パテント誌に「公然実施による特許無効の抗弁を主張する際の留意点」をまとめている論文が掲載されています。(特許権侵害訴訟において,公然実施による特許無効の抗弁を主張する際の留意点、パテント, Vol. 62, No. 3 , P27 (2009)、牧山 皓一)
https://system.jpaa.or.jp/patents_files_old/200903/jpaapatent200903_027-035.pdf 公然実施を立証する際の留意点としては、立証に必要な証拠は, (1)公然実施されていた事実を立証するための証拠 (2)公然実施品と特許発明との同一性を立証するための証拠 として、公然実施の認容要件別に特定することとして、それぞれの留意点を述べています。 そのうえで、 (3)公然実施品と特許発明との同一性が立証できない場合でも,公然実施品の存在により,特許発明が進歩性を欠くことが認められることがある。 としています。 特許権侵害訴訟において,公然実施による特許無効の抗弁を主張する際の留意点 パテント, Vol. 62, No. 3 , P27 (2009) 牧山 皓一 特許権侵害訴訟において被疑侵害者からいわゆる特許無効の抗弁が主張される場合がある。近年,特許権侵害訴訟における特許無効の抗弁で,頒布された刊行物に記載された発明と同一(特許法 29 条 1 項 3 号),またはこれから容易想到(同法 29 条 1 項 3 号に基づく同法 29 条 2 項)の適用が主張される件数は,依然として多いものの,その主張が認められ難くなってきた。 これに対して,公然実施された発明と同一(同法 29 条 1 項 2 号),またはこれから容易想到(同法 29条 1 項 2 号に基づく同法 29 条 2 項)の適用を主張する件数が増加し,主張が認められる割合もかなり高いことから,特許権侵害訴訟において,公然実施による特許無効の抗弁を主張する重要性が増してきている。 本稿では,特許権侵害訴訟において,公然実施の主張が認められるための要件と公然実施を立証するために必要な証拠について,裁判例を分析し,公然実施を立証する際の留意点について若干の考察を加える。 目次 1.はじめに 2.公然実施が認められるための要件と公然実施を立証するために必要な証拠 3.公然実施を立証する際の留意点 4.おわりに 3.公然実施を立証する際の留意点 特許権侵害訴訟において公然実施を立証する際に問題となるのは,立証に必要な証拠を如何に特定するかである。 立証に必要な証拠は,公然実施の認容要件別に特定することに留意する。 (1)公然実施されていた事実を立証するための証拠 係る証拠は,書類,現物等の検証物が広く用いられている。公然実施されていた事実を立証するものであるから,発行,作成等された日付と対象製品等が明確に記載されていることが必要であり,かつ,それで足りる。 ①書類として用いられているのは,カタログ・パンフレットが最も多く,以下,新聞・雑誌記事,図面,写真,購入伝票等である。 書類を証拠として用いる際に,改変が問題となることは少ないが,複数の書類を用いることにより裁判所の心証も良くなると思われる。 ②実機等の現物で立証する場合は,実機に付された製造年月日により証明する,実機に付された製造番号から製造年月日を求めて証明する等の方法が用いられているが,改変が行われていないことを裏付ける書類または証人の証言が必要である。 (2)公然実施品と特許発明との同一性を立証するための証拠 公然実施されていた事実を立証した後に,公然実施された製品等と特許発明との同一性を立証する必要がある。 同一性の立証は,公然実施品の外観,材料,特性等が記載されたカタログ,図面等の書類と特許発明とを対比して行われるものもあるが,このような立証方法はそれほど多くない。最も多く用いられているのは,公然実施品を分析して特許発明との同一性を立証する方法である。 係る方法で問題となるのは,分析対象品が改変されていないか,経時変化による特性値の変動がないか,である。証人の証言,対象品の分析結果と特許出願明細書等の書類の記載事項との対比で立証する方法が有効である。 公然実施品が入手できない場合は,特許発明との同一性を立証することが困難となるが,公然実施品を試作等により再現することが可能であれば,試作品の分析結果で同一性を立証できる場合もある。
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著者萬秀憲 アーカイブ
January 2025
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