特許出願を増やしていくと必ず突き当たるのが特許の質の問題とか特許の価値とかの問題です。 特許の質は、特許査定率、あるいは、総合特許登録率(出願した特許が最終的に特許登録される割合)で表すことが多いでしょう。 特許の価値は、第三者の特許に対するアクション、特許庁のアクション、自社のアクションという公表されているデータをベースに、あるいは類似の特許の取引価格などを参照して、数値化して表す様々な手法が取られています。 出願時には、発明者や発明部署の判断が重みを持っています。できるだけ客観性を持たせようと、様々な角度からの指標で、関係者に評価を求めますが、所詮、主観的な評価にすぎないとも言えます。出願が公開された後、審査請求し審査がある程度進むと、ある程度客観的な評価ができるようになってきます。 研究開発部門、事業部門、知財部門等による内部的な評価で、特許の質や価値を判断しているのが多くの会社の取っているやり方ですが、客観的な評価として外部の評価機能が充実してきていますので、内部評価と外部評価を組み合わせて、総合的に判断するやり方が増えているようです。 出願時に特許の質とか価値を客観的に判断する手法があれば良いなあと思い、「出願時の明細書を打ち込むと権利化可能性がわかる」という話に飛びついたことがありました。もう10年くらい前の話です。先行技術調査結果と明細書を使うのかと思いきや、明細書だけで良いというのです。天下のI社知財部が言っているのだから、と半信半疑で検討しました。結果は、「出願時の明細書からコンピュータが権利化可能性を判断した結果と特許査定率に高い相関がみられた」のでした。 「特許の質への取組みとその客観的指標の活用の可能性に関する一考察」知財管理, 61巻 9号 1325頁(2011年) (抄録 ; 近年、特許の活用・流通が盛んになるにつれて、それを支える前提としての「特許の質」に注目が集まり、アカデミア、企業、弁理士等の専門家によって、「特許の質」についての客観的指標に関する研究や報告がなされている。このような背景を踏まえ、本論説では、ユーザにとって効果的な特許の質の客観的指標の活用について検討を行った。) http://www.jipa.or.jp/kaiin/kikansi/honbun/2011_09_1325.pdf 10年くらい前の話ですから、あのI社の研究はその後どうなっているのか気になります。
0 Comments
Leave a Reply. |
著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
カテゴリー |