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2007年に特許庁がまとめた「戦略的な知的財産管理に向けてー技術経営力を高めるためにー<知財戦略事例集>」は、今でも通用する知財戦略の基本的な考え方、事例が多く掲載されています。 [3]他社の公開特許公報の「課題の欄」に基づいて研究開発テーマを提案 当社は素材や中間材料を製造している企業であり、当社の顧客はメーカーである。そして、顧客であるメーカー、もしくは顧客になり得るメーカーが、どういう技術的課題を解決したいと思っているかの情報を様々なチャンネルを用いて、先に取得して、それに応えるような技術を独自に研究開発している。開発できたときには、その技術を特許出願しつつ、顧客へ提案していくようにしている。こうすることで、当社の製品を顧客メーカーに購入してもらう契機が高まる。こうした手法を用いると、研究開発テーマの提案も簡単であり、効率的な開発を行うことが可能である。 なお、顧客メーカーが有する技術的課題を把握するための有力な情報源は、「公開特許公報の課題の欄」、「受注時のユーザーとの打ち合わせ」、「共同開発を持ちかけられた時の技術課題」などである。特に、この「公開特許公報の課題の欄」は、知的財産部が最も情報を有している部分であり、この情報に基づいて研究開発テーマの提案を知的財産部から行っている。 [5]コラム:知財部の声は届かずシェア一位位から転落、そして再起へ 当社は、ある事業で業界初の製品により市場をリードしていた。そのころ、知的財産部では、この製品のある技術課題に気づき、この課題を克服できれば付加価値が高まるので研究開発を行うべきであることを提案していた。しかし、その声は事業部には届かず、むしろ事業部は生産コスト削減に関する技術開発や営業力強化に注力していた。その間に、当社を追随する競合2社が相次いで、その技術課題を克服した機構を開発した。 そして、当該2社が、その機構に関する基本技術から改良技術までの特許群を構築してしまった上に、その機構を用いることが顧客ニーズになっていった。そのため、当社はライセンス料を支払って、当該機構を有する製品を製造することになった。その結果、この市場におけるシェア1位の地位を失ったばかりでなく、業界におけるリーダー的存在から一転して転げ落ちることになった。 その後、当社は、知的財産部も協力しながら、この機構の技術課題を積極的に分析して、この機構に取って代わるような新技術の開発に成功した。その結果、当該事業において、再び市場のリーダーになることができた。それには20年近い歳月を要することになってしまったが、新技術によって市場のリーダーを奪還できたことは、技術者の自信につながり、あえて課題を見つけて技術開発へ挑む活気ある会社になることができた。 戦略的な知的財産管理に向けてー技術経営力を高めるためにー<知財戦略事例集>2007年 https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/chizai_bunkakai/document/seisakubukai-10-shiryou/shiryou_3-3.pdf
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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