知財実務オンライン第18回は、⼤野総合法律事務所パートナー弁理士の森⽥裕氏による「バイオテクノロジー分野において、米国の特許出願の分析から分かったイノベーション保護に有効と考えられた特許」でした。
⽶ホワイトヘッド研究所のiPS細胞における特許戦略の分析から、バイオテクノロジー分野においては、これまでとは異なる特許戦略が必須として、下記の提言を行っているとのことです。 ●社会還元のために必須の特許 ●低い効果を狙った発明の戦略的権利化 ●分割出願戦略の有効性(最重要特許について) ●ビジネス指向で考える特許戦略 ●早期からの特許戦略と研究戦略への提言 高石秀樹弁護士が「※1:12:00に、オフレコと言いながら有用な発言あり。」と書かれていた部分がアーカイブ動画では削除されていませんでしたが、オフレコの資料1枚分がそっくり削除されていました。非常に共感するもので、オフレコで残念でした。 「高度な発明は特許制度になじまない 権利範囲を狭めてしまう誤解とは」から引用 森田氏が注力しているのが、海外の知財戦略の調査だ。公開された特許を分析することで、戦略が見えてくるという。 「いちばん興味深かったのは、米国のアカデミアでiPS細胞を製造するための中心技術の特許が成立していたこと。iPS細胞を開発し、ノーベル賞を獲得したのは山中伸弥教授なのに、iPS細胞の発見をしていない人がより広い特許を権利化できているのです」(森田氏) 米国のアカデミアが取得している特許は、細胞の初期化因子であるOct4を発現した初代体細胞を権利化したものだという。iPS細胞が発見される以前に出願されたもので、誰も活用しておらず、知られていなかった出願だが、Oct4はiPS細胞の製造において、ほぼすべての手法に必要となる。 一方で、京都大学iPS細胞研究所のiPS細胞関連技術の特許は、ほかの因子も多数組み合わせて達成する発明としており、権利の範囲が狭くなってしまっているそうだ。 この事例から浮かび上がるのは、研究成果をそのまま出願するのではなく、特許戦略になじむ形に加工してから出願したほうが権利として有利に働く、ということだ。森田氏は、特許の権利範囲が狭くなってしまう原因として、特許制度への誤解があると指摘する。 「高度な技術でないと特許にはならないと信じてられていますが、じつは高度な発明は、あまり特許制度になじまないのです」 一般的に、高度な発明とされるものは、いろいろな技術を組み合わせ、積み上げて達するものだ。その技術がひとつでも欠けると発明ではなくなる。その結果、権利の範囲が狭くなってしまう。 大学やベンチャーの要素技術の場合、製薬会社に技術導出して製品化するケースが多い。まだ具体的な製品が決まっていない段階で、狭い権利範囲の特許を出願してしまうのは不利に働いてしまう場合がある。一方で、研究成果の効果がそれほど高くなくても、特許性が得られる場合が存在する。 「特許制度では、効果よりも“進歩性”が重要。必ずしも効果が高くなくても、容易に思いつかないものであれば、特許になる。他者が思いつかないようなもので、広くとれるものを狙っていくことこそが、戦略です」 膨大な期間と知力、あらゆる資産を投入して、ようやく得られた研究成果を効果的に保護するには、研究戦略とは別次元で、知財戦略を立てていく必要があるのだ。 https://ipbase.go.jp/special/d5868d5d968b7c10e60d8be815f5723c5444ab84.php バイオ系スタートアップは「発明の低性能化」を⽬指すべき 最先端特許戦略ディスカッション、2020年03⽉27⽇ 09時30分更新、STARTUP×知財戦略 第62回「RINK FESTIVAL 2020」セッションレポート ⽂● 松下典⼦ 編集●北島幹雄/ASCII STARTUP 撮影●平原克彦 https://ascii.jp/elem/000/001/908/1908982/ 森田弁理士の特許“攻防”戦略 https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/032800019/
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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