ある大手メーカー知財部門の責任者の言葉が印象的でした。
「事業部に張り付いている知財部員の評価は、事業部の責任者に任せている。知財部門からみてうまくいっていると評価できる事業部門では知財担当の評価が高くなっていて、うまくいっていないなあと思う事業部門では知財担当の評価が低い。事業部門の評価と知財部門の評価は、かなり一致している。どうしてこの違いがでているかをみると、事業部の責任者と知財担当のコミュニケーションが鍵のようだ。」 この感覚は、IPランドスケープを推進されている方々の感覚と同様のものだと思っています。 IPランドスケープというのは、突き詰めて言えば「経営や事業判断において、実際に知財が役立っていること」だと思う。例えば、経営陣に知財部の方がいらっしゃる企業においては、当然のことく経営会議の場で事業と知財が一体として議論されているであろう。これもまたIPランドスケープそのものである。・・・このレベルが企業として当たり前になることが大切なのだと思う。つまり経営の意思決定に知財情報が普適に活用され、 事業の進化や変革が実現されている姿こそ、IPランドスケープそのものなのではないだろうか。・・・皆様、経営暦に如何に知財情報の有用性を理解してもらうか、その距離感を詰めることに苦労されているように思う。 中村栄, IPL de Connect 経営層にインパクトを 旭化成グループにおけるIPランドスケープ, JopioYEAR Book 2019, p.154-159 ダイソン、グラクソ・スミスクライン「(知財部門は)コンサルのような業務はしていない。そもそも知財部門の責任者は経営会議に出ているボードメンバーの一人であり、新規事業であっても知財部員は最初からその検討メンバーとして関わっているから」 日本企業の先進的な知財部門「経営会議や事業企画の会議などに知財部門を呼んでもらってコンサルができるよう、今は信頼関係を構築中」 ギャップが特に大きかった。 このギャップの正体は「経営・事業部門」と「知財部門」との間に存在する距離感である。 この分断を超え、経営企画部門・事業開発部門と知財部門をつなぐ概念が「IPランドスケープ」なのだ。 両社が言っていた「IPランドスケープ」は、若干のニュアンスの違いがあったものの、共通項としては、(1)経営戦略、事業戦略立案のオプションを提示するために、(2)知財情報とマーケット情報を分析して活用することを指していた。 従来、経営企画部門や事業部門から距離があり、「言われた仕事」「頼まれた仕事」だけを行う知財部門では、IPランドスケープを実践することは不可能だ。IPランドスケープは、知財部門の本来的な役割である経営戦略、事業戦略への「支援」機能を極大化できるキーワードと認識できる。 杉光 一成, “経営戦略としての知財”を実現する「IPランドスケープ」──知財立国宣言後の日本企業の実態とは?第1回[公開日]2020年07月17日 https://bizzine.jp/article/detail/4854 アナリストも,知財解析という作業をやっているのではなく,IPL を実施するのが目標で給与を稼ぐのが目的なのでもなく,今後も自社の事業が持続可能であるように,その事業を造ることを目的として仕事をしているのである。 和田玲子, 中村栄, AI時代のIPランドスケープを遂行する知財アリスト~解析シナリオ構築力のレベルアップを目指して~, 情報の科学と技術, 70巻7号p.366-372(2020) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jkg/70/7/70_366/_pdf/-char/ja
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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