知財管理8月号(Vol. 72, No. 8, 2022) の「後出の特許による既存事業の差止めは許されるか──特殊パラメータ発明の新規性・ 進歩性・記載要件・先使用権の検討──」という神戸大学大学院法学研究科 前田健教授の論説は、「特許権は絶対的効力を有するから,独自に開発された技術に基づいて事業に着手した場合であっても,後から現れた他者の特許により,事業の継続が困難となる場合がある。現在の一部の裁判例の立場を前提とすると,既存事業が後出の特許により差し止められるリスクは相当程度ある。」という現状認識に基づき、一部の裁判例の立場は特許制度の趣旨に照らすならば好ましいことではないという立場から、「特許法の解釈論について更なる議論が進むことを期待している。」というものです。
説得力のある議論だと思います。 後出の特許による既存事業の差止めは許されるか http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/search/detail.php?chizai_id=4e4098da156881d760bd102bed0daa53 特許権は絶対的効力を有するから、独自に開発された技術に基づいて事業に着手した場合であっても、後から現れた他者の特許により、事業の継続が困難となる場合がある。現在の一部の裁判例の立場を前提とすると、既存事業が後出の特許により差し止められるリスクは相当程度ある。しかし、特許権は、創作のインセンティブを付与するために必要な限度で与えられるべきものであって、既存の技術や独自開発された技術の利用が制約される事態は、必要最小限度にとどめなければならない。 以上によると、先使用権の要件たる発明の同一性は緩やかに認めるべきであり、新規性・進歩性は、「新規」でない技術が技術的範囲に含まれる場合には、原則として否定されるべきである。また、クレームに効果・機能を記載することによりサポート要件を潜脱することを防止すべきである。このように、 上記理念に沿うよう特許法解釈を行えば、前記リスクを抑えることができる。
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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