令和6年4月22日判決言渡 令和5年(行ケ)第10091号 特許取消決定取消請求事件(「バリア性積層体、該バリア性積層体を備えるヒートシール性積層体および該ヒートシール性積層体を備える包装容器」事件)判決は、本件発明が甲3発明に基づき容易に発明することができたとはいえないとして、審判合議体による特許取消決定を取消した事例です。
裁判所は発明の技術的意義をより詳細に評価し、用途特定と技術的構成の相互関連性を重視することで、発明の進歩性を認める判断を下しました。 ・用途特定の重要性:裁判所は、ボイルまたはレトルト用という用途特定が発明の技術的特性発見において重要であると認識しました。(審決ではこの点が軽視されていました。) ・技術的構成の評価:裁判所は、軽装原子と炭素原子の比率が高温処理後のガスバリア性維持において重要な技術的構成であると認めました。(審決では引用発明に含まれる技術内容とみなされていました。) ・阻害要因の判断:裁判所は、引用発明との技術的構成や用途特定における阻害要因を認め、本発明が容易に想到されないものであると判断しました。(審決ではこれが否定されていました。) 特許 令和5年(行ケ)第10091号 「バリア性積層体、該バリア性積層体を備えるヒートシール性積層体および該ヒートシール性積層体を備える包装容器」(知的財産高等裁判所 令和6年4月22日) 7月17日(水) https://ipforce.jp/articles/soei-patent/hanketsu/2024-07-17-6803 今月の進歩性 202406 ②令和5(行ケ)10091 審決取消請求事件 https://www.youtube.com/watch?v=b4Fn_rX_fq4 令和5(行ケ)10091 https://www.ip.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail?id=6166 判決要旨は下記のとおり。 1 異議申立人は、令和4年1月13日、発明の名称を「バリア性積層体、該バリア性積層体を備えるヒートシール性積層体および該ヒートシール性積層体を備える包装容器」とする原告の特許(特許第6902231号)について特許異議の申立てをした。 特許異議手続の中で、原告が訂正請求をし、特許庁は、同訂正を認めた上で、訂正後の発明は進歩性を欠如するとして、特許取消決定をした。 2 裁判所は、以下のように判断して、特許取消決定を取り消した。 ⑴ 本件決定は、相違点1- から相違点1-3を各別に判断しているが、本件発明は、ボイル又はレトルト処理が行われる場合であってもガスバリア性の低下の抑制が図られるように、バリアコート層表面の珪素原子と炭素原子との割合を特定の範囲にしたものであって、 高いガスバリア性を有するボイル又はレトルト用バリア性積層体を提供するという技術的意義を有するものであるから、ボイル又はレトルト用であるか否かに係る相違点1-3と、 珪素原子と炭素原子の比の数値範囲に係る相違点1-2は 一体として検討されるべきものである。 ⑵ 本件決定は、甲3発明に、甲4記載事項のオーバーコート層における炭素原子に対する珪素原子の比率を適用するものである。 しかし、当業者において、甲3発明の食品包装材料についてボイル又はレトルト用途とすることを想起したとしても、甲4におけるオーバーコート層を構成する原子における金属原子の比率は加熱によってもガスバリア性が維持されるかどうかとは関わりのないものであること、甲4には、炭素原子と金属原子の比率と、膜質の脆性について、甲3と正反対の記載があることに鑑みても、甲3発明とは技術分野も積層構造も異なる真空断熱材用外包材に関する甲4の積層体の中から、オーバーコート層付きフィルムの中のオーバーコート層及び無機層に関する記載に着目した上、オーバーコート層における炭素原子に対する金属原子の比率(金属原子数/炭素原子数)を参酌して、甲3発明に適用する動機付けを導くには無理があるというほかなく、本件決定の判断には誤りがある。 Case No. 10091 of Reiwa 5: Interrelationship Between Specific Use and Technical Configuration Judgment Delivered on April 22, Reiwa 6 Case No. 10091 of Reiwa 5 (Administrative Case) Request for Cancellation of Patent Invalidation Decision ("Barrier Laminate, Heat-Sealable Laminate Comprising Said Barrier Laminate, and Packaging Container Comprising Said Heat-Sealable Laminate" Case) This case involved a judgment where the court overturned the decision of a trial board to invalidate a patent, ruling that the invention in question could not have been easily derived from Invention A3. The court evaluated the technical significance of the invention in detail and emphasized the interrelationship between the specific use and the technical configuration, thereby recognizing the invention's inventive step. Key Points:
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著者萬秀憲 アーカイブ
April 2025
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