ライオン株式会社は2018年にイノベーションラボを設立し、「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニー」を目指し、新規事業創造に向けた活動を推進しています。イノベーションラボの宇野所長は、初日に皆に「既存事業の仕事はしない」「皆で起業家を目指そう」「僕を所長と呼ぶのは禁止」の3つを言ったそうです。
表情筋にアプローチする新美容機器VISOURIRE(ヴィスリール)はクラウドファンディングで392%を達成し、口臭リスクを判定するアプリRePERO(リペロ)はビジネス分野向けの新サービスとしてローンチするなど成果を上げています。 ライオン株式会社は、いち早く副業を認めるなど新しい意欲的な取り組みを進めていますので、今後の成果も期待したいと思います。 100年先を見据えたライオンのイノベーションマネジメント(前編) FUJITSU JOURNAL 2019年11月21日 https://blog.global.fujitsu.com/jp/2019-11-21/01/ Mitsutaka Kaneko Jan 08, 2020 大企業におけるイノベーションラボのリアル −パナソニックとライオンの事例より− https://blog.btrax.com/jp/innovation-lab-in-big-company/ 加藤 隼, 【ライオン_RePERO】オーラルケアを起点に企業カルチャーを変革する, incubation inside https://incubationinside.jp/2019/11/15/lion-repero/ なお、ライオン株式会社は、平成31年度知的財産権制度活用優良企業等表彰 知財功労賞 特許庁長官表彰, 知財活用企業(商標)として表彰されたように、ライオンの商標権活用、経営戦略・事業戦略・研究戦略と連携した知財戦略の策定には、かなり特徴があり、参考になると思います。 高岡弘光, お客様から愛されるブランドに-ライオンの商標権活用-, グローバル知財戦略フォーラム2020 https://www.inpit.go.jp/content/100869492.pdf 平成31年度 知的財産権制度活用優良企業等表彰 知財功労賞 特許庁長官表彰, 知財活用企業(商標) ●コーポレートブランドの「LION」、キャラクターのライオンちゃん立体商標、各プロダクトブランド及び国内最多8件の音商標など様々な商標を登録し、お客様との共感・信頼・親近感を蓄積、醸成させている。また、自社コンセプトの独自性を確保して競合の同質化を防ぐべく、キーメッセージ(例:オーラルケア製品「口臭科学」)を商標登録するなど、製品企画の初期段階より商標を戦略的に活用している。これらで保護した歯磨き、歯ブラシ、ハンドソープは、国内トップシェアである。 ●海外売り上げを伸ばす経営戦略と連動し、「LION」商標を広く海外に出願している。一般的な動物の名前であるため、既権利者の存在など権利取得が困難な場合も多いが、現在は「LION」を世界88 ヶ国で出願・登録している。また、各種商標権に基づいた海外での模倣品排除活動を推進しており、泡ハンドソープやボディソープなどの模倣品や代理店詐称の差止に成功している。 ●経営戦略・事業戦略・研究戦略と連携した知財戦略を策定。知財担当役員を委員長とする知財委員会を年2回開催して、経営企画・事業・研究・生産の代表者と戦略推進を徹底させている。また、経営直下の本社スタッフとして知的財産部を組織化し、法務・コンプライアンス部門と協働して事業企画・研究開発部門を支援している。
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ダイキン工業は、2018年12月に東京大学と産学協創協定を締結し、10年間で100億円を約束し、東大にダイキンの部長級を含むスタッフ約20人が常駐し、ダイキンの技術者約700人が東大を訪れ共同研究へ議論を進めるなど、「組織」対「組織」の産学連携の推進を進めてきましたが、2020年からはさらに予算を当初の倍の年間20億円に引き上げ、ダイキンの研究拠点に東大の研究者約100人を受け入れ共同研究を始めています。
この活動の中核になっているのが、ダイキン工業が2015年に設立した「テクノロジー・イノベーションセンター(TIC)」で、ここに集められた技術者約700人のうち7割程度がオープンイノベーションを通じた新たな価値創造に取り組んでおり、TICには本社の知財部門と密に連携した知財部門が配置され、協創活動に伴う知財面のとりまとめを担当しているとのことです。 ダイキン工業の本気度、東京大学の本気度がわかります。この動きが多くの日本企業、大学に波及し、日本社会を変えるトリガーになってほしいと願っています。 吉野次郎ら, ソフトバンク、ダイキン、IBM──、東大の産学連携は異次元に, 日経ビジネス 2020年6月5日 https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/00447/ ダイキン、東⼤から研究者100⼈ AIや化学で技術⾰新, ⽇本経済新聞 電⼦版2020/2/22 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55897370Q0A220C2962M00/ ダイキン工業、オープンイノベーション部門に知財機能を設置し、調査・出願の側面から協創活動を円滑化, 特許庁 経営における知的財産戦略事例集P.34(2019) https://www.jpo.go.jp/support/example/document/keiei_senryaku_2019/keiei_chizaisenryaku.pdf 河原克己(ダイキン工業株式会社 テクノロジー・イノベーションセンター 副センター長), ダイキン工業における協創イノベーションの取組み, 2019年4月5日未来投資会議 構造改革徹底推進会合「企業関連制度・産業構造改革・イノベーション」会合 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/innov/dai4/siryou5.pdf ダイキン工業は2018年12月に東京大学と産学連携協定を結びました。今後、社会で重要性が増す「空気の価値化」を軸にイノベーションを生みだすことを目指します。研究者の相互派遣や、東大発スタートアップ企業との協業を加速。10年間で100億円規模の研究資金の提供もします。自前主義を脱却し、外部の異質な人材と新しい価値を創造するため、これまでの産学連携ではあまり例を見ない大胆な大規模人材交流の手法など、連携協定の内容を聞きます。 ダイキン工業 テクノロジー・イノベーションセンター 副センター長 河原 克己, 「ダイキン×東京大学 産学協創“空気の価値化”でイノベーション創造」, シリーズESG #17, 放送日時2019年3月20日(水) 08:29-08:40 https://markets.nikkei-cnbc.co.jp/watch/vod/22930 下記は、東京大学側の資料です。 大学の役割を拡張し、 変革の原動力とするには ~大学改革の拡大・加速~ 2020.2.21 国立大学の戦略的経営実現 に向けた検討会議(第1回)東京大学総長 五神 真 https://www.mext.go.jp/content/20200226-mxt_hojinka-000005220_6.pdf また、ダイキン工業は、オープン領域と下地球温暖化への影響を低減する基本技術の特許を無償開放し、グローバルに技術を普及して、市場を拡大するとともに、クローズ領域の競争力のある特許で競争力を確保して販売台数を拡大しています。 特許庁 経営戦略を成功に導く知財戦略【実践事例集】, p40(2020) https://www.jpo.go.jp/support/example/document/chizai_senryaku_2020/all.pdf 王子ホールディングスは、2012年に会社名(商号)を「王子製紙」から「王子ホールディングス」へ変え、需要の激減が続く製紙業から大胆な事業構造転換を図っています。そのイノベーションの中核になっているのがイノベーション推進本部で、横⼭勝専務グループ経営委員がイノベーション推進本部⻑を務められ、製紙業で培ったコアコンピタンスを軸に「オンリーワン」の技術開発を進めています。
横山さんは、松下電工で研究開発25年され、松下電工などで知財部長を務められ、その後、2012年に王子製紙に入社され知財部長に就任されました。その後、研究開発本部長を兼務され、研究開発本部をイノベーション推進本部に名称変更、王子グループのイノベーションを推進されています。 同じ業界の知財畑ということで、業界の特許委員会で年に数回いろいろな話をさせていただきました。 印象的だったのは、横山さんが、新素材として期待されているセルロースナノファイバーの研究開発を1年間ストップしたときです。確か「横並びの研究開発をやっているならばやめてしまおう、先行している他社にセルロースナノファイバーの開発は任せればよい。」ということだったと記憶していますが、大丈夫かなあと思ったものです。1年後、横山さんはセルロースナノファイバー開発の推進者として振舞います。「オンリーワン」の技術だからと。横山さんに「オンリーワン」の技術であることを示した王子グループの開発の方々、それを見極めた横山さんの眼力には感服しました。その後、森林資源からアンメットメディカルニーズにこたえる医薬品の開発に乗り出してオンリーワンの世界を着実に広げています。 この中心に知財部が存在していて、王子HDの知財活動も目に見えて変化しています。昔からの知財部員が少数派で転職組が多数派でどうなることかと思っていたら、着実に成果をだしていることがわかります。 そのあたり、一部が垣間見られるのが、大阪大学ナノキャリアアップ特論での「企業におけるイノベーションの創造」、及び、知財管理の「企業におけるイノベーションの重要性」です。 横山勝, 企業におけるイノベーションの創造, 大阪大学ナノキャリアアップ特論(2020.8) http://www.insd.osaka-u.ac.jp/nano/R2careerup/20200731_yokoyama.pdf 横山勝, 企業におけるイノベーションの重要性, 知財管理, 69, 10, 1341-1342 (2019) http://www.jipa.or.jp/kaiin/kikansi/honbun/2019_10_1341.pdf また、イノベーション推進本部が媒介し、営業、研究、工場まで、横串を通して組織が融合する組織変革が全社で進んでいることも特筆すべきでしょう。 岡田達也, 王⼦HD、300⼈のハブ組織で⾰新⽣む, 日経ビジネス, 2020年9月25日 https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00114/00081/ 花王は、2021年1月1日付けで、長谷部佳宏・代表取締役専務執行役員が新社長に就任すると発表しました。
長谷部佳宏次期社長は、グローバル知財戦略フォーラム2020で、「ESG経営を加速する共創イノベーションと知財戦略」という題で講演しています。パナソニック、Preferred Networks、富士フイルムとの事例を紹介されていました。特に富士フイルムとの事例は、圧巻でした。 長谷部 佳宏 ESG経営を加速する共創イノベーションと知財戦略 https://www.inpit.go.jp/content/100869490.pdf 同上報告書 https://www.inpit.go.jp/katsuyo/gippd/forumkokunai/forum_kokunai2020.pdf 富士フイルム側からの紹介です。 花王と富士フイルムの共創から生まれた新技術とは? https://www.facebook.com/watch/?v=1775690755785909 http://brand.fujifilm.co.jp/aquarium/case06.html 昨年12月の花王の「イノベーション」を生み出す組織のつくり方に関する長谷部氏の講演の動画は、人事担当者向けに話されたものですが、一見の価値ありです。 2019.12.05長谷部 佳宏 花王の「イノベーション」を生み出す組織のつくり方 https://globis.jp/article/7351 https://www.youtube.com/watch?v=9h3JpW4g25U 花王の「イノベーション」を生み出す組織のつくり方 長谷部佳宏 https://www.slideshare.net/murachef/ss-202999693?from_action=save 花王「マトリックス運営」に学ぶ、イノベーターを生む組織のつくり方 https://www.kao.com/jp/kaonokao/media/f20190524/ 花王のおオープンイノベーションに関しては、下記も参考になります。 花王のオープンイノベーションで、技術と消費者ニーズは一貫して融合する https://beautytech.jp/n/n994328bb6f2c 順天堂大学 ×花王株式会社 テーマ「健康を科学する」のもと長いスパンの基礎研究を志向し「技術説明会」等で互いに行き来して研究課題を模索、各組織を熟知した双方の窓口が最適なマッチングを行う 経済産業省 産業技術環境局 大学連携推進室, 「組織」対「組織」の本格的な産学連携構築プロセス実例集 https://www.meti.go.jp/press/2019/07/20190719007/20190719007-1.pdf 花王の知財に関しては下記が参考になります。 知的財産, 花王サステナビリティ データブック 2020 https://www.kao.com/content/dam/sites/kao/www-kao-com/jp/ja/corporate/sustainability/pdf/sus-db-2020-07.pdf “研究・事業戦略と共創する”花王の知財教育 http://www.tokugikon.jp/gikonshi/295/295tokusyu3.pdf |
著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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