近年は、特許製品の販売だけでなく、それらを用いたサービスの提供により収益を得るビジネスモデルの重要性が増しているため、特許製品を譲り渡したにもかかわらず、譲受人又は転得者が当該製品を使用する行為に対して、特許権の行使が可能となるよう、何らかの手段を講じたいと考えるのは、企業の知財担当者であればごく自然のことです。
パテント, Vol. 76, No. 1,P47(2023)に掲載されている「特許権者による消尽の迂回の是非-コト消費時代における消尽論-」(神戸大学 前田健 教授)は、「特許権者は、現行法の下、消尽を迂回できるか」という点について、「消尽の迂回の手段としては、契約による迂回として、①条件付き譲渡による迂回、②所有権留保による迂回、③ライセンス条件による迂回を、間接侵害品の譲渡による消尽の法理に関して、④方法特許の活用、⑤完成品特許の活用を、そして、⑥新たな製造法理の活用を考えることができる。この 6つの論点について、現在の通説・裁判実務を整理したい。」としてわかりやすく整理しています。 そのうえで、 「従来の日本の裁判例では、契約による迂回は原則できないとされ、方法特許など別の特許を用いた権利行使の道が僅かに確保されてきた。特許権者によるビジネスモデルの選択をより広く認めることは、政策判断としてはあり得るところである。ただし、取引の安全を確保するため、解釈論としては、契約による迂回を拡大すべきではなく、方法特許など別の特許を活用する道を模索すべきである。判例や種苗法改正による先例が既にあると評価し得ることも踏まえると、立法論としては、表示又は公示により取引の安全を確保した上で、契約による迂回を認めることも検討に値する。」 と、立法論の方向性についても述べています。 現時点では、「契約による迂回は原則できないとされ、方法特許など別の特許を用いた権利行使の道が僅かに確保されて」いる状態なので、その僅かに確保されているやり方で対応することになりますが、将来は、もう少し門戸が開かれても良いように思います。 特許権者による消尽の迂回の是非-コト消費時代における消尽論- https://jpaa-patent.info/patent/viewPdf/4128 方法特許の消尽論 「モノ」から「コト」への産業構造変化を踏まえて https://jpaa-patent.info/patent/viewPdf/4011 方法特許の消尽 28/8/2022 https://yorozuipsc.com/blog/8343478 IoT時代における特許権の消尽について 23/6/2022 https://yorozuipsc.com/blog/iot6384585
0 Comments
Leave a Reply. |
著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
カテゴリー |