IBMは、特許取得で圧倒的な取得数を保持して首位を譲っていません。
そして、バックグラウンドIPを保有したうえで共同研究を進めアライアンスを前提とした出願や特許のオープン化の知財戦略をとっています。 IBMはうまくいっていない、という評価もあるようですが、事業の大胆な組み換え、特許をNPEに売却するなど、後からみるとこういう戦略だったのか、という解説本が現れることになりそうです。 國光 健一/Kenichi Kunimitsu デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー パートナー デジタルヘルス領域における特許出願と知財戦略の最新動向 異業種の参入が進むヘルスケア業界における新たな知財戦略のあり方 https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/strategy/articles/ipa/digital-health.html 主要プレイヤー(IBM)の知財戦略 主要プレイヤーの動向の例としてIBMの例を取り上げる。IBMは2015年にTeva Pharmaceuticalとデジタルヘルス領域における提携を発表、注力領域のひとつとして、既存医薬品の中から新規疾患へ適用可能な治療薬を探索する技術である「ドラッグ・リポジショニング」を挙げていた。 このアライアンスの成果としてIBMとTevaは2018年に、多剤併用する場合において、既存薬の新規疾患への適用可能性を評価する技術につき共同出願を行っている。 注目すべき点として、IBMはアライアンスよりも前に、類似の技術を単独で特許出願しているのである。具体的には、2014年から2017年にかけてIBMは、単剤の場合において、既存薬の新規疾患への適用可能性を評価する技術についての特許出願を5件行っている。これはIT業界においてよく行われる「バックグラウンドIP」の確保と呼ばれる方法である。 IBMはこのバックグラウンドIPを保有することにより、単剤での評価技術については自社固有の技術と主張することが可能になるため、共同開発成果の帰属の按分に関して一定の権利を確保することが可能となる。また単剤での評価技術についてはIBMの権利で取り扱うことができるため、IBMはこのIPを利用して類似したソリューションを他クライアントに展開することが可能になる。 IT企業は事業保護だけではなく、アライアンスを前提とした出願や特許のオープン化など、多様な知財戦略に長けているという強みがある。こうした新しい知財戦略が、今後デジタルヘルス領域ではスタンダードになってゆくと考えられる。製薬会社や医療機器メーカーがデジタルヘルス業界において発展するためには、こうした業界の特性を理解し、社内体制や知財戦略をアップデートしてゆくことが必要であると考えられる。 IBMがレガシーインフラ事業をスピンアウト、クラウド事業に全⾯的に舵を切る 2020年10月11日 by Ron Miller 翻訳:TechCrunch Japan https://jp.techcrunch.com/2020/10/11/2020-10-08-as-ibm-spins-out-legacy-infrastructure-management-biz-ceo-goes-all-in-on-the-cloud/ IBMがインフラサービス事業を2兆円規模の独立事業として分社化する計画を発表 2020年10月10日 by Ingrid Lunden (翻訳:滑川海彦@Facebook) https://jp.techcrunch.com/2020/10/10/2020-10-08-ibm-plans-to-spin-off-infrastructure-services-as-a-separate-19b-business/ 野⼝剛史, 戦略の変化︖︕IBMが特許をNPEに売却か︖ Open Legal Community https://openlegalcommunity.com/ibm-may-have-sold-patents-to-npe/ IBMはとてつもない特許数を保持していることで有名ですが、そのような豊富な資産の活⽤の⼀環として特許の売却も積極的に⾏っています。今まではサービスや製品を提供している運営会社(operating company)にのみ売却を⾏っていましたが、最新の取引ではどうやら売却先はNPEのようです。 IBMの特許分析 アッシュ(某企業の知財部員) 2020/01/20 17:14 https://note.com/zshiki/n/n30f3cbc44e3b US No1の称号は、外国企業に渡さないということでしょうか︖US以外への出願はそれほどでもないのでファミリー特許数では、今回2位のサムスン電⼦にダブルスコア近くだった記憶もありますが、IBMのアメリカでの出願は今年もトップでした。 ⾺場錬成, ⼤丈夫か⽇本企業の特許戦略, 潮流 (No.123), 2020.10.07 https://www.hatsumei.co.jp/column/index.php?a=column_detail&id=359 コンピュータ時代の覇者IBMは、依然として特許取得で圧倒的な取得数を保持して首位を譲っていない。追いすがるのが韓国のサムスン電子である。2010年の勢いでは首位を奪還するのは時間の問題だと思っていたが、そこからのIBMの底力はすごいもので、首位を譲らず今では差は開く一方である。 IBMは取得した膨大な特許群を一部開放して、自社の企業戦略に役立てようと方針転換した。しかしそれがうまくいって業績を上げたようには見えない。 上野 剛史 日本アイ・ビー・エム株式会社 理事・知的財産部長, データが価値を生み出す時代における、ビジネス変革とそれを支える知財・データ戦略 グローバル知財戦略フォーラム2018 https://www.inpit.go.jp/katsuyo/gippd/forumkokunai/forum_kokunai000030.pdf 上野剛史, グローバルな事業活動に貢献するIBM知財戦略, INPIT グローバル知財戦略フォーラム2015, January 26, 2015 https://www.inpit.go.jp/content/100639464.pdf 「知財管理」誌 Vol.64 記事詳細 掲載巻(発行年) / 号 / 頁 64巻(2014年) / 4号 / 487頁 論文区分 特集(知財パラダイムシフト) 論文名 IBMの知的財産戦略-ビジネスへの貢献- 著者 上野剛史 抄録 経営に資する知財ということが唱えられてから久しいが、具体的にどのように資するのか、企業知財部門としては常に追求し続ける命題であろう。知財戦略の巧拙が企業業績に大きな影響を与えるようになり、ときには会社の存亡にも関わりかねない。IBMは、21年間にわたり米国特許取得件数トップを続け、約10億ドルの知財収入を生み出し、オープンな知財活用にも積極的に取り組んでいる。このような実績を上げるためにも、IBMでは、イノベーションの文化を醸成し、知的財産部門において発明者が生み出したイノベーションを集中管理とグローバルな分散オペレーションにより戦略的・効率的に保護し、知的財産の価値を最大化するように活用しており、これらを通じて年間1,000億ドルにおよぶIBMビジネスに貢献している。知的財産が企業戦略の一環として明確に位置づけられているものであり、その有機的な仕組を紹介する。 http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/syoroku/64/4_487.html http://www.jipa.or.jp/kaiin/kikansi/honbun/2014_04_487.pdf 竹内誠也,上野剛史, イノベーション推進のための知財戦略, 〈日本知財学会誌〉Vol.5 No.2 ― 2008 : 17- 28 https://www.ipaj.org/bulletin/pdfs/JIPAJ5-2PDF/5-2_p017-028.pdf
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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