公開公報が発行され、まだ権利が付与されていない段階で、要注意特許を見つけた場合には、情報提供制度を利用して、特許出願に係る発明が新規性・進歩性を有していない、あるいは、記載要件を満たしていないなど、審査を行う上で有用な情報の提供を行うことができます。
2019年には、4,643件の情報提供があり、異議申立件数が1,073件、無効審判の請求件数が113件だったのに比べると、多く利用されていることがわかります。 公開公報を読んで要注意特許を見つけた場合には、まず、特許庁での審査がどうなっているかを確認してください。審査がまだ進んでいなければ情報提供制度を利用することを検討しましょう。審査が進んでいれば、拒絶理由通知や中間処理の状況を確認しましょう。 情報提供制度を利用するかどうかは、情報提供制度を利用する場合のメリット・デメリットを考慮したうえで、案件ごとに判断すべきでしょう。 メリットとしては次の5つがあげられます。 ・権利化を阻止できる、仮に権利化されるにしても小さい権利にすること(権利の減縮)が期待できる。 ・早期に結論を得ることができるので、付与後にあれこれ考える場合と比べ、事業方針の確定等に有利。 ・匿名で提示ができる。 ・審査が慎重になるため、より精度の高い審査結果が期待できる。 ・無効審判、異議申立などに比べ、低コスト・低労力。 デメリットとしては、次の3つがあげられます。 ・権利化されると困る第三者がいることを特許出願人に知らせてしまう。特許出願人は、競合他社の製品を当該特許出願内容に基づいて調査する可能性がある。 ・かわされ易く強い特許になる可能性がある。審査段階では、補正、分割出願、拒絶査定不服審判請求、面接など、特許出願人に与えられる方策が多いので、付与後に何らかの手立てをする場合と比べ、かわされる可能性が高く、結果的に強い特許になることもある。 ・単なる情報提供者であるため、意見を言う機会が限られ、十分に意見を言えない。 2002年~2021年に出願された案件に対して情報提供された特許の件数の多い企業上位30社をリストアップしました。情報提供された特許の割合(%)を見ると、帝人が7.4%、住友化学が6.3%、三菱ケミカルが5.8%、日本触媒が5.5%などとなっていました。
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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