早稲田大学知的財産法制研究所(RCLIP)の国際シンポジウム「欧州の単一特許制度・統一特許裁判所の動向」(2023.3.4)をオンライン視聴しました。5時間に及ぶ長時間のシンポジウムでした。
第1部:UPCの幕開け UPCの控訴裁判所長官となるクラウス・グラビンスキー判事と、ドイツ特許法の権威でありUPC判事となるヘディケ教授らが、新裁判所の構造と手続きの概要を説明し、既に付与された、これから付与されるヨーロッパ特許を統一特許に変更するか否かの選択が、どのような結果をもたらすか等について話されました。 第2部:手続き上の論点(証拠収集手続き及び専門家の役割) UPC での訴訟に関連して生じる具体的な手続上の問題、新しい規則の下でどのように証拠収集を行い、収集した証拠を利用するのか、そして、新しい手続の下で専門家がどのような役割を担うのかについて話されました。 東京地方裁判所の國分隆文裁判官は、「日本における証拠収集に関する近時の動向査証手続及び第三者意見募集制度」について説明、 『日本において、査証制度は、「伝家の宝刀」と考えられており、査証の申立てがされた事例はいくつかあるものの、査証が実施された事例はない。UPCでの侵害訴訟の手続には、日本の査証制度と類似の制度として、証拠保全命令と査察命令が存在するが、それらはどの程度活用されるか。UPCでの証拠保全命令及び査察命令の運用に当たっては、UPCA批准国、例えば、ドイツの実務と同様の運用がされることになるか。また、それらの批准国での証拠保全命令及び査察命令に関して、現在、議論となっている点は何か。』 『日本の第三者募集制度は、当事者に新たな証拠収集手段を提供することにより、裁判所の判断基盤を強化することに特徴がある。UPCでは、第三者の意見を広く募集し、それを証拠として活用する手段として、どのようなものが考えられているか。』 『第1号事件(令和4年(ネ)第10046号、DWANGO Co., Ltd. v. FC2. Inc. and HPS Inc.)に関して、日本の第1審裁判所は、属地主義の観点から、システムの「生産」に該当しないと判断した。UPCの訴訟においては、フランスからドイツの場合、アイルランドからドイツの場合、イギリスからドイツの場合の各事例について、侵害が認められ得るか?』と質問し、議論されました。 3月28日には、UPCの控訴裁判所長官となるクラウス・グラビンスキー判事も再び来日され、「慶應義塾大学 知的財産フォーラム Keio IP Forum 2023 ~欧州統一特許裁判所創設後のグローバル紛争解決と知財戦略~」が開催される旨のアナウンスもされました。 国際シンポジウム「欧州の単一特許制度・統一特許裁判所の動向」 https://rclip.jp/2023/01/19/20230304seminar/ 【開催案内】慶應義塾大学 知的財産フォーラム Keio IP Forum 2023 ~欧州統一特許裁判所創設後のグローバル紛争解決と知財戦略~(2023.03.28開催) https://www.kgri.keio.ac.jp/news-event/135493.html 主催:慶應義塾大学 知的財産フォーラム プロジェクト 共催:慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート(KGRI)、法学部・大学院法学研究科 日時:2023年3月28日(火)09:00~18:00 (08:45開場) 場所:慶應義塾大学 三田キャンパス 南校舎5階ホール 講演者(登壇順) ■ 髙部 眞規子(西村あさひ法律事務所オブカウンセル 前知的財産高等裁判所長) ■ ジェラルド E. ローゼン(米国ミシガン州東部地区連邦地方裁判所 元主席判事) ■ エドガー H. ハウグ(ハウグパートナーズ LLP会長) ■ クラウス バッハー(連邦通常裁判所民事第10部部総括判事) ■ クラウス グラビンスキー(欧州統一特許控訴裁判所所長) ■ クリスティアン W. アッペルト(べーマート&べーマート パートナー) パネリスト ■ 長澤 健一(キヤノン株式会社 専務執行役員、知的財産法務本部本部長、経済安全保障統括室室長) ■ 高橋 弘史(パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 知的財産センターIPエグゼクティブエキスパート、弁理士) ■ 神谷 宏(本田技研工業株式会社 知的財産・法務統括部 訴訟・係争部部長) ■ 和泉 恭子(富士通株式会社 ビジネス法務・知財本部 知財グローバルヘッドオフィス長、弁理士) パネル司会 ■ シーラ モータザヴィ(ハウグパートナーズLLP パートナー) ■ ハインツ ゴッダー(べーマート&べーマート パートナー) ■ 一色 太郎(一色法律事務所・外国法共同事業マネージングパートナー、慶應義塾大学 非常勤講師) ■ 君嶋 祐子(慶應義塾大学法学部・法学研究科教授、KGRI所長) プログラム 09:00 - 09:15 開会の挨拶 09:15 - 10:00 日本 日本の知的財産法・実務を巡る最近の動向 10:00 - 10:45 米国 地方裁判所と上訴裁判所、PTABとITC手続の相互関係 10:45 - 11:00 休憩 11:00 - 11:45 米国 米国における裁判外紛争手続 ―仲裁と調停― 11:45 - 12:15 日本・米国 パネルディスカッション 12:15 - 13:15 昼食休憩 13:15 - 14:00 ドイツ 連邦通常裁判所民事第10部における最近の動向 14:00 - 14:45 欧州 UPC―欧州における新たな特許裁判所― 14:45 - 15:00 休憩 15:00 - 15:45 欧州・ドイツ ◆ 欧州統一特許/欧州統一特許裁判所と各国特許・欧州特許の比較 ―実務家の視点から ◆ オプトアウト―その対象、タイミングと方法 15:45 - 16:15 ドイツ・欧州 パネルディスカッション 16:15 - 16:45 ネットワーキング コーヒーブレーク 16:45 - 17:45 日本から世界へ 産業界の知的財産戦略と展望 ―日本、米国、ドイツ、欧州の最新動向を踏まえて― 18:00 - 20:00 懇親会
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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