神戸大学大学院法学研究科 前田健 教授のパテント誌に掲載された論文「進歩性判断における「予測できない顕著な効果」の意義」を読みました。ヒトにおけるアレルギー性眼疾患を処置するための点眼剤に係る特許(特許第3068858号)の無効審判(無効 2011-800018 号事件)に係る審決取消訴訟の最高裁判決を題材にしています。同判決が、予測できない顕著な効果について、本件発明の構成が奏するものとして当業者が予測することができた効果と比較して、効果の非予測性及び顕著性を評価すべきとの基準を示した点を評価していますが、一方、進歩性判断における予測できない顕著な効果の判断方法については、多くが未解決のまま残されていることを指摘し、これらの点について論じています。
自社の発明を権利化するうえでの考慮すべき事項、あるいは、他社の出願の権利化を阻止するうえでの考慮すべき事項として重要でしょう。 前田健, 進歩性判断における「予測できない顕著な効果」の意義, パテント, Vol. 74, No. 7, P.64-(2021) https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3816 最判令和元年 8 月 27 日集民 262 号 51 頁は,最高裁として初めて,進歩性判断における予測できない顕著な効果について判断した。同判決は,予測できない顕著な効果について,本件発明の構成が奏するものとして当業者が予測することができた効果と比較して,効果の非予測性及び顕著性を評価すべきとの基準を示した点が注目される。同判決は,医薬用途発明である本件各発明について,同等の効果を有する他の各化合物が存在することが知られていたということのみから直ちに効果の非予測性と顕著性を否定した原判決を破棄している。同判決の射程は,発明の効果の非予測性及び顕著性を評価する際の比較の対象を判示した点に止まり,進歩性判断における諸々の論点はなお残された課題となっている。しかし,本判決が,進歩性要件にまつわる議論を喚起し,論点の整理が進んだ意義は大きい。 目次 1.はじめに 2.最判令和元年 8 月 27 日集民 262 号 51 頁 2.1 事案の概要 2.2 原判決 2.3 判旨 3.本判決の内在的理解 3.1 進歩性判断の意義 3.2 比較の対象 3.3 予測性と顕著性 3.4 本件各発明が医薬用途発明であったことの意義 4.今後の予測できない顕著な効果の判断の在り方 4.1 予測できない顕著な効果の位置づけ 4.2 効果がクレームアップされている場合の取り扱い 4.3 本件の処理 5. 終わりに
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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