(第131回)知財実務オンライン:「発明の容易想到性とは、発明特定事項への容易想到性なのか?─パラメータ発明や内在同一の取り扱い─」(ゲスト:神戸大学大学院法学研究科教授 前田 健)約1時間33分をアーカイブで視聴しました。
前田教授の問題意識は、特許発明に依拠しない独自開発技術への権利行使はどこまで許されるのか?アブリックドメインの浸食?特殊パラメータ発明や、公知物の新効果に基づく発明は、安易に認められすぎているのか?ということで、新規性要件の特許庁実務、裁判例に切り込んでいます。用途発明についても。 進歩性についても、ノンアルコールビールテイスト飲料の例を用い、発明特定事項説(外苑説)、具体的物説(実施態様説)から切り込み、平成31年(ネ)第10014号「PCSK9に対する抗原結合タンパク質」(知的財産高等裁判所 東京地方裁判所 令和元年10月30日判決)<前田教授は被告側意見書提出>を例に説明されました。 東京高判平成15年9月30日平成13年(行ケ)第489号(バネ構体)が具体的物説。方法の発明としてなら、特許要件をクリアしたかもしれない旨を指摘。バランスをとる一つの方法か? 進歩性要件の考え方として、創作過程説(容易推考説、誘引基準説)と発明内容説(技術貢献説)の説明。 果実ジュースの設例<特殊パラメータ(甘味指数)の請求項>の検討によって、新規性要件、進歩性要件の問題意識の披露。 悩ましい問題です。 https://www.youtube.com/watch?v=RJO1EiH9jwk&t=271s 平成31年(ネ)第10014号「PCSK9に対する抗原結合タンパク質」 https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/010/089010_hanrei.pdf 東京高判平成15年9月30日平成13年(行ケ)第489号(バネ構体) https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/813/010813_hanrei.pdf 後出の特許による既存事業の差止めは許されるか 「知財管理」誌 72巻(2022年) / 8号 / 899頁 前田 健 http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/syoroku/72/8_899.html 特許権は絶対的効力を有するから、独自に開発された技術に基づいて事業に着手した場合であっても、後から現れた他者の特許により、事業の継続が困難となる場合がある。現在の一部の裁判例の立場を前提とすると、既存事業が後出の特許により差し止められるリスクは相当程度ある。しかし、特許権は、創作のインセンティブを付与するために必要な限度で与えられるべきものであって、既存の技術や独自開発された技術の利用が制約される事態は、必要最小限度にとどめなければならない。 以上によると、先使用権の要件たる発明の同一性は緩やかに認めるべきであり、新規性・進歩性は、「新規」でない技術が技術的範囲に含まれる場合には、原則として否定されるべきである。また、クレームに効果・機能を記載することによりサポート要件を潜脱することを防止すべきである。このように、上記理念に沿うよう特許法解釈を行えば、前記リスクを抑えることができる。 後出の特許による既存事業の差止めは許されるか 23/8/2022 https://yorozuipsc.com/blog/3319864 進歩性要件の意義と機能-近時の裁判例を踏まえて 31/8/2021 https://yorozuipsc.com/blog/3711849 ビジネス方法・ゲームのルールに関する発明の特許性と技術的範囲の判断 https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3811 進歩性判断における「予測できない顕著な効果」の意義 https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3816 対象物を新着眼の特性で特定したクレームの特許性 : 発見かそれとも発明か? : 機能的に表現された抗体の発明のサポート要件及び進歩性要件を題材として https://da.lib.kobe-u.ac.jp/da/kernel/81012050/81012050.pdf 用途発明の意義―用途特許の効力と新規性の判断― https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3403 先使用権の成立要件 ―制度趣旨からの考察― https://www.inpit.go.jp/content/100868551.pdf 「広すぎる」特許規律の法的構成― クレーム解釈・記載要件の役割分担と特殊法理の必要性 ― https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3260 進歩性判断の法的な構造 https://system.jpaa.or.jp/patents_files_old/201005/jpaapatent201005_119-132.pdf
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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