「オープン&クローズ戦略」では、クローズ戦略の要となる「コア技術」が必須とされています。そのため、強い「コア技術」を持たない会社にとっては、「オープン&クローズ戦略」は関係ない、という誤解があるようです。
しかし、1990年代にゼロから中国のVCD(Video Compact Diskの略称)市場を創出するというイノベーションを起こした中国企業の例は、「コア技術」を持たない企業でもイノベーションを起こし新市場を創出すことができることを示しています。 この中国企業は、「先進技術と他社の強みをいち早く吸収する巧妙な学習力で、先進技術となるグローバルシーズと中国ならではのローカルニーズを融合して、インテグレーション型のイノベーションを創出した」とされており、「さらに、次のグローバルシーズとローカルニーズを見つけて、商品を進化させると同時に、技術力と商品力を向上」させているということです。(一橋ビジネスレビュー2015 Winter) 当初は「コア技術」がなくとも、 ①ニーズとシーズを見つけ自社なりの商品コンセプトを創り出し、 ②商品コンセプトの実現に必要となる技術を我部から調達し、自社なりの工夫(システ ム・インテグレーション)で商品コンセプトを実現する。 ③さらに、次のシーズとニーズを見つけて、商品を進化させると同時に、技術力と商品力 を向上させる、 というプロセスで、新たなコア技術を創り出していると言えるでしょう。 自社に現状「コア技術」がなくても、「コア技術」に育成することが可能であることを示しています。 また、「コア技術」がクローズ戦略の要だからといって自社だけの技術開発に陥るのではなく、オープンイノベーションによる「コア技術」の構築・強化を進めることが肝要と言えるでしょう。 一方で、技術は時間とともに成熟化しますので、技術が成熟段階や老衰段階に入ると、大きな顧客価値を生み出したり、差別化や独自性を発揮したりすることが困難になります。成熟段階や老衰段階に入った「コア技術」にしがみつくことは避けなければいけないことにも注意を払わなければいけません。
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著者萬秀憲 アーカイブ
October 2024
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