「IPランドスケープ」は、大企業の話であり、スタートアップ・ベンチャーとか中小企業には関係ない世界の話だよね、という声が聞こえてきます。しかし、実は、スタートアップ・ベンチャー・中小企業にこそ、「IPランドスケープ」が必要であり、生かせる場が多いのです。
「IPランドスケープ」の活用法としては、下記のことがあげられています。 ①会社の将来ビジョンの策定 ②M&Aや事業提携(オープン・イノベーション)の成功 ③新規ビジネスの市場・情勢分析 ④事業構造の大転換 ⑤知財を生かした資金調達 コア技術をどう獲得し、どう持続的に発展させるか?オープン領域の技術をどう獲得し、どう持続的に発展させるか?という視点から見ると、①~⑤に挙げられている「IPランドスケープ」の活用法は、大企業より、スタートアップ・ベンチャー・中小企業にとってより重要なことがわかります。 しかし、対処できるスキルや経験をもった人がいないため、みすみすチャンスを逃したり、失敗してしまっていることが多いのが現状です。 何から取り組むべきか まず、知的財産部が、事業の失敗を防ぐことを目的に、自社の製品やサービスが他社特許に抵触しないかどうかを調べることを主眼にしていた活動から、自社の戦略や事業を成功に導くことを目的とした知財重視の経営戦略、いわゆるIPランドスケープをめざすように変わることが必要です。また、自社のコア技術を創造する、乃至は強固にする方策を示し、オープン&クローズ戦略を推進することも重要です。 しかし、いきなり立派な分析結果をそろえて経営陣にプレゼンしてもうまくいくことは稀です。自社の抱える経営課題との関係が希薄なことが多いためです。どこの会社でも通用するような一般論にとどまるのではなく、経営陣が考えている自社の抱える経営課題とのかかわりで分析し、方向性を示すことが必要です。 多くの場合、経営陣と知財部の距離が遠いために、知財部が経営陣の考えている自社の抱える経営課題をうまく捉えていない、逆に言うと、経営陣が知財の力に自社課題の解決を期待していない、ことが問題と考えられます。 知財部は、経営陣と距離を近づけることを考えるべきです。知財軽視の経営がいかに問題を引き起こしているかを具体的に経営陣に示し、知財重視の経営に変わることでいかに問題を解決でき、これまでにない新たな発展の道を歩むことが可能になる、ことを実感してもらうことが大切でしょう。
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著者萬秀憲 アーカイブ
January 2025
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