神戸大学大学院法学研究科 前田健教授の准教授時代の著作である、『「広すぎる」特許規律の法的構成―クレーム解釈・記載要件の役割分担と特殊法理の必要性―』は、『本稿のテーマは,効力の範囲が「広すぎる」特許権をいかに適切に規律できるかである。』で始まります。
下記も異論は少ないと思われます。 『「広すぎる」特許は,まずは,明細書に開示された技術的思想に沿うようクレームの用語の意義を解釈し,適切な範囲に権利を限定することによって対処されるべきである。それができないときにはじめて,実施可能要件又はサポート要件違反で無効とすることによって権利行使を防ぐべきと考えられる。第三者の予測可能性を害しない範囲で,出願人・特許権者に対する過度の負担を避けるべきと考えるならば,クレームの解釈は「用語の意義の解釈」の範疇を超えるべきではないが,相当程度柔軟に行うことが可能と考えるべきだからである。』 『明細書に開示された技術的思想とは,潜在的に実施可能要件及びサポート要件を充足しうる範囲であり,これが特許保護の限界を画している。発明が,従来の技術的思想からの距離が大きい「パイオニア発明」の場合,実施可能要件及びサポート要件を緩やかに判断し,明細書に開示された技術的思想の範囲を広く認定するという考え方が正当化されうる。なぜなら,そのようなパイオニア発明を積極的に保護することが,特許法の目的にもかなうといえるからである。』 『被疑侵害品が,明細書に開示された技術的思想とは異なる異質な技術的思想に基づくのかを判断するにあたっては,特許発明のパイオニアの程度とともに,結局,侵害の疑われる技術が,主として明細書に開示した技術的貢献の上によって立つといえるのかを考慮することが必要であると考えられる。発明者の技術的貢献に,客観的に,ほとんど基づかないものに対する独占権を正当化することは困難だからである。』 「広すぎる」特許規律の法的構成 ― クレーム解釈・記載要件の役割分担と特殊法理の必要性 ― パテントVol. 71 No. 11(別冊 No.20)P137 2018 https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3260 目 次 1.はじめに 2.「広すぎる」特許はどのように処理されてきたか (1)「広すぎる」特許が生じる状況 (2)クレーム解釈と記載要件による処理 (3)作用効果不奏功・機能的クレームの解釈・穴あき説・認識限度論 (4)逆均等論 3.「広すぎる」特許はどのように処理すべきか (1)クレーム解釈と記載要件の組合せによる処理 (2)クレーム解釈と記載要件の役割分担:機能的クレームの解釈論を参考に 4.保護の限界としての「明細書に開示された技術的思想」 (1)明細書に開示された技術的思想の意義 (2)「パイオニア発明」ほど保護範囲は広いか (3)異質な技術的思想に対する権利行使 5.おわりに
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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