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発明の効果に係る発明特定事項を相違点として認定

28/6/2021

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「発明の効果に係る発明特定事項を相違点として認定し,これが容易想到でないとして発明の進歩性を肯定した審決の判断に誤りがないとされた事例」として、令和2年(行ケ)第10015号判決が知財高裁ホームページにアップされています。
発明の名称を「免疫原性組成物を安定化させ,沈殿を阻害する新規製剤」とする本件発明に係る特許についての無効審判請求不成立審決に対する取消訴訟で、本件発明は,次の構成からなる(一部簡略化して示す。)とされています。
「シリコーン処理された容器中に含まれる多糖類-タンパク質コンジュゲートの,シリコーンにより誘発される凝集を阻害する,シリコーン処理された容器に入れられている製剤であって,
 (ⅰ)pH 緩衝塩溶液,ここで該緩衝液は,約 3.5 から約 7.5 の pKa を有する,
 (ⅱ)アルミニウム塩および
 (ⅲ)13種類の血清型の肺炎球菌多糖類とCRM197ポリペプチドとのコンジュゲート
 を含む製剤。」
発明の効果に係る発明特定事項が相違点として認定され,これが容易想到でないとされ、また、シリコーン誘発凝集阻害という課題の発見の容易性についても「公知文献からは,多糖類-タンパク質コンジュゲートのシリコーン誘発凝集が本件優先日当時に課題として当業者に認識されていたとはいえない。」と判断されました。
「・・・・それにしても、製剤の課題を発見し、内在する技術的特性をうまくクレームにしてグローバルに特許を取得したワイス(現・ファイザー)の特許出願戦略は、競合品(MSDのV114)参入に対する特許障壁を見事に築いており、その戦略実行の成果は今後予期される侵害訴訟の結果次第とはいえ、肺炎球菌ワクチン事業での競合優位性に大きく貢献している点において称賛に値すると思う。このような「物」自体に備わっている(内在する・固有の)機能や特性について知恵を絞り権利化を試みることは、特許を取得する側にとっては大変参考になる事例であるとも思うところである。」という「医薬系"特許的"判例」ブログの評釈は、「物の発明」における「発明の効果」に係る発明特定事項の意義、「発明の効果」(用途)を提供する医薬用途発明の意義、「プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」と「プロダクト・バイ・効果・クレーム」にも触れており、大変参考になります。
さらに、「そーとく日記」2021年06月25日では、課題が非容易なら物の構成は容易でも「物の発明」に進歩性はあるのか(肺炎球菌結合型ワクチン事件;令和2年(行ケ)10015)と、1.物質クレームにおいてクレームに記載されている物の「特性」は相違点なのか 2.効果の顕著性が肯定できれば本件発明の進歩性は肯定されるのか 3.裁判所は「物同一説」に基づいて進歩性を肯定したという可能性について、の議論がされており、「実務者としては、いま流行りの「特性認識必要説」でガンガン攻めるのも一法かもしれない。 つまり、物の発明において、その物の特性や効果をクレームアップした上で、「これは発明特定事項であり、引例との相違点である」と主張して特許を認めてもらおう(笑)。」というまとめになっています。
 
いずれにせよ、本件を実務に生かすことは非常に重要だと思われます。
 
 
 
2021.05.17 「メルク・シャープ・アンド・ドーム v. ワイス」 知財高裁令和2年(行ケ)10015
 2021.06.15
https://www.tokkyoteki.com/2021/06/2021-05-17-msd-v-wyeth-r2-gyo-ke-10015.html
目次
1.はじめに
2.事件の背景
3.本件特許発明
4.審決の判断
5.裁判所の判断
(1)相違点4に係る発明特定事項の技術的意義について
(2)引用発明の技術的意義について
(3)相違点4の容易想到性
(4)原告の主張について
ア 実質的相違点ではない旨の主張について
イ シリコーン誘発凝集阻害という課題の発見の容易性について
6.「物の発明」における「発明の効果」に係る発明特定事項の意義
(1)相違点4が唯一の相違点である場合に新規性をどう考えるか
(2)相違点4以外は容易想到である場合に進歩性をどう考えるか
(3)「発明の効果」(用途)を提供する医薬用途発明の意義
(4)参考判決
ア 2014.12.18 「ユーロ-セルティック v. 特許庁長官」 知財高裁平成26年(行ケ)10059・・・「保存安定性を備えた」という相違点が判断された事例
イ 2020.12.14 「ロシュ v. アムジェン」 知財高裁令和元年(行ケ)10076・・・相違点は引用発明に内在する作用効果にすぎないのか争われた事例
(5)「プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」と「プロダクト・バイ・効果・クレーム」
(6)まだ、議論は尽くされていない
(7)その他
ア 別件無効審判請求事件(無効2020-800028)
イ 他の日本ファミリー特許
ウ 米国特許US8,562,999の現状
エ 欧州特許EP2676679の現状
7.おわりに

 
 
そーとく日記 2021年06月25日
課題が非容易なら物の構成は容易でも「物の発明」に進歩性はあるのか(肺炎球菌結合型ワクチン事件;令和2年(行ケ)10015)
http://thinkpat.seesaa.net/
 
 
判決要旨
https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/325/090325_point.pdf
(事件類型)審決(無効不成立)取消 (結論)請求棄却
(関連条文)特許法29条2項
(関連する権利番号等)特許第6192115号
(審決)無効2018-800090号
判 決 要 旨
1 本件は,発明の名称を「免疫原性組成物を安定化させ,沈殿を阻害する新規製剤」と
する本件発明に係る特許についての無効審判請求不成立審決に対する取消訴訟である。
本件発明は,次の構成からなる(一部簡略化して示す。)
「シリコーン処理された容器中に含まれる多糖類-タンパク質コンジュゲートの,シ
リコーンにより誘発される凝集を阻害する,シリコーン処理された容器に入れられ
ている製剤であって,
 (ⅰ)pH 緩衝塩溶液,ここで該緩衝液は,約 3.5 から約 7.5 の pKa を有する,
 (ⅱ)アルミニウム塩および
 (ⅲ)13種類の血清型の肺炎球菌多糖類とCRM197ポリペプチドとのコンジュゲ
ート
 を含む製剤。」
(以下,「肺炎球菌多糖類とCRM197ポリペプチドとのコンジュゲート」を「肺
炎球菌CRMコンジュゲート」という。)
審決が認定した引用発明は,本件特許の優先日に既に上市されていた医薬製剤から認
定される発明であり,上記(ⅱ)については一致し,同(ⅲ)については,肺炎球菌C
RMコンジュゲートではあるが肺炎球菌多糖類の血清型が7種類(7価)である点で相
違していた(相違点1)。また,本件発明の「シリコーンによる誘発される凝集を阻害
する」との発明特定事項は,引用発明には存在しない(相違点4)。
審決は,上記相違点に係る本件発明の構成はいずれも容易想到ではないと判断して,
本件発明が進歩性を欠くとはいえず,無効請求は成り立たないとした。
2 本判決は,審決の判断に誤りはないとして,原告の請求を棄却した。本判決中,相違
点4の容易想到性に関する判断の要旨は次のとおりである。
⑴ 相違点4に係る発明特定事項の技術的意義について
本件明細書の記載を踏まえると,本件発明の製剤がシリコーン誘発凝集の阻害とい
う効果を奏するという発明特定事項の技術的意義は,次のように理解される。
① シリコーン誘発凝集には,肺炎球菌の血清型を問わず,遊離の肺炎球菌コンジ
ュゲートが関与している。
② 本件発明の製剤が(i)~(ⅲ)の組成を備えることにより,溶液中においては,
肺炎球菌CRMコンジュゲートとアルミニウム塩とが結合し,遊離の肺炎球菌C
RMコンジュゲートの量が相対的に減少した状態にある。
③ 上記②の状態にあることにより,上記①の原理によるシリコーン誘発凝集が阻
害される。
⑵ 引用発明の技術的意義について
引用発明の製剤(以下「7価プレベナー」という。)の製品情報には,同製剤にお
いては7価の肺炎球菌CRMコンジュゲートがアルミニウム塩に吸着されている旨の
記載があるが,アルミニウム塩への吸着の技術的意義について開示又は示唆する記載
はない。また,本件証拠中の諸文献にも,当該技術的意義に関する記載は見出せない。
⑶ 相違点4の容易想到性
上記⑴のとおり,相違点4に係る本件発明の発明特定事項,すなわち「シリコーン
処理された容器中に含まれる多糖類-タンパク質コンジュゲートの,シリコーンによ
り誘発される凝集を阻害する」は,肺炎球菌CRMコンジュゲートとアルミニウム塩
が結合して,溶液中の遊離肺炎球菌CRMコンジュゲートの量が所期の量まで減少し
た状態であることにより,遊離肺炎球菌CRMコンジュゲートが関与するシリコーン
誘発凝集が阻害されることを意味する。
これに対し,上記⑵によれば,7価プレベナーの製品情報に接する当業者は,アル
ミニウム塩に吸着された肺炎球菌CRMコンジュゲートが7価プレベナーに含まれる
ことを認識するにとどまり,その溶液中における遊離の肺炎球菌コンジュゲートの有
無及び量を,遊離の肺炎球菌コンジュゲートが関与するシリコーン凝集という課題と
の関係で認識することは容易ではなかったといえる。また,本件発明の製剤中におけ
る遊離の肺炎球菌CRMコンジュゲートの量は,7価プレベナーに対して追加する6
種の血清型の肺炎球菌CRMコンジュゲートの量によって変わり得るし,追加する各
血清型それぞれのアルミニウム塩への吸着しやすさによっても異なるから,当業者は,
本件発明の組成を有する製剤の溶液中に遊離の肺炎球菌CRMコンジュゲートが存在
するかどうかさえ引用発明から予測できず,その結果,遊離の肺炎球菌CRMコンジ
ュゲートが関与するシリコーン誘発凝集が本件発明の組成の製剤において阻害される
か否かも予測できない。
以上によれば,相違点4に係る発明特定事項,すなわち,シリコーン処理された容
器中において肺炎球菌CRMコンジュゲートのシリコーン誘発凝集を阻害するため
に,製剤が(ⅰ)~(ⅲ)の組成を備えることは,当業者にとって,引用発明から容易に
想到し得るものではない。
⑷ 原告の主張について
ア 実質的相違点ではない旨の主張について
原告は,7価プレベナーの製品情報に接した当業者は,7価プレベナーにおいて
もシリコーン誘発凝集が何らかの理由により阻害されていると理解したこと,7価
プレベナーにおいて生じていたリン酸アルミニウムによるシリコーン誘発凝集の阻
害は,13価の肺炎球菌CRMコンジュゲートにおいても,程度はともかくおのず
と生ずること,からすれば,相違点4は実質的には一致点であり,相違点とはなら
ない旨主張する。
しかしながら,7価プレベナーの製品情報における「ワクチンは……投与の前に
視覚的に物理面のいかなる粒子状物質や変化も詳しく調べられなければならない」
との記載は,注射用薬剤の使用に先立っての一般的な注意事項として,製造上や保
管上の不具合により変質が生じていないか確かめるべきことの指示としても理解で
きる記載であるから,多糖類-タンパク質コンジュゲート製剤のシリコーン凝集に
ついての知見が存在しなかった本件優先日当時の当業者は,上記記載に接して,原
告主張のように,凝集が生じ得るけれども通常はそれが阻害されていることを理解
し得るとは必ずしもいえないし,ましてや,その凝集がシリコーンにより誘発され
るものであるかどうかは断定し難いものといわざるを得ない。これに対し,本件発
明は,13価の肺炎球菌CRMコンジュゲートの凝集の原因をシリコーン誘発凝集
であると明確に特定した上で,その凝集を阻害することを発明特定事項としている
のであるから,この点において,引用発明とは相違が存するものといえる。
したがって,審決が相違点4を認定したことに誤りはなく,原告の上記主張は採
用できない。
イ シリコーン誘発凝集阻害という課題の発見の容易性について
原告は,タンパク質製剤におけるシリコーン誘発凝集は知られており,タンパク質
の凝集が多糖類-タンパク質コンジュゲート凝集の原動力であることを当業者は理
解していたから,引用発明に6種の血清型の肺炎球菌CRMコンジュゲートを追加
することによりタンパク質含量が増える13価の肺炎球菌CRMコンジュゲート製
剤でシリコーン誘発凝集が生じることは予見可能であった旨主張する。
しかし,原告がその主張の根拠とする公知文献は,多糖類-タンパク質コンジュ
ゲートの構造的不安定性に関連する凝集について記載するのみであるから,これら
の公知文献からは,多糖類-タンパク質コンジュゲートのシリコーン誘発凝集が本
件優先日当時に課題として当業者に認識されていたとはいえない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
以 上

 
令和3年5月17日判決言渡
令和2年(行ケ)第10015号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和3年3月10日
判 決
https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/325/090325_hanrei.pdf

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