パテント誌2024年2月号の「侵害予防調査についての一考察(角渕由英Yoshihide Tsunobuchi)」は、侵害予防調査に関する基本的事項、考え方とポイント、検索式の作成における留意点などについて、仮想事例も踏まえながら論じられた考察です。
侵害予防調査は、先行技術調査や無効資料調査と比べて難しい調査ですが、その理由と対応策も述べられており、参考になります。 侵害予防調査についての一考察 https://jpaa-patent.info/patent/viewPdf/4380 1. はじめに 2. 侵害予防調査とは 2.1 定義 2.2 目的 2.3 必要性 3. 侵害予防調査について 3.1 その特殊性、他の調査との違い3.2 考え方とポイント 3.3 レベル感 3.4 必要なスキル 4. 侵害予防調査の検索式 4.1 再現率と適合率 4.2 オールエレメントルール4.3 検索式のポイント 5. 侵害予防調査の仮想事例 5.1 調査対象の明確化 5.2 予備検索 5.3 特許分類とキーワードの選定5.4 検索式の作成 5.5 スクリーニング 5.6 対比検討 6. おわりに Infringement Prevention Investigation The article 'A Study on Infringement Prevention Investigation' by Yoshihide Tsunobuchi in the February 2024 issue of Patent Magazine discusses the basic matters, thoughts and key points about infringement prevention investigation, and notes on creating search queries, including hypothetical examples. Compared to prior art investigations and invalidity search, infringement prevention investigation is a challenging task, but reasons and countermeasures are also described, making it a useful reference.
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知財実務情報Lab.専⾨家チームの⾓渕由英弁理⼠・博⼠(理学)の「侵害予防調査について ⑭古い技術を調査して代替」は、確かにそのとおりです。
侵害予防調査というと、つい、網羅的に調べたくなってしまいますが、20年以上前に公知となっている古い技術を探すことで、の代替とすることができる場合があり、調査の手間暇、コストを大幅に削減できるので、有用なやりかたです。 侵害予防調査について ⑭古い技術を調査して代替 2024.04.02 https://chizai-jj-lab.com/2024/04/02/0324/ Searching for old technologies that became publicly known more than 20 years ago. The article 'Investigation for Infringement Prevention: Substituting with Old Technologies' by Yoshihide Tsunobuchi, patent attorney and PhD in Science, from the Intellectual Property Practice Information Lab's expert team, is indeed accurate. When it comes to investigations for preventing infringement, there's a tendency to want to conduct exhaustive searches. However, by searching for old technologies that have been publicly known for more than 20 years, it's possible to find substitutes, significantly reducing the time, effort, and cost of the investigation. This is a useful approach. Investigation for Infringement Prevention: Substituting with Old Technologies April 2, 2024 https://chizai-jj-lab.com/2024/04/02/0324/ 知財実務情報Lab. 専門家チームの高石秀樹弁護士・弁理士(中村合同特許法律事務所)が、【シュープレス用ベルト】事件(大阪地判令和5年1月31日・平成29年(ワ)第4178号、特許権侵害差止請求事件)について解説しています。
高林龍弁護士(創英国際特許法律事務所)もこの事件を取り上げています。 高林弁護士が書かれているように、特許第3698984号「シュープレス用ベルト」発明に関する特許訴訟と聞くと、知財高判平24・11・13(平成24(行ケ)10004号審決取消請求事件)の「構成の置換が仮に容易であったとしても、それによって予想できない顕著な効果があることを見出した場合には進歩性が認められるとした判決を想起」しました。この特許を巡ってまだ侵害訴訟が続いていたという事です。 結果は、特許第特許第3698984号について、本件特許出願時当時の当業者が、公然実施品の外周面を構成するポリウレタンに含有されていた具体的な硬化剤を特定できた蓋然性を認めて新規性否定する結果でした。 高石秀樹弁護士・弁理士、高林龍弁護士の解説、わかりやすく参考になりました。 なお、控訴審の判決(令和6年1月31日判決言渡、令和5年(ネ)第10026号 特許権侵害差止等請求控訴事件)も、大阪地裁の判断を維持しています。 判例研究【シュープレス用ベルト】事件 2024.03.19 https://chizai-jj-lab.com/2024/03/19/0310/ [高林]新規性喪失事由としての公然実施‐大阪地判令5・1・31シュープレス用ベルト事件‐2023.11.28 https://soei-law.com/patent/%E6%96%B0%E8%A6%8F%E6%80%A7%E5%96%AA%E5%A4%B1%E4%BA%8B%E7%94%B1%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%AE%E5%85%AC%E7%84%B6%E5%AE%9F%E6%96%BD%E2%80%90%E5%A4%A7%E9%98%AA%E5%9C%B0%E5%88%A4%E4%BB%A45%E3%83%BB1/ 令和6年1月31日判決言渡 令和5年(ネ)第10026号 特許権侵害差止等請求控訴事件 (原審・大阪地方裁判所平成29年(ワ)第4178号)判決 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/751/092751_hanrei.pdf 令和5年1月31日判決言渡 平成29年(ワ)第4178号 特許権侵害差止等請求事件 判 決 https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=91743 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/743/091743_hanrei.pdf Public Implementation Recognized in the Shoeless Belt Case In the Intellectual Property Practice Information Lab, Hideki Takashi, attorney and patent attorney from Nakamura Joint Patent Law Office, explains the "Shoeless Belt" case (Osaka District Court decision on January 31 of Reiwa 5, case number Heisei 29 (Wa) No. 4178, patent infringement injunction request case). Attorney Ryu Takabayashi from Soei International Patent Law Office has also covered this case. As Attorney Takabayashi mentions, hearing about the patent litigation concerning patent number 3698984 for the "Shoeless Belt" invention reminds one of the decision from the Intellectual Property High Court on November 13, Reiwa 24 (Heisei 24 (Gyo-Ke) No. 10004 decision cancellation request case), which stated, "Even if substituting components was easy, if an unexpected and significant effect was discovered, inventiveness could be recognized." It indicates ongoing infringement litigation regarding this patent. The result was that for patent number 3698984, the patent application at the time allowed for the presumption that practitioners in the field could identify the specific hardener contained in the polyurethane forming the outer surface of the publicly implemented product, thus negating novelty. The explanations by Hideki Takashi, attorney and patent attorney, and Ryu Takabayashi, attorney, were clear and informative. Furthermore, the appellate court decision (judgment delivered on January 31 of Reiwa 6, case number Reiwa 5 (Ne) No. 10026, patent infringement injunction appeal case) also upheld the Osaka District Court's decision. 特許出願非公開制度は,令和6年5月1日に施行され,施行日以後に行う特許出願に対して適用されることになっており、特許庁の周知活動も最終盤に入っているようです。特許研究、No.77(2024/3)に、「特許出願非公開制度の概要について」が掲載されています。
非公開出願は、多くとも200件/年と推定されています。 各企業では出願に当たって、今一度本制度を確認しておいた方が良いかもしれません。 特許出願非公開制度の概要について https://www.inpit.go.jp/content/100881307.pdf Implementation of the Patent Application Non- Disclosure System The Patent Application Non- Disclosure System is to be implemented on May 1, Reiwa 6 (2024), and will be applied to patent applications made on or after the implementation date. It seems that the Japan Patent Office's awareness activities are in their final phase. In Patent Research, No. 77 (March 2024), there is an article titled ' Outline of the System for Non-Disclosure of Selected Patent Applications.' The number of undisclosed applications is estimated to be at most 200 per year. It may be a good idea for each company to check this system once again before filing an application. Outline of the System for Non-Disclosure of Selected Patent Applications https://www.inpit.go.jp/content/100881307.pdf 「別冊パテント」第30号「イノベーションに資する技術情報の活用方策-先使用、ライセンス、消尽の視点を中心に-」の一部の論説が先行公開されています。
学習院大学法学部 横山久芳教授の「先使用権制度の検討―解釈論と立法論の双方に焦点を当てて―」が2月7日に先行公開されています。 横山久芳教授は、「先使用権が主張される場合には、(A)先使用者が開発した技術と同一内容の技術に他者が特許権を取得した場合と、(B)先使用者が自社技術を実施する過程で発明として認識していなかった技術に他者が特許権を取得した場合とがある。現行法は、特許発明と同一の発明を独立に完成させたことを先使用権の要件と規定していることから(A)の場合を念頭に立法化されていると考えられ、最高裁も(A)の場合に適合的な解釈基準を定立している。本稿は、現行法下の先使用権制度の趣旨を「発明の奨励」と捉える立場から、(A)の場合を念頭に置いた現行法の解釈のあり方を論じるとともに、立法論として、現行法とは別に、 (B)の場合を想定したルールのあり方を検討するものである。」としたうえで、「筆者があるべきと考える先使用権制度は、先使用者が特許発明と同一の技術的思想としての発明を完成させている場合には、発明奨励の観点からその発明の内容に即した広い保護を認めつつ、そうでない場合も、先使用に係る事業の継続性の確保の観点から、先使用に係る実施行為に最低限の保護を与えるべきというものである。」としています。 同志社大学法学部 井関涼子教授の「先使用権の緩やかな認定?―特許権の緩慢な死?」は、3月 29日に先行公開されました。 井関涼子教授は、「先使用権制度については、古く戦前から論じられ多くの優れた論考があり、確立し広く受容されている最高裁判決もあって、既に論じ尽くされているという感もある。それにもかかわらず、現在、先使用権が改めて脚光を浴びているのは、最近、オープン・クローズ戦略をとる企業が発明を秘匿化した上で、他社の特許権から先使用権で守ろうとする傾向や、パラメータ特許から従来技術を守るために先使用権を活用するというケースが問題とされているからである。このような場面で利用するために、先使用権を緩やかに認めようとする学説が主張されている。しかし、特許権者と出願前の実施者とのバランスを図り公平を期すことを目的とする先使用権制度において、先使用権を強めることは、特許権を弱体化させることに繋がる。本稿は、先使用権制度がどのように両者のバランスを図ろうとしているのか、その制度趣旨を確認し、この制度趣旨から一貫する解釈として、現在争われている論点をどのように解するのが妥当であるのかを考察する。」としたうえで、「先使用権が今論じられている理由は、パラメータ特許等により、公知技術に独占権が及ぶという事態に対抗するための手段として、先使用権が脚光を浴びているからであろう。そのような目的から、先使用権の成立を緩やかに認めたり、先使用権の効力の及ぶ範囲を広げたりする解釈や法改正を目指すことは、妥当ではない。公知技術を実施できなくなるような特許権は過誤登録であって、不適切なパラメータ特許は無効にすべきである。万一、これを無効にすることが困難なのであれば、法改正が必要なのはこれを是正する方向であろう。先使用権制度を変更すれば、不適切なパラメータ特許のみならず、あらゆる特許権が影響を受けることになる。」としています。 さらに、「また、最近では、オープン・クローズ戦略として、特許出願を控え、発明を企業秘密として管理することが重視されている向きもあると聞く。そして、他社に特許権を取られた場合には先使用権を活用できるので安心して秘匿できるというのでは、発明は囲い込まれてしまう。発明を早期に公開し、これを社会が共有して礎とし、更なる技術発展を早期に目指すことが、特許制度の目的であることは言うまでもない。公開された技術情報に基づき、多様なプレーヤーが更なる技術開発にしのぎを削ってこそ、技術発展は加速化する。発明の秘匿化がはびこれば、パブリック・ドメインは痩せ細るのであって、先使用権の緩やかな認定を「パブリック・ドメインアプローチ」と称しているにもかかわらず、皮肉にも逆の結果を招くことになろう。先使用権の保護が過大となることは、特許権の価値が下がること(特許権の緩慢な死)を意味し、特許制度の目的は根底から崩れてしまう。目の前の病理現象に目を奪われるのではなく、特許制度の根本に立ち返ったバランスの取れた対応が望まれる。」と断じています。 企業の知財部は、先使用権で対応しなければいけないような事態を防ぐこと、横山久芳教授の「(B)先使用者が自社技術を実施する過程で発明として認識していなかった技術に他者が特許権を取得した場合」がないようにすることが大切だと思います。 同時に、先使用権に頼りたくなるような不適切なパラメータ特許がなかなか無効にできない現実、特許庁、裁判所がこの不合理に目を背けているように感じる現実については、「これを無効にすることが困難なのであれば、法改正が必要なのはこれを是正する方向であろう。」という井関涼子教授の意見に同意します。 先使用権制度の検討―解釈論と立法論の双方に焦点を当てて― 学習院大学法学部 教授 横山 久芳 https://jpaa-patent.info/patent/viewPdf/4350 先使用権の緩やかな認定?―特許権の緩慢な死? 同志社大学法学部 教授 井関 涼子 https://jpaa-patent.info/patent/viewPdf/4364 「別冊パテント」第30号先行公開 https://jpaa-patent.info/patent/prior/30 そーとく日記 2024年03月28日 「特許発明の技術的思想」を具現せずにその特許権を侵害することは可能か(横山久芳先生『先使用権制度の検討―解釈論と立法論の双方に焦点を当てて―』)(パテント別冊30号2024) https://thinkpat.seesaa.net/archives/20240328-1.html そーとく日記 2024年03月29日 先使用権の成立には「侵害し続けられるように」自らの実施を管理していることは必要か https://thinkpat.seesaa.net/archives/20240329-1.html Controversies Surrounding the Prior User Rights System An advance publication from issue number 30 of 'Special Patent Issue,' titled 'Utilizing Technical Information for Innovation - Focusing on Prior Use, Licensing, and Exhaustion,' includes some editorials. Professor Hisayoshi Yokoyama from the Faculty of Law at Gakushuin University's editorial, 'A Study on the Prior User Rights System - Focusing on Both Interpretation and Legislation,' was pre-published on February 7th. Professor Yokoyama discusses cases where prior user rights are claimed: (A) when someone else obtains a patent for technology identical to that developed by the prior user, and (B) when someone else obtains a patent for technology that the prior user did not recognize as an invention in the course of implementing their own technology. Given that the current law requires that the invention identical to the patented invention was independently completed as a condition for prior user rights, it is considered to be legislated with case (A) in mind, and the Supreme Court has also established interpretive standards suitable for case (A). This paper argues the current interpretation of the prior user rights system under the current law from the standpoint of 'encouraging invention,' focusing on case (A), and as a legislative theory, examines the possible rules assuming case (B) separate from the current law. Moreover, it suggests that the prior user rights system should offer broad protection aligned with the invention's content when the prior user has completed an invention with the same technical idea as the patented invention, from the perspective of encouraging inventions. Even in other cases, it argues for granting minimal protection to ensure the continuity of the business related to the prior use. Professor Ryoko Iseki from the Faculty of Law at Doshisha University's 'A Lenient Recognition of Prior User Rights? - The Gradual Death of Patent Rights?' was pre-published on March 29th. Professor Iseki mentions that prior user rights have been discussed since before the war and are widely accepted with established Supreme Court decisions, making it feel as though everything that could be said has been. However, the reason prior user rights are currently in the spotlight again is due to trends like companies hiding inventions with open-close strategies to protect them from other companies' patents using prior user rights or using them to protect conventional technology from parameter patents. She argues against leniently recognizing prior user rights or expanding their scope through interpretation or legal amendments to counteract patents that extend monopoly rights to public knowledge. She states that patents making public knowledge unimplementable should be considered erroneously registered and that inappropriate parameter patents should be invalidated. If invalidation is difficult, then legal amendments should correct this direction. Changing the prior user rights system would affect all patents, not just inappropriate parameter patents. Additionally, she notes the irony that while the lenient recognition of prior user rights is dubbed a 'Public Domain Approach,' it ironically leads to the opposite result, emphasizing the need for a balanced approach rooted in the fundamentals of the patent system. Corporate intellectual property departments should aim to prevent situations that would necessitate resorting to prior user rights, such as avoiding scenarios described by Professor Hisayoshi Yokoyama where '(B) someone else obtains a patent for technology that the prior user has been implementing without recognizing it as an invention.' At the same time, I agree with Professor Ryoko Iseki's opinion that, faced with the reality that inappropriate parameter patents, which could make one want to rely on prior user rights, are hard to invalidate, and the perception that patent offices and courts are turning a blind eye to this irrationality, 'if it is difficult to invalidate these, then legislative amendments would be necessary to correct this direction. GPT-4はじめ現在の大規模言語モデル(LLM)は、「Transformer」が使われていますが、「Transformer」の後継として期待されているRetNet(「Retentive Network」の略称)技術を活用した日英大規模言語モデル(LLM)を、AIベンチャー・PKSHA Technologyが開発したと発表しています。
『長文入力』、『応答速度』、『運用コスト』という現在の大規模言語モデル(LLM)の課題を同時に解決できるポテンシャルをもっているということで、期待されます。 PKSHAが日英対応LLM開発、Transformerの後継候補の「RetNet」を活用 日本マイクロソフト協力 2024/4/1 https://ledge.ai/articles/pksha_llm_rertnet 「Transformer」後継と期待される「RetNet」活用 PKSHAが日英対応の独自LLMを開発 日本MSも協力 2024年03月28日 https://www.itmedia.co.jp/aiplus/articles/2403/28/news185.html Utilizing 'RetNet,' the Successor to 'Transformer,' for a Unique LLM The current large language models (LLMs), including GPT-4, utilize 'Transformer.' However, PKSHA Technology has announced the development of a Japanese-English LLM that leverages 'RetNet' technology, which is expected to succeed 'Transformer.' RetNet stands for 'Retentive Network.' This new technology is anticipated because it has the potential to simultaneously address the challenges of long text inputs, response speed, and operational costs faced by current LLMs. PKSHA develops a Japanese-English compatible LLM using 'RetNet,' a candidate successor to Transformer, with cooperation from Microsoft Japan. April 1, 2024 https://ledge.ai/articles/pksha_llm_rertnet 'RetNet,' Expected to Succeed 'Transformer,' Utilized by PKSHA to Develop a Unique Japanese-English Compatible LLM with Cooperation from Microsoft Japan. March 28, 2024 https://www.itmedia.co.jp/aiplus/articles/2403/28/news185.html |
著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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