「パブリック・ドメインの保護という観点からの発明の新規性理論」(特許庁審査第三部 加藤幹 上席総括審査官, パテント, Vol. 75, No. 12, P. 53, 2022)は、
「客観的にみて出願発明が公知技術の上位概念(「同一概念」という意味を含む)であることが出願発明が新規性を否定されるための必要十分条件であるという発明の新規性の考え方を確認するとともに、特許法 29 条 1 項各号の規定の趣旨が公知技術に効力が及ぶような特許権の設定を阻止することに尽きることを指摘した。 また、選択発明についての、原則として新規性は否定されるが進歩性が認められる場合に限り新規性も認められるとする考え方について検討した。そして、そのような考え方の根拠となったと思われる発明の新規性に関する当時の考え方が現在ではいずれも失われていることを指摘し、そのため現在では選択発明の新規性も客観的にみて出願発明が公知技術の上位概念であるかどうかで判断するべきであることを指摘した。 併せて、用途限定発明の新規性も客観的にみて出願発明が公知技術の上位概念であるかどうかで判断するべきであることを指摘した。」 というもので、選択発明や用途発明の新規性に関するモヤモヤ(「原則として新規性は否定されるが進歩性が認められる場合に限り新規性も認められるとする考え方」がどうにも納得しがたい)がすっきりした論文でした。 パブリック・ドメインの保護という観点からの発明の新規性理論 https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/4101 目次 1.はじめに 2.発明の新規性の考え方 3.一般新規性理論による公知技術の保護 4.選択発明の新規性 (1) 選択発明の新規性理論 (2) 発明の新規性に関する当時の考え方 (3) 発明の新規性に関する当時の考え方の現在 (4) 選択発明の新規性理論についての検討 5.引用発明を抽象的にしか認定できない場合 6.用途限定発明の新規性 7.おわりに 同氏による「パブリック・ドメインの保護という観点からの意匠の新規性理論」(「知的財産法学の新たな地平 高林龍先生古稀記念論文集」掲載)の論文も併せておすすめです。 知的財産法学の新たな地平 高林龍先生古稀記念論文集 単行本 – 2022/12/19 第12章 パブリック・ドメインの保護という観点からの意匠の新規性理論……加藤幹 https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8951.html
0 Comments
Leave a Reply. |
著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
カテゴリー |