特許研究 No.76に掲載されている「特許活動に関する情報開示の状況と株式市場の評価」
(明治大学情報コミュニケーション学部 山内 勇 准教授、岐阜聖徳学園大学経済情報学部 鈴木貴晶 准教授)では、特許活動に関する企業の情報開示の程度を定量的に把握した結果、情報開示の程度と株式市場での評価との相関を確認し、全体として、情報開示の量を増やした企業ほど株価の上昇率も高いことが示されています。 非常に興味深い分析結果です。 特許活動に関する情報開示の状況と株式市場の評価 特許研究 No.76 2023/9 P.49 https://www.inpit.go.jp/content/100878647.pdf 抄録 本稿では,特許活動に関する企業の情報開示の程度を定量的に把握するとともに,その情報の信頼性について分析を行った。そこでは,開示の媒体を,有価証券報告書とその他の開示資料(アニュアルレポートやニュースリリース等を含む)に分け,さらに開示の内容についても,「特許」という単語と同時に使用される単語から「攻めの開示」と「守りの開示」に分けて集計を行った。 その結果,近年では,その他の開示資料における攻めの開示が急激に増えていることが分かった。すなわち,各企業が,記載項目の自由度が比較的高い媒体において,自社の特許活動について積極的なアピールを行うようになってきている。また,有価証券報告書においても,特許活動に関する記述は緩やかに増えてきており,特にリスク開示の点から守りの開示が増えてきていることが確認された。 本稿では,こうした開示情報が,企業の特許活動を適切に反映しているかを確認すべく,特許出願の量や質との関係についても分析を行った。それによれば,特許出願が多くその質が高い企業ほど,情報開示の量が多い傾向があった。しかしながら,特許出願が少なく質が低い企業ほど,攻めの表現で積極的な開示を行っていることも明らかとなった。特に,記載の自由度の高い開示資料においてその有意性は強くなっている。 また,本稿では,情報開示の程度と株式市場での評価との相関も確認している。その結果,全体として,情報開示の量を増やした企業ほど株価の上昇率も高いことが分かった。他方で,攻めの開示は株式市場でさほど評価されていないという結果も得られた。これは攻めの表現で開示される情報の信頼性に起因している可能性がある。したがって,情報の開示を促すとともに,開示される情報の質を高める仕組みの設計も重要な政策的課題と考えられる。 1.はじめに 2.先行研究 3.特許活動に関する情報開示の動向 (1)時系列での情報開示動向 (2)業種別の情報開示動向 4.開示された情報の信頼性:特許出願の量・質との関係 5.情報開示の効果:株価上昇率との関係 6.おわりに
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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