産業構造審議会知的財産分科会第9回財政点検小委員会(2024年11月22日)の議事録が公開されました。 配布資料1「特許特別会計の財政運営状況等」の8頁(特許の現存率の推移)、12頁(特許出願件数動向)が気になっていたのですが、下記のような説明と質疑があったことで、よく理解できました。 特許の現存率の推移については、詳細な検討結果を待たなければいけませんが、議論されている要因だけではないような気がしています。 特許出願動向で、今年の7,8月に大きく増えているのが、特定のAI関連の企業からの出願によるものという説明で納得しました。 産業構造審議会知的財産分科会第9回財政点検小委員会(2024年11月22日)の議事録 https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/zaiseitenken_shoi/document/index/09_gijiroku.pdf 【資料1】特許特別会計の財政運営状況等 https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/zaiseitenken_shoi/document/09-shiryou/siryo01.pdf ○田岡総務課長の説明 8ページをお願いいたします。令和5年度における歳入増(現存率の上昇)についてです。令和5年度の歳入増の要因として、先ほどお示しした反動減の影響はほとんど生じていないという点のほかに、近年、設定登録から10年から13年経過した特許の権利の現存率、これは特許権の登録件数に対する現存件数の割合を示しますけれども、ここ数年で3%から8%程度上昇したことが挙げられます。10年目から13年目にかけての現存率が高いということは、10年から13年前に生まれた権利が長く使われているということでありまして、その要因は正確には把握が難しいのですけれども、1つ考えられるのは、従来より真に質の高い権利が多数生まれた可能性があるというものです。 10年から13年前には特許査定率が向上しております。これは審査請求期間の短縮化、審査請求料の引上げの施策を行ったことにより、出願人が真に権利化すべきものを適正に審査請求するようになったことによるものと考えられます。特許権の維持に必要な特許料収入は、歳入の約46%を占めておりまして、引き続き現存率の推移については注視してまいりたいと思っております。・・・ 12ページをお願いいたします。まず特許の出願件数動向についてです。棒グラフが月ごとの件数、折れ線グラフが月ごとの年度の累計件数の推移となります。青が2022年度、黄色が2023年度、緑が2024年度、今年度分でございます。今年度の上半期は、昨年9月に引き続きまして、7月、8月に特定の企業の大量出願がございました。それもありまして、年度の累計件数が前年度同期比でプラス0.6%と横ばいになっております。前年度から大きな変更はございません。 ○亀坂委員 とても丁寧に説明していただいて、ありがとうございます。ずっと私たち委員は、もっとこれを開示してくださいとか、もっと詳しくこれも出してくださいといろいろな注文を、とてもハードルが高い注文を出し続けてきたのですけれども、コメントをさせていただいたことをどんどん追加で情報提供してくださって、できる限りの分析をしてくださって、本当にありがとうございます。 まず、資料の中で気になったところをスライドのページ順にコメントさせていただきたいのですけれども、まず確認に近いことになってしまうと思うのですが、スライドの12ページのグラフが気になりました。このグラフを見ると、2023年度は黄色というかオレンジのような色で9月が突出していて、2024年度の黄緑色の棒グラフも7月、8月がやや突出しているように見えるのですけれども、これは特定企業の特許出願による一時的な棒グラフの変化であって、特許庁全体の歳出入にはほとんど影響がないものと考えて良いのかというのが1点目の質問です。 ○小林委員長 では、まず1点目の質問について、事務局お願いします。 ○田岡総務課長 御指摘のとおり、昨年の9月と今年の7月、8月には特定企業からの大量出願が1万件とかそういう単位で出てきたわけでございますが、特許の出願料は14,000円でございますので、歳入へのインパクトはそれをかけ算した程度だと思います。 ○滝澤委員 ありがとうございます。御説明ありがとうございました。 私からは2点お伺いしたいことといいますか、コメントに近いものかもしれませんけれ ども、8ページ目の特許の現存率の推移の図、非常に興味深いと思って拝見しておりました。この図をどのように見るかですけれども、例えば2020年と2023年の11年目辺りですと、現存率10%ぐらい差が出ていて、かなり大きいという印象があるのですが、これは2020年の11年前というと、リーマンショックの直後辺りなので、例えば2020年の青い線の方がユニークな集団なのか、それとも今回の歳入増の要因として指摘されていますが、2023年の赤い線の方がユニークなのかというのが少し読みにくいのかなというのを拝見していました。2019年以前の状態が分かれば判断しやすいところもあるかと思うのですが、どちらがユニークなのかということを図を見ていてちょっと思いました。 以上、感想です。 もう一点は、従前お伺いしておけばよかったのですけれども、12ページ目の特許の出願件数の動向でして、特定企業の大量出願を除くとおおむね前年同様というような話でしたが、この出願主体についてはどうだったのかということ。例えば、長官もおっしゃいましたけれども、スタートアップとか大学とか、そういったところのイノベーションを期待したいというようなこともありましたが、この出願されている主体がどうなっているのかをもし御存じでしたら、御教示いただければと思います。 以上です。 ○小林委員長 では、事務局、お願いいたします。 ○田岡総務課長 まず先に後ろの方の、2問目の御質問の特許出願件数での特定企業、これは会社名は伏せさせていただきますけれども、AI関連の企業からの出願でございます。かなり大きな企業の大量出願があったということでございます。 1つ目の8ページの現存率の上昇の分析につきましては、私どもも今回、新しく試みをしたものもございますので、さらにそれを遡ってのトレンドがどうであったかというところは、改めて私ども追ってみたいと思っております。 以上でございます。 ○滝澤委員 2点目なのですけれども、その特定企業のところを除いた出願の動向のこと をお伺いしていて、内訳はあまり変わっていないかどうかというところです。大学が増えたとか、スタートアップが増えたとか。 ○小林委員長 事務局から回答をお願いいたします。 ○中野調整課長 私からお答えします。おっしゃる点に関しましては、それほど大きなトレンドの変化はございません。ただ、業界別に見ますと、ソフトウエア関連が少し増えたり、機械関連が少し減ったり、そういうところは中にはございますけれども、大きなトレンドの変化はございません。 ○戸田オブザーバー 日本知的財産協会の戸田です。オブザーバー参加で僭越ですけれども、発言させていただきます。 当初から特許特別会計の剰余金の推移ですとか、料金値上げを含む各種施策に関わってきた者として、現在、V字回復基調にある状況を大変うれしく思っています。特許庁長官をはじめ、関係者の皆様の御尽力に深く敬意を表したいと思います。 幾つかコメントを申し上げます。 1つ目ですが、私も8ページ目の特許設定登録後10年から13年が経過した現存率が上昇しているというところに注目しています。 先ほど滝澤委員からもご指摘がございましたけれども、このような現象が、どのような分野で、どんな権利者に起因するものなのか。分解能を高めて調査・分析してみる必要があるのではないかと思っています。あくまでも私見ですけれども、10年以上前に出願したというものの特許の現存率が高まるということは、特許ポートフォリオの新陳代謝がうまく機能していないという可能性もあるのではないかと思っています。 近年、よく言われていますけれども、発明が小粒化して、改良型のものが増えており、過去の基本的な発明の価値が相対的に高まったが故に、過去の特許の権利を維持しているのではないかという仮説も成り立つと思われます。 このような状況が進むとすれば、研究開発や発明の現場に対して警鐘を鳴らすとか、先ほど小野長官からもお話がございましたけれども、もっとチャレンジングな研究テーマやイノベーションの創出に取り組むべき、との発信を行うことも重要になってくるかもしれません。 ○山内委員 明治大学の山内です。オンラインで失礼します。 途中、大学の用事の方で中座してしまいまして、資料1の方に話が戻ってしまうのですけれども、2点、全体としてコメントさせていただきたいと思っております。 1つは、現存率の上昇のメカニズムの話でして、既に恐らく議論されたのかとも思うのですけれども、本来は、値上げをすれば現存率は下がるというのが自然な流れなわけですが、出願時点で既に厳選されたということであれば、今後、出願は微減で、現存率が上昇することで、財政にはかなりのプラスになると考えられますし、逆に、もし企業内の知財の予算の制約で厳選しているということであれば、企業の方で予算、財政の影響が一番大きな年金の支払いなわけですから、当然近々これを減らすという形で維持する特許も厳選していくということになりますので、そういう意味では、どちらが大きいのか。収支に対して、どういう影響があるのかというのは、引き続き検討が必要かと思っております。 先ほどちょっと途中で抜けてしまったのですけれども、審査請求料の値上げとか、そう いったことで厳選が進んでいるのではないかみたいなお話をされていましたが、あとは審査請求期間が短くなったりもしていますので、そういう意味では、厳選する期間が短くなって、質の方にも影響があった可能性もありますし、査定率の上昇というのも出願が厳選した影響なのか、あるいは権利化すべきでないものがある程度交ざってきているのかとか、そういったものも含めて引き続き調査を進めていっていただければと思います。 ○ 小林委員長 ありがとうございます。現存率については、いろいろな御意見がありましたので、これからますますいろいろな観点から分析を進めていただくということをお願いしたいと思います。 Trends in Patent Survival Rates and Patent Application Numbers The minutes of the 9th Fiscal Review Subcommittee of the Intellectual Property Committee of the Industrial Structure Council (held on November 22, 2024) have been released. I was particularly interested in Page 8 of Document 1: Financial Management Status of the Special Patent Account (Trends in Patent Survival Rates) and Page 12 (Trends in Patent Application Numbers). The following explanations and Q&A helped me understand these topics better. Regarding the trends in patent survival rates, we will need to await detailed examination results. However, I feel there might be factors beyond those currently discussed. Concerning the trends in patent applications, I was convinced by the explanation that the significant increase in July and August this year was due to filings from specific AI-related companies. Your browser does not support viewing this document. Click here to download the document.
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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