審査基準には、進歩性が否定される方向に働く要素として、「設計変更等」が取り上げられており、
「請求項に係る発明と主引用発明との相違点について、 以下の(i)から(iv)までのいずれか(以下この章において「設計変更等」という。)により、主引用発明 から出発して当業者がその相違点に対応する発明特定事項に到達し得ること は、進歩性が否定される方向に働く要素となる。さらに、主引用発明の内容中 に、設計変更等についての示唆があることは、進歩性が否定される方向に働く 有力な事情となる。 (i) 一定の課題を解決するための公知材料の中からの最適材料の選択(例1) (ii) 一定の課題を解決するための数値範囲の最適化又は好適化(例2) (iii) 一定の課題を解決するための均等物による置換(例3) (iv) 一定の課題を解決するための技術の具体的適用に伴う設計変更や設 計的事項の採用(例4及び例5) これらは、いずれも当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないからである。」 とされています。 特許・実用新案審査基準 第 III 部 第 2 章 第 2 節 進歩性 3.1 進歩性が否定される方向に働く要素 3.1.2 動機付け以外に進歩性が否定される方向に働く要素 (1) 設計変更等 https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/tukujitu_kijun/document/index/03_0202bm.pdf これらの例をみると、「数値範囲の最適化」については、すべて設計事項的な要素であり,設計事項であるとなり、いわゆる数値限定発明など成り立たないように思えてしまいます。しかし,現実には、多くの数値限定発明が権利化されています。 設計事項の場合と設計事項でない場合の境界をしっかり見極めることが大切です。 パテント誌に掲載されている「進歩性判断における設計事項について設計事項と非設計事項の境界−」は、この問題を考えるときに多くのヒントを与えてくれます。 「進歩性判断における設計事項について設計事項と非設計事項の境界−」 https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3241 発明の進歩性判断には,動機付けや効果論など多くの主要な論点があるためか,設計事項の問題を正面から取り上げ,論じられることは比較的少ないと思われる。しかし,実務においては,設計事項と指摘されることは多く,その判断の適否を客観的に検討することは重要である。本件発明と引用発明との相違点を埋める証拠が見つからなければ,直ちに設計事項であると安易に判断するのではなく,設計事項か否かを識別する種々の考慮要素を検討した上での合理的な論理付けが求められる。 本稿は,設計事項と判断する場合の,あるいは設計事項とはいえないとの判断をする場合の決め手になる考慮要素として,3 つの要素を裁判例から導き,提案するものである。
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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