4月14日に、令和4年度知的財産に関する日中共同研究報告書が公表されました。
https://www.jpo.go.jp/resources/report/takoku/nicchu_houkoku/2022.html その中で、「実施促進説から解釈する先使用制度の現代的な意義-特に用途発明、パラメータ発明からパブリック・ドメインを保護するために-」(北海道大学 𠮷田 広志 教授)は、下記のように要約された論文を書かれており、なるほどと思った次第です。 『先使用権に基づく抗弁の論点について、日本の研究者は 2023 年現在、従来に比べて、特許付 与率が大きく上昇している点に着目し、以下のような内容の報告をした。特許付与率との因果関係は はっきりしないものの、一つの傾向として、用途発明やパラメータ発明が特許されやすくなっている こととの相関が感じられ、よく知られているように、用途発明等は、パブリック・ドメイン(以下、 「PD」)に覆い被さる形となるため、第三者に対する影響が大きい。このような状況で、PD と思しき実 施態様を取る被疑侵害者にとって最後の砦というべきものが先使用の抗弁であるとした。本来であれ ば、PD を侵食する用途発明等については特許無効の抗弁(法 104 条の 3)を主張すべきであり、更に 特許無効審判によって特許無効とすることが最善である。しかし、様々な理由から、用途発明等につ いて新規性/進歩性欠如を理由として特許無効を主張することが実質的に困難となっている。筆者自身 はこれら状況を決して善しとするものではなく、この問題は本来的には新規性/進歩性において議論す べきものと考えるが、それを待てない実務的観点からは、先使用制度に期待する他ないとした上で、 この研究ではこのような問題意識、特に用途発明、パラメータ発明等から PD を保護するために、先使 用制度について現代的な役割を期待すべく、新たな解釈を提言するものであるとした。』 第2章 知財に係る事案の解決に関する比較研究 https://www.jpo.go.jp/resources/report/takoku/nicchu_houkoku/document/2022/r4_houkoku2.pdf 第1節 研究内容の要約 第2節 中国における知財に係る事案の解決 「専利侵害の先使用例外の適用問題に関する研究」 管 育鷹 教授(中国社会科学院 「専利の均等侵害原則における若干問題に関する研究」 曹 新明 教授(中南財経政法大学) 「中国における均等侵害制限規定の適用‐日中比較を中心として」 張 鵬 専任研究員(中国社会科学院) 第3節 日本における知財に係る事案の解決 役割分担の観点からみた日本の均等論の制度論的研究」 田村 善之 教授(東京大学) 「実施促進説から解釈する先使用制度の現代的な意義-特に用途発明、パラメータ発明からパブリック・ドメインを保護するために-」 𠮷田 広志 教授(北海道大学)
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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