知財管理, Vol. 72, No. 8, 2022の判例と実務シリーズ:No.532「特許権侵害と取締役の対第三者責任(大阪地方裁判所 令和3年9月28日判決令和元年(ワ)第5444号 損害賠償請求事件)」は、会社法429条1項(役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは,当該役員等は,これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う)に基づき,他社の特許権を侵害した会社の代表取締役及び取締役に対し,特許権者への損害賠償を命じた判決を分析した上で,企業実務への影響について検討しています。
今後の企業の対応についても触れており、『多くの企業が危惧する侵害リスク管理との関係について述べると,開発時におけるFTO調査と侵害警告時等における鑑定及びそれらの結果に基づく違法状態の回避,解消といった,一般的な侵害リスク対応の実務が定着していれば,通常,特許権侵害を理由に取締役が個人責任を負うことはなく,この判決を理由に実務の変更を検討するのは時期尚早と思われる。』などとしていて、参考になります。 (なお、本件は、控訴審(知財高裁令和3年(ネ)第10087号)における和解により終結しているようです。) 令和1(ワ)5444 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 令和3年9月28日 大阪地方裁判所 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/602/090602_hanrei.pdf 特許権侵害の不法行為により特許権者に損害を 与えた会社の役員個人に対し、会社法429条1項に 基づく損害賠償責任を認めた事例 https://www.hanketsu.jiii.or.jp/hanketsu/jsp/hatumeisi/news/202201news.pdf 判例解説 大阪地裁令和 3 年 9 月 2 8 日判決 (令和元年(ワ)第 5 4 4 4 号) http://www.koyo-patent.co.jp/koyotsushin/koyotsushin202204.pdf 判例と実務シリーズ(No. 532) 論文名 (No. 532) 特許権侵害と取締役の対第三者責任 http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/search/detail.php?chizai_id=2d6b3abdac3a7176e2361063e2432348 大阪地方裁判所第21民事部(谷有恒裁判長)は、令和3年9月28日、他社の特許権を侵害した会社の取締役らに対し、会社法429条1項に基づき、侵害者である会社と同等の損害賠償責任を認める判決をした。この判決は、内閣の知的財産戦略本部の検討会で紹介されたことから多くの企業に注目され、また、動揺をもたらした。特に、専門家から非抵触の鑑定を得ながら、取締役が会社と同等の個人責任を問われた点は不安を生み、他方で、侵害者に対する新たな責任追及の手段を切り拓く判決とみる向きもある。しかし、この判決の判断枠組みは、取締役の対第三者責任の要件である任務懈怠や悪意重過失の把握において判例による会社法の解釈から乖離し、また、任務懈怠や悪意重過失のほか、因果関係にかかる認定判断にも欠落があると思われるため、判旨を一般化して実務の見直し等を検討するのは時期尚早と考えられる。 【裁判例】令和元年(ワ)第5444号 損害賠償請求事件 https://www.tmi.gr.jp/eyes/blog/2022/13211.html 2021.09.28 「メディオン v. P1・P2・P3・P4」 大阪地裁令和元年(ワ)5444 https://www.tokkyoteki.com/2021/11/2021-09-28-r1-wa-5444.html
0 Comments
Leave a Reply. |
著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
カテゴリー |