大される 当事者の約定が尊重される 各専門法律法規・司法解釈などの法改正が期待される 4、裁判所の調整 ーー技術性の高い知財事件の二審は最高裁判所より管轄 5、特許、商標、地理的標識の統一管理 アフターコロナ時代に日本企業へのアドバイス(略) 元内閣官房知財推進事務局長の荒井寿光さんが、「Science Portal China」(サイエンスポータル・チャイナ)で、2020年8月24日に、「知財強国に向かって着々と進む中国―中国の知財の最新動向」を書かれています。非常な危機感、参考になります。 現在、世界で知財戦略を最も強力に進めているのは中国だ。これは日本企業にも大きな影響を与えるため、中国の最新の知財状況について制度のみならず、企業・大学・地方を含め、その運用実態を的確に把握して対応策を考える必要がある。 日本はもう一度、日本人や日本企業の創造的能力を発揮し、国際競争力を高め、文明の進歩に貢献するため、科学技術振興戦略や知財戦略を作り直す必要がある。 1 強化された知財の国際競争力 (1)国際特許出願(PCT)件数が米国を抜いて世界一に (2)第5世代通信システム5Gの特許を巡る争い (3)中国の科学技術論文数が世界一に (4)国際特許をベースに国際標準を狙う 2 米中知財紛争がエスカレート (1)米中が第1段階の経済貿易協定に調印 (2)コロナ紛争で米中関係悪化 (3)米国はWIPO事務局長選挙で中国人候補を阻止 (4)米国は中国の在ヒューストン総領事館を閉鎖 3 中国は引き続き世界一の知財大国 (1)特許出願件数は日本の約5倍 (2)中国の総知財件数は日本の約20倍 (3)中国の専利集約型産業の付加価値は対GDP比11.6%と高い 4 知財強国路線を着々と推進 (1)李克強総理が知財保護の強化を強調 (2)2020年版知財強国推進計画 (3)知財の信用監視プログラムの整備へ 5 知財関連法律の制定・改正が進む (1)中国初の民法典成立、知的財産権について概括的に規定 (2)外商投資法の施行 (3)専利法改正案の審議 6 コロナ対策に知財部局も動員 (1)国家知識産権局の施策 (2)地方政府の知識産権局の施策 (3)裁判、執行活動の円滑化 7 知財裁判の強化 (1)知的財産権の司法保護の強化 (2)全人代での活動報告 8 地方政府は知財行政で重要な役割を果たす (1)出願奨励で大きな成果 (2)質権設定融資の活用 9 大学は知財の実用化推進へ (1)知財は量から質へ、そして実用化推進へ (2)科学技術部、知財と研究成果の財産権取引センターを整備 10 中国の第14次5カ年計画と日本の対応 (1)2020年上半期の出願がコロナ禍でも増加 (2)オンライン化が加速 (3)米中摩擦の激化予想と中国の対抗 (4)第14次5カ年計画への準備 (5)求められる日本の対応 荒井寿光, 知財強国に向かって着々と進む中国―中国の知財の最新動向, 「Science Portal China」(サイエンスポータル・チャイナ), 2020年8月24日 https://spc.jst.go.jp/experiences/howdojp/howdojp_2002.html 5月15日、国家知識産権局は、国務院知的財産戦略実施業務部局間連席会議弁公室が、中央政府、最高人民法院、最高人民検察院、及びその他の国務院組織に向けた「2020年国家知的財産権戦略の進展における知的財産権強国建設推進計画の加速」が公布され執行するべきとの通知( 国知戦聯弁〔2020〕5号)が5月13日に発行されたことを公示しました。 グーグル翻訳でも大体の意味はわかります。 http://www.cnipa.gov.cn/gztz/1148642.htm 9月28日、経済産業省、特許庁から、審査の質に対するユーザーの肯定的な評価が向上したことが発表されました-令和2年度審査の質についてのユーザー評価調査の結果で、『特許・意匠・商標のいずれも、「審査全般の質」の評価は、肯定的な評価の割合(5段階評価の4以上)が昨年度より増加し、重点的に取り組んでいる項目についても、肯定的な評価の割合が増加。「電話、面接等における審査官とのコミュニケーション」の評価について、特許・意匠・商標のいずれも、5段階評価の3以上の評価の割合は、95%以上を占めた。』とのことです。
https://www.meti.go.jp/press/2020/09/20200928001/20200928001.html 特許庁の不断の努力の賜でしょう。 一方で、進歩性のハードルが低いという指摘もあります。 産業界からは、現在の審査、特に進歩性判断は「甘い」のではないかとの声が上がっており※1、 弁理士からも「最近は進歩性のハードルが低い」という指摘があり※2、 元知財高裁所長からは、「今度は「おお甘」の時代が始まり、今日も続いている。すなわち、それなりの相違点があれば、好適な引用例を提示できない限り、進歩性を否定できない時代に入り、しかも、安定しており、現在も続いている。」との指摘がされています※3。 また、2009年以降の特許査定率が上昇については、一般的には、企業の出願戦略の量から質への変化に伴い出願が絞られたこと、特許庁のユーザーフレンドリーな施策により、出願人・代理人と審査官の良好なコミュニケーションが図られるようになったことなどによると理解されていますが、「迅速性を優先するあまり、他国を遙かにしのぐ効率性を追求したことや、急増する外国語文献への先行技術調査が不十分であったことも、その一因と考えられます。」という指摘もあります※4。 特許査定率の上昇・高止まりについては、知財協での調査※5では、「調査の結果、日本の特許は過去に比べて「通りやすくなっている」ものの、他の審理等との乖離は少なく、安定的な権利が付与されていることがわかった。」とされており、弁理士会の検討※6では、「単に日本特許庁の全体の特許査定率が高いことをもって日本特許庁の審査が甘いと判断することはできないと考える。日本特許庁の特許査定率が欧州及び米国よりも高くなっている要因は複数のものが組み合わされている」としています。 個人的には、確かに無効理由を含んでいる特許が散見されるのは確かですが、一定のルールに従って、安定的にシステムが運用されている現状は、20年前の状態と比べるとはるかに良くなっていると感じています。 ※1「最近、様々な企業と話しているとよく聞く話なので、この場を通じて申し上げたいと思っています。特許庁の審査が他国に比べて甘いのではないかという御意見を最近よく聞きます。日本で認められた特許が他の国で拒絶されているようなケースが結構出てきていますという意見も聞くところであります。」 一般社団法人日本経済団体連合会プレゼンテーション資料, 産業構造審議会知的財産分科会第26回特許制度小委員会議事録 https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyokouzou/shousai/tokkyo_shoi/document/index/newtokkyo_026.pdf ※1「2009年以降、特許査定率が上昇・高止まりし、産業界からは、現在の審査、特に進歩性判断は「甘い」のではないかとの声が上がっている。・・・」 日本知的財産協会特許第1委員会第3小委員会/特許第2委員会第2小委員会, 近年の特許審査は「甘い」のか?, 知財管理, 70巻9号P.1351(2020年) ※2「最近は進歩性のハードルが低く、つまらない特許が成立しているケースも散見されます。もう少し、特許の審査は厳しくても良いのかもしれません。」 知的財産と調査, 20200928 https://ameblo.jp/123search/entry-12628046188.html ※3「進歩性の判断基準は、2000年前後から大きな変動があり、私が知財の世界に入った2003年から2004年当時は、進歩性に対し、特許庁も東京高裁も、極めて厳しく判断する時代だった。私は、当初、それを是認していたわけであるが、2005年に入ると、裁判官自身が、知財協の役員その他の知財関係者から、直接、ご叱正を頂いた。やがて、知財の専門家や、日ごろ尊敬していた法曹からも、そう言われるようになると、さすがに、受け入れざるを得なくなった。 その後、今度は「おお甘」の時代が始まり、今日も続いている。すなわち、それなりの相違点があれば、好適な引用例を提示できない限り、進歩性を否定できない時代に入り、しかも、安定しており、現在も続いている。」 塚原朋一, 特許の進歩性判断の予測可能性について, ソウエイヴォイス vol.83 AUGUST P2 2018 https://www.soei.com/wordpress/wp-content/uploads/2018/08/83随想.pdf ※4「一方、我が国においても、特許率がこの10年で20ポイント以上増加しています(図12)。上述の通り、我が国企業の特許出願構造が、量から質に転換したことが、その主因であるものの、中には、先行技術調査が十分になされなかったケースも考えられます。迅速性を優先するあまり、他国を遙かにしのぐ効率性を追求したことや、急増する外国語文献(図13)への先行技術調査が不十分であったことも、その一因と考えられます。」 澤井智毅, 10年目標の実現と今後の特許審査の基本方針, tokugikon, . no.273, P5 (2014) http://www.tokugikon.jp/gikonshi/273/273tokusyu2.pdf ※5「2009年以降、特許査定率が上昇・高止まりし、産業界からは、現在の審査、特に進歩性判断は「甘い」のではないかとの声が上がっている。しかし、その根拠については必ずしも明確ではない。「甘い」という表現は、相対的なものであって、何らかの基準に照らしての評価だと考えられること、また、前述の産業界の発言において「甘い」という表現は、否定的な意味合いで使われていることから、本稿では、「審査が甘い」とは、「審査が、他の審理等よりも特許が通りやすい形で乖離し、何らかの不具合が生じていること」と定義し、調査を行った。調査の結果、日本の特許は過去に比べて「通りやすくなっている」ものの、他の審理等との乖離は少なく、安定的な権利が付与されていることがわかった。なお、本稿の調査範囲内では、「甘い」に含まれる否定的な意味合いの実態を掴めなかったため、他国における特許審査等、本調査の範囲外とした基準との比較が今後の検討課題と考える。」 日本知的財産協会特許第1委員会第3小委員会/特許第2委員会第2小委員会, 近年の特許審査は「甘い」のか?, 知財管理, 70巻9号P.1351(2020年) http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/mokuji/mokujinew.html ※6「近年,日本の特許査定率は欧州及び米国よりも高い。そこで,その高い特許査定率の要因について検討した。特定の技術分野に限定して日欧米の審査状況を分析した結果,技術分野ごとの日欧米の特許査定率は,日欧米の全体の特許査定率とは比例しておらず,寧ろ逆転しているものもあった。従って,単に日本特許庁の全体の特許査定率が高いことをもって日本特許庁の審査が甘いと判断することはできないと考える。 日本特許庁の特許査定率が欧州及び米国よりも高くなっている要因は複数のものが組み合わされているようであり,例えば「技術分野ごとの日欧米の出願割合と特許査定率の相違」,「対象発明の事業化の中止決定の時期」,「欧州での高額な維持年金」,「三庁の審査プラクティスの相違」,「米国の最も広い合理的解釈(BRI)基準」,「三庁の審査の順番」,「日本での審査官面接の積極的な利用」等が挙げられた。」 日本弁理士会 令和元年度 特許委員会 第 1 部会, 近年の日本の特許査定率に関する考察Vol. 73 No. 5, P3 パテント (2020) https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3537 |
著者萬秀憲 アーカイブ
September 2025
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