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​よろず知財コンサルティングのブログ

情報提供制度をより活用するための提言

24/3/2023

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特許庁では、特許出願に係る発明が新規性・進歩性を有していないなどについて、情報提供を広く受け付けており、情報提供制度の活用を呼び掛けていますが、一向に増えていません。
現行制度下では情報提供によるデメリットが大きいためと考えられますが、知財管理 2023年3月号掲載の知的財産協会 特許第1委員会 第3小委員会の論説「情報提供からみた特許審査の質の向上に関する調査・研究」は、そのあたりの事情をしっかり解析し、情報提供の制度設計や運用の見直しを提案しています。ぜひ、その方向で検討を進むよう動いていただきたいと思います。
『特許第1委員会 第3小委員会「情報提供からみた特許審査の質の向上に関する調査・研究」知財管理 2023年3月号312頁』では、『日本の特許審査,特に進歩性判断が「甘い」のではないかとの指摘が産業界から挙がっている。本稿では,特許審査が「甘い」と感じる要因として,いわゆる当業者について,特許庁や知財業界が想定する水準と,実際の当業者の水準とに乖離があると考え,この認識の乖離を埋めるために情報提供を活用できないかと考えた。現状における情報提供の実態を調査した結果,情報提供によって審査の「甘さ」を是正する一定の効果が期待できる一方で,第三者にとってはリスクも大きく活用しにくい面があることを確認した。審査の「甘さ」が,第三者から見た納得感の欠如に起因して生じているのだとすれば,情報提供をより積極的に活用することが望まれ,第三者の意見を広く取り入れるとともに審査官の判断が外部から理解できるよう,情報提供の制度設計や運用を見直すことが好ましいと考える。』としています。
「情報提供からみた特許審査の質の向上に関する調査・研究」知財管理 2023年3月号312頁
http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/mokuji/mokuji2303.html
 
実は、ここ3年くらいの同小委員会の論説には、違和感を覚えていました。
たとえば、『知的財産協会特許第1委員会第3小委員会,特許第2委員会第2小委員会「近年の特許審査は『甘い』のか?」知財管理 Vol.70 No.9 pp.1351-1358(2020)』では、『2009年以降、特許査定率が上昇・高止まりし、産業界からは、現在の審査、特に進歩性判断は「甘い」のではないかとの声が上がっている。・・・「審査が甘い」とは、「審査が、他の審理等よりも特許が通りやすい形で乖離し、何らかの不具合が生じていること」と定義し、調査を行った。調査の結果、日本の特許は過去に比べて「通りやすくなっている」ものの、他の審理等との乖離は少なく、安定的な権利が付与されていることがわかった。』については、比較した「他の審理」が特許無効審判、審決取消訴訟、特許権侵害訴訟であったので、がっかりしていました。『2009年以降の進歩性判断の「甘さ」は、裁判所主導でおこなわれたものであり、特許庁はそれに追随したものであること。現在でも裁判所の方が「甘い」』のですから、こういう比較で「甘さ」を論じるのはおかしいと感じていました。
http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/mokuji/mokuji2009.html
 
また、『特許第1委員会第3小委員会「異議申立てからみた特許審査の質の検証」知財管理 Vol.72 No.5 pp.589-600(2022)』では、『日本の特許審査、特に進歩性判断が「甘い」のではないかとの指摘が産業界からあることについて、2019年度に引き続き、特許審査の実態と「甘い」と感じさせている原因を明らかにするための調査を行った。具体的には、本稿では、「審査が甘い」場合として、「審査段階で検討できたはずの拒絶理由が見逃され、異議申立てでその拒絶理由が顕在化した結果、権利範囲が減縮等(減縮及び取消)された場合」を取り上げ、異議申立てがなされた日本の特許出願を対象として、審査と異議申立てのそれぞれにおける引用文献とその判断を比較することで、特許審査の質を検証した。』として、『「甘い」に含まれる否定的な意味合いの実態を掴めなかった。』と結論していました。
登録件数に占める異議申立て件数は割合で見れば約0.5%であるが、対象案件全体の維持率が28.4%、特に、対象案件の約半分となる審査で引用されていない新たな先行文献が示された場合の維持率が4.7%となっていることを指摘していながら、『「甘い」に含まれる否定的な意味合いの実態を掴めなかった。』と結論していることに違和感を覚えていました。
http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/mokuji/mokuji2205.html
 
今回の論説は、『特許審査が「甘い」と感じる要因として,いわゆる当業者について,特許庁や知財業界が想定する水準と,実際の当業者の水準とに乖離があると考え』、『情報提供によって審査の「甘さ」を是正する一定の効果が期待できる』としたうえで、現行制度下の情報提供によるデメリットをとらえた良い提言だと思います。
 
 
特許第1委員会第3小委員会,特許第2委員会第2小委員会「近年の特許審査は『甘い』のか?」知財管理 Vol.70 No.9 pp.1351-1358(2020)
 2009年以降、特許査定率が上昇・高止まりし、産業界からは、現在の審査、特に進歩性判断は「甘い」のではないかとの声が上がっている。しかし、その根拠については必ずしも明確ではない。「甘い」という表現は、相対的なものであって、何らかの基準に照らしての評価だと考えられること、また、前述の産業界の発言において「甘い」という表現は、否定的な意味合いで使われていることから、本稿では、「審査が甘い」とは、「審査が、他の審理等よりも特許が通りやすい形で乖離し、何らかの不具合が生じていること」と定義し、調査を行った。調査の結果、日本の特許は過去に比べて「通りやすくなっている」ものの、他の審理等との乖離は少なく、安定的な権利が付与されていることがわかった。なお、本稿の調査範囲内では、「甘い」に含まれる否定的な意味合いの実態を掴めなかったため、他国における特許審査等、本調査の範囲外とした基準との比較が今後の検討課題と考える。
 
特許第1委員会第3小委員会「異議申立てからみた特許審査の質の検証」知財管理 Vol.72 No.5 pp.589-600(2022)
日本の特許審査、特に進歩性判断が「甘い」のではないかとの指摘が産業界からあることについて、2019年度に引き続き、特許審査の実態と「甘い」と感じさせている原因を明らかにするための調査を行った。具体的には、本稿では、「審査が甘い」場合として、「審査段階で検討できたはずの拒絶理由が見逃され、異議申立てでその拒絶理由が顕在化した結果、権利範囲が減縮等(減縮及び取消)された場合」を取り上げ、異議申立てがなされた日本の特許出願を対象として、審査と異議申立てのそれぞれにおける引用文献とその判断を比較することで、特許審査の質を検証した。また、他国の審査結果と比較する観点を取り入れるため、異議申立てで権利範囲が減縮等した案件のうち、対応米国出願を有する案件に特に注目して比較調査を行った。
 
 
特許第1委員会 第3小委員会「情報提供からみた特許審査の質の向上に関する調査・研究」
知財管理 2023年3月号312頁
http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/mokuji/mokuji2303.html
 抄 録 日本の特許審査,特に進歩性判断が「甘い」のではないかとの指摘が産業界から挙がっている。本稿では,特許審査が「甘い」と感じる要因として,いわゆる当業者について,特許庁や知財業界が想定する水準と,実際の当業者の水準とに乖離があると考え,この認識の乖離を埋めるために情報提供を活用できないかと考えた。現状における情報提供の実態を調査した結果,情報提供によって審査の「甘さ」を是正する一定の効果が期待できる一方で,第三者にとってはリスクも大きく活用しにくい面があることを確認した。審査の「甘さ」が,第三者から見た納得感の欠如に起因して生じているのだとすれば,情報提供をより積極的に活用することが望まれ,第三者の意見を広く取り入れるとともに審査官の判断が外部から理解できるよう,情報提供の制度設計や運用を見直すことが好ましいと考える。
目次
  1. はじめに
  2. 調査内容
  3. .1 情報提供制度とは
  4. .2 調査概要
  5. 調査結果
3.1 情報提供の有無による比較
3.2 情報提供の実態
3.3 情報提供で主張された拒絶理由に対する判断
3.4 情報提供で提出された文献に対する判断
4.実務者への提言
4.1 効果的な情報提供を行う方法
4.2 情報提供制度をより活用するための提言
5.おわりに

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