11月29日に、大阪弁護士会の2021年知的財産シンポジウム「発明の進歩性に関する裁判例の動向と今後の課題~近時の最高裁判例と知財高裁大合議判決を踏まえて~」がありました。
「知財訴訟における進歩性判断の手法について~近時の裁判例を踏まえて~」と題する清水節弁護士(元・知的財産高等裁判所長)の基調講演は、進歩性判断の基本手順、拒絶査定審決や特許無効審決の取消訴訟における審決取消事由としての主張(侵害訴訟における無効の抗弁への反論も同様) を具体例についても説明され、化合物の医薬用途に係る特許発明の進歩性の有無に関し当該特許発明の効果が予測できない顕著なものであることを否定した原審の判断に違法があるとされた事例として「局所的眼科用処方物事件」最高裁判決(最三判R1.8.27)について説明されました。裁判所が進歩性をどう判断しているか、わかりやすい説明でした。 はじめに 第1 進歩性(非容易推考性)判断の基本手順 第2 具体的主張 第3 「局所的眼科用処方物事件」最高裁判決(最三判R1.8.27)について 第4 権利行使の場面との調整 パネルディスカッションでは、下記のテーマでディスカッションが行われました。 序論-進歩性の判断の傾向と裁判所の判決の影響 進歩性の判断枠組と引用発明の認定(ピリミジン誘導体事件の知財高裁大合議判決を中心に) 進歩性判断における課題の位置づけ 顕著な効果の法的な位置づけと判断基準(局所的眼科用処方物事件の最高裁判決を中心に) 公然実施発明に基づく進歩性判断 印象に残ったのは、正確性には欠けますが、かきのようなやり取りのところでした。 小松陽一郎弁護士の質問「主引用例に何を持ってくるのかというとき、一致点の多い方を選ぶ、課題の共通性のある方を選ぶ、裁く法はどちらが良いという感覚を持っておられるのか」 清水弁護士「特許庁は技術課題に共通性があるのを優先している、相違点はひとつひとつつぶしていく、それで良いのかなと思っている」、杉浦部総括判事「相違点がいっぱい並んでいると進歩性有りという方向にいきやすい、課題の共通性同一性があると本件発明と主引用発明が近づいていくということで、そのあたりをこうりょしてほしい。」、青木弁理士「引用文献を少なくしたいので構成の違いの少ない方をとる」、小松弁護士「構成の違いの数が少ない方が良いと思っている」 岩坪弁護士の質問「令和元年の最高裁判決が審査基準に影響しているか」 清水弁護士「判決に基づいて審査基準を見直すかどうかの検討委員会があり、変えた方が良いのではと言ったが、審査基準を変えたくなかったよう。」前田教授「審査基準は多義的に読めるので変えた方が良いと言ったが変わらなかった。」青木弁理士「今の審査基準で最高裁判決は取り入れているというのが特許庁の見解」 2021年大阪弁護士会 知的財産シンポジウム 発明の進歩性に関する裁判例の動向と今後の課題~近時の最高裁判例と知財高裁大合議判決を踏まえて~2021.11.29 場所:大阪弁護士会館2階ホール (オンライン同時配信) https://www.osakaben.or.jp/event/2021/2021_1129_03.php 発明の進歩性は、特許要件の中でも最も重要な要件の1つであり、特許権侵害訴訟や審決取消訴訟においても、争点となることが多い事項です。また、日々の特許出願に際して も、進歩性の有無の判断に迷うケースは多いのではないかと思います。 進歩性に関しては、ピリミジン事件の知財高裁大合議判決(知財高判平成30年4月13日、平成28年(行ケ)10182号、10184号)において、進歩性の判断枠組や引用発明の認定に関する一定の指針が示されました。また、「ヒトにおけるアレルギー性眼疾患を処置するための点眼剤」事件の最高裁判決(最判令和元年8月27日、平成30年(行ヒ)第69号)では、発明の顕著な効果に関する最高裁の判断が示されており、注目を集めています。 本シンポジウムでは、上記の知財高裁大合議判決の裁判長をされた清水節弁護士(元・知的財産高等裁判所長)に基調講演をしていただいた後、後半のパネルディスカッションでは、弁護士、裁判官、学者の先生、企業の知財担当者も交えて、発明の進歩性に関する裁判例の動向と今後の課題に関し、議論をさせていただきます。 第1部 基調講演 清水 節(弁護士、元・知的財産高等裁判所長) 第2部 パネルディスカッション パネリスト: 清水 節(弁護士、元・知的財産高等裁判所長) 杉浦 正樹(大阪地方裁判所第26民事部(知的財産専門部)部総括判事) 前田 健(神戸大学大学院法学研究科 教授) 青木 潤(弁理士、積水ハウス株式会社) 重冨 貴光(大阪弁護士会会員 弁護士) 速見 禎祥(大阪弁護士会会員 弁護士) コーディネーター: 山田 威一郎(大阪弁護士会会員 弁護士) キックオフスピーカー: 冨田信雄、白波瀬悠美子、甲斐一真、佐野みず紀 (大阪弁護士会会員 弁護士)
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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