PatentSight社の特許価値評価ツールを用いると、ある会社に注目した時系列での特許価値評価を行うことができ、特許出願件数・特許登録件数という量的な評価だけで見ているのとは異なるその会社の知財戦略や課題が見えてくることは、昨日書いたとおりです。 特定の技術分野で、特許価値評価ツールを用いた競合分析を行うと、特許出願件数・特許登録件数という量的な評価だけで見ているのとは異なる各社の知財戦略や課題が見えてきます。 下図は私がかかわってきたある技術分野をPatentSight社の特許価値評価ツールで評価した例です。 縦軸にPAI(ポートフォリオ全体の価値)、横軸に200年から2018年までの年をとり、特許権者のPAI(ポートフォリオ全体の価値)の経時変化を表しています。D社に着目すると2000年にはその他大勢の中の一社でしたが、2018年にはこの分野でのPAI(ポートフォリオ全体の価値)をここ10年に渡って低下させてきたK社を抜きPAI(ポートフォリオ全体の価値)2位になっています。件数を見ているのとは違った景観(Landscape)になります。 同じ技術分野の日本特許について、パテントリザルト社の特許価値評価ツールで評価した図が下図です。パテントリザルト社のパテントスコアは、特許出願後の審査経過情報をもとに、 個別特許の注⽬度をスコアリング評価する指標です。出願⼈、審査官、競合他社の3者のアクションに着⽬し、 同⼀技術分野、出願年の他の特許との相対⽐較により偏差値で評価します。縦軸は権利者スコアで権利者が持つ特許のパテントスコアの総和で、横軸は権利者が持つ特許のうち最もスコアの高い特許のパテントスコアの最高値で、円の⼤きさは特許件数を表しています。
従来のパテントマップは過去の分析結果を示すものでしたので、ここで終わりですが、IPランドスケープは今後のシナリオ、競合が今後どのような技術開発をするのか、自社の進むべき道、自社の差別化ポイントは何か、を指し示すものなので、これから先が重要です。 D社が、権利者スコア、特許件数では圧倒していますが、パテントスコア最高値ではかならずしもD社が最高値ではありません。パテントスコア最高値は、A社が74.8、B社が74.5、D社が73.9でした。ここにD社の課題を見出すことができます。この各社のパテントスコア最高値の特許等を解析することにより、競合が今後どのような技術開発をするのかが予測でき、その予測を踏まえて自社の進むべき道、自社の差別化ポイントは何か、今後強化すべき技術に関するプライオリティ付けを提案し、実行する(権利化し、差別化の証である知財権の価値をセールストークや消費者コミュニケーションへ活用し、顧客に伝える)ことになります。 特許出願件数・特許登録件数という量的な評価だけで見ていると見えてこない視点です。また、出願⼈、審査官、競合他社の3者のアクションに着目したのがパテントリザルト社のパテントスコアですが、このバランスを変えると見え方が違ってきますので、異なった視点による課題の発掘とシナリオの作成が可能となります。
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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