2023年度 北海道大学サマーセミナー「最新の知的財産訴訟における実務的課題――特許法をめぐって――」の4日目(8月29日)は、野中啓孝弁理士法人レクシード・テック弁護士・弁理士の「数値限定発明に特有の留意点~数値限定発明の潰し方、対策方法の解説~」、田村善之東京大学大学院法学政治学研究科教授(北海道大学名誉教授)の「明細書記載要件:サポート要件と実施可能要件との関係~食品官能試験・バイオテクノロジーを素材として~」でした。
野中弁護士は、理系修士(京都大学大学院工学研究科)⇒企業研究者(住友ベークライト)⇒弁理士⇒企業知財部⇒弁護士⇒海外留学⇒独立という異色の経歴です。 準備に夏休みがすべて吹っ飛んでしまったということでした。スライド206枚の大作で、下記の内容でした。 『1.はじめに 2.新規性・進歩性 3.サポート要件 4.実施可能要件 5.明確性要件 6.権利行使 7.先使用権 数値限定発明特許の問題点は、① パブリックドメインを含んだ形で独占排他権である特許権が成立しやすい(創作性の低いものが多い)② 特許権が成立すると、パブリックドメインの利用について、萎縮効果が生じてしまうこと③ 数値限定発明特許の濫立により、産業の発達を阻害しかねない状況になっていること。 本セミナーの目的は、 数値限定発明特許の潰し方の解説 ⇒新規性・進歩性、記載要件について潰し方の着眼点をご説明します。 数値限定発明特許に必要以上に委縮しないための準備の仕方の解説 ⇒権利行使、先使用権について対策の考え方をご説明します。 ⇒新規性・進歩性、記載要件については、時間的に余裕のあるうちに準備を して鑑定意見書を作成しておくなどの準備をすることが望ましいと考えます。 ⇒効率的に他社に対抗するためには、自社でも数値限定特許出願せざるを得ないと考えています。 ※現状の審査・審判・裁判実務を前提として、実務上できることをご説明します。』 共感できる内容でした。 田村教授の講義は、 Ⅰ、サポート要件の実像 Ⅱ、実施可能要件とサポート要件の関係 Ⅲ、偽技術的意味型問題 という内容でした。 特定の方が聴講されていないことを確認されたうえで、裁判所の判決に対する真っ向からの批判もされ、痛快でした。 田村善之「サポート要件と実施可能要件と機能的クレイムの関係に関する一考察 (1)~―クレイムの全範囲にわたって実施可能とする必要があるのか?―」知的財産法政策学研究67号~ (2023年) 田村善之「存続期間満了後の特許無効不成立審決取消訴訟の訴えの利益・進歩性要件の基礎となる引例適格性・サポート要件における課題の再設定について-ピリミジン誘導体事件知財高裁大合議判決の検討-」知的財産法政策学研究56号 (2020年) 劉一帆「特許法における記載要件の日米比較研究(1)(2)(3)~―バイオテクノロジーを中心に―」知的財産法政策学研究66・67・68号~(2022~2023年) 劉一帆「実施可能要件とサポート要件の表裏一体説批判――偽技術的意味型問題とその対応策としての発明課題の読替え」『知的財産法政策学の旅』(田村善之還暦・2023年・弘文堂) 劉一帆「特許法における記載要件について―飲食物に関する発明の官能試験を素材として―」知的財産法政策学研究54号(2019年) 劉一帆「機能および特性により特定したバイオ関連発明の記載要件の充足を認めた事例 ―PCSK9 に対する抗原結合タンパク質事件―」知的財産法政策学研究57号(2020年) 劉一帆「サポート要件の判断において出願時の技術水準を参酌した発明課題の再設定を否定した事例―ライスミルク事件―」知的財産法政策学研究58号(2021年) https://www.juris.hokudai.ac.jp/riilp/event/summer-seminar2023.html 8月29日(火) 10:00-12:30 野中啓孝弁理士法人レクシード・テック弁護士・弁理士 数値限定発明に特有の留意点~数値限定発明の潰し方、対策方法の解説~ 14:00-16:30 田村善之東京大学大学院法学政治学研究科教授(北海道大学名誉教授) 明細書記載要件:サポート要件と実施可能要件との関係 ~食品官能試験・バイオテクノロジーを素材として~
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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