「年報知的財産法2022-2023」の[2022年判例の動向]「判例の動き 1.特許法・実用新案法 2 特許無効の抗弁」で、数値限定発明について公然実施による新規性欠如を認めた事例として、「黒鉛系炭素素材事件」(東京地方裁判所:平成31年(ワ)第7038号及び第9618号)がとりあげられています。(なお、本件発明は、本論説では数値限定発明とされていますが、広義の数値限定発明であり、パラメータ発明とも言えます。)
数値限定発明、パラメータ発明は、当業者にとってみれば新規性がないと思われるものでも、審査段階では拒絶することが難しく特許になってしまうことも多いという悩ましい問題を抱えたカテゴリーの発明です。 本判決は「法29条1項2号にいう『公然実施』とは、発明の内容を不特定多数の者が知り得る状況でその発明が実施されることをいい、本件各発明のような物の発明の場合には、商品が不特定多数の者に販売され、かつ、当業者がその商品を外部から観察しただけで発明の内容を知り得る場合はもちろん、外部からそれを知ることができなくても、当業者がその商品を通常の方法で分解、分析することによって知ることができる場合も公然実施となると解するのが相当である。」という一般論を公然実施該当性の判断基準として述べた上で、出願後に測定された実験データにより、公然実施による新規性欠如を認めた事例で、「外部からそれを知ることができなくても、当業者がその商品を通常の方法で分解、分析することによって知ることができる場合も公然実施とあ、なると解する」の、「通常の方法」のレベル感、「出願後に測定された実験データ」のレベル感など気になる点はいろいろありますが、参考になります。 年報知的財産法2022-2023 https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8949.html 東京地方裁判所:平成31年(ワ)第7038号及び第9618号 判決文 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/726/090726_hanrei.pdf 「グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材」事件 特許権侵害行為差止等請求事件(第1事件)、損害賠償請求事件(第2事件) 東京地方裁判所:平成31年(ワ)第7038号(第1事件)、同第9618号(第2事件) 判決日:令和3年10月29日 https://www.unius-pa.com/wp/wp-content/uploads/h31_wa_7038.pdf 公然実施による特許無効の抗弁が認められた事例 [東京地方裁判所 令和3年10月29日判決 平成31年(ワ)第7038号、第9618号] https://www.hanketsu.jiii.or.jp/hanketsu/jsp/hatumeisi/news/202204news.pdf 公然実施された発明に基づく特許無効の抗弁が認められた事例[東京地方裁判所 平成26年3月27日判決 平成24年(ワ)第11800号] https://www.hanketsu.jiii.or.jp/hanketsu/jsp/hatumeisi/news/201407news.pdf 【特許★★】(傍論であるが、)先使用医薬が発明の数値範囲に入っていたとしても、数値範囲内に収めるという技術的思想がなく、先使用権が成立しないとした裁判例。主/副引用発明、公然実施発明の認定にも関連し得る、実務上重要な裁判例。(「医薬」事件(東和薬品v.興和))2019年01月30日 知財高判平成30年4月4日、平成29年(ネ)第10090号 <高部裁判長> https://www.nakapat.gr.jp/ja/legal_updates_jp/%E3%80%90%E7%89%B9%E8%A8%B1%E2%98%85%E2%98%85%E3%80%91%EF%BC%88%E5%82%8D%E8%AB%96%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%8C%E3%80%81%EF%BC%89%E5%85%88%E4%BD%BF%E7%94%A8%E5%8C%BB%E8%96%AC%E3%81%8C%E7%99%BA/ ≪公然実施該当性を否定した事例≫ 【平成24年1月27日(知財高裁 平成21年(行ケ)第10284号)】 https://www.ip-bengoshi.com/archives/5350 化学分野における公然実施製品と他者登録特許 http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/syoroku/71/8_1021.html 公然実施発明に基づく新規性、進歩性判断 3/1/2022 https://yorozuipsc.com/blog/1358731 公然実施を立証するために http://www.soei.com/wordpress/wp-content/uploads/2016/06/%E5%85%AC%E7%84%B6%E5%AE%9F%E6%96%BD%E3%82%92%E7%AB%8B%E8%A8%BC%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AB1.pdf 数値限定発明の充足論,明確性要件(複数の測定条件が存在する場合,その他の類型について) https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3011
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著者萬秀憲 アーカイブ
April 2024
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