「除くクレー ム」とは、請求項に記載した事項の記載表現を残したままで、請求項に係る発明に包含される一部の事項のみをその請求項に記載した事項から除外することを明示した請求項をいいますが、除外した後の「除くクレーム」が新たな技術的事項を導入するものではない場合には、許されます。審査基準には、以下の2態様が挙げられています。 (1)請求項に係る発明が引用発明と重なるために新規性等(29条1項3号、29条の2または39条)が否定されるおそれがある場合に、その重なりのみを除く補正 (2)請求項に係る発明が「ヒト」を包含しているために、29条1項柱書きの要件を満たさない、または32条に規定する不特許事由に該当する場合において、「ヒト」のみを除く補正 先行技術と明らかに技術思想が異なるのに、たまたま先行文献に記載があるというような場合に使い勝手がよく、化学系では汎用されているようです。 2021年登録における「除くクレーム」を使用している上位企業の件数、割合をみると、化学系企業が多いですが、非常に割合が高い企業もあることがわかります。 2021年登録における「除くクレーム」件数、割合を分野別にみると、化学、医薬・バイオで高いことがわかります。 特定分野では最近「除くクレーム」件数、割合とも増えているということです。 機械系でもある程度使われているようです、今後トライされてはどうでしょうか。 特許・実用新案審査基準 https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/tukujitu_kijun/document/index/all.pdf 第IV部 第2章 新規事項を追加する補正 3.3.1 特許請求の範囲の補正 (4) 除くクレームとする補正の場合 「除くクレーム」とは、請求項に記載した事項の記載表現を残したまま で、請求項に係る発明に包含される一部の事項のみをその請求項に記載した 事項から除外することを明示した請求項をいう。 補正前の請求項に記載した事項の記載表現を残したままで、補正により当 初明細書等に記載した事項を除外する「除くクレーム」は、除外した後の 「除くクレーム」が新たな技術的事項を導入するものではない場合には、許 される。 以下の(i)及び(ii)の「除くクレーム」とする補正は、新たな技術的事項を 導入するものではないので、補正は許される。 (i) 請求項に係る発明が引用発明と重なるために新規性等(第29条第1項第3 号、第29条の2又は第39条)が否定されるおそれがある場合に、その重な りのみを除く補正 (説明) 上記(i)における「除くクレーム」は、第29条第1項第3号、第29条の2又は第39 条に係る引用発明である、刊行物等又は先願の明細書等に記載された事項(記載 されたに等しい事項を含む。)のみを除外することを明示した請求項である。 上記(i)の「除くクレーム」とする補正は、引用発明の内容となっている特定の 事項を除外することによって、補正前の明細書等から導かれる技術的事項に何ら かの変更を生じさせるものとはいえない。したがって、このような補正は、新た な技術的事項を導入しないものであることが明らかである。 なお、「除くクレーム」とすることにより特許を受けることができる発明は、 引用発明と技術的思想としては顕著に異なり本来進歩性を有するが、たまたま引 用発明と重なるような発明である。引用発明と技術的思想としては顕著に異なる 発明ではない場合は、「除くクレーム」とすることによって進歩性欠如の拒絶理 由が解消されることはほとんどないと考えられる。 また、「除く」部分が請求項に係る発明の大きな部分を占めたり、多数にわた る場合には、一の請求項から一の発明が明確に把握できないことがあるので、審 査官は留意する(「第II部第2章第3節 明確性要件」の2.1(1)参照)。 例4: [補正前の請求項] 陽イオンとしてNaイオンを含有する無機塩を主成分とする鉄板洗浄剤。 [引用発明] 陰イオンとしてCO3イオンを含有する無機塩を主成分とする鉄板洗浄剤。 (具体例:陽イオンをNaイオンとした例) (説明) このときに、特許請求の範囲から引用発明との重なりを除外する目的で、特 許請求の範囲を「陽イオンとしてNaイオンを含有する無機塩(ただし、陰イオ ンがCO3イオンの場合を除く。)……」とする補正は、許される。 (ii) 請求項に係る発明が、「ヒト」を包含しているために、第29条第1項柱 書の要件を満たさない、又は第32条に規定する不特許事由に該当する場 合において、「ヒト」のみを除く補正 (説明) 「ヒト」を発明対象から除外することによって、上記拒絶理由を解消する上記 (ii)の「除くクレーム」とする補正は、補正前の明細書等から導かれる技術的事 項に何らかの変更を生じさせるものとはいえない。したがって、このような補正 は新たな技術的事項を導入しないものであることが明らかである。 例5: [補正前の請求項] 配列番号1で表されるDNA配列からなるポリヌクレオチドが体細胞染色体中 に導入され、かつ該ポリヌクレオチドが体細胞中で発現している哺乳動物。 (説明) この場合は、発明の詳細な説明で「哺乳動物」についてヒトを含まないこと を明確にしている場合を除き、「哺乳動物」には、ヒトが含まれる。しかし、 ヒト自体をその対象として含む発明は、公の秩序、善良の風俗を害するおそれ がある発明に該当し、第32条に違反するものである。 このときに、特許請求の範囲からヒトを除外する目的で、特許請求の範囲を 「……非ヒト哺乳動物」とする補正は、当初明細書等にヒトを対象外とするこ とが記載されていなかったとしても許される。
0 Comments
Leave a Reply. |
著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
カテゴリー |