今年度のコーポレートガバナンス報告書や統合報告書と昨年度のコーポレートガバナンス報告書や統合報告書とを比較してみると、この1年間でのその会社の取組みの変化や実績がよくわかります。
スズキ株式会社は、売上高4兆6,416億円、営業利益3,506億円、経常利益3,828億円で、売上高の90%が四輪車事業、地域別では日本よりインドでの売り上げが大きく、急成長を遂げているインドの乗用車市場で、スズキが占める割合は41.3%で、インドでシェアNo.1となっています。 スズキの知財戦略を、コーポレートガバナンス報告書や統合報告書で見てみます。 コーポレートガバナンス報告書では、2022年では今後こう進めますという宣言的な文言にみえました。 2023年のコーポレートガバナンス報告書では、ガバナンス体制が構築されしっかりした議論が進められていることが示され、『真に必要とする価値の実現のために当社の伝統的な「小・少・軽・短・美」の行動理念に基づき、お客様や社会からのニーズの多様化に対し、知恵と工夫で「スズキらしい」「そう来たか」と思って頂ける独特な思想で設計開発を行い、その成果を特許等で権利化を図ります。』と、スズキならではの表現で記載されています。 統合報告書でも、知的財産に関する内容は、2022年は1頁でしたが、2023年は2頁と倍増し、特にスズキらしさである「小・少・軽・短・美」を体現する特許を中心に、報奨制度による知的財産創出のインセンティブ強化を進めていることが4件の社長表彰の特許内容と共に紹介されています。 このスズキの例でもわかりますが、今年度のコーポレートガバナンス報告書や統合報告書と昨年度のコーポレートガバナンス報告書や統合報告書とを比較してみると、この1年間でのその会社の取組みの変化や実績がよくわかります。「スズキらしい」「そう来たか」というスズキの知的財産戦略の成果が今後楽しみです。 ちょっと違った目で、自動車メーカーの比較という視点でみると、自動車メーカーの特許資産規模ランキング2023では、トップ3はトヨタ、ホンダ、日産で、スズキは6位。他社牽制力ランキング2022では、トップ3はトヨタ、ホンダ、日産で、スズキは8位です。しかし、PBR、PERでみると、スズキはいずれも1位です。特許資産規模ランキングとか他社牽制力ランキングという特許の指標では表せないスズキの強みがスズキの無形資産を膨らませているということでしょう。 また、インド自動車産業のリーディング企業であるスズキが、新興国のカーボンニュートラルと経済成長に貢献するために、インドに合ったカーボンニュートラルを目指すソリューションとして、インド農村部に多い酪農廃棄物である牛糞を原料とするバイオガス燃料の製造・供給事業へ挑戦しているのも、ススキらしい取り組みで、今後に期待できそうです。 コーポレートガバナンス報告書2023年7月3日 https://www.suzuki.co.jp/ir/library/governance/pdf/report.pdf ≪知的財産への投資≫ 当社は、「お客様の立場になって、価値ある製品を作ろう」を社是の第一として掲げております。知的財産活動もその価値を創造する知見や技術の権利化や無形資産としての蓄積・保護・活用を基本としています。 全社一丸となってグローバルに各地域のお客様が真に必要とする価値を見極め、お届けするための検討を重ねております。この過程で得られた豊富な知見やデータを当社の重要な無形資産と捉え、適切に管理すると共に当社らしい商品やサービスに活かしていきます。そして真に必要とする価値の実現のために当社の伝統的な「小・少・軽・短・美」の行動理念に基づき、お客様や社会からのニーズの多様化に対し、知恵と工夫で「スズキらしい」「そう来たか」と思って頂ける独特な思想で設計開発を行い、その成果を特許等で権利化を図ります。 こうした知的財産活動を全社的に推進するため、2022年3月より各取締役・執行役員・部長が参加する「知的財産推進会議」を開催し、多角的な議論を重ねております。その結果、従業員が意欲的に知財創出に取り組む土壌形成と仕組みづくりが進みつつあります。なお、具体的な活動や成果については、統合報告書も併せてご参照ください。 コーポレートガバナンス報告書2022年11月16日 https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/dsxmp6/ <知的財産への投資> 当社は、企業の価値の源泉となる知的財産への投資を重要視しており、一例として今後5ヵ年で1兆円(2,000億円/年間)の研究開発費を投じる計画です。こうした研究開発の成果として、当社の強みを維持・強化する知的財産を創出・蓄積・活用してまいります。その実現に向かって、取締役及び設計開発、商品企画、経営企画、知的財産等の各部門の執行役員・部長が出席する「知的財産推進会議」を設置し、知的財産戦略について全社的な議論を重ねてきており、今後もその活動を継続してまいります。これまでの議論の結果として、当社の思想・文化の根幹であり、カーボンニュートラルにも貢献する「小少軽短美」を知的財産戦略の中核に置き、当社の従業員が意欲的にモノづくり・コトづくりの両面から知財創出活動を行えるような土壌形成と仕組みづくりに取り組み、当社の注力技術における特許網の構築やノウハウとしての管理を進めていく方針です。 なお、具体的な活動については、別途、統合報告書で開示予定です。 統合報告書2023 https://www.suzuki.co.jp/ir/library/annualreport/pdf/2023/2023_jp.pdf P.50-51 知的財産 統合報告書2022 https://www.suzuki.co.jp/ir/library/annualreport/pdf/2022/2022_jp.pdf P.41 知的財産に関する取り組み 【自動車メーカー】特許資産規模ランキング2023 トップ3はトヨタ、ホンダ、日産 2023年11月10日 https://www.patentresult.co.jp/news/2023/11/automobile.html スズキは6位 【自動車メーカー】他社牽制力ランキング2022 トップ3はトヨタ、ホンダ、日産 2023年07月10日 https://www.patentresult.co.jp/news/2023/07/fcitcar.html スズキは8位 【自動車メーカー 特許資産規模ランキング2023 上位10社】 順位 企業名 特許資産規模(pt) 特許件数 1 トヨタ自動車 97,999.5 4,532 2 本田技研工業 72,032.1 2,247 3 日産自動車 18,879.2 624 4 マツダ 16,921.5 668 5 SUBARU 10,349.7 516 6 スズキ 10,138.3 397 7 豊田中央研究所 9,307.5 480 8 いすゞ自動車 7,321.5 370 9 ヤマハ発動機 6,940.1 192 10 三菱自動車工業 6,634.1 179 【自動車メーカー 特許資産規模ランキング2023 上位10社】 順位 企業名 特許資産規模 (pt) 特許件数 1 トヨタ自動車 97,999.5 4,532 2 本田技研工業 72,032.1 2,247 3 日産自動車 18,879.2 624 4 マツダ 16,921.5 668 5 SUBARU 10,349.7 516 6 スズキ 10,138.3 397 7 豊田中央研究所 9,307.5 480 8 いすゞ自動車 7,321.5 370 9 ヤマハ発動機 6,940.1 192 10 三菱自動車工業 6,634.1 179 【自動車メーカー業界 他社牽制力ランキング2022 上位10社】 順位 企業名 引用された 特許数 1 トヨタ自動車 7,127 2 本田技研工業 3,112 3 日産自動車 2,853 4 マツダ 980 5 豊田中央研究所 776 6 SUBARU 708 7 三菱自動車工業 659 8 スズキ 591 9 ヤマハ発動機 533 10 ダイハツ工業 335 2023年12月15日16:00現在 コード 銘柄名 株価 PER PBR 7201 日産自 550.5 5.2 0.35 7202 いすゞ 1823.5 8.4 0.98 7203 トヨタ 2600.5 8.9 1.10 7205 日野自 462.3 - 0.70 7211 三菱自 436.6 4.6 0.73 7261 マツダ 1509 5.6 0.60 7267 ホンダ 1424 7.4 0.56 7269 スズキ 5565 11.2 1.14 7270 SUBARU 2560 6.0 0.84 〈つながる車の知財攻防〉(上)横浜から迫るファーウェイスズキなどに通信ライセンス交渉 経済安保、知財に届かず 2023/3/27 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD17BS40X10C23A3000000/ 100年の歴史が育んだスズキの知財 6/2/2021 https://yorozuipsc.com/blog/100
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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