資料版商事法務に掲載された『改訂CGコードで新設された「知的財産への投資等」の「監督」・「開示」についての対応の考え方』には、知財戦略構築・実行を検証するためのKPI設定やガバナンス体制の構築をどう考えるか、について、様々な観点から、各社の統合報告書などからの例示をしながら、整理されていますので、非常に参考になりました。
『改訂CGコードで新設された「知的財産への投資等」の「監督」・「開示」についての対応の考え方』 資料版商事法務 (451):2021.10 p.16-50 著者:澁谷 展由氏, 知念 芳文氏 https://www.shojihomu.co.jp/p007 本稿の目的 改訂CGコードは知的財産に関していかなる対応を要請しているか 知財戦略構築・実行を検証するためのKPI設定やガバナンス体制の構築をどう考えるか
役員会・IRと知財部門の会議の構築およびその開催頻度の増加 社内表彰制度の導入または改訂 研究開発者(技術者)に対する知財教育 知財担当者に対するビジネス教育
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特許庁が、IPランドスケープを活用した知財経営の普及・定着に貢献することを目的として、10月25日から公開している「第2回IPランドスケープセミナー(無料)」の第1部 IPLの導入と実践に向けて(パネルディスカッション)【モデレータ】株式会社シクロ・ハイジア 代表取締役CEO 小林 誠 【パネリスト】株式会社ブリヂストン 知的財産部門 部門長 荒木 充 株式会社リコー 理事 プロフェッショナルサービス部 知的財産センター 所長 石島 尚 昭和電工株式会社 知的財産部長 続木 敏 の中の「株式会社リコーの取組について(11分43秒)」では、株式会社リコーにおけるIPランドスケープの取組と課題について紹介されています。事業の80%を占めるOA機器の需要が縮小しているなかでデジタルサービスの会社へと変貌する会社における知財部門の対応の在り方の好例です。
株式会社リコーの取組について https://ipeplat.inpit.go.jp/Elearning/View/Course/P_studyview2.aspx#no-back 画像事業(OAメーカー)からデジタルサービスの会社へというのが中期経営計画 画像事業では競合が明確で、自前主義だったので、特許戦略も競合に対する優位性を重視 デジタルサービスでは、事業ごとにステークホルダーやリコーの立ち位置が異なるので、特許戦略も、様々なビジネスに対して、ビジネスを展開する様々な国で、様々なステークホルダーとの、競争や協業の核となるイノベーションを知財化し活用 IPLの取り組みは、IPLチームと知財戦略チームの連携 リコーのIPLは、経営戦略・事業戦略を成功に導くことを目的として、 知財情報に加えて、マーケット情報、製品・技術情報等を多角的に分析し、自社•他社のポジション、動向を明らかにした上で、事業における“強みを構築する”、または、“弱みを補強する”ための具体的な知財戦略のオプションを提案し、事業戦略に組み込むこと 「攻めの知財」に道を開くIPランドスケープ IPLの取り組み コア技術の新たな用途の探索 未来予測への挑戦 これまでは、特許・論文の解析が中心。既に社内で着手していることの衷付けに留まることが多かった。(リコーのコア技術) 最近は、ベンチャー企業、科学研究費の解析を強化。今まで気付いていなかつに領域の示唆をデータから得られるようになってきている。(有望領域・事業機会の探索) 情報解析からイノベーション創出へ 研究開発部門と一体となったプロセスを構築中 リコーのIPランドスケープ 21/5/2021 https://yorozuipsc.com/blog/ip1839990 リコーでは、IPランドスケープを活用し、将来有望な事業の領域を提案するとともに、その事業領域での特許出願と権利化を強化し特許資産価値を向上させる取り組みを行っていて、新たな事業ごとに経験豊富な知財プロジェクトマネージャーを派遣しており、また知財本部内には当該事業の市場や参加者を全体俯瞰した知財解析情報を提供する知財情報解析チームを置いていて、両者は互いにコミュニケーションを取りながら IP ランドスケープを進めており、活動を通して開発部門や事業部門を初め経営企画部門にも IP ランドスケープが浸透しているようです。 その成果のひとつが、新世代の 360度カメラ「RICOH THETA」で、IP ランドスケープを活用し、組織の壁を突破し、新事業を創出した例のようで、注目です。 知的財産本部の知財情報解析チームでは、膨大な知的財産情報を、短時間で効率的に収集、整理、分析、加工し、知的財産以外の情報とも組み合わせてインテリジェンス化を行っており、これをもとに、知的財産戦略の立案や、事業部や経営層への提案を行うことで、知的財産価値の最大化を目指している。 【知的財産経営】硬直化する組織の壁を突破し、新事業を創出せよ https://newspicks.com/news/5629994/body/ 株式会社リコーと意見交換を行いました https://www.jpo.go.jp/news/ugoki/202103/032401.html 山内明「IP ランドスケープ実践事例集」190-201 頁(技術情報協会、2019 年) 知的財産への取り組み https://jp.ricoh.com/technology/rd/ip 特許庁が、IPランドスケープを活用した知財経営の普及・定着に貢献することを目的として、10月25日から公開している「第2回IPランドスケープセミナー(無料)」の第1部 IPLの導入と実践に向けて(パネルディスカッション)【モデレータ】株式会社シクロ・ハイジア 代表取締役CEO 小林 誠 【パネリスト】株式会社ブリヂストン 知的財産部門 部門長 荒木 充 株式会社リコー 理事 プロフェッショナルサービス部 知的財産センター 所長 石島 尚 昭和電工株式会社 知的財産部長 続木 敏 の中の「株式会社ブリヂストンの取組について(10分55秒)」では、株式会社ブリヂストンにおけるIPランドスケープの活用について紹介されています。
犬に喩えた話がユニークです。 https://ipeplat.inpit.go.jp/Elearning/View/Course/P_chapterView.aspx ブリヂストンでのI Pランドスケープとは?“自社や業界にはこんな特許があります”という可視化だけでなく、知財を組合せて使うと“こんな価値を生み出せそうですね”といかに価値に繋げるか、に数年かけて深化してきた。
外向きIPL:競合・業界の知財分析から自社の位置付けを把握 IPLと知財ミックス設計を軸とした事業貢献への流れ バリューチェーン全体をスコープ 自社/他社の強みから仮説を立てるIPランドスケープ BSグルーブ強み/DNAを意識して価値を生み出す知財ミックスの設計構築 経営が理解しやすい工夫とタイムリーなコミュニケーション 市場分析にIPLを活用、MaaS(乗り物のサービス化)特許出願の全体像を調査し、米国では配送や運転者支援への出願が多いが、日本や欧州では充電施設や駐車場などインフラ関連技術に注力していることを把握できた。 以前は、知財からの遠吠えだったのが、 Stepl まずはIPLをくわえて毎日事業部に入り込んでいく Step2 事業部を経由して経営に届くと知財コミュニケーションの土台ができる Step3 直接経営トップとのコミュニケーションできる Aug. 26 2021 知財投資・活用戦略で事業の競争力強化・持続的成長につなげる https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai2/siryou5.pdf ブリヂストンのIPランドスケープ 22/6/2021 https://yorozuipsc.com/blog/ip8178738 「モノからコトへの事業変革を支えるIPランドスケープ」と題して、ブリヂストンのIPランドスケープがIPジャーナル17号(2021年6月)に紹介されています。 「モノ」から「モノ·コト・データ」に事業が変わる中、IPLは必然のコンセプトでありツールと位置付け、IPLに必要な要件を①IPLマインドセット②洞察して分析する力量③事業に寄り添う実践力として、試行錐誤しながらPDCAを回している実際例が紹介されています。 金融庁と東京証券取引所が6月に改訂したコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)に、知的財産の活用などを促す内容が加わる中、経営層と知財部門の連携の代表例としてブリヂストンが取り上げられているのも、納得できます。 1.はじめに:なぜIPLなのか? 2.ブリヂストンの事業変革、知財マネジメントのミッション見直し 2.1 ソリューションでの社会貢献を目指す当社事業変革 2.2 知財ミッション見直し① 「スコー プ」見えないものを含めた知財分布把握 2.3 知財ミッション見直し②「まわすチカラ」ー無形資産で最たるものの把握 2.4 知財ミッション見直し③「知財ミックス」価値を創出する知財エコシステム 2.5 IPL での留意点 地に足ついたIPLを目指す 3.IPL活用の実例 4.さいこに: 3つの要件 企業統治指針、次は知財 ブリヂストンなど先行 2021年6月19日 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH145I90U1A610C2000000/ 経営層と知財部門の連携の代表例がブリヂストンだ。20年5月、日本航空(JAL)の航空機タイヤのすり減り具合を予測して交換するサービスを始めた。離着陸時の気象や路面状況、タイヤの摩耗状況などのデータをJAL側から受け取り、計画的に交換する。 こうしたデータ事業の準備の先頭に立ったのが、知財部門だった。16年ごろから自社や業界の知財を図解などで「見える化」するIPランドスケープを実施し、経営層に毎月のように報告した。次世代移動サービスMaaS(マース)など「運輸業界のデータ分野において、当社の優位性などを分かりやすく説明した」(知的財産部門の荒木充・部門長)という。 会社全体で特許などの「見える知財」だけでなく、タイヤ製造のノウハウ、品質保証、サービス力など「見えない知財」も把握。JALとの連携につなげた。 知財を他社からの訴訟などに備える「守り」だけでなく、事業提携など「攻め」にも生かすには、経営層と知財部門の頻繁な情報交換が欠かせない。 経営戦略を成功に導く知財戦略【実践事例集】特許庁2020年P.57 https://www.jpo.go.jp/support/example/document/chizai_senryaku_2020/all.pdf#page=58 「グローバル知財戦略フォーラム2019」 ブリヂストンのソリューション事業と知財チーム活動 https://www.inpit.go.jp/content/100866853.pdf 特許で見る「他社牽制力」ランキング…ゴム製品業界1位はブリヂストン 2019年 https://response.jp/article/2020/07/31/337047.html 【ゴム製品】特許資産規模ランキング2020 トップ3は住友ゴム、横浜ゴム、ブリヂストン https://www.patentresult.co.jp/news/2021/02/rubber.html ブリヂストン、中国で特許権侵害訴訟に勝訴 2020年12月07日 https://www.bridgestone.co.jp/corporate/news/2020120701.html 「徒然なるままに欧州知財実務」で、11月5日付けの「欧州での情報提供ですべきでないこと4点」を読みました。
「日本での情報提供の感覚で欧州で情報提供をしてしまうと、むしろ情報提供前よりも状況を悪化させてしまうことがあり、特に、ダメ元の情報提供、早すぎる情報提供、大量の引用文献、情報提供前に審査官にコンタクトをとる」はダメということです。 そして、「欧州特許庁で情報提供をする際は提供する情報を全て読んでもらって当たり前とは思わず、どうしたら乗り気でない審査官に情報提供を内容を読んでもらいそして参照してもらえるかを検討し、審査官の負担を最小限にした情報提供をするように心がけるべきです。」 創英国際特許法律事務所 清水義憲副所長によれば、EPOにおける情報提供については、有用であるとする欧州弁理士も多い一方、情報提供はやめるべきだと主張する欧州弁理士も多いようです。後者の意見の代理人は「情報提供をせずに特許になってから異議申立で争うべきだ」と主張しています。(個人的な感触的では、後者の意見の代理人に多く接しました。) また、従来から言われている審査段階で情報提供をする場合の注意点(①提供された文献が審査段階で参照されず特許になった場合、異議申立で証拠として使用できなくなることが多い、②情報提供で提出するのは「新規性を否定する文献」に限る。③一番強い文献は、異議申立のために取っておいて、二番目三番目の文献を提出するべき。④文献が無視されることがあるため、情報提供においては明確性(EPOにおいて明確性は異議理由にならない)だけを主張すべき。)も、もちろん重要であるが、(1)情報提供のタイミングと(2)意見の内容、がより重要になると思われるとのこと。 日本では、特許査定が2008年は50.2%だったのが2019年は74.9%と向上している一方、無効審判において無効になる割合が2009年には50%であったが年は18%と減少しているため、特許が成立した後に異議申立や無効審判で争うのではなく、審査段階で情報提供を行って特許を成立させないことが重要になっており、情報提供は年間約5000件の利用実績があります。 情報提供には、メリットとデメリットがありますので、どう対応するかは個別案件でじっくり検討すべきでしょう。 欧州での情報提供ですべきでないこと4点 https://hasegawa-ip.com/ep-patent/donts-third-party/ 欧州での情報提供ですべきでないこと4点 1.ダメ元の情報提供 2.早すぎる情報提供 3.大量の引用文献 4.情報提供前に審査官にコンタクトをとる 欧州特許庁(EPO)での情報提供の有効性 https://www.soei.com/wp-content/uploads/2021/07/%E6%AC%A7%E5%B7%9E%E7%89%B9%E8%A8%B1%E5%BA%81%EF%BC%88EPO%EF%BC%89%E3%81%A7%E3%81%AE%E6%83%85%E5%A0%B1%E6%8F%90%E4%BE%9B%E3%81%AE%E6%9C%89%E5%8A%B9%E6%80%A7.pdf 特許異議申立制度の運用の現状と効果的な活用 https://www.inpit.go.jp/content/100868550.pdf 審判の動向 令和2年度 特許庁審判部 https://www.jpo.go.jp/system/trial_appeal/document/index/shinpan-doko.pdf ちなみに、日本における情報提供のメリットとデメリットについては、下記を参照してください。 公開公報を読む(6) 情報提供制度の利用 8/9/2020 https://yorozuipsc.com/21021245153277321521356112423112288293053537712398355011241526041/63505936 公開公報が発行され、まだ権利が付与されていない段階で、要注意特許を見つけた場合には、情報提供制度を利用して、特許出願に係る発明が新規性・進歩性を有していない、あるいは、記載要件を満たしていないなど、審査を行う上で有用な情報の提供を行うことができます。 2019年には、4,643件の情報提供があり、異議申立件数が1,073件、無効審判の請求件数が113件だったのに比べると、多く利用されていることがわかります。 公開公報を読んで要注意特許を見つけた場合には、まず、特許庁での審査がどうなっているかを確認してください。審査がまだ進んでいなければ情報提供制度を利用することを検討しましょう。審査が進んでいれば、拒絶理由通知や中間処理の状況を確認しましょう。 情報提供制度を利用するかどうかは、情報提供制度を利用する場合のメリット・デメリットを考慮したうえで、案件ごとに判断すべきでしょう。 メリットとしては次の5つがあげられます。 1.権利化を阻止できる、仮に権利化されるにしても小さい権利にすること(権利の減縮)が期待できる。 2.早期に結論を得ることができるので、付与後にあれこれ考える場合と比べ、事業方針の確定等に有利。 3.匿名で提示ができる。 4.審査が慎重になるため、より精度の高い審査結果が期待できる。 5.無効審判、異議申立などに比べ、低コスト・低労力。 デメリットとしては、次の3つがあげられます。 1.権利化されると困る第三者がいることを特許出願人に知らせてしまう。特許出願人は、競合他社の製品を当該特許出願内容に基づいて調査する可能性がある。 2.かわされ易く強い特許になる可能性がある。審査段階では、補正、分割出願、拒絶査定不服審判請求、面接など、特許出願人に与えられる方策が多いので、付与後に何らかの手立てをする場合と比べ、かわされる可能性が高く、結果的に強い特許になることもある。 3.単なる情報提供者であるため、意見を言う機会が限られ、十分に意見を言えない。 10月26日に開催された「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会(第6回)」の事務局説明資料(内閣府知的財産戦略推進事務局)では、「本日議論をしていただきたいこと」として、
(1)知財専門調査会社等の活用の在り方について 知財・無形資産の投資・活用促進メカニズムを活性化させるために、知財専門調査会社等はどのような役割が期待されるか? 知財専門調査会社等による分析・評価は、投資家・金融機関、企業によって、どのように活用されることが期待されるか? 企業がどのような開示を行えば、知財専門調査会社等の活用が進むことが期待されるか? など (2)スタートアップのイノベーション機能の活用の在り方について 大企業が知財・無形資産の投資・活用を進める上で、スタートアップ企業のイノベーション機能をどのように効果的に活用すべきか?その際、どのような課題があるか? 大企業とスタートアップとの効果的な連携を進めるためには、大企業にはどのような開示や社内のガバナンスが求められるか?また、投資家・金融機関にはどのような役割が期待されるか? など (3)幅広い知財・無形資産に係る投資・活用戦略の構築・実行の在り方について 企業の強みとなる知財・無形資産として、技術や特許以外にどのようなものが考えられるか? 幅広い知財・無形資産について、その投資・活用戦略の構築、ガバナンス、開示を行うにあたり、どのような課題があるか?(例えば、ブランド、顧客基盤、サプライチェーン等の知財・無形資産の維持・強化に向けた投資としてどのような項目を認識すべきか?) など (4)知財・無形資産の投資・活用に関する指標の在り方について【前回に引き続き】 投資家・金融機関側から見て、企業が強みのある知財・無形資産を価値創造やキャッシュフローにつなげていくビジネスモデルを説得的に説明する上で、どのような指標を用いることが期待されるか? 投資家・金融機関が特に開示を望む優先度の高い指標はあるか? 取締役会における監督において、指標はどのように用いられるべきか? 業種やビジネスモデルによって用いるべき指標はどのように違ってくるか? など があげられています。 第7回(11月9日)には、間接金融(地域金融機関)、VCからの視点の報告などを踏まえ、知財投資・活用に関する指標の在り方やガイドライン案に向けた議論がおこなわれるものと思います。 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai6/siryou3.pdf 知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会(第7回)の開催について 令和3年11月5日(金) 内閣府 知的財産戦略推進事務局 日 時 :令和3年11月9日(火)16:00~18:00 開催形式 :WEB形式 次第(案) (1)プレゼンテーション1(きらぼしコンサルティング株式会社 強瀬様) (2)プレゼンテーション2(Spiber株式会社 関山様) (3)事務局説明 (4)質疑応答・議論 【本件に関する連絡先】 内閣府 知的財産戦略推進事務局 担当者: 牧野、恒成 T E L : 03-3581-1854(代表) https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai7/kaisai.html 10月26日に開催された「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会(第6回)」では、「正林国際特許商標事務所の「知財・無形資産」投資・活用戦略に関する各種活動企業価値の向上/ESG投資を促す無形資産可視化」(正林国際特許商標事務所
所長・弁理士 正林 真之氏)がプレゼンされました。 知財・無形資産には、現在資産と稼ぐ力(伸び率)の2種類あり、稼ぐ力(伸び率)は各企業の戦略であり、見えるもの&見せないものがある。コーポレート・ガバナンスコードで開示すべきは「稼ぐ力」-「見せない戦略」、というスライドが印象的でした。 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai6/siryou5.pdf 10月26日に開催された「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会(第6回)」では、「企業価値の向上/ESG投資を促す無形資産可視化とは?」(アスタミューゼ株式会社 永井社長)がプレゼンされました。
「企業価値における無形資産割合増加とCGC改定により、無形資産/知的財産評価に取り組む企業は増え、投資家も注目」「但し知財評価/開示する事は、ネガティブスクリーニングされないための前提であり、開示したからといって高い企業価値が認められるとも限らない」「今までの知財投資/評価は、下記の課題がある事が多く、結果的には既に知財評価・開示している会社も、企業価値・株価は低調な事も多いと安易な情報開示は逆効果になりかねない」ので、従来とは違った価値評価の必要性とその考え方を説明しています。 従来にない視点からの話も多く参考になりました。 企業価値の向上/ESG投資を促す無形資産可視化とは? https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai6/siryou4.pdf 1. アスタミューゼ会社紹介 2. 企業価値と無形資産 企業価値における無形資産割合増加とCGC改定により、無形資産/知的財産評価に取り組む企業は増え、投資家も注目 但し知財評価/開示する事は、ネガティブスクリーニングされないための前提であり、開示したからといって高い企業価値が認められるとも限らない 今までの知財投資/評価は、下記の課題がある事が多く、結果的には既に知財評価・開示している会社も、企業価値・株価は低調な事も多い 特許の資産価値算定方法としてはどれも短所が目立ってしまい納得感が無い割に、算定に手間がかかる 各企業の全技術をまとめて定量的に評価した場合、横比較は可能だが各事業のKSF・戦い方との各技術群の相関がわかりづらく評価しづらい バリューチェーン×技術特性別に評価した場合、事業におけるKSFが全て技術資産という違和感と投資家からは細かすぎで定性的すぎる 企業価値に影響を与える非財務(情報)を全体を広義の無形資産と捉え各無形資産を別々に評価する アスタミューゼの【無形資産/非財務情報可視化フレームワーク】は演繹・回帰の両方向から、企業価値と無形資産の因果・相関を可視化 当社では企業価値向上の源泉となる稼ぎ方(ビジネスモデル)を体系化しあらゆる事業に対応すべく9つの大分類に整理 事業毎に客観的に稼ぎ方(ビジネスモデル)を整理した上で、時間軸事にKSF及びKSF充足のドライバーとなる無形資産について整理 例えば、自社の脱炭素関連事業において如何に稼ぐ力を有しているかを可視化する時は下記のような整理を実施しドライバーとなる資本を判別 技術的インパクトの評価ではなく、客観性と網羅性を担保した定量的なスコアリングの形で、技術の経済的インパクトを測る事が重要 企業規模別に見ると、総合大手の場合、売上高に占める研究開発投資額と領域によって1件の特許価値(収益/KSFへのインパクト)は全く異なるニッチトップ企業の場合、特定領域の独占排他を如何に行うかで総合大手とは異なる傾向 大企業の場合、特許以外の要素の影響も大きく、且つ特許については広範な技術群/特許ポートフォリオによる独占排他力での戦い方が中心 ニッチトップゆえ、特許の重要性が高まり、特に基幹技術+複数の周辺用途技術群による独占排他力がより有効となる WO・日本・米国・欧州、各特許庁に出願された特許を対象に定量的な指標を用い、保有技術/特許の競争優位性を分析・評価 各国の特許の権利の大きさではなく、経済的インパクトを評価するため各国のGDPと該当領域における損害賠償額の値で重み付け 世界インデックス(MSCI ACWI)に対してパテントインパクトスコアを使ったポートフォリオの超過収益は6%超(年率) アスタミューゼの【無形資産/非財務情報可視化フレームワーク】は演繹・回帰の両方向から、企業価値と無形資産の因果・相関を可視化 対象企業群における、各種資本とPBR/ROEとの相関分析を踏まえ、企業価値可視化および向上に向けてより重点的に注目すべき資本を特定 対象企業群の経年での業績や各種財務分析指標を目的変数、各種資本スコアを説明変数として回帰分析を実施 企業価値(PBR-1)に対する無形資産/各種非財務資本の説明力は業界ごとに異なる 重要性が高い無形資産は時系列変化し、 製薬業界では中長期的に知的資本の重要性が増す。他方、自動車業界では自然資本1)の重要性が高い 3. ESG投資と無形資産 ESG投資は現時点で3000兆円超とも言われ、今後は日本でも普及し、ESG 投資という言葉が無くなるぐらい一般化するものと思われる ESG情報と非財務情報(無形資産投資)は重なる部分も大きくESG活動は無形資産への投資活動によって説明が可能 ESG対応する事は、ネガティブスクリーニングされないための条件であり、ESG対応≒企業価値・株価向上するとも限らない ESGはダイベストメント(投資撤退)には利用されているものの、下記の課題があり企業価値向上については現時点では、否定的な投資家も多い 単にSDGs・ESG活動に取り組むだけではなく、経済・環境・ステークホルダーへの観点から定量的に優先順位を決めて取り組む必要がある 各社会課題/ESGテーマに対して、各業界におけるマテリアリティ評価をする事で企業価値向上に資するESG活動が行える GRIが定めるマテリアリティの評価軸にも沿う形で、社会課題の重要度を客観的に評価。各企業のマテリアリティ検討の土台として役立てる 当社独自に整理した社会課題定義(技術との対応関係の整理済み)を評価するに当たって、大きく3つのパラメータを設定 具体的には以下の構成要素の積算により算出。その上でSASBのMaterialityMapとの相関度も織り込んで、スコア化 さらに、産業毎に異なるステークホルダーへの影響度も織り込むことで、業界毎のマテリアリティスコアを作成 マテリアリティスコア活用により、自社が取組むべき課題の初期的なスクリーニング/優先順位付けが可能に マテリアルな社会課題をに対して、具体的に自社の事業・技術の対応関係を明らかにするためにもブレイクダウンが必要 前述の無形資産評価方法にもあったように、例えばCCS/CCUは、少数のコア特許と多数のポートフォリオでブロックする両面から評価する 脱炭素アプローチの小分類毎に関連社会課題の紐づけを踏まえて、産業毎に有望企業をランキング 自社業界のマテリアリティが高い課題(ex.脱炭素など)に対して、自社技術資産の競争力があるかどうかを相対的に評価 排出量取引価格を考慮した上でGHG排出削減貢献額(脱炭素による経済機会の総量)を算出し、技術資本スコアで分配し各社の企業価値に組込む ESG×無形資産(グロース投資の源泉)の分析が可能な事により、他社が提供しえないパフォーマンスが出やすいESGの機会探索が可能に 10月26日に開催された「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会(第6回)」では、「知財・無形資産」 投資・活用戦略を実践している企業の事例紹介として、『日揮グループの「知財・無形資産」投資・活用への取り組み』(日揮グローバル株式会社 瀬下氏)が発表されました。
日揮グループでは、エンジニアリング会社の「EPC(設計・調達・建設)事業」における既存事業の拡大や、技術ライセンス、新市場参入、デジタルソリューションサービス、新システム構築等において、マネジメント手法やプロジェクト管理能力、ライセンス・共同開発での事業創造等、知財・無形資産の投資・活用戦略を事業活動として実践しています。 事業の構築・維持拡大のための知財・無形資産活用事例がわかりやすくまとめられています。 会社概要 組織図 事業分野 日揮グループのパーパスと事業ビジョン 日揮グループのマテリアリティ 事業のビジョンや課題の実現に向けた知財・無形資産投資 日揮グループの強み(価値創造の源泉) 事業の構築・維持拡大のための知財・無形資産活用事例 事業の構築・維持拡大のための知財・無形資産活用事例①「既存ビジネスの拡大」FLNGにおけるEPC(設計・調達・建設)受注貢献 事業の構築・維持拡大のための知財・無形資産活用事例②「技術ライセンス」高圧再生型CO2回収技術 HiPACT® 事業の構築・維持拡大のための知財・無形資産活用事例③「非EPCモデル/新市場参入」 事業の強化・拡大戦略 【戦略投資】5年間で総額2,000億円の戦略投資を計画 【ビジネスモデルの多様化】ライセンス技術の確立と知財網構築、技術ブランディング、および知財リスク管理 日揮グループの「知財・無形資産」投資・活用への取り組み 日揮グローバル株式会社 知的財産部 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai6/siryou9.pdf 10月26日に開催された「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会(第6回)」では、「知財・無形資産」 投資・活用戦略を実践している企業の事例紹介として、「KDDIの「知財・無形資産」投資・活用への取り組み」(KDDI株式会社 知的財産室長 川名 弘志氏)がプレゼンされました。
1 事業戦略 2 事業戦略の実現のための知的財産投資と活用 という内容ですが、 KDDIは、通信インフラから、サービス、コンテンツ、更にはスタートアップに対する投資を行い、競争力の基盤となるあらゆる知財・無形資産を戦略的に獲得し、事業に則して総合的に活用することにより、安定的な事業収益と高い利益率を確保するビジネスモデルを構築しており、杉光教授が作成された「知財評価指標」に自社事業を当てはめた結果も開示しています。 プレゼンテーション(5)(KDDI株式会社 川名様) https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai6/siryou8.pdf 10月26日に開催された「知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会(第6回)」では、「知財・無形資産」 投資・活用戦略を実践している企業の事例紹介として、「食品・日用品企業における知財情報開示を考える」(ライオン株式会社 知的財産部 高岡 弘光氏)という題で、「食品・日用品業界は、ブランドへの信頼が企業価値に直結する業種であり、商品等の宣伝や品質等への投資を、商標権に化体させ資産化する知財ガバナンス活動を展開している。」という内容がプレゼンされました。
知財というと特許に注目が集まりますが、商標の重要性、S(Social)の重要性、一次産業産品原料の使用(農水知財としての特殊性)、個人株主の重要性という視点から、「知財情報開示において留意すべきポイントは、S(Society)項目への取り組みにどのような知財権が貢献しているかにある。企業ごとの独自性と、業界共通のプラクティスとを分かりやすいストーリーで開示していくことが必要と考える。」と提案しており、特許とは違う視点からのアプローチの参考になります。 また、3つの事例を紹介しています。 事例1 ライオンにおける天然ミントの活用 事例2 明治における北海道十勝地域の地域振興 事例3 キユーピーにおける海外模倣品排除 これらの事例から情報開示に向けて「価値共創ガイダンスを参照し知財の事業貢献をストーリーで示すことが重要。但し、定量な評価や指標、それらの財務指標との繋がりの説明には工夫・改善が必要。」としています。 食品・日用品企業における知財情報開示を考える https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai6/siryou7.pdf ライオンHPの知的財産情報 https://www.lion.co.jp/ja/csr/governance/ip/ |
著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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