引用文献に一行記載された化合物(5-アミノレブリン酸リン酸塩)(5-ALAホスフェート)が本願発明の新規性を否定する「引用発明」と言えるかが争点となり、無効審判において新規性ありと判断した審決を知財高裁が支持しています。
新規の化学物質に係る発明の新規性の判断において、「引用発明」と認定するためには、「刊行物に製造方法を理解し得る程度の記載がない場合には、当該刊行物に接した当業者が、思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく、特許出願時の技術常識に基づいてその製造方法その他の入手方法を見いだすことができることが必要である」との「判断基準」を明確に提示していて、特許・実用新案審査ハンドブック3207にも同趣旨の記載がありますので、この点では、裁判所と特許庁の間に齟齬はなさそうです。 ただ、「特許出願時の技術常識」をどう見るかが難しい。 令和4年(行ケ)第10091号 審決取消請求事件 判決 https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/964/091964_hanrei.pdf 特許 令和4年(行ケ)第10091号「5-アミノレブリン酸リン酸塩、その製造方法及びその用途」(知的財産高等裁判所 令和5年3月22日) 7月5日(水)配信 https://ipforce.jp/articles/soei-patent/hanketsu/2023-07-05-6067 2023.03.22 「東亜産業 v. neo ALA」 知財高裁令和4年(行ケ)10091(5-アミノレブリン酸リン酸塩事件) - 刊行物に新規化学物質の発明が記載されているといえるか(引用発明の適格性)の判断基準 - https://www.tokkyoteki.com/2023/04/2023-03-22-r4-gyo-ke-10091.html 「5-アミノレブリン酸リン酸塩、その製造方法及びその用途」事件 (知財高判令和5年3月22日 令和4年(行ケ)第10091号) https://www.fukamipat.gr.jp/wp/wp-content/uploads/2023/04/09_2022_Gyo-Ke_10091.pdf 特許法29条1項3号の「刊行物に記載された発明」について引用発明の適格性を否定した事例 https://www.ohebashi.com/jp/newsletter/IPNewsletter202306.pdf 特許・実用新案審査ハンドブック 第 III 部 第 2 章 新規性・進歩性 https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/handbook_shinsa/document/index/03.pdf#page=12 3207 刊行物に記載された発明を引用発明とすることができない例 審査基準「第 III 部第 2 章第 3 節 新規性・進歩性の審査の進め方」の 3.1.1(1)b 審査官は、刊行物に記載されている事項及び記載されているに等しい事項か ら当業者が把握することができる発明であっても、以下の(i)又は(ii)の場合は、 当該刊行物に記載されたその発明を「引用発明」とすることができない。 (i)物の発明については、刊行物の記載及び本願の出願時の技術常識に基づい て、当業者がその物を作れることが明らかでない場合 (ii)方法の発明については、刊行物の記載及び本願の出願時の技術常識に基づ いて、当業者がその方法を使用できることが明らかでない場合 例えば、刊行物に化学物質名又は化学構造式によりその化学物質が示されて いる場合において、当業者が出願時の技術常識を参酌しても、当該化学物質を 製造できることが明らかであるように記載されていないときは、当該化学物質 は「引用発明」とはならない(なお、これは、当該刊行物が特許文献であり、引 用発明とした当該化学物質を選択肢の一部とするマーカッシュ形式の請求項を 有するものである場合に、その請求項が第 36 条第 4 項第 1 号の実施可能要件を 満たさないことを意味しない。)
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著者萬秀憲 アーカイブ
October 2024
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