『「パナソニック知財」の水道哲学、事業の優位確保から社会の課題解決へ転換する知財戦略』という記事を読みました。
「無形資産を巡らし、価値に変えて、世界を幸せにする」というパナソニック知財のパーパス(存在価値)を制定、「これまでの知財部門は、知財によって競争優位性を守ることが中心であり、権利を使い、場合によっては他社を排除することに知財を用いてきた。だが、その考えを転換し、必要な人たちに使ってもらい、必要な人たちが活用することで、より大きな価値を生み、社会課題の解決につなげたい」というパナソニックホールディングス 技術部門知的財産部の德田佳昭部長。 パナソニック知財の活動によって、社会課題の解決への貢献が加速することを期待したい。 「パナソニック知財」の水道哲学、事業の優位確保から社会の課題解決へ転換する知財戦略 掲載日 2023/01/11 13:16 更新日 2023/01/11 14:18 https://news.mynavi.jp/article/newsinsight-193/ 時代とともに変化する知財戦略 パナソニックグループは、2022年4月から事業会社(持ち株会社)制へと移行。7つの事業会社は、事業の専鋭化を進める一方、持ち株会社であるパナソニックホールディングスによって、グループ全社視点での事業支援と、成長戦略の推進を担う体制となっている。それに伴い、知財部門の役割は、グループ全社の視点と事業会社の視点の双方から、無形資産をマネジメントし、知財の活用を、事業の優位性と事業の安全を確保するという2つのスコープに加えて、新たな貢献として、社会的価値の創造という領域にスコープを拡大することを決定した。また、それにあわせて、パナソニック知財のパーパス(存在価値)を制定。「無形資産を巡らし、価値に変えて、世界を幸せにする」ことを掲げることにした。 パナソニック知財の取り組みは「知の水道哲学」 「パナソニック知財の新たな取り組みは、社会の公器や水道哲学の実践につながる。『知の水道哲学』を実現する必要がある」 「パナソニック知財は、ひとつの企業のひとつの部門であり、できることは限られている。だが、世界は幸せにするという観点から、無形資産を活用していく仕組みを作ることが大切であると考えている」 社会課題の解決へ貢献する知財戦略 パナソニック知財では、これまでの行動を、4つの観点=活動起点、仕える先、扱う資産、役割、から「リデザイニング(再設計)」する。 リデザイニングによる取り組みを2つの例 ひとつは、パナソニックグループ向けの技術インデックスの提供 もうひとつは社外への活動、オープンイノベーションハブの活動 パナソニック知財では、新たにPanasonic IP Innovationプロジェクト(仮称)をスタート 無形資産を活用した脱炭素への取り組みを推進するGreen IP Network(仮称)も開始 無形資産を巡らせた先にある豊かな未来。これからのパナソニックグループが目指す知財部門の姿とは https://news.panasonic.com/jp/stories/13646 パナソニック ホールティングス株式会社 コーポレートガバナンス報告書 https://holdings.panasonic/jp/corporate/investors/pdf/pcg.pdf 【補充原則3-1-3 サステナビリティについての取り組み等】 (3)知的財産への投資について 当社は、創業以来、「事業の前に知財あり」の精神のもと、知的財産を重視してまいりました。現在も、事業の成長と企業価値の最大化のみならず、社会課題の解決への貢献も視野に入れて、知的財産を取得・管理し、その効果的な活用を目指しています。その一環としまして、当社のアニ ュアルレポートには、環境問題の課題解決に向けた知的財産に係る取り組みをご紹介しています。また、サステナビリティデータブックには、公正な事業活動の一環として模倣品対策の取り組みをご紹介しています。 なお、当社の2021年度の研究開発費は4,198億円(売上高研究開発費率6.3%)、特許・実用新案・意匠の出願件数は約1.5万件(うち海外約8,600件)であり、2022年3月現在の保有特許権・実用新案権・意匠権は計約10万件(うち海外約5万8千件)、保有商標権は計約1万6千件(うち海外約1万1千件)です。 パナソニック ホールティングス株式会社 アニュアルレポート(統合報告書) https://holdings.panasonic/jp/corporate/investors/pdf/annual/2022/pana_ar2022j_a4.pdf 知的財産の取り組み 当社グループでは、現在と将来にわたる事業の優位性と安全の確保だけでなく、社会課題の解決への貢献も視野に入れて知的財産活動を推進しています。 まず、自らの事業を通じた社会貢献の視点では、当社グループの知的財産をデータ・人材情報を含めた無形資産ととらえ、当社グループの知的財産約10万件(2022年3月現在)のうち、環境関連技術および情報関連技術に関する特許権を中心にその概要・発明者情報等をインデックス化しています。事業会社制の下でも当社グループ全体でリソースを最大限に活用して事業化や新事業創出を促進するため、無形資産と人とをつなぐ当社グループ共通のツールとして運用を始めています。 また、社会課題の解決には、多様なヒト・モノ・コトがつながり、協力しあうことが必要と考えており、無形資産を起点としたオープンイノベーションにも取り組んでいます。例えば、急速充電技術に関する当社の未活用特許について外部パートナーを通じて海外スタートアップ企業に譲渡することによって、無電化地域に明りを灯すという当該企業の事業を共創・支援しています。また、「Low Carbon Patent Pledge(低炭素特許の無償開放に関する枠組み)(」以下、LCPP)に日本企業としては初めて参画し、LCPPウェブサイトに掲載する当社特許(人工光合成関連)を無償開放しています。 当社グループは、今後も、「サステナブル」で「ウェルビーイング」な社会の実現に資する技術・無形資産について、自社での事業化や外部パートナーとの共創による事業化を含め、さまざまな形で社会実装を促進することにより、社会貢献を進めます。 知的財産 https://holdings.panasonic/jp/corporate/sustainability/pdf/sdb2022j-intellectual.pdf 「無形資産を巡らし、価値に変えて、世界を幸せにする」パナソニックグループの知財部門 https://yorozuipsc.com/blog/5030294 パナソニックのOKRによる知的財産活動のマネジメント https://yorozuipsc.com/blog/okr パナソニックの伴走型IPランドスケープ https://yorozuipsc.com/blog/ip6573081
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「パブリック・ドメインの保護という観点からの発明の新規性理論」(特許庁審査第三部 加藤幹 上席総括審査官, パテント, Vol. 75, No. 12, P. 53, 2022)は、
「客観的にみて出願発明が公知技術の上位概念(「同一概念」という意味を含む)であることが出願発明が新規性を否定されるための必要十分条件であるという発明の新規性の考え方を確認するとともに、特許法 29 条 1 項各号の規定の趣旨が公知技術に効力が及ぶような特許権の設定を阻止することに尽きることを指摘した。 また、選択発明についての、原則として新規性は否定されるが進歩性が認められる場合に限り新規性も認められるとする考え方について検討した。そして、そのような考え方の根拠となったと思われる発明の新規性に関する当時の考え方が現在ではいずれも失われていることを指摘し、そのため現在では選択発明の新規性も客観的にみて出願発明が公知技術の上位概念であるかどうかで判断するべきであることを指摘した。 併せて、用途限定発明の新規性も客観的にみて出願発明が公知技術の上位概念であるかどうかで判断するべきであることを指摘した。」 というもので、選択発明や用途発明の新規性に関するモヤモヤ(「原則として新規性は否定されるが進歩性が認められる場合に限り新規性も認められるとする考え方」がどうにも納得しがたい)がすっきりした論文でした。 パブリック・ドメインの保護という観点からの発明の新規性理論 https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/4101 目次 1.はじめに 2.発明の新規性の考え方 3.一般新規性理論による公知技術の保護 4.選択発明の新規性 (1) 選択発明の新規性理論 (2) 発明の新規性に関する当時の考え方 (3) 発明の新規性に関する当時の考え方の現在 (4) 選択発明の新規性理論についての検討 5.引用発明を抽象的にしか認定できない場合 6.用途限定発明の新規性 7.おわりに 同氏による「パブリック・ドメインの保護という観点からの意匠の新規性理論」(「知的財産法学の新たな地平 高林龍先生古稀記念論文集」掲載)の論文も併せておすすめです。 知的財産法学の新たな地平 高林龍先生古稀記念論文集 単行本 – 2022/12/19 第12章 パブリック・ドメインの保護という観点からの意匠の新規性理論……加藤幹 https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8951.html 「年報知的財産法」は、毎年、過去1年間の判例、学説、政策・産業界、外国の動向を解説しているシリーズですが、「年報知的財産法2022-2023」が発刊されました。
今年のトピックスは、「ビジネス・コート創設と裁判のIT 化」、「特許出願非公開制度」、「想空間(メタバース)の技術・創作の現状と知的財産法」。 [2022 年 判例の動向]特許・実用新案法、商標法、不正競争防止法、著作権法 [2022 年 学説の動向]著作権法、特許法、不正競争・商標・意匠 [2022 年 政策・産業界の動向] [2022 年 諸外国の動向]米国、欧州、WIPO、中国、韓国 しっかり勉強します。 年報知的財産法2022-2023 高林 龍 三村 量一 上野 達弘 編 定価:税込 5,720円(本体価格 5,200円) 発刊年月2022.12 ページ数284ページ https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8949.html 内容紹介 過去1年間の判例、学説、政策・産業界、外国の動向を、いち早く捉えて解説する関係者必携の年報。重要トピックは特集ほかで解説。 目次 [知財実務の動き] ビジネス・コート創設と裁判のIT 化……片山英二(弁護士)/ 服部 誠(弁護士)/ 佐々木英人(弁護士) [法改正の動き] 特許出願非公開制度―― 機微技術の流出防止のための有効な手段となるか…… 玉井克哉(東京大学教授・信州大学教授) [特集]仮想空間(メタバース)の技術・創作の現状と知的財産法……前谷典輝( seymourpowell)/井原鉄吾朗(株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント)/平井佑希(弁護士・弁理士)/五味飛鳥(弁理士)/[司会]麻生 典(九州大学准教授)/ 末宗達行(金城学院大学講師) [2022 年 判例の動向] 判例の動き…… 三村量一(元知的財産高等裁判所判事・弁護士)/ 澤田将史(弁護士)/松下昂永(弁護士)/ 中内康裕(弁護士)/ 上野達弘(早稲田大学教授) [2022 年 学説の動向] Ⅰ 著作権法…… 今村哲也(明治大学教授)/黒田智昭(JCOM株式会社)/桑原 俊(早稲田大学非常勤講師・弁護士) Ⅱ 特許法…… 加藤 幹(特許庁審査第三部上席総括審査官) Ⅲ 不正競争・商標・意匠…… 志賀典之(追手門学院大学准教授)/末宗達行(金城学院大学講師)/ 五味飛鳥(弁理士) [2022 年 政策・産業界の動向] 政策・産業界の動き…… 中山一郎(北海道大学教授) [2022 年 諸外国の動向] Ⅰ 米国における知財の動き …… 萩原弘之(ニューヨーク州弁護士・米国特許弁護士)/石新智規(弁護士)/ 宮脇正晴(立命館大学教授) Ⅱ 欧州における知財の動き……アインゼル・フェリックス=ラインハルト(ゾンデルホフ&アインゼル法律特許事務所・弁理士)/バーナード正子(同)/矢島裕之(同)/伊藤 潤(同)/中川隆太郎(弁護士) Ⅲ WIPO をめぐる国際動向……宮本智子(世界知的所有権機関特許・技術法務部特許法・条約課) Ⅳ 中国における知財の動き…… 秦 玉公(金沢工業大学大学院客員教授・中国弁護士)/ 蔡 万里(豊橋技術科学大学准教授) Ⅴ 韓国における知財の動き……張 睿暎(獨協大学教授 ) 『(第125回)知財実務オンライン:「新春!著作権の潮流を語る~メタバース、音楽教室裁判、著作権法改正etc~」(ゲスト:骨董通り法律事務所 For the Arts 代表 福井 健策)1時間42分』をアーカイブ動画で視聴しました。
著作権は難しい問題が山積している、あらためて思いました。
(第125回)知財実務オンライン:「新春!著作権の潮流を語る~メタバース、音楽教室裁判、著作権法改正etc~」(ゲスト:骨董通り法律事務所 For the Arts 代表 福井 健策) https://www.youtube.com/watch?v=DZp0hYhcbNI 「増補改訂版 日米欧中対応PCT明細書作成のキーポイント―法令・審査基準・裁判例等から見た最適明細書の検討―」(弁理士 佃 誠玄 著、発行 2022年12月27日 A5判 430ページ)は、6年前の初版に、各国の法改正・審査基準の改訂や裁判例などが追加されているほか、「第3部 発明の類型に応じた検討」が加わり、発明の類型別(機能的に表現される発明、 (サブ)コンビネーション発明、ネットワーク発明、ソフトウェア関連発明、用途発明、選択発明・数値限定発明、製造方法で特定される発明)に、各国比較を行い、PCT出願明細書が備えるべき要件について書かれています。必要なときに活用できそうです。
増補改訂版 日米欧中対応PCT明細書作成のキーポイント: 法令・審査基準・裁判例等から見た最適明細書の検討 (現代産業選書) 単行本 – 2023/1/4 https://books.chosakai.or.jp/books/catalog/30831.html 一つの出願で多数の国や地域において出願日を確保できるPCT出願に関して詳細に解説! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ PCT出願は、一つの出願で多数の国や地域において出願日を確保できる有用な制度であります。しかしながら、多数国に向けたPCT出願であっても、明細書は出願毎に1つしか提出できません。いずれの国においても、補正は出願時の明細書を基礎とし、新規事項追加は許されません。この意味で、PCT出願明細書の作成は「一回勝負」であります。しかしながら、現実の審査・訴訟は各国毎に実務が異なります。このため、各国移行後の審査で迅速に権利化でき、訴訟でも適切な技術的範囲を確保できるような明細書を作成することは難しい。 本書では、PCT条約および規則、各国の法令・審査基準・裁判例等を踏まえつつ、単一の明細書で各国での審査・訴訟に適切に対応できるように、明細書が備えるべき共通条件を抽出し、実務上の指針とすることを目標としております。 初版が出版されてから6年が経過し、その間、各国では法改正、審査基準の改訂等があり、また多くの裁判例も出ております。増補改訂版では、実務上の影響が大きいと思われるこれらの情報をなるべく収集し、盛り込みました。また、特許実務は、発明の類型毎に特徴的な論点があり、それぞれの類型ごとに各国の実務もまた多様であることから、増補改訂版では、新たに追加した第3部において、それら発明の類型別に、各国比較を行い、PCT出願明細書が備えるべき要件について検討しております。実務者の座右の書として活用いただける一冊です。 ◎主要目次 第1部 明細書全体についての検討 第1章 三極共通出願様式 第2章 クレームコピー 第3章 「発明」という用語 第4章 課題・効果の記載 第5章 相互参照と優先権主張 第6章 補正の根拠としての図面 第2部 各記載項目についての検討 第1章 発明の名称 第2章 技術分野 第3章 背景技術 第4章 発明の概要 第5章 図面の簡単な説明 第6章 発明を実施するための形態 第7章 産業上の利用可能性 第8章 符号の説明 第9章 先行技術文献リスト 第10章 請求の範囲 第11章 要約書 第12章 図面 第3部 発明の類型に応じた検討 第1章 機能的に表現される発明 第2章 (サブ)コンビネーション発明 第3章 ネットワーク発明 第4章 ソフトウェア関連発明 第5章 用途発明 第6章 選択発明・数値限定発明 第7章 製造方法で特定される発明 「デザインと知的財産法実務─ブランドビジネスのための権利保護─ 」(弁護士・弁理士 黒田 薫 著、2022年12月18日発行)を読みました。
デザイン保護は意匠法が中心という印象が強いと思われていますが、実際には商品や包装を商標法で保護、機能性が特徴的であれば特許法で対応、キャラクターは著作権法で保護、これらで保護できない場合、見た目が似ていれば不正競争防止法で対応しています。 これら知財ミックスによる模倣品対応について、意匠法・商標法・著作権法・不正競争防止法・特許法・実用新案法の視点から横断的に解説されています。 2019年の意匠法大改正もしっかり盛り込まれており、参考になります。 デザインと知的財産法実務─ブランドビジネスのための権利保護─ 弁護士・弁理士 黒田 薫 著 2022年12月18日発行 A5判・389頁 ISBN:9784865565379 http://www.minjiho.com/shopdetail/000000001374/ 令和元年改正意匠法による画像意匠や建築物の外観、店舗の内装などの新たな保護範囲を網羅! 本書の特色と狙い ビジネスで重要な役割を果たすデザインを保護するために必要な権利保護を、意匠法・商標法・著作権法・不正競争防止法・特許法・実用新案法の視点から横断的に解説! デザイン保護は意匠法が中心という印象が強いが、実際には商品や包装を商標法で保護、見た目が似ているか否かは不正競争防止法で判断、キャラクターは著作権法、機能性が特徴的であれば特許法で対応、権利期間や登録の有無なども考慮のうえ、ブランドビジネスにどのように活かしていくのか解説! 本書の主要内容 第1章 法律の概要 1 知的財産法 2 特許法の概要 3 実用新案法の概要 4 意匠法の概要 5 商標法の概要 6 著作権法の概要 7 不競法の概要 第2章 デザイン別保護方法:(1)商品の形態 1 商品の形態の保護の概要 2 意匠法による保護 3 特許法・実用新案法による保護 4 商標法による保護 5 著作権法による保護 6 不競法による保護 第3章 デザイン別保護方法:(2)画像デザイン 1 画像デザインの保護の概要 2 意匠法による保護 3 著作権法による保護 4 不競法による保護 第4章 デザイン別保護方法:(3)建築物の外観 1 建築物の外観の保護の概要 2 意匠法による保護 3 商標法による保護 4 著作権法による保護 5 不競法による保護 第5章 デザイン別保護方法:(4)内装デザイン 1 内装デザインの保護の概要 2 意匠法による保護 3 商標法による保護 4 著作権法による保護 5 不競法による保護 第6章 デザイン別保護方法:(5)キャラクター等 1 キャラクター等の保護の概要 2 著作権法による保護 3 商標法による保護 4 不競法による保護 5 意匠法による保護 知財弁護士の仕事 弁護士・弁理士・ニューヨーク州弁護士 黒田 薫 https://www.lskyokai.jp/houkadaigakuin_2_09/ 「無知財は無知罪―訴訟大国アメリカでのビジネスで、知的財産を知らないとエライ目に!それはもう犯罪です!」岸本 芳也【著】を読みました。
入門編と実践編で、米国での知財紛争に関する事項が初級、中級レベルで概観できます。 https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784862808837 出版社内容情報 知財に無知なのは、もはや犯罪です! たとえ米国内で直接ビジネスをやっていなくても、「あなたの会社は米国特許権を侵害している」と訴えられる--そんなことは当たり前、と著者は警告します。 特許や著作権など知的財産(知財)について、米国知財紛争に巻き込まれないために押さえるべきポイントを、米国知財訴訟に経験豊富な弁護士がわかりやすく解説。入門的な知識から、実務者のための実戦術まで、すべてのビジネスパーソンに役立つ内容です。 知財の保護範囲拡大、安全保障との関係で深刻さを増す「特許・発明技術情報の輸出管理」など、最近の重要なトピックまでカバー。米国はなぜ「訴訟大国」なのか?コカ・コーラが特許を取らない理由は?あなたの会社を虎視眈々と狙っている「パテント・トロール」って何者?ミッキー・マウスの著作権がついに消滅?「AIと知財問題」など、思わず人に話したくなるうんちくを盛り込みながら、複雑な法律知識を易しくかみくだいていきます。 情報が実用的で具体的なのは、米国で長く企業の知財訴訟を手掛けてきた著者ならでは。きっとあなたのビジネススキルに直結します。 内容説明 もう怖くない。知的財産を知るから始める入門書!知財に関する基礎的知識と、知財紛争のリスクが高い米国での実戦的な対応策をまとめた1冊! 目次 1 入門編(すべてのビジネスで避けて通れない知財リスク;知的財産(知財)の基礎的知識 米国の知財「活用」ケーススタディ 知財で立ち遅れる日本) 2 実戦編(米国は訴訟大国?!;米国での特許侵害訴訟;あなたの会社も狙われている!米国で猛威をふるう「パテント・トロール」って何者?;M&Aや事業提携に不可欠な「知財デュー・デリジェンス」;特許・発明技術情報の輸出管理) 著者等紹介 岸本芳也[キシモトヨシナリ] シュグルー・マイアン外国法事務弁護士事務所代表パートナー。外国法事務弁護士、ニューヨーク州弁護士、コロンビア特別区弁護士、連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)弁護士、日本国弁理士、米国弁理士、元通産省(現経産省)特許庁審査官、ジョージワシントン大学ロースクール法学修士(知的財産法)。米国特許訴訟代理、特許侵害・無効性鑑定、ライセンス交渉、IPR・再審査、知財デュー・デリジェンス、輸出管理などのほか、米国知財訴訟に対する防衛戦略などのリーガル・カウンセリングに精力的に取り組んでいる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) 「知的財産で社会を変える SSP−IPの挑戦」(青山学院大学知財と社会問題研究所(編集)発売日 2022年12月27日)を読みました。
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784496056352 青山学院大学総合プロジェクト研究所のひとつである「青山学院大学知財と社会問題研究所(Institute for Solving Social Problems through Intellectual Properties : SSP-IP)」は、企業等が所有する知的財産を活用して社会問題解決のためのモデルを構築することを目的として2021年1月に設立され、 (1)TKP(「鉄拳プロジェクト」)「ゲームを活用した社会課題解決の可能性の研究」 株式会社バンダイナムコエンターテインメント(BNE)との共同研究 社会問題解決のひとつの手段としてゲームがもつ可能性そのものを掘り起こす作業に専心。 (2)R3K「メガマーケティングによるゲーム/eスポーツの社会的受容促進に関する研究」(科研費課題番号:JP21K12486) という2つの研究プロジェクトがおこなわれているようです。 知財と社会問題研究所 https://www.aoyama.ac.jp/research/research-center/project-research-inst/ssp-ip/ 本書は、『「知的財産」には社会問題を解決する手段としてのポテンシャルがあるのではないか、また逆に社会問題解決のためには知財が活用できるのではないか、をコンセプトにゲームにおける社会問題解決の可能性、メガマーケティングによるゲーム/eスポーツの社会的受容促進の可能性を探る。』ものです。 『「知財(Intellectual Property: IP)」というと、まずは「企業のライセンスビジネス」や「クリエイターの著作権」などを思い浮かべることが多い』という認識に違和感を感じながらも、知的財産にはこういう世界が広がっているという感じです。 『SSP-IPが対象とする「知財」なるものが、ゲームやeスポーツといった領域に偏っていることはあきらかです。しかしこれはあくまでもファーストステップにすぎません。』 今後に期待したいと思います。 目次 序 章 「知財の森」をさまよい歩き、「社会問題」の細部に触れる 対 談 ゲームとジェンダー、ポリティカル・コレクトネス 第1章 ゲーム実況の職業化 第2章 キャラクターによる多文化共生理解 第3章 精神分析とゲーム障害 第4章 ユニバーサルeスポーツの実践 第5章 聖地巡礼-IPを活用した地域振興 おわりに 「宣言」を終えて、つぎのステップへ 2022年11月に出版された「役員・経営者のための知的財産Q&A」は、
2021年のコーポレートガバナンス・コード改訂により、コーポレートガバナンス・コードに知的財産に係る記述が盛り込まれたことをきっかけとして生まれてきている、知的財産について基礎知識から押さえておきたいとの経営層のニーズに対し、 『法律的な側面に光を当てつつも、企業活動に携わるビジネスパーソンの皆様が、日々の事業活動の中で知っておきたい知的財産の基礎知識から、権利化や契約等による利活用のポイント、知的財産を巡る紛争、そして知財戦略と事業経営についてQ&A形式で解説しています。さらに、コーポレートガバナンス・コードへの対応や、SDGs・ESG経営やDXといった最近の概念と知的財産についても言及し』た役員・経営者向けの本です。 52のQ&Aがあり、特許に注力しがちな知財部員にとっても参考になるでしょう。 役員・経営者のための知的財産Q&A 出版社 株式会社中央経済社ホールディングス 弁護士法人イノベンティア 編著 弁理士法人イノベンティア 編著 定価:3,850円(税込) 発行日:2022/11/11 A5判 / 312頁 https://innoventier.com/publicationdetail?pubid=415 企業経営において押さえたい知的財産の基礎知識や利活用のポイントから、紛争対応とその予防までをQ&A形式で解説した実践的な1冊。 「役員・経営者のための知的財産Q&A」 目次 第1章 総論 1 知的財産とはどのようなものか 2 企業が知的財産を持つことにはどのような意味があるのか 3 知的財産は事業収益にどのように貢献するのか 4 知的財産にはどのような種類があるのか 5 事業分野によって関係する知的財産の種類は異なるのか 第2章 特許権 6 事業活動において特許を取ることにはどのような意味があるのか 7 特許は,どのような技術について,どこで,いつ取得すべきなのか 8 特許を取るにはどのような手続を取るのか 9 特許権侵害は経営に対してどのようなリスクをもたらすのか 10 製品開発においてはいつどのような特許調査をすべきか 11 IPランドスケープとは何か 第3章 著作権 12 著作物とはどのようなもので,著作権法によりどのような保護を受けるのか 13 コンテンツやソフトウェアはどのように流通するのか 14 他人の著作物を利用するためには何をすればよいのか 第4章 商標権 15 商標とはどういうもので,どのような種類があるのか 16 商標登録によって何ができるのか 17 商標登録に際して何を留意すべきか 第5章 営業秘密 18 営業秘密とはどのようなものか 19 営業秘密はどのように保護するのか 第6章 意匠権、データその他の知的財産 20 意匠はどのようなもので,どのような要件のもとで保護されるのか 21 データはどのように保護し,活用するのか 22 他にどのような知的財産があるのか 第7章 事業活動と知的財産関連契約 23 オープンイノベーションとはどのようなもので,そのために必要な契約はどのようなものか 24 他社と共同で商品開発やブランディング活動をする場合にはどのような契約が必要か 25 標準化された技術やパテントプールが保有する技術はどのように導入するのか 26 他社のソフトウェアの自社製品への導入・利用にはどのような契約が必要か 27 紛争を回避しつつ他社の特許発明を利用するためにはどのような契約が必要か 28 海外市場への参入に際して必要となる知的財産の契約処理はどのようなものか 第8章 知財戦略と事業経営 29 発明を発掘し,創出するにはどのような社内体制が必要になるのか 30 従業員が創作した知的財産は社内的にどのように取り扱われるのか 31 発明奨励制度はどのように作るのか 32 オープン・クローズ戦略とは何か 33 防衛出願とはどのような出願なのか 34 知的財産権を開発の方向性を見出す指針とするにはどのような手法があるのか 35 ブランディングにおいて商標管理はどのようにするのか 36 ブランディングにおいて意匠登録はどのように利用するのか 37 進出先の市場に応じた知的財産の活用方法にはどのようなものがあるのか 38 知的財産投資にはどのようなものがあり,企業経営にどのように影響するのか 39 知的財産をマネタイズするにはどのような手法があるのか 40 M&Aにおいて知的財産はどのように位置づけられるのか 第9章 知的財産をめぐる紛争とその予防 41 知的財産の管理と活用のための人員体制や規程類の整備はどのようにするのか 42 知的財産をめぐる紛争にはどのような種類があり,それぞれどのようなリスクがあるのか 43 知財紛争はどのような手続によって解決されるのか 44 知財紛争に対応するための社内体制と経営判断はどうあるべきか 45 知財紛争回避のためにはどのような活動をするのか 46 知財紛争を戦うにはどのように外部専門家を利用するのか 47 資材や部品の供給・調達における知的財産権侵害の問題はどのように回避するのか 第10章 知的財産と企業価値・コンプライアンス 48 知的財産は企業会計ないし税務上どのように扱われるのか 49 知的財産に関するコーポレートガバナンス・コードの改訂にはどのように対応するのか 50 SDGs,ESG経営は知的財産とどのように関係するのか 51 DXを進めるうえで知的財産はどのように関係するのか 52 知的財産権の行使が独占禁止法に抵触するのはどのような場合か 日経ビジネス シリーズ「不屈の路程」の『キングジム・宮本彰社長 「テプラ」成功の慢心が招いた地獄』(日経ビジネス2022年12月26日・2023年1月2日号 88~91ページ、2022.12.22)では、
『創業家に生まれ、「会社を継ぐ」との自覚から、常に1番を目指して人一倍の努力を重ねてきた。紙需要の先行きに危機感を抱き、電子文具へ参入。ラベルライター「テプラ」を大ヒットに導く。この成功で「テプラ社長」と名を上げたものの、共同開発メーカーとの訴訟では地獄を味わった。』と、特許侵害で100億円の請求を受け、販売差し止めの期限のわずか10分前に交渉が決着した経緯が書かれています。 『この出来事をきっかけに、特許について色々と勉強しました。今では社外監査役に必ず、特許に詳しい弁理士を置いています。他社が特許を侵害するケースもあれば、知らずに侵害してしまう場合もある。迅速に、的確に対応する体制づくりは、経営で一番気をつけている部分です。』 特許で苦労された社長ならではの取組みです。 キングジム・宮本彰社長 「テプラ」成功の慢心が招いた地獄 2022.12.22 https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00129/121900090/?n_cid=nbpnb_mled_pre キングジム、開発費増額 特許料の支払い終了で 2012年8月28日 https://www.nikkei.com/article/DGXNZO45447530X20C12A8DT0000/ デジタル文具を先取り 「テプラ社長」の成功と挫折 キングジム(上) 2017/10/5 https://style.nikkei.com/article/DGXMZO21689630Z20C17A9000000/ 「テプラ」発明の2人に5600万円 高いのか安いのか 2011年10月27日 https://www.j-cast.com/kaisha/2011/10/27111433.html コーポレート・ガバナンス報告書 https://www.kingjim.co.jp/ir/upload_file/m005-m005_05/CG20220929.pdf 補充原則3-1-3 サステナビリティについての取り組み等】 当社は、経営理念「独創的な商品を開発し、新たな文化の創造をもって社会に貢献する」のもと、経営戦略の遂行に努めており、サステナビリティ、人的資本・知的財産への投資について、以下の取り組みを行っております。取り組みの内容は、当社ウェブサイトにおいて開示を行っております。 ウェブサイト:https://www.kingjim.co.jp <知的財産への投資> 当社は、ファイル依存の収益構造からの脱却を図ることを経営課題と捉えており、文具事務用品事業におけるキングファイル、テプラと並ぶ第3の柱の構築のため、新規事業と次世代商品の開発に積極的に投資をしてまいります。また、当社の強みである柔軟な開発体制により創出される独創的で多彩な商品群を権利保護するため、知的財産権の獲得を推進しております。 統合報告書 https://www.kingjim.co.jp/ir/library/integrated_report.html 2022年12月7日に行われたWIPO⽇本事務所ウェビナー「日本の部品素材分野の国際競争力強化ラウンドテーブル~サステナビリティ実現に向けた国際知財戦略の在り方~」のアーカイブ動画を視聴しました。
https://www.wipo.int/about-wipo/ja/offices/japan/webinars_in_japanese.html 本ラウンドテーブルは、開催時に340名を超える方が視聴されたようです。 主催者挨拶(WIPO日本事務所 澤井智毅所長)では、サッカー「FIFAワールドカップカタール2022」での日本チームの活躍、あきらめずにボールを追い求め成果に繋げていく献身的な姿、をイノベーションというゴールに向けた愚直な知財戦略に重ねた話、ノーベル賞を受賞した日本産業界の寄与、イノベーションや知財の伝道師としてのWIPO日本事務所の活動、WIPOグリーンなどの紹介も、今回のラウンドテーブルの背景、意図などが良くわかりました。 基調講演は、「サステナビリティと知財戦略」と題した、明治大学 高倉成男名誉教授でした。 「サステナビリティ(持続可能性)とは?(持続可能な開発、SDGs、ESG、CSR)」「ガットUR交渉(1986-93)からMDG(2000-2015)へ、そしてSDGs(Sustainable Development Goals, 2015-2030)へ」「SDGsを1つの指標とする価値創造経営(知財価値の可視化、経営陣と知財部門の連携)」「部品素材分野の課題(カーボンニュートラル、国際競争力の強化、R&Dのデジタル化、経済安全保障)と知財部門の役割(研究開発・イノベーションの中枢的機能、個々の発明を適切につなぐミクロな権利管理:技術プッシュ、価値創造経営を支えるマクロな知財戦略:デマンドプル)」というスライドで約15分間の講演でした。 パネルディスカッション「サステナビリティ実現に向けた国際知財戦略の在り方」は、 [モデレーター]駒井慎二氏 (ピラミデ国際特許事務所 代表弁理士) [パネリスト] 小川 眞治氏(DIC 株式会社 知的財産センター ディレクター 弁理士) 杉村 純子氏(日本弁理士会 会長) 高倉 成男氏(明治大学 名誉教授) 藤田かおる氏(株式会社カネカ 知的財産部 Quality of Life IPグループリーダー 上席幹部 弁理士) 八巻 隆博氏(日鉄総研株式会社 知的財産事業部 特別研究主幹) 澤井 智毅氏(WIPO日本事務所長) 議題は、下記の通りで、多岐にわたり参考になるディスカッションでした。
特許庁では、毎年、特許出願技術動向調査を実施していますが、12月28日、令和5年度調査予定テーマが公表されました。「新市場の創出が期待される分野、国の政策として推進すべき技術分野を中心に、今後の進展が予想される技術テーマを選定」しているとのことです。
世界の特許をキーワード・特許分類で検索し、調査対象テーマの文献集合を抽出し、調査会社の解析者が特許文献を1件ずつ読み込み、ノイズ排除・技術区分付与を行うことにより、精度の高い解析を行っており、市場環境調査、政策動向調査、研究開発動向調査を行っているのが特徴で、有識者委員会からの助言等を踏まえつつ、日本の強み等を分析し、日本の企業・大学等が目指すべき研究開発の方向性を取りまとめていて、一般、機械、化学、電気・電子の4分野に分けて、平成11年度からの調査結果が公開されており、参考になります。 特許出願技術動向調査 https://www.jpo.go.jp/resources/report/gidou-houkoku/tokkyo/index.html#theme 令和5年度調査予定テーマ パッシブZEH・ZEB ドローン 全固体電池 ヘルスケアインフォマティクス 量子計算機関連技術 令和4年度調査テーマは、令和5年4月~5月頃に公表する予定とのこと。 LiDAR スマート物流 ヒト幹細胞関連技術 ミリ波帯のMIMO及びアンテナ技術(5Gへの応用を含む分析) カーボンニュートラルに向けた水素・アンモニア技術(製造から利用まで) |
著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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