知財管理Vol. 72No. 12、2022「新しい時代における柔らかい標準」(一橋大学イノベーション研究センター 江藤学教授)は、現在主流となっている標準化の手法では,①いったん決定された規格の変更に数年の期間が必要で市場の変化に追従できない、②アジャイル開発などの開発途中での規格の変更などには全く利用することができない、という問題があり、むしろイノベーション阻害が懸念されるようになってきたので、新しい時代にふさわしい「柔らかい標準化」を提示しています。
柔らかい標準化の必要性がよくわかりました。 江藤先生には、ある素材の標準化に関する検討会で御一緒させていただいたことがありますが、先生の柔軟な発想に驚いたことを記憶しています。 新しい時代における柔らかい標準 http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/search/detail.php?chizai_id=a3cc3ad6abf4225573aaf515dca89bf5 ビジネスの主流が勝者総取り型からエコシステム型に変化する中で、知財戦略のひとつとして標準化というツールを積極的に活用し、知財のオープンクローズ戦略を進めることでイノベーションの実現と利益の確保を両立して行くことが必要となっている。しかし、技術開発のスピードが上がり、市場の多様化が進む中で、既存の標準化手法によるイノベーション阻害が懸念されるようになってきた。現在主流となっている標準化の手法では、いったん決定された規格の変更に数年の期間が必要で、市場の変化に追従できないだけでなく、アジャイル開発などの開発途中での規格の変更などには全く利用することができない。このような標準化によるイノベーション阻害を起こさないためには、今こそ新しい時代にふさわしい「柔らかい標準化」が必要だ。本稿は、この「柔らかい標準化」の概念を提示し、これまで行われてきた様々なアプローチと新しい環境を組み合わせることで、その実現方法を追求する。 目次 1. はじめに 2.イノベーションと標準化 2.1 イノベーションと標準化の研究 2.2 標準化の効果に関する研究 2.3 標準化とイノベーションの関係 3. 過去に見られる柔らかい標準化 3.1 鉄鋼業の標準化 3.2 仕様標準から性能標準に 3.3 デジカメファイルフォーマット 3.4 デファクトスタンダードを狙う企業 3.5フォーラムスタンダードの問題 4. 標準化を取り巻く環境の変化 4.1モジュール化の変化 4.2エコシステム型ビジネス 4.3アジャイル型開発と標準化 5. 柔らかい標準化実現のヒント 5.1フォーラム規格の自由度コントロール 5.2学会における標準化プロセスの活用 5.3ユースケースの拡張 5.4 デファクトスタンダードの開放 6. おわりに 江藤学(2021)『標準化ビジネス戦略大全』日本経済新聞社 【内容紹介】 標準化の重要性が様々な場で指摘されるようになって久しい。欧米諸国によってつくられた国際標準をフォローする時代は終わり、標準化に代表される製品やサービスに関する国際ルールづくりを率先して行わなければ、グローバルビジネスで生き残ることが困難な時代のなか、日本は韓国、中国などに大きな遅れをとりつつあります。これは、日本の標準化活動が、国際標準化機関であるISO、IECや日本の国家規格であるJISの規格作成会議に出席する「標準化専門家」に任され、経営の視点、知財マネジメントの視点を標準化活動に反映することを怠ってきたからに他なりません。 「オープンイノベーション」の時代では、自らの独自技術を生み出す「知財生産活動」と同時に、他社の技術を入手し活用する「知財利用戦略」、自らの技術を他者に積極的に使わせる「知財普及戦略」が必須といえます。そして、この知財利用、知財普及を実現するうえで、様々なルールが自然発生的に、もしくは人工的に整備されています。標準化活動は、このルールづくりの代表的な場であり、これらのルールがグローバルビジネスの成否を左右するのです。 本書は、ビジネスルールづくりのツールとして標準化を駆使し、自らの有する知的財産の価値を最大化し、総合的なビジネス戦略を構築することができる人材のための「標準化の価値を知るためのビジネス書」。ビジネスにおける様々な仕掛と結果を標準化の観点から分析し、その効果と結果を理解することで、過去の成功事例において標準化が果たした役割と同様の役割を、自らのビジネスで獲得できる戦略を考案する力を獲得できる決定版の内容となります。 本書は、DVD、自転車、CD‐R、社内LAN、デジタルカメラ、特保、液晶パネル、光触媒、MPEG、抗菌製品、自転車部品、DVD-RAM、電動アシストなどの多様な事例を交えて興味深く記述、欧米各国の標準化戦略についても解説します。 【目次】 第1章 標準化はビジネスをどう変えるのか 第2章 標準化の様々な顔 第3章 サプライチェーンにおける標準化の意味 第4章 モジュール化を加速しビジネスを変える 第5章 規格に特許を包含させる戦略 第6章 試験方法規格の戦略的活用 第7章 認証のビジネス活用によるアドバンテージ 第8章 製品開発・市場化における知財マネジメント戦略 第9章 事例で学ぶ逆転のための標準化戦略 終 章 新しい時代に向けた標準化の変化
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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