「大阪地方裁判所 令和3年9月28日判決 令和元年(ワ)第5444号 損害賠償請求事件」では、他社の特許権を侵害した会社の取締役らに対し、会社法429条1項に基づき、侵害者である会社と同等の損害賠償責任を認める判決でした。この判決では、専門家から非抵触の鑑定を得ていたにもかかわらず、取締役が会社と同等の個人責任を問われました。
この判決を、会社法第 429 条第 1 項の法的性質、他の裁判例との比較から検討したのが、パテント誌2023年5月号に掲載されている「特許権侵害事例における取締役個人の特許権者に対する損害賠償責任」と題する論文です。 取締役の善管注意義務の判断に広く用いられる経営判断原則に即した判断基準が提案されており、なるほどと思いました。 特許権侵害事例における取締役個人の特許権者に対する損害賠償責任 https://jpaa-patent.info/patent/viewPdf/4202 要 約 知的財産権侵害に関する紛争では侵害行為の主体とされる法人等に対する責任追及が行われるのが通常である。しかし、事案によっては、会社法 429 条第 1 項に基づき、侵害行為の主体とされる法人の取締役個人に対する責任追及が行われることも珍しくない。そこで本稿では、本条の法的性質等について概観した上で、複数の裁判例を題材に取締役に課される善管注意義務の内容及びいかなる場合に任務懈怠に関する重過失が認められるかについて検討を行った。その結果、善管注意義務の内容は「取引実施に当たっては、第三者の特許権を侵害しないよう配慮すべき義務」という点で概ね一致していた。しかし、具体的な判断基準に関しては、「中立的な専門家の意見聴取」等の調査義務の存在が示唆される一方、特許権侵害の可能性の多寡にかかわらず実施行為の停止ないし損害賠償相当額の留保等の経営判断が求められるなど著しい相違があることが明らかとなった。 目次 1.はじめに 2.会社法第 429 条第 1 項の法的性質等 3.取締役の責任を認めた裁判例 4.取締役の責任を認めなかった裁判例 5.大阪地判令和 3 年 9 月 28 日発明 119 巻 1 号 41 頁(裁判例⑦) 6.裁判例①ないし⑥と裁判例⑦の比較を踏まえた善管注意義務の判断基準について 7.おわりに 特許権侵害と取締役の対第三者責任 大阪地方裁判所 令和3年9月28日判決 令和元年(ワ)第5444号 損害賠償請求事件 https://innoventier.com/wp-content/uploads/2022/09/672f38f962e3d966bd0d8c2f32d574aa.pdf 特許権侵害の不法行為により特許権者に損害を与えた会社の役員個人に対し、会社法429条1項に基づく損害賠償責任を認めた事例[大阪地方裁判所 令和3年9月28日判決 令和元年(ワ)第5444号] https://www.hanketsu.jiii.or.jp/hanketsu/jsp/hatumeisi/news/202201news.pdf ≪特許権侵害行為を行った会社の代表取締役および取締役に対する会社法429条1項に基づく損害賠償請求が認容された事例≫ 【令和3年9月28日(大阪地裁 令和元年(ワ)5444号)】 https://www.ip-bengoshi.com/archives/5743 【裁判例】令和元年(ワ)第5444号 損害賠償請求事件 2022.02.16 https://www.tmi.gr.jp/eyes/blog/2022/13211.html 特許権侵害と取締役の責任 26/8/2022 https://yorozuipsc.com/blog/8279117
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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