知的財産活動について10年以上前に書いた紹介記事です。あれからあまり進化していないかもしれません。
当社の知的財産活動は、知財サイクル(出願・権利化・権利行使)のすべてで競合他社の水準を上回る強い体制・運用を確立し、中長期の視点で競合他社に対する比較優位を確保することを目指しています。 以下、当社知的財産活動の特徴を紹介します。 知的財産の発掘・出願から権利化まで 当社の知的財産活動は、商品開発・技術開発による成果を残さず発明として特許もしくは意匠として出願し保護することを基本とし、開発担当者は新しく実施した事項を全て申告するようにし、外部の弁理士を毎月現場でのアイデア会議に参加させ、知財部員とともに発明を発掘するようにしたことが特徴です。 出願・権利化の実務は、開発部員、知財部員、弁理士(特許事務所)の共同作業であり、外部特許事務所の力をいかに活用するかがポイントですが、弁理士(特許事務所)と目標を共有できたことで、特許出願の量の拡大と質の向上を同時に図ることができました。 特許出願の啓蒙、早期権利化を進め、出願明細書の質の向上・中間処理のレベルアップを図った結果、平成10年度には、特許出願件数31件、特許登録件数8件、特許登録率30%以下という状態でしたが、平成20年度には、特許出願件数312件、特許登録件数166件、特許登録率64%となりました。(ちなみに、特許庁の特許行政年次報告書2020 年版によれば、最新の数字は、特許出願件数318件、特許登録件数189件、特許登録率89%) 他社からの警告・侵害訴訟への対応 平成10年~15年に、10社から31件の警告を受け、3社から6件の訴訟を提起され、争いました。 これらの係争から、弁護士・弁理士と知財部と技術者の連携・相互理解が非常に重要であることを組織として学ぶことができ、当社の知的財産活動の基本スタイルとなっています。 また、先使用権を確保することの重要性を認識し、新たに開発された技術・商品は、現物を仕様書や決裁書類等とともに、公証人による認証を受け保管し、先使用権を確保できるようにし、他社からの権利行使に備えています。 権利の活用 特許出願・登録の数の拡大に伴い、権利の活用が大きなテーマとなりました。 これまで警告を受ける一方の会社が警告しても、他社が素直に応じるわけがありませんので、いきおい、侵害訴訟で原告となる機会が多くなりました。 弁護士・弁理士と知財部と技術者の連携により、当社の主張を裁判で明確に主張することができ、裁判上の和解、判決などで、成果を得ることができました。最近では、平成20年4月、知財高裁で当社の権利行使が認められました。(平成18年~20年の知財訴訟で、認容金額が1億円を超えた判決は、本訴訟のみとのこと。) その後、やっと、話し合いによる競合他社との解決が成り立つようになってきました。 基幹特許をライセンスすることはできませんが、ライセンス可能と判断した権利は、特許流通データベース(独立行政法人工業所有権情報・研修館、財団法人日本特許情報機構)に登録しています。 社内知的財産教育 当社の知財教育は、社内教育、知的財産協会、発明協会の研修への参加を中心に行っています。 知的財産管理技能検定(知財検定)へ取組み、技術系社員は入社後3年以内に3級の資格を取得することとしました。また、2級を取得した社員は、グループ会社の知的財産活動推進の中心メンバーとして活躍しています。 海外における知的財産活動 海外展開が事業上の課題となってきており、知的財産活動も、海外への商標・意匠・特許の出願に力をいれていますが、特に急激に増加し巧妙になっている模倣品対策では、知的財産権を用いた積極的な対応による模倣品の排除により、当社グループのブランド価値の維持・向上に寄与しています。。 能動的な提案型の知財部へ 知財部の業務は、知的財産に関する契約の管理、上市商品の表示や販促資料などの表記チェック、商標・意匠・特許の出願・権利化など、ともすれば次から次へと依頼される仕事をこなすことに没頭してしまいがちです。 知財部は、「商品企画・開発部門、生産部門、営業部門など全社に対して、知的財産に関する情報を発信しアドバイスする」能動的な提案型の知的財産活動を行うことで、競争優位性の確保、顧客価値向上、利益への貢献をはかることを目指しています。
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著者萬秀憲 アーカイブ
January 2025
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