世界貿易機関(WTO)で議論される新型コロナウイルスワクチンの特許権の一時放棄問題で、米国が賛成に転じ、中国も協議段階に入ることを支持、英国と欧州連合(EU)は米国が提案する新型コロナワクチンの特許放棄の有用性に懐疑的な見方を示しているものの協議に応じる用意はあると述べていて、製薬各社やドイツなどが特許権放棄は世界的なワクチン不足の解決にはならないとして反対する中で、
明治大学法科大学院 高倉成男客員教授の論文「知的財産と公衆衛生」(高倉成男・木下昌彦編『知的財産法制と憲法的価値』(有斐閣より2021年12月末刊行予定)に収録予定)が先行公開されました。 「特許製品の量が十分にある限り、COVID-19への対応は、公的資金による特許製品の「買上方式」(例えば、COVAX)によるのが望ましい。」という主張です。 現状、コロナワクチンの量が十分にあると言えるかどうか、特許権放棄により世界的なワクチン不足の解決ができるかどうか、が議論の分かれ目かもしれません。 高倉成男「知的財産と公衆衛生」(高倉成男・木下昌彦編『知的財産法制と憲法的価値』(有斐閣より2021年12月末刊行予定)に収録予定)の先行公開について http://www.isc.meiji.ac.jp/~ip/IPandConst.html 本論文(高倉成男「知的財産と公衆衛生」)における主張の要点は、以下の四点です。 ① 特許によるインセンティブがなければ、新薬は生まれず、医薬品アクセスの実現なし。 ② 医薬品アクセスの実現に必要な政府のコストは、新薬開発企業に負わせるのではなく、安心・安全なグローバル経済システムの実現から利益を受ける全てのステークホルダーが等しく負担を分かち合うのが合理的である。 ③ 上の2つの理由から、特許製品の量が十分にある限り、COVID-19への対応は、公的資金による特許製品の「買上方式」(例えば、COVAX)によるのが望ましい。 ④ 強制実施権の設定や特許保護義務の免除は、問題の解決にならず(特許の制約がなくなるだけで高品質の医薬が生産されることはなく、仮にコピー医薬が生産されても治験等に時間を要し、間に合わない)、むしろ次の新薬の開発にチャレンジする企業に「負のインセンティブ」を与える点で公衆衛生にとってマイナスでしかない。
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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