数値限定発明については,特許・実用新案審査基準における進歩性の考え方は裁判所における進歩性の考え方との乖離が大きいと考えられています。
特許・実用新案審査基準によれば、相違点が数値限定のみにあるときは、予測困難でかつ有利な効果がなければ、相違点が数値限定であるという理由だけで、単純にその発明は進歩性を有していないと判断されることになります。しかし、裁判所では数値限定発明について主引用発明との相違点が数値限定のみであるからといって特別な進歩性の判断をしているわけではなく、主引用発明との相違点に係る構成について主引用発明に副引用発明を組み合わせる動機付けがあるか否かを判断し、更に本件発明の構成が顕著な効果を奏するか否かも考慮した上で進歩性の判断を行っています。 こうした点について、深堀りした論説が、パテント2022年3月号に掲載されていました。「令和 2 年(行ケ)第 10044 号 審決取消請求事件を踏まえた数値限定を含む発明の進歩性判断についての考察」です。 知財高判 令和 3 年 8 月 30 日判決 令和 2 年(行ケ)第 10044 号 審決取消請求事件を踏まえた数値限定を含む発明の進歩性判断についての考察 パテントVol. 75No. 3 P.106(2022) https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3966 数値限定を含む発明についての進歩性判断において,先行技術との差が数値限定のみである場合には,先行技術に開示されていない有利な効果であって異質又は顕著な効果でかつ技術水準から当業者が予測困難な効果が得られる場合を除けば,進歩性が認められる事例は比較的少ないように感じられる。しかし,数値限定も発明を特定する事項の一部であるので,その意味では数値限定以外の構成と変わるところはなく,数値限定以外の構成と同等に,有利な効果等を参酌することなく進歩性が認められる事例が増えても良いように思われる。 本稿では,令和 2 年 12 月改訂の特許・実用新案審査基準や過去の裁判例と比較しながら,知財高判 令和3 年 8 月 30 日判決 令和 2 年(行ケ)第 10044 号 審決取消請求事件を紹介し,数値限定を含む発明の進歩性判断について考察する。 目次 第 1 はじめに 第 2 特許・実用新案審査基準による数値限定を含む発明についての進歩性判断 第 3 本件判決の分析 第 4 本件判決を踏まえた数値限定を含む発明の進歩性判断についての考察 第 5 おわりに 審査基準と裁判所の判断との乖離についての検討 令和 2 年度特許委員会第 2 部会 第 2 チーム パテントVol. 75No. 3 P.95(2022) https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3965 数値限定発明については,審査基準における進歩性の考え方は裁判所における進歩性の考え方との乖離が大きいと考える。したがって,数値限定発明について,審査段階において審査基準に記載のような顕著な効果の有無の判断に基づき進歩性が否定されたとしても,裁判所においては,相違点に係る構成について主引用発明に副引用発明を組み合わせる動機付けがないことを理由に進歩性が肯定される可能性があることに留意する。
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パテント 2022年3月号に、「審査基準と裁判所の判断との乖離についての検討~進歩性の観点から~」(令和 2 年度特許委員会第 2 部会第 2 チーム)が掲載されています。
「容易の容易」、「数値限定発明」、「周知技術」、「顕著な効果」について検討され、下記のようにまとめられています。 ・「容易の容易」については,審査基準と裁判所の判断の乖離が見られるといえる。 ・「数値限定発明」については,審査基準における進歩性の考え方は裁判所における進歩性の考え方との乖離が大きいと考える。 ・「周知技術」については,審査基準では,周知技術を用いて進歩性を判断する際の論理付けの可否の検討の例として,周知技術の適用に阻害要因がないか等の検討のみが挙げられている。しかし,多くの裁判例において,周知技術を引用発明に組み合わせる阻害要因までなくとも動機付けがない案件で進歩性が肯定されている。 ・「顕著な効果」については,果については,現行の審査基準では,独立要件説及び二次的考慮説・評価障害事実説のどちらの説を採用しているのか定かではない。この論点に関する裁判所の態度は,未だ混沌としていると言わざるを得ない。将来的には独立要件説及び二次的考慮説・評価障害事実説のどちらの説で審査されるかについて審査基準に記載することが望ましいときが来ると考える。 審査基準と裁判所の判断との乖離についての検討~進歩性の観点から~ https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3965 要 約 本稿は,令和 2 年度特許委員会において検討した結果を報告するものである。 進歩性の論点の一部について,審査基準と裁判所の判断との乖離が見られた。例えば,裁判所では「容易の容易」に該当するとして進歩性が肯定される場合があるが,審査基準には「容易の容易」についての明確な規定はない。 目次 1.はじめに 2.検討方法 3.検討結果 3.1 容易の容易(論点 1) 3.2 数値限定発明(論点 2) 3.3 周知技術(論点 3) 3.4 顕著な効果(論点 4) 4.まとめ 知財管理72巻(2022年4月号) で、商標審査の脆弱性を背景に成長してきた悪意の商標で武装した模倣品(第三世代模倣品)に対するアシックスの活動が紹介されています。
いろんな会合で紹介されている有名な活動ですが、全体像が良くわかります。 http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/mokuji/mokuji2204.html 1.はじめに 2.模倣品対策 2.1 ブランド保護としての模倣品対策 2.2 商標権と模倣品対策 2.3 模倣品対策の現場 3.アシックスの模倣品分類 3.1 第一世代、第二世代模倣品 3.2 第三世代模倣品 4.悪意の商標出願 4.1 冒認商標出願 4.2 悪意の商標出願が生まれる背景 5.第三世代模倣品への対策 5.1 理解者の育成 5.2 現場での取り締まり 5.3 ロビイング 5.4 その他の試み 5.5 一斉摘発とその影響 5.6 中国商標法改正 6.今後の課題 6.1 第三世代模倣品業者の駆除 6.2 Eコマース対策 7. おわりに 知財管理72巻(2022年) / 4号 / 451頁 論文名 中国における商標武装した模倣品との闘い 著者 齊藤浩二 抄録 中国における模倣品市場が巨大であることは今日では誰もが認めるところである。一口に模倣品といっても、機能を模倣するもの、デザインを模倣するものなど、そのパターンは様々である。中でもブランド商標を盗用して事業展開する模倣品業者は後を絶たない。ブランド商標を使うだけで、正規ブランド品が有する品質や性能あるいは信頼に容易に便乗するできことが出来、収益を得られるからである。そのため、商標権は、模倣品の取り締まりには欠かせない最も有効な知財権のひとつである。その権利行使に商標権が使えないとなるとどうなるであろう。ここでは商標審査の脆弱性を背景に成長してきた悪意の商標で武装した模倣品、即ち第三世代模倣品に対する当社の活動を紹介する。 5月2日の日経新聞朝刊オピニオン2 複眼「知財・無形資産 生かすには 識者に聞く」(渋谷編集委員アンカー)では、「開示で投資家の評価仰ぐ」という SBI証券チーフクオンツアナリスト 波多野紅美氏へのインタビューが掲載されています。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO60402640Y2A420C2TCT000/ 「現時点で知財・無形資産の開示には、財務におけるROE(自己資本利益率)のような指標がない。ROEやROIC(投下資本利益率)のように企業を横並びで比較できる指標ができれば、投資家側でも知財・無形資産の情報活用が一気に広がる可能性がある。望ましいのは単純明快で、数値で比較できる指標だ。 横並びで比較できる指標が確立された上で、各業種や企業の事情も個別の開示で把握できるようになれば、投資家は変化余地の高い株の特定が可能になる。一方、定性的で個別に考慮しなければならない知財・無形資産の情報だけを開示されても評価は難しく、投資家は敬遠するだろう。」 確かにそのとおりだと思います。 複眼 知財・無形資産 生かすには 識者に聞く 小堀秀毅氏/大津啓司氏/渡部俊也氏/波多野紅美氏 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH0883D0Y2A300C2000000/ 経営判断の重要なツール 旭化成会長 小堀秀毅氏 技術もブランドもアピール ホンダ執行役常務 大津啓司氏 社外に切り出し事業化も 東京大学未来ビジョン研究センター教授 渡部俊也氏 開示で投資家の評価仰ぐ SBI証券チーフクオンツアナリスト 波多野紅美氏 <アンカー>経営者は覚醒を 「価値創造」担え https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220502&ng=DGKKZO60402530Y2A420C2TCT000 5月2日の日経新聞朝刊オピニオン2 複眼「知財・無形資産 生かすには 識者に聞く」(渋谷編集委員アンカー)では、「社外に切り出し事業化も」という 東京大学未来ビジョン研究センター教授 渡部俊也氏へのインタビューが掲載されています。
https://www.nikkei.com/nkd/theme/341/news/?DisplayType=2&ng=DGKKZO6040258028042022TCT000 「日本企業が知的財産の保護に本気で関心を持ち始めたのは1990年代後半からだ。米国企業から米国知財へのただ乗りだと批判された時代から、逆に中国や韓国企業に技術開発で追われ日本の知財が侵害される立場に転じた。2002年に日本政府が掲げた「知財立国」政策は、当時の日本企業のニーズと整合した。 だが次第に、保護中心の知財戦略では太刀打ちできなくなった。日本企業は家電などモノ作りの市場では稼げなくなっていたのに、新市場への投資を怠り既存事業の効率化に終始した。結果、IT(情報技術)関連の新事業を創出する米中と水をあけられた。 知財を事業に生かすには、受け皿となる器が必要だ。だがその新しい器づくりに日本は失敗した。」 「大企業が自らリスクをとって新技術に投資し事業化できれば理想だが、できなければスピンアウトして新しい器をつくるのもよい。」 「企業は環境変化に対応した事業戦略を立て、投資家に説明し資金を調達する必要がある。特許などの知財はその戦略を確実に実行しているという「証拠」だ。知財戦略とは本来、事業の方向性と密接に結びついた経営戦略だということを、再認識すべきだ。」 そのとおりだと思います。 複眼 知財・無形資産 生かすには 識者に聞く 小堀秀毅氏/大津啓司氏/渡部俊也氏/波多野紅美氏 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH0883D0Y2A300C2000000/ 経営判断の重要なツール 旭化成会長 小堀秀毅氏 技術もブランドもアピール ホンダ執行役常務 大津啓司氏 社外に切り出し事業化も 東京大学未来ビジョン研究センター教授 渡部俊也氏 開示で投資家の評価仰ぐ SBI証券チーフクオンツアナリスト 波多野紅美氏 <アンカー>経営者は覚醒を 「価値創造」担え https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220502&ng=DGKKZO60402530Y2A420C2TCT000 5月2日の日経新聞朝刊オピニオン2 複眼「知財・無形資産 生かすには 識者に聞く」(渋谷編集委員アンカー)では、「技術もブランドもアピール」という ホンダ執行役常務 大津啓司氏へのインタビューが掲載されています。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO60402480Y2A420C2TCT000/ 「改訂指針は、知財・無形資産の活用の大きなきっかけになると期待している。指針は上場会社に知財への投資の状況を分かりやすく開示するように指示している。ホンダも今年、知財に効果的に投資していることを、何らかの形でアピールする予定だ。」 「ホンダも含め、日本企業は開発や目の前の仕事をすることを優先し、企業ブランドを磨くことを二の次にしてきた面がある。ブランドの世界的ランキングでも日本企業は総じて低い。消費者の頭の中でホンダのブランドが輝いていなければ、決してホンダの商品が選ばれることはない。」 技術もブランドもアピールというホンダの今年の開示がどんな開示になるのか楽しみです。 複眼 知財・無形資産 生かすには 識者に聞く 小堀秀毅氏/大津啓司氏/渡部俊也氏/波多野紅美氏 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH0883D0Y2A300C2000000/ 経営判断の重要なツール 旭化成会長 小堀秀毅氏 技術もブランドもアピール ホンダ執行役常務 大津啓司氏 社外に切り出し事業化も 東京大学未来ビジョン研究センター教授 渡部俊也氏 開示で投資家の評価仰ぐ SBI証券チーフクオンツアナリスト 波多野紅美氏 <アンカー>経営者は覚醒を 「価値創造」担え https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220502&ng=DGKKZO60402530Y2A420C2TCT000 5月2日の日経新聞朝刊オピニオン2 複眼「知財・無形資産 生かすには 識者に聞く」(渋谷編集委員アンカー)では、「経営判断の重要なツール」という旭化成会長 小堀秀毅氏へのインタビューが掲載されています。
https://www.nikkei.com/nkd/industry/article/?DisplayType=1&n_m_code=024&ng=DGXZQOGH0883D0Y2A300C2000000 「私が知財に目覚めたのは、旭化成の社長に就任した翌年の2017年。7月に日本経済新聞で「知財分析を経営に生かすIPランドスケープに注目」という記事を読み、IPランドスケープとは何かを知財部門に問い合わせた。」 「改訂指針を受けた施策として、特許の出願などを担当する従来の知財部とは別に、知財分析と、分析結果に基づく経営戦略への迅速な支援を専門とする「知財インテリジェンス室」を4月1日付で設け、経営企画担当役員に直属させた。」 新しい組織の活躍に期待しています。 複眼 知財・無形資産 生かすには 識者に聞く 小堀秀毅氏/大津啓司氏/渡部俊也氏/波多野紅美氏 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH0883D0Y2A300C2000000/ 経営判断の重要なツール 旭化成会長 小堀秀毅氏 技術もブランドもアピール ホンダ執行役常務 大津啓司氏 社外に切り出し事業化も 東京大学未来ビジョン研究センター教授 渡部俊也氏 開示で投資家の評価仰ぐ SBI証券チーフクオンツアナリスト 波多野紅美氏 <アンカー>経営者は覚醒を 「価値創造」担え https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220502&ng=DGKKZO60402530Y2A420C2TCT000 5月2日の日経新聞朝刊オピニオン2 複眼「知財・無形資産 生かすには 識者に聞く」(渋谷編集委員アンカー)では、「2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)は知的財産への投資を取締役会が監督し、開示すべきだとした。主要上場会社を比較すると、米国企業は企業価値に占める無形資産が9割に達するのに対し、日本企業は3割にとどまる。知財・無形資産を生かすカギを経営者らに聞く。」として、「経営判断の重要なツール」 旭化成会長 小堀秀毅氏、「技術もブランドもアピール」 ホンダ執行役常務 大津啓司氏、「社外に切り出し事業化も」 東京大学未来ビジョン研究センター教授 渡部俊也氏、「開示で投資家の評価仰ぐ」 SBI証券チーフクオンツアナリスト 波多野紅美氏へのインタビューが掲載されており、渋谷編集委員が「経営者は覚醒を 「価値創造」担え」と結んでいます。経営者に刺さることを期待しています。
複眼 知財・無形資産 生かすには 識者に聞く 小堀秀毅氏/大津啓司氏/渡部俊也氏/波多野紅美氏 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH0883D0Y2A300C2000000/ 経営判断の重要なツール 旭化成会長 小堀秀毅氏 技術もブランドもアピール ホンダ執行役常務 大津啓司氏 社外に切り出し事業化も 東京大学未来ビジョン研究センター教授 渡部俊也氏 開示で投資家の評価仰ぐ SBI証券チーフクオンツアナリスト 波多野紅美氏 <アンカー>経営者は覚醒を 「価値創造」担え https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220502&ng=DGKKZO60402530Y2A420C2TCT000 日本は「特許大国」と言われたこともあるが、約30年間イノベーションから遠ざかっている。2002年に「知的財産立国」を掲げながら、米国や中国と比べて知財の活用が不十分だった。大きな原因は、経営者が知財・無形資産に無関心だったことにある。 旭化成の小堀氏、ホンダの大津氏の問題意識は目を引くが、日本企業では例外中の例外といえる。改訂指針では知財の活用を取締役会が監督すべきだとされたが、現在も知財部門に丸投げし、我関せずと構える経営者は少なくないと思われる。 価値創造社会ではそんな姿勢は通用しない。日本の経営者は「価値創造チーフオフィサー」として覚醒し、知財・無形資産を駆使して新たなビジネスモデルを生み、それを投資家にアピールする「正の連鎖」を作らねばならない。 (編集委員 渋谷高弘) イギリスの高等教育専門誌「Times Higher Education」は、「THEインパクトランキング2022」を4月28日に発表。北海道大学は総合ランキングの対象となった世界1406⼤学中、日本初の世界10位(国内1位)にランクインしたということです。また、SDG目標別ランキングにおいては,17のSDG目標のうち「SDG2 飢餓」では世界1位とのことです。
THEインパクトランキング2022とは、イギリスの高等教育専門誌「Times Higher Education(THE:ティー・エイチ・イー)」による「THEインパクトランキング」のことで,気候変動に対する活動やジェンダーの平等、健康と福祉など、大学の社会貢献の取り組みを国連のSDGsの枠組みを使って評価するというもので、今回で4回目となるこのランキングに、本年度は世界1,524大学、日本からは84大学が参加したとのことです。 SDGsへの取組がより活発化することを期待しています。 「THEインパクトランキング2022」で北大が総合ランキング世界10位-「飢餓の撲滅」の項目では世界1位にランクイン https://www.hokudaishinbun.com/2022/05/01/6482/ 北海道大学が「THEインパクトランキング2022」で総合ランキング世界10位(国内1位),「SDG2 飢餓」の項目で世界1位にランクイン https://www.hokudai.ac.jp/news/2022/04/THEranking2022.html イギリスの高等教育専門誌「Times Higher Education」は,「THEインパクトランキング2022」を2022年4月28日(日本時間午前3時)に発表しました。北海道大学は総合ランキングの対象となった世界1406⼤学中,日本初の世界10位(国内1位)にランクインしました。総合ランキングは各大学のSDGs別に算出されたスコアのうち,必須であるSDG17のスコアと,残りSDG1~SDG16のうち上位3つのSDGsのスコアの合計で順位が決まります。また,SDG目標別ランキングにおいては,17のSDG目標のうち,「SDG2 飢餓」(世界1位),「SDG17 パートナーシップ」(同12位),「SDG14 海洋資源」(同17位),「SDG15 陸上資源」(同18位),「SDG9 産業と技術革新」(同43位),「SDG16 平和と公正」(同61位),「SDG6 安全な水とトイレ」(同92位)が世界100位以内にランクインし,高い評価を得ました。 THEインパクトランキング2022に関する本学の結果について https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/220428_news.pdf 2022/04/29にYouTubeで公開された動画「弁護士高石秀樹の特許チャンネル」の『特許「出願」価値の最大化戦略《完全版25分》~特許「出願」の価値を「オプション権」と捉えた最大化戦略 ~(1)「当初明細書」の工夫、(2)「多様なクレーム文言」の利活用』は、パテントサロンで公開された5分短縮版に対して完全版とされています。
出願時にクレームをどうするかを検討することも大切ですが、出願時のクレームにこだわりすぎるより、いかに他社へのけん制効果を持続するかという視点から当初明細書の記載を充実させることにより力を割くことが重要だということがわかります。 https://www.youtube.com/watch?v=SLgYliER4xo 本稿は、①当初明細書を工夫して特許出願の価値を最大化するとともに、②クレーム文言を多様な表現で工夫して、特許権“群”としての価値の総和を最大化する方針を提示する。 特許権の価値は、条文上は特許発明の実施権を占有することであるが(特許法68条)、その真価は、審査段階では指摘されなかった進歩性、記載要件等の無効理由が現れたときに減縮訂正で乗り越える“ネタ”が明細書中にどれだけ埋め込まれているかを含む。すなわち、広過ぎる現行クレームが維持できない場面において、適切な範囲のクレームに減縮訂正して(訂正の再抗弁を主張して)特許権侵害訴訟を継続したいが、明細書の開示が不十分であると、適切な範囲のクレームが新規事項追加と判断され、狭いクレームに減縮せざるを得なくなる。(※均等論で復活する余地は残されているが 、戦略上依拠できる裁判例数ではない。) 特許権の価値とは別に、特許出願(特許を受ける権利)の価値を最大化するという視点も、特許出願戦略上、極めて重要である。特許付与後は訂正によりクレームを減縮することしかできないが、特許出願段階においては、特許査定時にクレームを拡張・変更する分割出願が可能である。分割出願を繰り返すことで、原出願で特許権を確保した上で、広い特許取得に挑戦できるとともに、競合製品を過不足なくカバーするクレームを創ることも可能である。そうすると、分割出願においてより広いクレーム、変更された別のクレームが新規事項追加と判断されないための“ネタ”が明細書中にどれだけ埋め込まれているかは、特許出願から将来特許化できる範囲が広いことと同義であるから、経済的に言えば、広い『オプション権』を有していることと同義である。したがって、多数の分割出願を行って特許群を構築するという戦略(関連意匠群の構築と同じ)が王道であるとしても、費用面から出願数を絞らなければならない場合でも、豊富な“ネタ”を含む当初明細書で1件出願して審査を遅らせておけば、競合他社に対し、補正・分割により特許化される範囲で実施を控えさせる効果を有するから、結果的に広い特許権を有していることに近い事業戦略上の効果を得られる。仮に競合他社が参入してきた場合は、対象製品等の構成に合わせて補正・分割して抑えることができる。 したがって、新たな無効理由に対応するための柔軟な減縮訂正を可能とするために、また、広く特許化できる『オプション権』を確保するためにも、当初明細書の記載は最重要であり、裁判例に基づく工夫の余地が大きいところである 。工夫のポイントは多岐に亘るが、例えば、実施例の文章、データ、図面等が同一であっても、発明の課題次第でクレームアップできる内容が異なる、換言すれば、実施例に記載された具体的な発明を、どの程度“抽象化”してクレームアップすることが許容される程度が異なることが挙げられる 。 以上は、特許出願の『オプション権』としての価値に着目したが、特許権の技術的範囲は、最終的には、発明の詳細な説明及び図面を考慮して解釈されるクレーム文言により定まる。そうであるところ、クレーム文言は、物/単純方法/製造方法の区別に留まらず、物の発明としても多様な表現形式が許容されているから(特許法36条5項)、従属項も駆使して、多様なクレーム文言で発明を表現する請求項を多数作成することにより、各請求項の発明が重なり合いながらも異なる技術的範囲を有し、その総和である特許権“群”としての価値を最大化できる。本稿においては、クレーム文言の表現形式として、12個の工夫を提示する。 「特許出願戦略 (1)当初明細書の最重要ポイント、(2)クレーム文言の工夫<12選>」 https://www.takaishihideki.com/_files/ugd/324a18_69366064bb0e44b2a512a6874191e0ed.pdf ★特許「出願」価値の最大化戦略~特許「出願」の価値を「オプション権」と捉えた最大化戦略《5分短縮版》 https://www.youtube.com/watch?v=hswv-k-IY-0&t=0s ★裁判例に基づく具体的な実務方針 <2時間ロングバージョン> https://www.youtube.com/watch?v=IwMgvN2Vceg&list=PLTLUK0HcSUrEyF1-SSSI4dZ-xEluQhZL1&index=5&t=213s 2022年04月25日発売の「ジュリスト2022年5月号(No.1571)」では、「知財紛争をめぐる動き」が特集されています。産学連携研究の課題では、オプジーボ訴訟が取り上げられています。オプジーボ訴訟は産学連携事件としてはかなり特殊なものとしたうえで、オプジーボ訴訟の背景と概要を紹介、日本の山岳連携の歴史を振り返り、オプジーボ訴訟について検討、あるべき産学連携研究について考察、同種の紛争回避方法について考察しています。
まとめの指摘にすべて同意できるものではありませんが、参考になります。 http://www.yuhikaku.co.jp/jurist 海外企業による日本企業への権利侵害訴訟の増加,紛争解決に向けた新たな制度導入など,知財紛争をめぐっては,国内外で注目すべき動きが見られる。本特集では,種々の事案や制度開始等を契機として,知財紛争の現状や課題,また,紛争予防のために企業等が留意すべきことは何か考察を加える。 ◇特集にあたって…小泉直樹……14 ◇産学連携研究の課題…𠮷田和彦……16 ◇企業と国際知財紛争…田中尚文……22 ◇第三者意見募集制度――「日本版アミカス・ブリーフ」への期待…工藤敏隆……28 ◇知財調停の現状と展望…國分隆文……34 ◇標準必須特許をめぐる動向――誠実交渉義務及びサプライチェーン問題に関する判決の調和と裁判管轄争いの激化…松永章吾……41 |
著者萬秀憲 アーカイブ
May 2025
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