王子ホールディングスは、2012年に会社名(商号)を「王子製紙」から「王子ホールディングス」へ変え、需要の激減が続く製紙業から大胆な事業構造転換を図っています。そのイノベーションの中核になっているのがイノベーション推進本部で、横⼭勝専務グループ経営委員がイノベーション推進本部⻑を務められ、製紙業で培ったコアコンピタンスを軸に「オンリーワン」の技術開発を進めています。
横山さんは、松下電工で研究開発25年され、松下電工などで知財部長を務められ、その後、2012年に王子製紙に入社され知財部長に就任されました。その後、研究開発本部長を兼務され、研究開発本部をイノベーション推進本部に名称変更、王子グループのイノベーションを推進されています。 同じ業界の知財畑ということで、業界の特許委員会で年に数回いろいろな話をさせていただきました。 印象的だったのは、横山さんが、新素材として期待されているセルロースナノファイバーの研究開発を1年間ストップしたときです。確か「横並びの研究開発をやっているならばやめてしまおう、先行している他社にセルロースナノファイバーの開発は任せればよい。」ということだったと記憶していますが、大丈夫かなあと思ったものです。1年後、横山さんはセルロースナノファイバー開発の推進者として振舞います。「オンリーワン」の技術だからと。横山さんに「オンリーワン」の技術であることを示した王子グループの開発の方々、それを見極めた横山さんの眼力には感服しました。その後、森林資源からアンメットメディカルニーズにこたえる医薬品の開発に乗り出してオンリーワンの世界を着実に広げています。 この中心に知財部が存在していて、王子HDの知財活動も目に見えて変化しています。昔からの知財部員が少数派で転職組が多数派でどうなることかと思っていたら、着実に成果をだしていることがわかります。 そのあたり、一部が垣間見られるのが、大阪大学ナノキャリアアップ特論での「企業におけるイノベーションの創造」、及び、知財管理の「企業におけるイノベーションの重要性」です。 横山勝, 企業におけるイノベーションの創造, 大阪大学ナノキャリアアップ特論(2020.8) http://www.insd.osaka-u.ac.jp/nano/R2careerup/20200731_yokoyama.pdf 横山勝, 企業におけるイノベーションの重要性, 知財管理, 69, 10, 1341-1342 (2019) http://www.jipa.or.jp/kaiin/kikansi/honbun/2019_10_1341.pdf また、イノベーション推進本部が媒介し、営業、研究、工場まで、横串を通して組織が融合する組織変革が全社で進んでいることも特筆すべきでしょう。 岡田達也, 王⼦HD、300⼈のハブ組織で⾰新⽣む, 日経ビジネス, 2020年9月25日 https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00114/00081/
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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