今年度のコーポレートガバナンス報告書や統合報告書と昨年度のコーポレートガバナンス報告書や統合報告書とを比較してみると、この1年間でのその会社の取組みの変化や実績がよくわかります。
日本ゼオンは、自動車用タイヤなどの合成ゴムや高機能樹脂の製造・開発を中心に事業を行う化学メーカーで、創業73周年、グループ企業19カ国・地域55社、連結従業員数4,293名、連結売上高3,886億円です。 日本ゼオンの知財戦略を、コーポレートガバナンス報告書や統合報告書で見てみます。 コーポレートガバナンス報告書では、2022年7月5日も2023年7月7日も、補充原則3-1-3のところに、同じ文章が書かれています。 『(知的財産への投資等) ・当社は「ニッチでも、日本ゼオンらしい得意分野で、ひとのまねをしない、ひとのまねのできない、地球に優しい、革新的独創的技術にもとづく、世界一製品・事業を継続的に創出し、社会に貢献する」を研究開発の基本理念として掲げています。当社の2030年に目指す姿のひとつである、「社会にとってなくてはならない製品・サービスを提供する」を実現するため、「既存事業の磨き上げ」「新規事業の探索」のための研究開発を進めています(研究開発費の推移については、当社ファクトブック(https://www.zeon.co.jp/ir/library/pdf/200324445.pdf)をご参照ください)。 ・また、このような研究開発投資の成果である、独創的技術に立脚したテクノロジープラットフォームから生み出された新製品を、拡大するサプライチェーンに適合すべく、一体化された事業戦略・研究戦略・知的財産戦略の下、特許権や意匠権、商標権などの知的財産を獲得・活用しています。加えて、IPランドスケープを専門に行う組織を設立し、各種調査ツールの導入・拡充を図るとともに人材育成を行っています。持続可能な社会に貢献し得る新事業・新技術の探索や、既存製品の価値向上を目的とした調査結果を経営に報告することで、経営戦略立案への寄与向上に取り組んでいます。』 異なるのは、下記です。 特許の件数が増加しており、、特許資産規模ランキングが上昇していることがわかります。 2022年『・現在、世界35カ国に約5000件の特許を保有しています(2021年9月末日時点)。また、2020年度における株式会社パテント・リザルトの化学特許資産規模ランキングで対象699社中21位の資産規模を有しています。引き続き、特許ポートフォリオの拡大・強化・入れ替えを積極的に進めて参ります。』 2023年『・現在、世界35カ国に約6,000件の特許を保有しています(2023年3月末日時点)。また、2021年度における株式会社パテント・リザルトの化学特許資産規模ランキングで対象763社中16位の資産規模を有しています。引き続き、特許ポートフォリオの拡大・強化・入れ替えを積極的に進めて参ります。』 また、統合報告書では大きな違いがあります。 価値創造フローのところで「知的資本」として、2022年版では「研究開発費:159億円 研究と生産の隣接」だったのが、2023年版では「研究開発費: 176億円 研究と生産の連携 知的財産の戦略的な獲得・活用」となっており、さらに「一体化された事業戦略・研究戦略・知的財産戦略のもと、独創的技術に立脚したテクノロジープラットフォームから生み出された新製品の優位性を、拡大するサプライチェーンに適合させるべく、知的財産の戦略的な獲得・活用を行っています。生産現場と連携の取りやすい研究体制やテーマ横断的な研究組織の新設、お客様や社外と協業しやすい環境づくりなどにより、新しいアイデアや技術の創出を促す取り組みを実施しています。」「特許数6,150件、日本特許2,431件、外国特許3,719件」と記載されています。 知的財産戦略については、2022年版では17行の記載(約1/3頁)だったのが、 2023年版では、知的財産の創造、知的財産マネジメント体制図、知的財産マインドの醸成、IPランドスケープ、知的財産の保護・活用、特許保有数などの項目で、2頁の記載に大幅に増えています。 この1年間で日本ゼオンの知財活動が社内で定着し、知財戦略や知財の取組みが成果をあげていることがよくわかります。 ただ、個人的には、2022年版で記載されていた『2021年12月には、特許などの知的財産分析を経営判断に活かしていくために、複合的な検索・テキスト分析のプラットフォームであるIBM Watson Discoveryを活用した「技術動向予兆分析システム」の稼働を開始しました。本システムの活用により、10万件以上の大規模で複雑な特許データを効率よく網羅的に解析することが可能となり、移り変わる市場や需要、技術トレンドの予兆を的確かつ迅速に捉え、持続可能な社会に貢献し続けるための「ものづくり」につながるアイデアを導き出すことを目指しています。』という特徴ある取り組みの成果が2023年版で具体的な記載が消えてしまっており、IBM Watson Discovery活用の成果を期待していましたので残念です。 この日本ゼオンの例でもわかりますが、今年度のコーポレートガバナンス報告書や統合報告書と昨年度のコーポレートガバナンス報告書や統合報告書とを比較してみると、この1年間でのその会社の取組みの変化や実績がよくわかります。 ゼオングループ 統合報告書 2023 https://www.zeon.co.jp/ir/library/pdf/230929.pdf P.49-50 知的財産戦略 ゼオングループ 統合報告書 2022 https://www.zeon.co.jp/ir/library/pdf/221026.pdf P.41 知的財産戦略 コーポレートガバナンス報告書 2023年07月07日 https://www.zeon.co.jp/news/assets/pdf/230707.pdf (知的財産への投資等) ・当社は「ニッチでも、日本ゼオンらしい得意分野で、ひとのまねをしない、ひとのまねのできない、 地球に優しい、革新的独創的技術にもとづく、世界一製品・事業を継続的に創出し、 社会に貢献する」を研究開発の基本理念として掲げています。当社の2030年に目指す姿のひとつである、「社会にとってなくてはならない製品・サービスを提供する」を実現するため、「既存事業の磨き上げ」「新規事業の探索」のための研究開発を進めています(研究開発費の推移については、当社ファクトブック(https://www.zeon.co.jp/ir/library/factbook/)をご参照ください)。 ・また、このような研究開発投資の成果である、独創的技術に立脚したテクノロジープラットフォームから生み出された新製品を、拡大するサプライチェーンに適合すべく、一体化された事業戦略・研究戦略・知的財産戦略の下、特許権や意匠権、商標権などの知的財産を獲得・活用しています。加えて、IPランドスケープを専門に行う組織を設立し、各種調査ツールの導入・拡充を図るとともに人材育成を行っています。持続可能な社会に貢献し得る新事業・新技術の探索や、既存製品の価値向上を目的とした調査結果を経営に報告することで、経営戦略立案への寄与向上に取り組んでいます。 ・現在、世界35カ国に約6,000件の特許を保有しています(2023年3月末日時点)。また、2021年度における株式会社パテント・リザルトの化学特許資産規模ランキングで対象763社中16位の資産規模を有しています。引き続き、特許ポートフォリオの拡大・強化・入れ替えを積極的に進めて参ります。 コーポレートガバナンス報告書 2022年07月05日 https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/dlii3l/ (知的財産への投資等) ・当社は「ニッチでも、日本ゼオンらしい得意分野で、ひとのまねをしない、ひとのまねのできない、地球に優しい、革新的独創的技術にもとづく、世界一製品・事業を継続的に創出し、社会に貢献する」を研究開発の基本理念として掲げています。当社の2030年に目指す姿のひとつである、「社会にとってなくてはならない製品・サービスを提供する」を実現するため、「既存事業の磨き上げ」「新規事業の探索」のための研究開発を進めています(研究開発費の推移については、当社ファクトブック(https://www.zeon.co.jp/ir/library/pdf/200324445.pdf)をご参照ください)。 ・また、このような研究開発投資の成果である、独創的技術に立脚したテクノロジープラットフォームから生み出された新製品を、拡大するサプライチェーンに適合すべく、一体化された事業戦略・研究戦略・知的財産戦略の下、特許権や意匠権、商標権などの知的財産を獲得・活用しています。加えて、IPランドスケープを専門に行う組織を設立し、各種調査ツールの導入・拡充を図るとともに人材育成を行っています。持続可能な社会に貢献し得る新事業・新技術の探索や、既存製品の価値向上を目的とした調査結果を経営に報告することで、経営戦略立案への寄与向上に取り組んでいます。 ・現在、世界35カ国に約5000件の特許を保有しています(2021年9月末日時点)。また、2020年度における株式会社パテント・リザルトの化学特許資産規模ランキングで対象699社中21位の資産規模を有しています。引き続き、特許ポートフォリオの拡大・強化・入れ替えを積極的に進めて参ります。
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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